フロイトとユングは後々に大きな影響を与えたという偉大な功績があります。ふたりとも偉大な学者であることは間違いありません。ただ、同時に問題があったことを批判されることも多く、科学的か?というところでは疑問符。手法的に非科学的である他、錬金術・曼荼羅といったもろにオカルトな話も出てきています。
2022/09/14追記:
●不死や死後の魂の存続の可能性を考えない人を異常者呼ばわり 【NEW】
●心理学ではないし科学でもない?オカルトが大好きだったユング 【NEW】
ユング オカルトの心理学

●オカルト好きのユングは中国道教の錬金術の曼荼羅に夢中
2018/01/08:精神科医・心理学者であったカール・グスタフ・ユングって、すごくおもしろいんですよ。ゲームや漫画などの創作ネタとしては一流で、そういう意味では好きです。人間の無意識の奧底には人類共通の素地(集合的無意識)が存在する…なんて話は、特におもしろいです。
ユングは精神疾患の人々の治療にあたるとともに疾患の研究も進め、特に当時不治の病とされた分裂病(統合失調症)の解明と治療に一定の光明をもたらすなど、その功績も大きいものがあります。ただ、「集合的無意識」や「元型」などの一般の生物学の知見とは相容れない概念を提起することによって、20世紀の科学から離脱して19世紀の自然哲学に逆戻りしてしまったという批判もあるそうです。
ユング自身オカルト好きなところがあり、オカルトとされる分野を研究。また、1928年、ユング中国道教の錬金術のドイツ語訳を入手し、曼荼羅に夢中になっていたという記述もありました。このように錬金術や占星術、中国の易などに深くコミットしたことにより、オカルト主義的だと見られてしまいます。
これらは
カール・グスタフ・ユング - Wikipediaにあった話ですが、一時蜜月関係にあった精神医学者ジークムント・フロイトも、まだ訣別する前の時期にユングに対し、「オカルティズム」を拒絶するよう強く求めていた…とも書かれていました。
●フロイトも非科学的でデタラメ?性的一元論に固執
このようにユングのオカルトへの熱中を心配していたフロイトですが、彼の方も実は非科学的なところがあるんですよね。フロイトの精神分析理論の科学性については、疑問があるとされているのです。たとえば、カール・ポパーは実験やデータなどの反例による理論修復の機会を拒否する精神分析論の独善的な姿勢を批判しています。
現代の精神医学においては、フロイトの理論自体が高く評価されているとはいえません。その理由としては、嗜好性の強い独特の性的一元論にこだわりすぎというのがあります。性理論への偏向自体は、フロイト自身の政治的な立場から自身の主張を一つのものの見方に限ってしまうことになり、科学者としての彼の姿勢に非難があがる結果にもつながりました。
実際には現在の科学者でも結構いるのですけど、結論ありき、自分の考えしか認めないってのは、非科学的と言わざるを得ないんです。多くの人がやる悪い癖である単純に一つのことだけで説明しようってのも、これまた非科学的。フロイトがデタラメだったとまで言うと言い過ぎかもしれませんが、科学性については心もとないところがあります。
ただし、フロイトの提唱した数々の理論は、のちに弟子たちによって後世の精神医学や臨床心理学などの基礎となったのみならず、20世紀以降の文学・芸術・人間理解に広く甚大な影響を与えました。ユングもフロイトも偉大なことは間違いありません。
(
ジークムント・フロイト - Wikipediaより)
●心理的虐待で自説を強要したことも指摘されているフロイト
フロイトに関しては他にも問題があり、「ガスライティング」と言われるものも指摘されています。ガスライティングというのは聞き慣れませんが、心理的虐待の一種だとのこと。被害者にわざと誤った情報を提示し、被害者が自身の記憶、知覚、正気を疑うよう仕向ける手法のことをいいます。
この用語は『ガス燈』という1938年の舞台劇が由来だそうです。舞台劇『ガス燈』は、妻が正気を失ったと当人および知人らに信じ込ませようと、夫が周囲の品々に小細工を施すというもの。妻がそれらの変化を指摘すると、夫は彼女の勘違いか記憶違いだと主張してみせる…ということを行っていました。
劇の題名となっている『ガス燈』というのも、このいじめに由来したものです。夫が屋根裏で探し物をする時に使う、家の「ガス燈」が薄暗くなっていることについて、妻はすぐに変化に気付くのですが、夫は彼女の思い違いだと言い張る…という場面があるそうです。この種のことを繰り返し行う…という話みたいですね。
そして、フロイトの手法のいくつかが、こうしたガスライティングでした。例えば、狼の夢についてフロイトと様々に議論した「ウルフマン」の例について、「フロイトはウルフマンに容赦ない圧迫をかけ、フロイトの再解釈と定式化を受け入れるよう迫った」と指摘。こうなっちゃうともう悪質な詐欺ですね。
(
ガスライティング - Wikipediaより)
心理学系の分野は現在においても、実験などによって証明されたのかどうか、根拠があるのかどうか…と怪しく感じられる説明が見られますし、注意が必要なところかもしれません。
●不死や死後の魂の存続の可能性を考えない人を異常者呼ばわり
2022/09/14追記:リンクしていた『
ユング オカルトの心理学』のレビューも読んでおくことに。まず、以下のように商品紹介に「私が~」とあって変だな?と思います。どうもこれはユング自身が書いた論文を集めたものだったようで、他の人がユングのオカルトについて解説する書籍ではないようです。ユングのオカルト好きは伝わってきますけどね。
<私がここに集めた論文をまとめて世に出そうとする理由は、それらがすべて、人間の心に関するあるきわどい問題、つまり死後の魂の存在の問題に、関係しているからである。
最初の論文は、死者の霊と交信しているという、ある若い夢遊病の未婚女性について説明している。第2の論文は、解離と「部分魂」(もしくは分離人格)の問題を扱っている。第3の論文は、不死への信仰の心理と、死後の魂の存続の可能性を論じている。不死について考えることは正常であり、それらを考えないこと、あるいはそれを気にしないことこそ異常である>
この時点でユングのやっていることは科学じゃないな…と感じるのが、最後の部分。「不死について考えることは正常」はまだわかるものの、「それらを考えないこと、あるいはそれを気にしないことこそ異常」として、簡単に意見の合わない人を異常者呼ばわりしています。不死について考えるかどうかは人それぞれなんですけどね…。
●心理学ではないし科学でもない?オカルトが大好きだったユング
前述の通り、これは論文集であるため、「この本は、なかみをよく見ずに買ってしまってびっくり。(中略)内容がよく理解できませんでした」というレビューが載っていました。この方は「たぶん、ある程度、専門的に扱っている人が読む本なのだなと思いました」とも書いています。
ただし、専門書として良いのかどうかも怪しいところ。というのも、翻訳者は英文学専攻の方であり、心理学の専門家ではなさげなため。オカルト系詩人の研究が専門らしいので、オカルトへの精通はあるでしょうけどね。別のレビュアーの人は以下のように「心理学ではない」「科学ではない」といった感想も残していました。
<ユングという時点で、心理学的な部分もあるが、超心理学となってしまう。実際に著者は、英文学が専門なのに、オカルトについて述べている。このオカルトという言葉に関しては、現代のオカルトとは少しずれている。ユングの時代のオカルトで、民俗学的観念が混入している。そこで現代オカルト好きに警告。タイトルだけ見て買わないように。中身も確認しておこう。というわけで科学とすごい遠い書です>
ユング オカルトの心理学

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