タバコのパッケージには、健康被害への警告が掲載されています。この警告メッセージは強ければ強いほど良いと思われがちなものの、実は病気となった内臓の写真といったおどろおどろしいものに変更したら、むしろ喫煙者が増えてしまったと聞きました。
その理由は、強すぎる禁煙メッセージにストレスを感じ、そのストレスを解消するがために、タバコが吸いたくなったというもの。本当でしょうか? ということで、検索してみたというのが、今回の話でした。(2017/4/11)
2017/4/11:
●タバコのパッケージの健康被害への強い警告、実は逆効果?
●オーストラリアやイギリスなど警告表示がない国もある
●一番効果的なメッセージは「タバコ、かっこ悪い」だった!
2019/10/24:
●吸われているのはタバコじゃない!喫煙の危険性を訴える秀逸なポスター
●タバコのパッケージの健康被害への強い警告、実は逆効果?
2017/4/11:先に白状してしまうと、実際にパッケージのストレスで喫煙者が増えたというデータは見つかりませんでした。そもそもタバコがストレスを解消するというのは誤解であり、タバコが解消するストレスというのは、ニコチンによるストレスだと言われています。いわばマッチポンプのようなものです。
(関連:
タバコ・喫煙とストレスに関する実験 解消・軽減ではなく増加?)
ただし、主張と方向性が近い研究もありましたので、可能性はありそうです。
タバコの危険を知ると吸いたくなる? - 長崎大学教育学部教育心理学教室 前原由喜夫研究室の記録(2016年10月25日)にそういった話があったのです。
Hansenさんらは恐怖管理理論にもとづいて、喫煙者は喫煙と死の恐怖が結びつくと、逆に喫煙を肯定する態度を強めるのではないかと考えました。恐怖管理理論とは、人間は死を意識してしまうと極度の不安や恐怖に襲われるので、その苦痛をコントロールするために信仰を確認したり、ポジティブな自己評価を維持しようしたりする、という考えです。
そこで、Hansenさんらはある実験を行います。喫煙者らに「タバコを吸うことによって立派になったように感じる」とか「喫煙は私の性格の望ましくない側面を引き出す(逆転項目)」などの、「喫煙に関連する自己評価」を尋ねる質問に答えてもらうといった内容です。
これでわかったのは、タバコと自分との関連にポジティブなイメージを持っている人は、タバコと死が直結するメッセージを受け取ったとき、自尊心や自己肯定感を高めて恐怖に抵抗するために、タバコをより肯定的なものとして捉えてしまうということ。
タバコを吸ったことがない人が新たに吸ってしまうということではないのですが、喫煙者の場合はよりタバコを吸いたくなってしまいそうです。なので、警告に効果がないとか、喫煙者を減らしづらくなるとかなら言えそうでした。
●オーストラリアやイギリスなど警告表示がない国もある
逆効果であるという研究や実際の喫煙者の増加が理由ではなく、最近行われた研究で禁煙を促す「効果が薄い」ことわかった、という理由ですが、タバコの箱から警告表示をなくす動きが既に起きているそうです。
タバコの箱から警告表示をなくす動き イギリス|けあNews by けあとも(2014-04-06 18:00)によると、イギリス政府が2015年には、一切の警告文や画像をなくした、いわゆる普通のパッケージのタバコを販売する方針を示したそうです。
さらに、オーストラリアでは、すでに警告表示を解除しているとも、書かれていました。そして、このオーストラリアの場合、タバコをやめたいという意思表示する喫煙者が、増加しているというポジティブな結果となっていました。警告表示をなくすことの方が効果がありそうに見えますね。
●一番効果的なメッセージは「タバコ、かっこ悪い」だった!
このような結果をもたらした理由として、シンプルなデザインのパッケージは、10代や20代前半の若者にとって、退屈で、つまらないからだ、というものが挙げられていました。外装の工夫をこらして消費者の購買意欲を誘う動きの、逆をやったわけですね。
また、最初のHansenさんらの研究によれば、「喫煙に関連する自己評価」の高い人たちは、「タバコはあなたと周囲の人に害を与える」、「タバコ,かっこ悪い」といったメッセージが、効果的であることがわかっています。
なので、基本的にタバコはダサいものだ、という方向性に持っていくことが、喫煙者減少の最も効果的な方法であると言えそうです。
タバコとは全然関係ないですけど、暴走族を珍走団と呼ぶのと似ていますね。こういうのが本当に効果あるとは思いませんでしたわ。
●吸われているのはタバコじゃない!喫煙の危険性を訴える秀逸なポスター
2019/10/24:パッケージではありませんが、タバコに関するポスターがうまい出来だなと思いました。こういうアイデア好きですし、人間やタバコの煙の表現もよくできています。
ただ、前半の研究内容からすると、実際の効果は薄いかもしれません。それでもまだタバコを吸っていない人になら…とも思うかもしれませんけど、これも
恐怖を利用したしつけは逆効果と研究で判明!叱るや「勉強しなさい」も子供の脳に悪影響でやったように、やはりダメそうな方向性です。
これらの話とまた違うのですけど、たばこのコマーシャルの規制や映画などでの喫煙シーンへの規制というのがあります。警告表示などとは逆に、これらの規制について「馬鹿らしい」などといったネガティブな反応が多いです。ただ、実際、喫煙の多い高齢の人は「タバコはかっこいい」といったポジティブなイメージがあると思われます。前述の報告を踏まえると、タバコのイメージを変えた方が良いというのは、論理的な考え方でしょう。
あと、ポスターでのツイッターの反応の中には、「吸われているのは小金」といったものがありました。喫煙者は小金どころかかなりの金額を使っていますし、一般的には低所得者層の方が喫煙者が多いため、その負担は普通より大きくなるとも考えられます。ただ、こういった指摘をするのもあまり効果がないのかもしれませんし、前述のイメージ戦略が第一なんでしょうね。
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