1 政府関係者が、1万円札・5000円札は2025年に廃止する検討を日銀がしていると言っていたそうです。ただ、日銀にそんな権限はなく、担当の財務省も検討はしていません。隠している可能性があるものの、普通にデマだと思われます。
ただ、日銀がこれに興味を示しているというのは、以前も言われており、理由は何となく想像できます。これは政府関係者が本当に実施されるかのようなことを言っていた理由とも関係しそうで、高額紙幣廃止の目的の一つのためだと考えられます。
とはいえ、一般的な高額紙幣の廃止の目的は彼らが期待しているものではなく、徴税逃れやマネーロンダリングの防止。そして、日本の1万円札廃止を主張する中心人物であるロゴフ教授は、この目的について「1万円札廃止は効果的。映画で見たから間違いない」といったことをおっしゃていて、大丈夫?という感じになっていました。(2018/01/05)
●海外では紙幣の廃止が相次ぐ…日本は遅れてる?
2018/01/05:
1円玉と1万円札に廃止論 1円玉の原価・製造コストは2円なので無駄?に追記するか迷って、新規で一つ。向こうでも書いたように、米ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授など、日本の1万円札を廃止すべきと言っている人がいます。ロゴフ教授なんかは5000円札も廃止すべきとしているみたいですね。
"日本人にとっては想像しづらいだろうが、海外で紙幣の廃止がある"と記事では書いています。’14年に1万シンガポールドル(約83万円)紙幣の発行が停止。そして’16年11月にインドが1000ルピー(約1700円)紙幣と500ルピー紙幣を廃止しています。この他、米国やカナダ、オーストラリアも、高額紙幣の廃止を検討しているといいます。
これらの国々が高額紙幣を廃止する一番の目的は、資産隠しによる徴税逃れやマネーロンダリングの防止です。最高額紙幣の額面が小さくなればなるほど、持ち運びや隠匿が難しくなるという理由でした。
(
1万円札がなくなる!? 「7年後をメドに廃止」は本当なのか? | 日刊SPA! 奥窪優木 2018年01月02日より)
●インドで高額紙幣廃止が成功というのは本当なのか?
上記のうち、インドでは徴税逃れやマネーロンダリングの防止で一定の効果が出ているという話が出ていました。ただ、
インド・モディ首相 ヒンズー至上主義者と反イスラム主義者としての顔で紹介した記事では、大混乱があったという説明
徴税逃れの防止といった話があるように、これは本来はお金持ちを狙ったものでした。しかし、法的通用力を失ったその2種類の紙幣は、流通紙幣の86%という一部の高額紙幣というよりは、一般的に使われている紙幣でした。なので、当然お金持ち以外もそれらの紙幣をたくさん持っていたわけです。
日本では想像できないものの、インドでは銀行に口座を持たない人が54%もいたというので、さらにこれで混乱が増大。お金持ちが徴税逃れで現金を溜め込んでいるというのではなく、庶民がタンス預金しているってケースが多かったのだと思われます。
また、この記事では、インド政府が本来狙っていたアングラマネーのあぶり出しには、あまり効果がなかったといわれていました。というのも、15~16年の調査によると、インドで不正に蓄財された資産の保有形態としては、現金はそもそもわずか6%しかないことがわかっていたため。不正蓄財は、株式や不動産、宝石などを他者の名義で購入していたケースが圧倒的だったのです。
●1万円札・5000円札は2025年に廃止?日銀内で検討と政府関係者が証言
ということで、インドはむしろ失敗で、モディ首相のダメエピソードのように見えました。なので、怪しいのですが、政府関係者はインドを成功例とみなして、以下のように語っていたそうです。
「インドでの成功例を受け、日本でも1万円札と5000円札を7年後をメドに廃止する検討チームが日銀内で立ち上がったと聞きました。ドルやユーロとも歩調を合わせるということらしい」
ただし、そもそも紙幣廃止は日銀の仕事ではなく、問い合わせたところ「通貨の発行については財務省の管轄になる」(広報課)と回答。その財務省国庫課は「高額紙幣の廃止に関してまったく検討しておらず、将来的な廃止も考えていない」と否定。デマでした。
先の証言と異なることになっちゃうのですが、金融アナリストの久保田博幸さんは「実態は『検討チーム』ではなく、一部の官僚による非公式な勉強会に近い可能性もある」としていました。あるいは、日銀はその権限はないものの、紙幣の廃止について議論だけしているということかもしれません。
●ロゴフ氏「1万円札廃止は効果的。映画で見たから間違いない」
また、1万円札・5000円札ってそれほど世界的には高額紙幣ではないんですよ。最初の例でも、大混乱が起きたとされるインド以外で出ていた例は、1万シンガポールドル(約83万円)という桁違いに大きい紙幣の話でした。経済評論家の加谷珪一さんは以下のように指摘していてます。
「500ユーロ札や100米ドル札は、実際に使おうとすると断られるか偽札でないかどうかじっくり吟味されるので、日常生活ではほとんど使われていない。なので、廃止しても反対する人は少ないのです。しかし、日本で日常的に使用されている1万円を突然なくすとなれば話は別」
これは、
1円玉と1万円札に廃止論 1円玉の原価・製造コストは2円なので無駄?の記事のときにも言われていました。"1万円札は世界の高額紙幣のなかでは比較的価格が低く、廃止論は日銀内でも現実味がないと受け止められている"とされてたのです。
また、最初のロゴフさんは、著書で〈日本にはヤクザもいるし脱税もある。現金のかなりの割合が地下経済で保有されているのは、まずまちがいない〉と断定。"その根拠として「『マルサの女』などの映画にも描かれている」としているが、論理的とは言い難い"と、今回の記事では切り捨てていました。フィクションと現実をいっしょにしちゃダメですよね。
●日銀と安倍政権が1万円札廃止論に興味を持っている理由
ただ、以前の投稿でやったように、日銀でこの人の書籍が話題になっていたのは事実のようです。となると、非公式な勉強会があったというのなら有り得そうな話です。
となると、なぜこんなトンデモそうな説に日銀が興味を示したり、政府関係者が本当に実施されるかのようなことを言っているのか?と思う方もいるでしょう。これはロゴフさんが主張する紙幣廃止のもう一つの理由を見るとわかります。実を言うと、「紙幣への逃避を防げばマイナス金利政策が効果を発揮しやすくなる」と言われているためです。
ご存知の通り、安倍政権と日銀が自信満々で実施した金融緩和政策はあまりうまく行っていません。なので、政府関係者や日銀は、マイナス金利に絡む1万円札廃止論という奇策にすら期待しているのだと思われます。
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