「囚人のジレンマ」などで有名なゲーム理論という数学理論。これは「囚人のジレンマ」のような思考実験だけでも、かなりおもしろい理論なんですよね。ただ、このゲーム理論は机上の空論ではなく、プロスポーツ選手らが無意識に実践しているという研究があり、さらにおもしろいと思いました。
●「囚人のジレンマ」に代表されるゲーム理論の考え方がおもしろい
2017/4/5:まず、ゲーム理論の説明を先にしなくちゃいけないのですけど、これが正直すごく面倒くさいんです。
コトバンクで最も簡単な説明を探してみると、以下のナビゲート ビジネス基本用語集の説明が一番良さそうな感じでした。
<ゲームを行う場合、相手の手の打ち方を読んで、できるだけ自分の得点を高くし、失点を少なくするにはどうするか、という方策を求める数学理論>
正直これだけじゃイメージ沸かないので、具体例をやっぱやらなくちゃいけませんかね。最も有名なのは、「囚人のジレンマ」と言われるもの。で、そう言えば、これなら過去にやっていましたわ。実を言うと、今回の話は囚人のジレンマとは全然違うんですが、そちらをリンクしておきます。
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共有地の悲劇(コモンズの悲劇)と囚人のジレンマ 日本の漁業は共有地の悲劇?●一流プロスポーツ選手はゲーム理論の混合戦略に従ってプレーしている
さて、今回紹介したいのはテニスの話。ゲーム理論では、確率的にしか戦略を決められないことを「混合戦略」と言い、テニスのファーストサーブの狙いも理論的にはこれが最適だと考えられています。
サーブにおいて、右に打てば相手のフォアハンド、左に打てばバックハンドだったとします。この際に、相手のバックハンドを狙った方が勝率が高そうな気がするでしょう。ところが、そうした考えは相手に読まれている可能性が高く、逆にリスクが高いとも考えられます。なので、ゲーム理論的には左右ランダムに打つという混合戦略が最適解なのです。
とはいえ、これは机上の空論じゃないの?と思うでしょう。ところが、実際の試合を調べてみた研究者によると、アマチュアや二流プロではダメだったものの、一流プロだけはマジで半々になっていたそうです。ゲーム理論通りでした。
当然、一流テニスプレーヤーはゲーム理論を元にプレーしていたわけではないでしょうが、ゲーム理論の通りにプレーすることで戦績が上がると考えて良いわけです。ただし、彼らも完全なランダムとは行かずに、同じ方向を連続して多く打つことは避ける傾向にありました。ここらへんは、やはり人間ですので、どうしても引っ張られてしまうみたいです。
なお、この話は、橘玲さんの『
「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する
』にあったものでした。
●テニスだけじゃない!サッカーのペナルティキックも混合戦略
上記の話は有名なようで、
ゲーム理論 - Wikipediaにも記載がありました。ウォーカーとウッダースという方が、1974年から1997年までのグランドスラム大会とテニスマスターズカップのデータを用いて世界大会レベルのテニスプレイヤーのプレーを調査したものだそうです。
そして、Wikipediaにはこれだけでなく、別のスポーツの話もありました。サッカーのPKにおいて、キッカーが左右どちらに蹴るかは重要な戦略であり、同様にキーパーが左右どちらにジャンプするかの話も載っていました。(PKの場合は真ん中狙いもあるんですが、そこらへんの説明はなく、不明です)
1999年から2000年までの間にヨーロッパで行われたサッカーの試合における1417本のペナルティキックのボールが蹴られた方向と成功率を解析したPalacios-Huerta 2003によると、これまた混合ナッシュ均衡と現実のデータが合致していることが確認されたとのこと。机上の空論…と思われがちなこうした理論が、現実に通用するというのはたいへんおもしろいです。
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