ゴキブリをゾンビ化し寄生するエメラルドゴキブリバチというハチがいます。ゴキブリ嫌いの人が多いので、日本で是非導入を!と考える人も多いかもしれません。ただ、過去にこのハチを導入した地域では失敗しています。
一方で、エメラルドゴキブリバチの毒に関しては研究が進んでおり、これ自体は人間の役に立つ可能性があるようでした。パーキンソン病という意外な病気を解決する手助けになるかもしれないそうです。(2018/02/19)
●ゴキブリをゾンビ化し寄生するエメラルドゴキブリバチ
2018/02/19:覚えていなかったんですが、エメラルドゴキブリバチをブログ内検索すると、
ゴキブリ豆知識100連発4 雄と交尾せずに雌だけで子孫を残すゴキブリがいる、などが出てきました。当時の
エメラルドゴキブリバチ - Wikipediaから引用されています。少し整理すると、以下のような内容です。
・エメラルドゴキブリバチは、セナガアナバチ科に属する単生のハチの一種。体表は金属光沢を持った青緑色である。
<寄生の手順>
(1)エメラルドゴキブリバチの雌はある種のゴキブリを2回刺し、毒を送り込む。1回目の刺撃では胸部神経節に毒を注入し、前肢を穏やかかつ可逆的に麻痺させる。これは、より正確な照準が必要となる2回目の刺撃への準備であり、2回目の刺撃は脳内の逃避反射を司る部位へ行われる。
(2)刺されたゴキブリは30分ほど身繕いの動作を行い、続いて正常な逃避反射を失って遅鈍な状態になる。
(3)ハチはゴキブリの触角を2本とも半分だけ噛み切る。ハチが自分の体液を補充するため、もしくはゴキブリに注入した毒の量を調節するためであると考えられている。毒が多すぎるとゴキブリが死んでしまい、また少なすぎても幼虫が成長する前に逃げられてしまうからである。
(4)エメラルドゴキブリバチはゴキブリを運搬するには体が小さいので、ゴキブリの触覚を引っ張って誘導するように連れて行く。
(5)巣穴に着くと、ハチはゴキブリの腹部に長径 2mm ほどの卵を産み付ける。
(6)その後ハチは巣穴から出てその入り口を小石で塞ぎ、ゴキブリが他の捕食者に狙われないようにする。
(7)逃避反射が機能しないため、ハチの卵が孵るまでのおよそ3日間、ゴキブリは巣穴の中で何もせずに過ごす。
(8)卵が孵化すると、幼虫はゴキブリの腹部を食い破って体内に侵入し、これを食べながら4-5日の間捕食寄生生活を送る。
(9)8日間、幼虫はゴキブリが死なない程度に内臓を食べ続け、そのままゴキブリの体内で蛹化する。
(10)変態を遂ると、ゴキブリの体から出、成虫としての生活を送る。
●ゴキブリの天敵導入を!エメラルドゴキブリバチを利用した結果…
いわばゴキブリの天敵ですので、日本に導入してほしいと考える人がいるでしょう。ハワイでは1941年というだいぶ昔ですけど、実際に生物的防除を目的として導入したことがあったようです。
ところが、これが失敗。なぜか?と言うと、縄張り行動の傾向や狩猟量が小さいといった問題から成功はしなかったんだそうな。ゴキブリをガンガン減らしてくれるわけではなかったのです。
また、こうしたもともといない外来種の導入は、予想外の問題を引き起こすということがときどき起きます。私は基本的に反対です。
●エメラルドゴキブリバチの毒が人間に役に立つ?
このエメラルドゴキブリバチですが、ゴキブリ殲滅ではない思わぬところで人間の役に立つかもしれません。パーキンソン病の治療です。
米カリフォルニア大学リバーサイド校の昆虫学と神経科学の教授であるマイケル・アダムスさんらは、ゴキブリをゾンビ化させる寄生バチの毒を特定することに成功しました。この論文は、1月19日付けの科学誌「Biochemistry」誌オンライン版に発表されました。
エメラルドゴキブリバチから毒液を採取して成分を分析したところ、ドーパミンと、これまで知られていなかったタイプのペプチド(短いアミノ酸配列)が含まれていることが明らかになりました。新発見のペプチドは、アンピュレキシン(ampulexin)と名付けられています。
このアンピュレキシンは、ハチがゴキブリを操る上で重要な役割を果たしていると考えられています。そして、将来のパーキンソン病研究にも役立つ可能性があるといいます。
なぜパーキンソン病と関係するでしょう? パーキンソン病は脳細胞が徐々に死んでゆく神経変性疾患です。ドーパミンという神経伝達物質を作る細胞が変性し、ドーパミンが不足してさまざまな症状が生じることがわかっています。そして、パーキンソン病の患者に見られるように、アンピュレキシンがゴキブリのドーパミンの生産を妨げている可能性があるのではないか?というのが、研究に役に立つと考えられている理由でした。
(
ゴキブリをゾンビ化する寄生バチの毒を特定 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト 2018.02.14より)
●ゴキブリをコントロールしている期間はごく短期間だけ
なお、記事では、ハチがゴキブリの体内に卵を産み付けなければ、ゴキブリは1週間ほどで回復することも紹介していました。ゴキブリのゾンビ化状態は、ハチの幼虫が孵化するのに必要な時間だけであるようです。
先のWikipediaでは、毒によって餌を麻痺させて幼体の生き餌として利用する動物は数多くあるが、エメラルドゴキブリバチはゴキブリを行動可能な状態に保ち、その行動を制限して利用する点で独特だとしていました。
以前やった
奇妙な寄生生物 アリを操り首を切るタイコバエ・魚の眼球に寄生して操る菌などで出てきた魚の眼球に潜む寄生虫の場合も、行動可能な状態でコントロールします。
この寄生虫の場合、寄生虫が幼虫のときは、宿主の魚が捕食者に食べられないよう安全な行動を促すという親切なことをしていました。一方で、成虫になると、あえて鳥に狙われるような危険な行動を行わせるという正反対の制御を行っていました。
こういう寄生生物の話は不思議でおもしろいですね。
【本文中でリンクした投稿】
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