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実は捏造?薩摩示現流の掛け声とされるチェストの意味・語源 野太刀自顕流でも言わず


 薩摩藩士の刀術での掛け声と言われてきた「チェスト」が、実は大嘘だったという話を知ってびっくり。チェストという言葉を発する場面はあるものの、行事においてであり、どの流派でも剣術での掛け声としては発していないそうです。

チェスト!―がんばれ、薩摩隼人


●実は捏造?薩摩示現流の掛け声とされるチェスト 野太刀自顕流でも言わず

2017/5/2:画などでよく出てくる「チェスト」という掛け声。チェスト - Wikipediaでは、「蓋の付いた大きい箱」である家具の意味でのチェストなどの他に、「薩摩示現流における気合いを入れるためのかけ声」との説明があります。

 これについて書かれた、ANAグループ機内誌「翼の王国」2017年4月号に"鹿児島チェスト! 薩摩の「謎の掛け声」を追う"(柏木光大郎)という記事がありました。ここでも「チェスト」については、「野太刀自顕流」(のだちじげんりゅう)や別流派だが共通点の多い示現流(じげんりゅう)の気合であるとされることが多いと説明されています。

 ところが、野太刀自顕流青雲舎道場の島津義秀・理事長が「チェストとは言いませんね」と言っていてびっくり! 俗説というか、捏造というか、嘘だとは考えたこともなかったので驚いてしまいました。


●薩摩示現流の掛け声は「チェスト」ではなく「キィエーイ」が正しい

 島津さんはものすごい気合の声を出すものの、これは「キエーーーーッ!」といった感じ。前述の通り、チェストとは発声しないと明言されていました。また、先程も書いたようにチェスト - Wikipediaでは、「薩摩示現流における気合いを入れるためのかけ声」との記載があるものの、実を言うと、Wikipediaでも肝心の示現流のページでは、チェストについては何も書かれていません。

 叫び声に関する説明自体は、Wikipediaにもあります。Wikipediaでは、まず、稽古について、立木に向かって気合と共に左右激しく斬撃する『立木打ち(たてぎうち)』など、実戦を主眼に置いた稽古をひたすら反復する事に特徴があることを説明。その上で、"掛け声は「エイ」であるが、あまりに激しいため「キィエーイ」という叫び声にも似たものとなる"と説明していました。やはり「チェスト」ではないのです。

 なお、この掛け声は分派である薬丸自顕流にも受け継がれているものの、この各派共通の反復練習と猿叫は意味を知らぬ者に否定的に見られるこ"もあるそうです。なんと幕末期の薩摩藩主であったあの島津斉彬も、薬丸自顕流の稽古を見た際に、「まるで気が狂った輩の剣術だ」と辛い評価。これはチェストとはまた違った意味で、意外な話になっています。


●「チェスト」と言うのは剣術ではなく「妙円寺詣り」だけだった

 前述の島津義秀さんは、チェストと「発生するとしたら『妙円寺詣り』(まいり)でしょう」とおっしゃていました。この妙円寺詣りというのは、鹿児島城下から伊集院(現・日置市伊集院町)にある戦国時代の薩摩の大名・島津義弘(島津義秀さんは、島津義弘の子孫)の菩提寺までの20km強を、鎧兜姿で往復する行事だそうです。

 この行事が生まれたきっかけは、関ヶ原の戦い。島津義弘は西軍についたものの敗戦したため、敵軍の正面突破という常識はずれな戦法であったものの、薩摩に逃げ帰るはめになりました。そして、"以来、薩摩人は逃げざるを得なかった主君の悔しさと勇ましさを刻み続け、(中略)「妙円寺詣り」が誕生した"とあったので、たぶん悔しさを忘れないための行事みたいな由来なのだと思われます。

 で、この妙円寺詣りでは、きつい坂道などで、「チェスト!」という掛け声が発せられていたとのこと。「チェスト行け、関ヶ原」などのように言われます。ただし、言われ始めた時期は不明であり、これも歴史があるのかは不明。「明治・大正の可能性もありますが、造語だとは考えにくいので、昔から原形はあったのでしょう」と想像されていました。


●『チェーッと行け』から『チェストイケー』に変化…など異説も

 記事では、他の方にも話を伺っています。鹿児島県立図書館館長であり、志學館大学教授でもある原口泉さんは、「鼓舞するための掛け声であることは間違いないでしょう」としています。『鹿児島方言大辞典』(橋口満著・2004年)には、「高潮するときや感激のときの声」との記載。用例としては、「チェスト イケンカ セッガハラ(チェスト行かんか関ヶ原)」が載っています。

 原口泉教授は、薩摩で行われていた子どもたちへの教育である郷中教育(ごじゅうきょういく)にある、険しい坂を上る「山坂達者」や水練において、「チェーット イカンカー!」と鼓舞したのではないかと想像していました。

 一方、薩摩川内市の「甲冑工房 丸武」平林正勝・企画営業本部長は、「いくら調べてもルーツはわかりませんが、私はやはり自顕流(ならびに示現流)のあの気合を擬音化したのが、『チェーッ』で、『チェーッと行け』が『チェストイケー』に変化したのではないか」と想像しています。

 ただ、これらは飽くまで想像ですし、古い時代に剣術で使われていたという一般的なイメージの使われ方とも違います。なので、こうした使い方に関しては、やはり「証拠はない」と言わざるを得ないようです。


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