選挙速報では、投票終了後すぐに「当選確実」が出ることがあります。不思議ですよね。私も子供の頃、変だな…と思って不思議だったところです。この理由を含めて「当選確実」を出すしくみについて解説した良い記事がありました。
その後、<「マスコミの予想は当たらない」「捏造だ!」と思うのはなぜ?>なども追記しました。
2021/10/26追記:
●「マスコミの予想は当たらない」「捏造だ!」と思うのはなぜ?
2023/10/24追記:
●「巨大な赤い波が起きる」と圧勝を予想したのに「さざ波」程度に 【NEW】
●当選確実・落選の票数計算のしくみ 事前調査や出口調査など
2017/10/23:この解説記事というのは、
選挙の出口調査による当選確実を出すカラクリとは? オールアバウト / 2017年10月22日 16時5分(文:伊藤 亮太)というもの。これによると、当選情報を出すために使われる情報は一つではなく複数あります。その中では「候補者陣営に聞く」というのが初耳で驚きました。バイアスが入りそうで、精度はイマイチな気がしますけどね。
(1)事前調査…無作為に抽出した電話番号などをもとに誰に投票するか、どの政党に投票するかといった質問を行う。
(2)実績や組織票など…選挙事務所を訪問し、相手の陣営がどれぐらいの票を取りそうかといった内容を取材、また、過去の実績や候補者の知名度、組織票などで予測。
(3)出口調査…実際に投票した候補者や政党名を聞き集計。
●天気が悪いだけで選挙結果は変わってくる!事前予想が困難な理由
このうち最も重要なのは、出口調査でしょう。記事では、以下のような指摘がされていました。
・アンケートや質問を回答してくれた人が実際に投票に行くかはわからない。
・選挙当日の天候や無党派層の行動などが影響し、ふたを開けてみたらまったく異なる結果となることも否定できない。
天気という話が出ていたものの、こういう政治と無関係なものが実はたいへん大事です。うろ覚えなんですけど、アメリカの調査では、スポーツの試合の開催日程なんかも、選挙結果に関連するといった話を読んだ覚えがあります。日本の場合にも、無党派層は自民党以外に流れることが多いため、天気が悪いと自民党に有利だと言えます。自民党は確実に投票してくれる組織票が多いことや、投票率の高い高齢者に強いというの理由があるでしょう。
過去に自民党議員が「投票に来ない方が良い」という趣旨の発言をしたのもこのため。2017年の衆議院選挙は各地でかなりの量の雨が降り、自民党の大勝に一役買ったものと思われます。まあ、
アメリカが北朝鮮を攻撃して戦争開始…を望むお花畑思考な人たちで書いたように、勝つために国益を損なってまでやった解散総選挙ですから、そうじゃなくても勝ったと思いますけど…。
●実は精度が高い!出口調査は100人に聞かなくても誤差10%以内に
私がおもしろいと思ったのは、出口調査に関する統計的な話が出ていたことです。どれぐらいの人数を聞けばよいかは、候補者の数や候補者の人気度、接戦地域かどうかといった観点で異なっているという前置きはあったものの、何人でどれくらいの精度という目安が載っていました。
これによると、わずか96人に聞いただけで誤差10%以内になります。ここで言う信頼度とは、例えば信頼度5%で投票者が100人だった場合、95人は予想された範囲内の回答を行っているという意味だと説明されていました。ただ、この説明だけだとわかりづらいと思うので、後で実例を紹介します。そっちの方がわかりやすいです。
とりあえず、ここでは96人に聞いただけで誤差10%以内ということでした。では、200人に聞くとほぼ100%になるか?というとそうではなく、その後は1%上げるのもなかなか困難に。96人の4倍である、384人に聞いて誤差5%以内で、その候補者の得票率の予想される範囲を95%の信頼度で求めることができるとのことです。
ただ、5%しかズレがないなら大したものですよね。実際、統計学では95%以上の信頼度があればおおよその当てはまりは高いといわれているとのこと。とはいえ、メディア各社はもっと聞いているのではないか?としていました。過去に保守的な予想をするNHKが出した当選確実の候補が落選して、問題になったこともあります。
●57.3%~82.7%に入る確率が95%…といった感じで予測していく
ここらへんの話は具体例を聞くと、さらにイメージが湧きやすいです。候補者がAさん、Bさんの2人というかなり簡単なケースで考えます。このとき、無作為に選んだ有権者50人に出口調査の結果を聞いて、Aさんに投票したと回答した人が35人(70%)だったとすると、予想される得票率は95%の信頼度で57.3%~82.7%となると言えるそうです。
先ほどの説明と違って、わずか50人で95%の信頼度となっているのが謎ですが、そこらへんの説明はありませんでした。とりあえず、95%の信頼度なので、この予想される得票率の範囲内に実際の得票率が入っている可能性が95%といえるとのことになります。かなり高い確率でこの範囲に入ってくるわけですね。
そして、予想される得票率は57.3%~82.7%と広い範囲の予想であったものの、その下限が50%を超えているため、Aさんが当選するだろうと割り出すことができるというわけ。ただ、実際にはもっと多い人数に聞いて、予想される得票率の範囲を狭めていき、当選確実を出せるかどうかを見極めていくと考えられます。
●無作為抽出していないネットメディアの調査は問題
上記の中で「無作為に選んだ有権者」とありました。これは非常に大事なのですが、多くの方がその重要性を意識していないようです。無作為にする必要があるというのは、年齢や男女など偏りがないようにし、全体の投票者の行動と同じになるような比率で抽出するため。例えば、男性ばかりとか、若年者ばかりに出口調査を行うと、実際の投票結果を見誤る可能性があります。
また、記事ではなかったものの、都市部とそれ以外で投票傾向が異なるということもあるでしょう。トランプ大統領誕生のアメリカの大統領選挙で予想が外れた理由としての指摘の一つが、都市部以外での調査が足りなかったのでは?というものでした。本当でしたら、基本中の基本をやっていなかったということで不思議ですけどね。
とりあえず、日本の大手メディアでは選挙予測に限らず、普段の世論調査においても無作為抽出でやっています。一方、ネットメディアでは自分のサイトのユーザーのみの調査で、なおかつ調整を行っていないというものが多いです。信頼性に大きな差があるのですけど、「~新聞の調査だから信頼できない」というむしろ真逆の態度を取る人が目立ちます。例えば、ヤフーアンケートなんかは、年齢調整もせずにただユーザーに聞いただけという大雑把なものが多いのですけど、これを根拠にものを言ってしまう人がいます。本当は問題外の調査なんですけどね。
サンプル数が増せばかなり信頼性が上がると思われるものの、ニコニコ動画もユーザーに聞いたものなのですから注意が必要なもの。また、ドワンゴの場合、ニコニコニュースでランキング操作したことが発覚しており、別な意味で信頼性がヤバイところです。
(関連:
ドワンゴがけものフレンズたつき監督交代で隠蔽工作 ランキングなどで情報操作を試みて炎上)
●「マスコミの予想は当たらない」「捏造だ!」と思うのはなぜ?
2021/10/26追記:「マスコミの選挙予想なんか信頼できない!」と思う人が最近多いようなのですが、上記までで書いてきたのは、飽くまで出口調査の話。これは既に投票を済ませた後の人に聞いている…という例です。前述のしくみを見ると、かなり信頼性が高いと考えられます。逆に言うと、事前予想はかなり難しく、これが「当たらない」と思う理由でしょう。
例えば、トランプ大統領の出た2016年のアメリカ大統領選挙の予想がかなり難しかった事例でした。これはいろいろと理由が考えられるもの。事前調査であるため、その後投票先が変わる可能性がある他、そもそも選挙に行かない…という人もいます。最初のときに書いたように、その日の天候やスポーツの試合にも左右されるくらいですからね。
また、トランプ大統領がめちゃくちゃな非常識な人であったため、「彼に投票する」とは恥ずかしくて言いづらかったというのも理由として挙げられていました。こうした調査は「嘘をつかれる」という可能性もあります。似た感じで、日本の出口調査でもある程度補正をかけて計算している…といったことも過去に聞いたことがありました。
さらに、接戦の場合はそもそも予測するのが極めて難しいということがあるでしょう。アメリカの大統領選挙がまさにこれでした。前述の通り、出口調査の方が精度が高いんですが、たとえ誤差が5%であったとしても、それ以上の接戦なら当選確実は出せません。実際、日本の選挙でも当選確実がなかなか出でこないことはよくありますよね。
一方で、「左翼マスコミが捏造して右派敗北と予想したから」はデマだと言って良いでしょう。というのも、2016年のアメリカ大統領選挙でも、一時「トランプ当選」の結果が多数出た時期があったためです。このようにマスコミがトランプ当選の予想をしたことは、「左翼マスコミが捏造して右派敗北と予想した」では説明ができません。
日本の事例としては、2021年の都議選で自民党圧勝という、逆に右派有利な予想をマスコミが出して惨敗したというものがあります。これは風向きが大きく変化して流れが変わったため。事前予想は基本的に難しいんですね。なお、このときは右派に有利な予想だったため、右派が目立つネットでは「マスコミが捏造」という声は出ませんでした。「マスコミが右派に不利な予想をする」というのは幻想です。
●「巨大な赤い波が起きる」と圧勝を予想したのに「さざ波」程度に
2023/10/24追記:マスコミの選挙予想が外れた例として、2022年のアメリカ中間選挙の例を。これもマスコミが右派圧勝!と予想したら外れたというもの。逆に負けはしなかったものの、辛勝に留まってしまいました。ちょうど別のところで書いていた話があったので、大部分これを流用する形で載せます。
アメリカの中間選挙は野党が勝つのが普通であり、マスコミも野党・共和党のトランプ旋風を予想。「巨大な赤い波」が起きるとも言われていました。ところが、蓋を開けてみると苦戦して、「巨大な波」ではなく、「さざ波」程度。マスコミの予想は外れてしまいました。
このとき取り上げたのは、別投稿でのテーマの関係で、<トランプ氏が激怒!共和党苦戦で…なぜかメラニア夫人にまで“逆ギレ”>([2022/11/10 19:20] テレ朝)というニュース。今回のテーマとはだいぶ違うのですけど、「圧勝できると思ったにできなかった」という雰囲気はわかるので、そのまま転載しておきます。
<CNNキャスターのツイッターから:「トランプ氏の顧問によると、中間選挙での失望的な共和党の結果を受けて『トランプ氏は怒り狂っており』『皆にわめき散らしている』ようです」
怒り狂っている…。その原因の1つが東部・ペンシルベニア州の上院選でトランプ前大統領が推薦したドクター・オズ候補の敗戦です。医師で長年テレビ番組の司会を務めた“タレント候補”で、知名度抜群のオズ候補は、まさに“トランプ印”の目玉候補でした。
トランプ前大統領は、今月5日にはペンシルベニア州にドクター・オズ候補とともに登場。(中略)
共和党・トランプ前大統領:「(共和党は)最大の得票数になる。これまでもそうでしたが、今はかつてなく大きく強固になっています」
しかし、敗戦…>
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000275251.html
【本文中でリンクした投稿】
■
アメリカが北朝鮮を攻撃して戦争開始…を望むお花畑思考な人たち ■
ドワンゴがけものフレンズたつき監督交代で隠蔽工作 ランキングなどで情報操作を試みて炎上【関連投稿】
■
選挙の勝利=民意の支持ではない理由 オストロゴルスキーのパラドックスとは? ■
安倍首相「都議選は公明党抜きで勝負するいい機会」→歴史的大惨敗 ■
日本の選挙の供託金は高すぎ!海外では廃止方向なのに数百万円も ■
捏造デマ?共産党から無料イラスト依頼で暴言と主張の絵師やまとめサイトが次々と削除 ■
野党統一候補批判・共産党アレルギーは保守だけ?反対は3割のみ ■
政治・政策・政党・政治家についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|