独身税は既にあって、導入したブルガリアは失敗したという話があり、興味を感じました。が、検索してみるとかなり怪しい話。デマと断定できないものの、少なくとも失敗したといえる根拠はないようです。
あと、独身税と名前がつかないまでも、事実上の独身税的な税金の使い方というのは日本でもあります。というか、どこの国でもあるものです。そういう意味で言うと、現役世代に負担となっている隠れた「若者税」的なものが一番問題ではないかと思います。(2017/09/16)
●かほく市で話題になった独身税、自民党議員も提案
2017/09/16:
地方紙の報道を行政が「困惑」と否定した「独身税」とは ZUU online / 2017年9月14日 5時20分(長瀬雄壱 フリージャーナリスト、元大手通信社記者)で出てきた「独身税」というのが気にかかっていました。
これが話題となったのは、石川県かほく市が「独身税」の導入を考えていると北國新聞が報道したため。しかし、かほく市はこれを否定。提案されたという事実すらなく、同市のママ課職員や財務省の阿久澤孝主計官らが参加した8月29日の意見交換会で、そのような趣旨の発言があっただけと火消ししています。
ただ、日本では2004年に、自民党の子育て小委員会で、柴山昌彦衆議院議員(現在も自民党で現役)が極論ではあるがと前置きして、独身税を考えてみてはどうかとの見解を披露したことがあるそうです。このときは炎上しなかったみたいですね。
●ブルガリアはすでに導入済みで失敗説
私が気になったのは、ブルガリアの話。まず、この独身税は、世界では、唯一ブルガリアが1968-1989年に導入したのみとしていました。当時のブルガリアは、少子化が進み、対策として5‐10%の独身税を導入したが、結果は思わしくなく中断したとしていました。当時人口900万人を下回っていたのが、2015年には717万人まで減少しています。
ただ、失敗の理由などを書いておらず、本当に独身税のせいかもわかりません。ここらへんが気になって検索してみたところ、
結婚しないと課税される!?ブルガリアの「独身税」 - 税理士ニュース|法律に関する相談なら「法律の窓口」へ(2015/05/07)が出てきました。どうやらこれがネットで言われている多くのブルガリアの話の元ネタのようです。
ここによれば、少子化に悩んでいたとあったものの、導入前の出生率(普通出生率(粗出生率)ではなく合計特殊出生率?)は2.18%(2.18人の誤記?)。合計特殊出生率だとすればという意味ですが、日本がこんなにあれば大喜び!という数字。日本は世界最低レベルです。
ただ、これが1.86%(同様に人か?)に下がったので、ダメということ主張です。それでも日本(2014年は1.42)よりだいぶ良いんですけど…。
●独身時代にお金が貯まらず、結婚したくても結婚できない
また、失敗した原因として、以下のようなことが書かれていました。
"金銭的に余裕のない層がますます結婚から遠ざかってしまったこと。独身税が高いので、お金をためることができず、お金がなければ結婚できないし、子どももつくれない……と思惑と真逆の悪循環を生むことになってしまった"
本来これを理由とするには、もっと証拠が必要であり、暴論です。ただ、誰もが初めて結婚するまでは独身ですので、それならある程度理解できる説明ではあります。
●独身税を導入していた国はブルガリア以外にもある
ところが、ふと見かけた
ブルガリアに独身税は存在したか、グーグル検索で世界を知ろう - ネットロアをめぐる冒険( 2017-09-10 )を読んでみると、この記事の問題点が多数指摘されていました。どうもかなり怪しい記事だった模様です。
問題だらけですが、まず世界で唯一ブルガリアが導入という時点でまず怪しいこと。独身だけでなく子供がいない男女に対してですが、「独身・無子税」というのがソ連やポーランドといった西欧で導入されていたようです。
ブルガリアも「離婚した子どものいない世帯」に課税されていました。また、結婚から5年経っても子どものいない家族にも課税されていた時期があり、名称が違うだけでほぼ同じと考えて良いかもしれません。(2017/09/18追記)
●独身税廃止後の方がひどい出生率
また、出生率低下を独身税だけに求めるのは乱暴であること。それどころか、世界銀行の統計を見ると「独身税」廃止後の1990年の「1.82」からたった7年で「1.09」まで落ちているため、「独身税をやめたから出生率が急激に下がった。だから独身税は有効だ」とも言えてしまうことです。ヤバイくらい減っています。
ただ、これももちろんきちんとした証拠が必要な話で、独身税廃止のせいだと断定するのは乱暴です。仮に子育て支援が大幅に悪化していたなら、十分あり得る話ではないかとは思いますが…。
さらに、ブルガリアでは多くの女性が労働者となったことが、経済発展とともに出生率の低下をもたらしたことも指摘されています。これはブルガリアに限った話ではなく、どの国でもいっしょです。日本もそうですよね。このように独身税がない国でも出生率は低下しているのですから、独身税のせいにするには他国と違う要因である強い証拠が必要です。
この出生率低下がどこの国でも経済発展とともに起きるというのは、どこ国でも何らかの対策をしないわけにはいかないってことでもあります。
●事実上の「独身税」的な隠れた負担はすでにある
あと、「独身税」と呼ばれてはいないのですが、事実上の独身税的な税金の使い方というのはすでにされています。例えば、子育て支援策などは、子供を作った人らしか恩恵を受けておらず、一生独身で終わった場合は一度も支払った税金が戻ってこないことになります。
このようにわかりやすい形じゃないと気付かずに反応が違う…ということはあります。海外から輸入される農産物と国内の農産物の価格差を解消する方法も、輸入される農産物の価格を引き上げる関税と、国内の農家を支援する補助などとで、だいぶ印象が異なります。
しかし、結果的に我々国民が最終的にそのお金を負担しているということには、実際には変わりありません。関税だと負担ゼロのように一見思えるものの、本来安く買えるものを高く買っているために、事実上の税金のようになっているのです。
●日本で既にある「若者税」も問題
この事実上の…という話で言うと、現役の労働者世代に負担となっている隠れた「若者税」とも言うべきものが一番問題かもしれません。
そもそもなぜ出生率対策をしなくちゃいけないか?というと、少子化が進むことで国が貧しくなるためです。なぜ貧しくなるか?というと、働いている労働者世代の割合が減ることで、働いていない高齢者を支えるための社会保障関係の保険料(この値上げは消費税増税と違いあまり話題にならずうまく隠れています)や税金の負担が大きくなるためです。
(関連:
少子化の問題点はズバリ二点 経済の停滞と社会保障の維持困難)
なので、(日本政府は軽視していますが)少子化対策は絶対必要です。また、ついでにいうと、高齢者が相対的にたくさんいる事実も変わらないのですから、彼らのための社会保障費もなくせません。
「独身税」はあからさまで差別的であり、私は絶対支持しませんが、隠れた「若者税」みたいな感じで、隠れた「独身税」はこれからもっと必要になるでしょう。対策しなければさらに悪くなっていくだけですし、実際今苦労しているのも、過去の日本政府が十分な対策をしてこなかったせいです。
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