サーモンは伝統的な寿司ネタではないと批判されることがあり、サーモンがあるお寿司屋さんは本物じゃない…みたいな風潮もあります。ところが、サーモンは最近の寿司ネタで不動のトップであるがために、本格寿司店でも導入しているところが増えてきているんだそうな。職人さんの中には、この変化について憂いている人もいるようです。
●回転寿司のサーモンは邪道…のはずが本格寿司屋でも増える異変!
2017/4/9:職人養成学校の関係者は、寿司ネタのサーモンについて、「本格的な寿司店では、サーモンを置いていない店も多いでしょう」としていました。サーモンというのは、もともと江戸前寿司には存在しなかったという経緯があり、寿司の伝統を重んじて「扱わない」職人が多いためだと説明されています。
この職人養成学校の関係者はそこまでは言っていなかったものの、サーモンは寿司ネタとして邪道、本物ではないという批判もよくあります。ところが、下北沢の寿司店「福元」の職人の男性は取材に対し、職人が握る本格的な寿司店でもサーモンを扱うところが増えていると言っていました。
なぜ本格的な寿司店ですら邪道なサーモンを扱うようになったのか。「福元」の職人の男性はこの理由について、彼は「商売を考えたら、サーモンを置かざるを得ないんでしょう」としていました。というのも、寿司ネタとしてサーモンは圧倒的な人気を誇っているのです。
(
サーモンを出す「本格寿司店」増加中 回転寿司の枠超える人気ぶり 2017年 04月08日 14時00分 提供元:J-CASTニュースより)
●なぜ本格寿司屋で?人気ナンバーワン寿司ネタに職人も逆らえず…
以前書いた
回転寿司で何皿食べる?男女別の平均皿数や人気のネタランキングでやった調査でも、普段“多く食べている”ネタの1位は「サーモン」でした。さらに、今回の記事によれば、マルハニチロが3月28日に発表した「回転寿司に関する消費者の実態調査」(17年版)でもトップ。しかも、2010年の調査開始から7回連続(11年のみ実施なし)の1位です。
これは回転寿司における調査でしたが、持ち帰りすしチェーンで知られる「京樽」が16年10月に結果を発表した「江戸前寿司で好きなネタ」(複数回答可)でも、1位は46.6%の支持を集めた「サーモン」。回転寿司でなくても、サーモンが求められていることがわかります。
先の「福元」の職人の男性が言う「商売を考えたら、サーモンを置かざるを得ないんでしょう」というのはそういう意味でしょうね。もともと江戸前寿司には存在しなかった邪道なサーモンを取り扱う本格寿司屋が増えてきてしまった、屈服してしまう職人が増えてきてしまった…というニュアンスです。
●若者が悪い!今の日本人が悪い!…は老害による責任転嫁では?
こうした言い方でわかるように、「福元」の職人の男性はこの傾向に批判的でした。「でも、僕は絶対に嫌だな。サーモンを扱い始めた職人には『何をやってるんだ!』と言いたい気持ちですよ」ともおっしゃっています。こうした見方に賛同する人は多いでしょう。サーモン好きな現代日本人を批判したい人も多いかもしれません。
ただ、サーモンを扱うお店やサーモン好きな人を批判までするのはどうかと思います。私は別に伝統を守ろうとする人が悪いとは思わないのでそういう考え方の人がいてももちろん良いですよ。でも、伝統好きじゃない人を批判するのは間違いだと思います。伝統的な寿司が好きで、新しい寿司が好きでも自由。どちらかを叩くのは差別的です。
これとは話が変わりますが、「伝統だから」と姿勢を変えない方が、ビジネス的には間違いの場合が多いという話もしておきます。例えば、町の本屋が次々と潰れているのは、今までと状況が変わっているにも変わらず、本屋そのものが変化しようとしていないためです。衰退するものは、時代の変化についていけてないということが多いんですよね。
こういうときはお客さんが悪いとか、わかっていないとかみたいに、消費者に責任転嫁されることが多いものの、そんなこと言ったって仕方ないですよね。この寿司職人さんも、「いまの若い子とかは、油さえのってればいいと考えてしまうんじゃないかな」と、ちょっと消費者をバカにした感じのことをおっしゃっていて、似たものを感じさせました。
●「伝統」は変化したからこそ「伝統」となれたということを考えよう
本屋以外に同じ食べ物の例も出しておくと、海外の人気の日本食もそうです。海外の人気日本食チェーンは、日本人の関わりが薄いところばかり。この理由は、外国人が好む日本食が伝統的な日本食ではなく、外国人の口に合うように工夫されたものであるためというのが大きいと考えられます。変わったからこそウケたのです。
(関連:
人気の日本食は本物感よりローカライズ イギリスチェーンが成功)
そもそも勘違いが多いと思われるのが、今「伝統」と呼ばれているものの多くは最初からその姿だったわけではなく、当時の人に受け入れられるように努力して変化させてその形になった…ということ。変わろうとしなければ、そもそもその文化は根付かず、「伝統」となることもなかったのです。それを忘れている人が多すぎると思います。
2017/12/10追記:この投稿はだいぶ前に下書きしていたものですが、その間に
伝統とは変わらないことではない 虎屋黒川光博社長は「伝統は変化の連続」と理解というこのテーマに近い話を投稿していたのを忘れていました。変わらない伝統が好かれるのならそれはそれで良いのですが、変わることで「伝統」にしてきた偉大な先人たちの努力があったことも忘れてはいけませんし、若者叩きをしても仕方ありません。
【本文中でリンクした投稿】
■
回転寿司で何皿食べる?男女別の平均皿数や人気のネタランキング ■
人気の日本食は本物感よりローカライズ イギリスチェーンが成功 ■
伝統とは変わらないことではない 虎屋黒川光博社長は「伝統は変化の連続」と理解【その他関連投稿】
■
消える回転寿司の醤油皿に寿司屋失格!と批判 → むしろ正統と専門家 ■
はま寿司が回転寿司日本一 かっぱ寿司がスシロー・くら寿司より有利な理由 ■
安いけどまずい!かっぱ寿司、不当評価で回転寿司4社で一人負け ■
定番・邪道・マニアック・オススメ寿司ネタランキング ■
新人の雑用は無駄か必要か?一流の寿司屋は8年目で初めて握り ■
食べ物・飲み物・嗜好品についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|