米食は日本の文化…と思うかもしれませんが、お米の消費量で見ると首位じゃないどころか全然上位じゃありません。50位だそうです。これに関連して、「若者のお米離れがぁ…」と言われて、若者を叩くような感じも見受けられます。ただ、そもそも本当にお米離れは良くないことなのか?という点に関しては、特に論拠が示されているわけではなく、怪しいところがあります。
2023/08/11まとめ:
●米食中心の日本食で健康長生き・欧米食は悪い…本当なのか? 【NEW】
●お米の消費量世界一は日本ではない 米離れで日本は50位
2018/01/08:トリップアドバイザーが、「世界で一番おコメを食べているのはどこの国?」という調査を行って発表していました。FAO CAST発表の2011年の統計をもとに集計したもののようです。消費量は国が供給する米の総量を国民1人あたりに換算して計算しています。
これによると、日本は世界1位どころではなく、1位とは遥か遠いところにいるようです。なんとランキング掲載ギリギリの50位でした。私は1位ではないと思っていたものの、これにはさすがに驚きました。ちなみに、日本以外の国では、韓国は15位、中国は17位、インドは22位、台湾は42位だったと紹介されていました。
<お米の消費量ランキング>
1位「バングラデシュ」473グラム(ひとりあたりの1日の消費量)
2位「ラオス」445グラム
3位「カンボジア」436グラム
4位「ベトナム」398グラム
5位「インドネシア」364グラム
6位「ミャンマー」345グラム
7位「フィリピン」325グラム
8位「タイ」306グラム
9位「スリランカ」295グラム
10位「マダガスカル」283グラム
…
50位「日本」119グラム
(
世界で一番お米を食べている国は…日本は50位 | リセマム 2015.4.10 Fri 12:45より)
●日本のお米の消費量が減っているのは若者のせい?
そもそもお米離れって悪いことなのか?という話をあとでやりますが、メディアでは悪いことといった感じで書かれることが多いです。非公開記事で読めないものの、日本農業新聞は、「若者 米離れ浮き彫り 週1回未満4人に1人 本紙調査」なんて記事を投稿。若者に問題ありと言いたげなタイトルです。農家としては、お米が売れてほしいですからね。
それはともかく、実際、日本ではどれくらいお米離れが進んでいるのでしょう? 農林水産省が食生活に関する49項目のうち、1カ月以内にどれを実行したかを答えてもらった調査では、「ごはん(コメ)を食べる」は全体の93.2%が回答し、全項目の中で最も高くなりました。
(
20代男性の2割が1カ月間米食なし 農水省調査 :日本経済新聞 2016/5/4 22:08より)
「ごはん(コメ)を食べる」は全体の93.2%なら米農家としては全く嘆くことなく、むしろ良い結果だろうと思ううのですが、20代男性では81.6%にとどまり、20代男性の約2割が1カ月間、コメを食べなかったとされてました。男性は30代も88.5%と9割に届かなったともいいます。
女性は男性と比べるとお米をよく食べているようですが、20代女性は91.5%で年代別で最も低くなっているということで、若者ほど食べないという傾向は変わらず。最高は男女ともに60代で男性は96.3%、女性は97.1%という結果もイメージ通りで、お年寄りほどよくお米を食べていることがわかります。
なお、この下書きを書いた後に、ずっと前に書いて放置していた
日本人ならお米は過去の話 日本のパンへの支出、既に米より多い 日本人のコメ離れは若者のせいじゃないというのがあるのに気づいて、先に投稿しました。そっちではお米の消費量のグラフを見たんですけど、ここ数十年はきれいに右肩下がり。最近の若者の米消費量が減ったというものだけでは、説明しきれないものでした。(ここだけ2018/01/23追記)
●2011年の時点で日本人のお米の消費量はピークの半分に
古いデータになってしまいますが、2011年7月から2012年6月までの国内の主食用米の需要実績が810万トンと、過去最低を更新したというニュースも読みました。
日本人のコメ離れ止まらず 消費はピーク時から半減、過去最低に : J-CASTニュース(2012/8/11 10:05)という記事です。
農水省によると、コメの1人当たりの消費量は1965年度の年間111キロ(1日当たり1090キロカロリー)から2010年度は59キロ(同580キロカロリー)にほぼ半減。ただ、おもしろいのは、パンや麺など小麦は1965年度の292キロカロリーから2010年度の329キロカロリーの増加にとどまっているということです。
なぜおもしろいのか?と言うと、これによって、「米を食べずに、パンや麺類を食べるようになった」というイメージが間違いだとわかるため。パンや麺が米を代替したわけではないんですね。 農水省は「現代人は主食のご飯を減らした分、肉などのおかずを食べているのではないか」とみているとのこと。体に悪いもの食っている!と言いたげな分析ですね。
●科学的根拠ある?そもそも日本人の米離れは悪いことなのか?
以前書いた
日本人の魚離れは深刻 あと数年でスーパーの魚売り場はなくなる?では、日本人は魚も食べなくなっていると書きました。しかし、私はそもそも以前の日本人が魚を食べすぎだったんじゃないかと思う、といったことを書いています。
というのも、魚が体に良く、食べる量が多ければ多いほど良いというのは、科学的根拠のない俗説で誤解であるためです。肉も魚も野菜もバランス良く食べるというのが正解とされているんですよ。魚の消費量が減っているから問題…という捉え方ではなく、全体のバランスで考えた方が良いのです。
同様に本当にお米離れが問題なのか?というのは、注意が必要なところでしょう。問題はバランス良く食べているか?ということであり、お米をたくさん食べないからダメってことではありません。むしろお米ばかり食べすぎてしまうことで全体のバランスが崩れている可能性がありますし、米以外が不足している国である可能性もありそうです。
●お米は太る悪い食べ物…というのも極端
ちなみに、お米を世界一食べているバングラデシュは、ひとりあたりの1日の消費量は、日本のコンビニのおにぎりで換算すると10個以上だとのこと。となると、1食3個程度ですから、普通に有り得そうな数字で問題でもなさそうに見えます。ただし、平均でこれってのは、1食おにぎり3個じゃ済まないほど食べている人がかなりいるということ。食べ過ぎな人も多いかもしれません。
一方、日本のひとりあたりの1日の消費量は119グラムで、バングラデシュの約4分の1とされていたので、日本人は1食おにぎり1個程度のご飯も食べていないみたいですね。そう言われると少ないなと思いますが、問題だってことでもないでしょう。お米は肉や魚や野菜などと違って、最適な目安の量自体が聞いたことがありません。
私が以前読んだものでは、炭水化物も食べているグループの人の方が、炭水化物抜きのグループの人より健康だよ、程度だったと思います。他の食べ物をバランス良く食べる中で、無理しない程度にお米などの炭水化物を食べておけば良いんじゃないでしょうか?
一方で、最近は糖質制限ダイエットが流行し、お米は悪いものであるかのように言っている専門家(エセ専門家?)も多いのですが、これもまた極端ですね。どうも皆さん極端から極端へ行ってしまいます。
●外国産は危ないからお米食べろ!農水省が言う理由
あと、先のJ-CASTでは、 農水省は、2011年度の食料自給率を発表したが、前年度と同じくカロリーベースで39%で、コメの需要が減れば、食料自給率も下がる傾向となっているという話もありました。
実は今回の投稿に使う話を探している中で、農水省のページも見ています。そこでは、「日本人の米離れが深刻」「やっぱり国産が安心だよね」「食料自給率が低くて問題」というのがセットでアピールされていました。
日本の本当の食料自給率は0% リンなどの肥料は輸入で自給は無理などで書いているように、食料自給率は問題が指摘されている指標であり、本当に重視すべき値なのか?といった批判が多いです。しかし、農水省はこれを非常に重視しています。
最初の方であった日本農業新聞がそうであるように、農水省が「お米離れが問題だ」と声高に叫ぶのも、そういった裏があるのでしょう。国民のためを思って言っているわけではないと思われます。
●米食中心の日本食で健康長生き・欧米食は悪い…本当なのか?
2023/08/11まとめ:肉食禁止の投稿でやっていた話をこちらに転載。日本の肉食禁止について、<魚で動物性たんぱく質をとり、大豆と米で植物性たんぱく質を補給するという、世界で類を見ない健康長寿効果の高い食文化を形成>という評価があるのですけど、ちょっと過剰評価で実際には日本食にもデメリットもあったという話です。
検索して出てきた
日本人の平均寿命を延ばした結核・脳卒中の激減は食生活の変化と病気の関係について書かれたもの。改善したのは他の理由も大きいのですが、「日本食が良くて欧米食が悪い」という単純なものではないとわかる部分もあります。
<戦後の復興が始まった昭和20年代の特に前半は食糧事情が大変に悪く、多くの人々が栄養失調の状態でした。そして、感染症が蔓延し、当時の死亡原因の第1位は結核(引用者注:江戸時代から多かった)、次が肺炎・気管支炎、続いて胃腸炎と死因の上位をすべて感染症が占めていました。(中略)
(引用者注:結核が減ったのは、)健康診断の実施、予防接種(BCG)の法的義務づけ、ストレプトマイシンなどの治療薬の普及が功を奏しました。それと併せて、食生活の改善による栄養状態の向上と衛生環境の改善も大きくかかわっているものと考えられます。
低栄養の状態では、結核の病状を著しく悪化させることが動物実験でも確認されています。また、栄養状態が平均的に良好であるとは言えない開発途上の国では、結核による死亡率が高いことからも、栄養と結核は深い関係があることを推定させます>
<結核と共に高い死亡率を示し、日本人の平均寿命の延びにブレーキをかけてきたのが、脳卒中などの脳血管疾患です。この病気による死亡者数は、結核による死亡率が急激に減少し始めた昭和26年以降も増加傾向を続けましたが、昭和45年をピークにその後は急速に減少しました。これも、穀物中心の食塩摂取量の多い食生活から、動物性たんぱく質をきちんと一定量を摂る食生活に変わってきたことと無関係ではありません>
一方、
食生活によって病気は変化する|総合南東北病院 広報誌健康倶楽部では、食事の変化で減った病気・増えた病気両方あることがわかります。日本食が良い・欧米食が良いといった単純な話ではなく、実際にはもっと複雑だと考えた方が良いでしょう。
<日本人の生活は第二次世界大戦終了(1945年)後、一変しましたが、それにともない食生活にも大きな変化が表れました。昭和25年頃とくらべ、平成に入ってから肉、卵、牛乳の摂取量は増加し、逆に米の摂取量は約半分、イモ類の摂取量にいたっては約10分の1に減少したのです。
その結果、日本型の脳卒中である脳出血は激減し、日本型の胃ガン、子宮頸ガンが減少、欧米型のガンである肺ガン、大腸ガン、乳ガン、食道ガン、白血病などが激増してきたのです。
戦前はほとんど日本にはなかった心筋梗塞、糖尿病、痛風、脂肪肝などの生活習慣病をはじめ、アレルギー、膠原病(こうげんびょう)などの免疫の異常によるものとされる疾病も著増しています>
総合南東北病院では上記の後「つまり、食生活の欧米化により、病気も欧米化してきたといえるわけです」と書いています。たぶん多くの人はここだけ見て、「欧米食が悪い、日本食がいい」と思ってしまうのでしょう。しかし、前述の通り、欧米化によって減った病気もあるというのが事実です。
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