談合の話をまとめ。<談合の割合は2割?国交省発注公共工事の統計分析で不自然な入札が出現>、<大林組の談合再発防止策に他社驚き!実は世界では普通>などをまとめています。
2023/05/29:
一部見直し
【クイズ】「談合坂サービスエリア」がることで有名な「談合坂」の地名の由来には、桃太郎伝説からという説もあります。この談合坂があるのはどこの都道府県でしょう?
(1)愛知県
(2)岡山県
(3)山梨県
●談合の有無がそもそもなぜわかる?「再入札」で推定できる理由
2017/12/01:価格の不自然さから、談合の存在を証明する研究がありました。<国交省発注公共工事、2割に談合の疑い:日経ビジネスオンライン>(川合 慶 2014年5月1日(木))という記事で紹介されていた研究です。同じ分析により、談合がどれくらいあるのかというのも推定できるようでした。
なかなかおもしろそうな研究だったのですが、世の中が談合で盛り上がっている時期にと思って、長く投稿を保留していました。でも、そんな時期はいつまで待っても来そうにないので、投稿しちゃいます。
<公正取引委員会による入札談合の摘発は年に数件程度にとどまっている。では、実際は摘発されなかった事案が多数あるのか。それとも巷で言われているほどは、談合なんておきていないのか。(中略)
今回の研究では、健全な競争が保たれている場合に比べて、談合をするとどこに一番不自然な点が現れるか、という観点から2003年から2006年にかけて国土交通省が発注した4万件余りの公共工事の入札を分析した?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20140428/263554/ この研究では「再入札」に限って調べていました。この「再入札」というのが、研究のポイントであり、わかりそうにない談合の有無を推定できる理由です。この考え方には、非常に感心させられました。ただ、とりあえず、その前に公共工事の入札と再入札のしくみについて。以下のような説明です。
<公共工事の入札では入札参加業者に札を入れてもらって、一番安い札を入れた業者に工事を請負ってもらう仕組みになっている。しかし、公共工事の入札には予定価格(非公表の入札上限価格)があって、すべての札が予定価格を超えてしまった場合は、同じ業者たちに2回目の入札(再入札)をしてもらう(大抵、1回目の入札の30分後)>
"今回分析したデータの範囲では約2割の入札で再入札があった"そうですが、これに着目した理由は以下です。
<その理由は、競争的な入札と談合における入札との違いが、再入札において一番顕著に表れると考えたからである。前述のとおり、談合においてはあらかじめ本命の業者を内輪で決めている。そして、本命業者は入札で一番安い札を入れ、本命以外は本命業者に勝たせるためにより高い札をいれるはずだ。それは初回入札であっても再入札であってもそうだ。すなわち談合においては本命業者が1社に絞れているだろうから、初回入札においてもそれ以降の入札においても、1位業者が変わらないと予測される。
一方で談合がない状況ではどうだろうか。談合がなければ、事前に誰が勝つか決まっていない以上、初回とそれ以降で1位業者が変わることもある程度あるはずである>
●談合の割合は2割?国交省発注公共工事の統計分析で不自然な入札が出現
前述の考え方に基いて"初回入札で1位だった業者が再入札でも1位になっている割合"を調べたところ、「96.70%」という驚異的に高い数字になりました。あらかじめ順番が決められておらずバラバラであるのなら、このような高い数字にはならないでしょう。極めて不自然な数字です。
とはいえ、記事で"これだけだとまだ議論としては甘い"としていたように、"これだけではまだ談合の存在を示す"ことはできません。私もすぐ思いつきましたが、もともと"原価面などで他の業者と比べて十分に優位"な業者が2回目でも1位になりやすいということは当然だからです。
「96.70%」というのはそれにしたって高すぎだろう!というものではありますが、上記の考え方からすれば健全な競争による入札も多数含まれているのでは?と疑われて当然。これだけでは日本の公共工事は談合だらけと断定するには根拠不足。そこで、作者はもう一歩考え方を進めます。
<再入札があった案件のうち、特に初回入札で1位と2位とが接戦となった(つまり、この2業者の初回の入札金額差が小さい)案件に着目した。その理由は、初回入札において接戦で1位2位だった2業者は、原価面などで大きな差がない可能性が高く、初回の1位業者がずば抜けた競争力がある、という状況が平均的には排除できているからだ。
すなわち、初回入札で1位と2位が接戦だった案件のみに着目すれば、談合がない状況下では、初回入札1位2位のいずれかの業者が再入札で1位になっておかしくないはずだ。業者間で競争していれば、初回入札で1位だった業者が再入札で再び1位になる割合は、初回入札1位2位の入札額の差が小さくなるほど、50%に近づくはずだ>
「業者の能力がほぼ等しいから同じような入札価格になった」ということになっている初回入札1位2位の入札額の差が小さい接戦の案件において、もし本当に談合がなかったのであれば、必ず50%になる…ってことはないものの「96.70%」という数字はかなり大きく変化すると予想されます。
そこで"初回1位と2位業者の金額差が(事後的に公表される)予定価格の1%以下の入札案件に限定して"調べてみたところ…、何と96.09%。僅か0.61%下がっただけでほぼ変わらないという衝撃の結果になりました。これは不自然すぎますわ…。
一方で、同じように「業者の能力がほぼ等しいから同じような入札価格になった」と考えられる初回2位3位業者間が接戦だった場合が衝撃。こちらではなんと"再入札においては半分くらいの割合で順位が入れ替わっている"という結果に。こっちはちゃんと「業者の能力がほぼ等しいから」の想定通りになっています。
このように初回2位3位業者間が接戦だった場合を見たことで、通常なら競争力が近い企業同士の順位は、このように入れ替わるということが証明されると同時に、初回1位2位業者間が接戦のときには順番が入れ替わらない不自然さが浮き彫りに。96.70%や96.09%という数字はおかしすぎます。なお、談合の割合を2割とした根拠は以下のようです。
<2003年から2006年に国土交通省発注の入札に参加した各業者に関して検定統計量を計算した結果、競争的な入札をしているとは考えられない業者が約1000社(95%の有意水準)見つかった。この1000社が落札した工事は、全体の8000件、予算規模で約9000億円だった。これは03-06年に国土交通省から発注された工事の実に20%に当たる>
とはいえ、統計分析では証拠にならないために、談合だと認定することまではできません。談合の摘発はまた別の努力が必要です。こういう分析が広まってもっと関心が集まると変わっていくかもしれませんけど、イマイチ皆さん談合への怒りがないんですよね。不思議です。
●「談合坂」というイメージが悪い地名
クイズは、
談合坂というイメージ悪い地名の由来は色々 桃太郎の団子由来説もから。
【クイズ】「談合坂サービスエリア」がることで有名な「談合坂」の地名の由来には、桃太郎伝説からという説もあります。この談合坂があるのはどこの都道府県でしょう?
(1)愛知県
(2)岡山県
(3)山梨県
【答え】(3)山梨県
これ書いちゃうと絞られるので書きませんでしたが、「談合坂サービスエリア」は中央自動車道のサービスエリアです。
あと、
談合坂というイメージ悪い地名の由来は色々 桃太郎の団子由来説もでやったように、昔は談合にそんな悪いイメージがなかったので、だんご説以外の由来もそんなに悪いものじゃありません。
公共事業の談合に罪はあっても、談合坂には罪はないのです。
●大林組の談合再発防止策に他社驚き!実は世界では普通
2018/05/31:JR東海が進めるリニア中央新幹線工事で社長が辞任に追い込まれた大林組が、同業も驚く「新ルール」を発表したそうです。
業界団体などが主催する公式行事以外は、同業者が参加する懇親会への参加を禁止。また同業者との会合を持つ場合は、事前に報告する義務を課します。それも工事の受注に直接携わる営業担当者だけでなく、設計や建設現場、事務部門に至るまで全従業員を拘束するとしていました。
同業他社は「わが社は営業担当者のみにとどめている。全社員まで広げる必要はないのでは」「社員のプライバシーの問題にもかかわるので難しい」と消極的。「ゼネコンに就職したばっかりに、同業他社に就職した同級生と簡単に会えなくなってしまうのはいかがなものか」とも言っていました。
ただ一方で、他社からは「従業員の拘束だけでは問題は解決しない」という声も。また、公正取引委員会の杉本和行委員長は東洋経済の取材に対して「海外では担当者同士が会って話しただけでアウト。日本でも国際ルールにのっとって判断していく」と指摘。大林組が策定したルールも、世界的に見れば全然厳しすぎる内容ではなく、単に日本がゆるすぎただけのようです。
(
大林組、同業も驚いた「新ルール」の徹底ぶり 厳しい再発防止策が業界で波紋を呼んでいる 東洋経済オンライン / 2018年5月30日 10時0分より)
実際、海外では日本企業のカルテルがよく摘発されています。こういった際にすぐ「日本いじめ」といった声が上がるものの、「日本がルールを守っていないだけだ」という解説も以前読んだことがありました。ここらへんの意識が低い国なのかもしれません。
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