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パレートの法則・働きアリ(2-6-2)の法則による組織論の嘘 人間はアリと違う、長谷川英祐准教授も言及


 パレートの法則・働きアリの法則(2-6-2の法則)が悪いものってことじゃないのですけど、間違った解釈で組織論に応用している人がいます。できない人をリストラしたら、残った人が同じ割合でできない人になるから、リストラは意味ないってのものです。

 でも、冷静に考えたら、そんなことはあり得ないとわかります。実を言うと、働きアリの法則を見つけた北海道大学の長谷川英祐准教授も、アリと人間は違うことに言及していました。どうもこれが無視されているようです。(2018/03/01)


●パレートの法則はそもそも法則ではない

2018/03/01:パレートの法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したもの。ただし、パレートの法則の多くは、法則と言うよりもいわゆる経験則の類であり、絶対にそうなるというものでもありません。

 自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在します。当たり前ですよね。なので、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多いです。これも当たり前です。このようなごく当たり前の現象をパレートの法則の名を借りて補強している場合が少なくない、とパレートの法則 - Wikipediaでは書いていました。

 ただ、ウィキペディアでも、以下の部分は良くない書き方。これについては、後で補足します。

"組織全体の2割程の要人が大部分の利益をもたらしており、そしてその2割の要人が間引かれると、残り8割の中の2割がまた大部分の利益をもたらすようになるというものである"

 とりあえず、ウィキペディアでは、パレートの法則の具体例として、以下のようなものを挙げていたので紹介しておきます。

<パレートの法則の例>
・ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。
・商品の売上の8割は、全商品銘柄のうちの2割で生み出している。→ロングテール
・売上の8割は、全従業員のうちの2割で生み出している。
・仕事の成果の8割は、費やした時間全体のうちの2割の時間で生み出している。
・故障の8割は、全部品のうち2割に原因がある。
・所得税の8割は、課税対象者の2割が担っている。
・プログラムの処理にかかる時間の80%はコード全体の20%の部分が占める。
・全体の20%が優れた設計ならば実用上80%の状況で優れた能力を発揮する。


●働きアリ(2-6-2)の法則の例

 パレートの法則のウィキペディアでは、パレートの法則は、働きアリの法則と同じ意味合いで使用されることが多いとしていました。、

 働きアリの法則 - Wikipediaによると、働きアリの法則は、パレートの法則の亜種。2-6-2の法則、80:20の法則ともいうそうです。ネットで見ていると、同じような感じで上位中位下位の法則といった言葉も見られました。

 こちらのウィキペディアに載っていたものはアリに関するものだけでしたので、アリに関して言えばかなり高い確率で見られるものなんだと思います。ただ、パレートの法則と同じノリで、そのままこれらを人間に当てはめてしまうことが多いようです。

<働きアリの法則>
・働きアリのうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくる。
・働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割のアリはサボっている。
・よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になる。
・よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになり、全体としてはまた2:6:2の分担になる。
・よく働いているアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に分かれる。
・サボっているアリだけを集めると、一部が働きだし、やはり2:6:2に分かれる。


●2−6−2の法則はリストラ禁止の法則?

 さて、問題はこれらの法則に関する間違った解釈です。まず、以下のような話だけだとそういうこともあるだろうということで、まだそう問題ではありません。

「企業の下位の2割がいなくなった場合に、組織を見るとに同じく3つの割合に分かれ、生産性が低い階層が見られる」

 本当に問題となるのは、以下のように言い切ってしまうことです。

「経営者は企業の下位の2割をリストラなりで切ってしまえば生産性が上がると考える。上位と中位だけが残るから計算上はうまく行くように思う。あるいは優秀な上位2割だけでチームを作ってしまえば、最強になると考える。
 しかし実際には、残ったグループの中で2−6−2の法則が働いてしまうので、ただ上位2割だけを残したり下位2割をカットすれば良いという訳ではない」


●パレートの法則・働きアリの法則による組織論の嘘

 ウィキペディアでは、先程も引用したように、以下のように書いていました。

"組織全体の2割程の要人が大部分の利益をもたらしており、そしてその2割の要人が間引かれると、残り8割の中の2割がまた大部分の利益をもたらすようになるというものである"

 ただ、リストラする前であっても、2割の要人たちの仕事ぶりにはばらつきがあったはずです。彼らが全員同じようなパフォーマンスだったということはあり得ないでしょう。また、当然残り8割の人もばらつきがあり、全員が同じようなパフォーマンスだったとは考えづらいです。

 なので、この2割の要人だけ、あるいは8割の人だけで見た場合に、大体8:2の比率になっていることが多いというのが、パレートの法則の言いたいことでしょう。もともとばらついていたわけであり、リストラによって均等だったのが突然ばらつき始めたのではないのです。

 ましてやリストラによって、突然めちゃくちゃ優秀になったり、めちゃくちゃダメ社員になったりするわけがありません。かなりトンデモな解釈です。


●トンデモ解釈なら2割の顧客に的を絞ったサービスも間違いに

 ウィキペディアにおいても、以下の例ではそのような妙な想定になっていませんでした。

"ビジネスにおいて、売上の8割は全顧客の2割が生み出している。よって売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である"

 これも皆さんやってるトンデモ解釈でやると、2割の上客に的を絞ったサービスをやると、突然上客のうち8割の人が買わなくなるのでやってはいけない、となります。そんなわけないですよね?


●ダメ社員が急に優秀な社員になるのか?

 そもそも2割の優秀な社員が急にダメ社員になったり、2割のダメ社員が急に優秀な社員になったりということが起きると、本気で信じているんですかね? 私はこの法則の誤解釈を見るときに、これがいつも不思議でした。多少サボったり、多少頑張ったりすることはあるでしょうが、人間はそこまで急激には変わりませんよ。

 さらに言うと、そもそも企業によって業績が違いますよね。例えば、同じ社員100人の会社でも稼いでいる企業とそうではない企業があります。例えば、優秀な社員100人と、ダメ社員100人で 同じ結果になると本当に思いますか? 本当にそう思うなら、入社試験なんてしないで適当に採用すればいいんです。誰もそんなことはしていないでしょう?

 これは要するに人間の場合、個人差が大きいという当たり前の話。スポーツで例えた方が、さらにわかりやすいでしょうか? 例えば、サッカーチームでレギュラーの日本代表選手が不調だからと言って、そこらへんでつかまえてきた運動音痴の一般人を試合に出した方がマシということはあり得ません。もとの能力が全然違うのです。


●人間はアリと違う、長谷川英祐准教授も言及

 働きアリの法則は、北海道大学の長谷川英祐准教授が見つけたもの。そして、実を言うと、長谷川英祐准教授も「人間はアリと違う」というごくごく当たり前のことを指摘していました。

 働きアリが特殊なのは、サボっているアリもそうではないアリも「能力に差はない」ということ。やっていないだけで、「やれば同じように仕事はできる」のだそうです。普段サボっていたアリの仕事のクオリティーが低いということはなく、どっちがやっても同じように仕事はこなすんだそうな。

 そして、人間ではそもそもこの部分が成り立ちません。なので、これを無視した「リストラしても無意味」みたいな話はできないのです。


●メンバーを入れ替えできるかどうかもアリ社会と企業では違う

 また、長谷川英祐准教授は、「アリと人間の社会のいちばん大きな違いは、人の入れ替えができるかどうか」として、以下のように言っていました。

"アリの場合は、入れ替えができません。新しいメンバーを入れるには、卵を産んでそれを何カ月かかけて育てなくてはならない。すると今いるメンバーだけで、一番うまくやるにはどうしたらいいかというと、一見ムダなように見える「働かないアリ」を、いつも置いておくようなシステムを採用することが、生き延びるには必要だった"
(関連:働かない「働きアリ」 必ず1割の働きアリがサボる習性)

 逆に言うと、人間の組織はいくらでも入れ替え可能なんですね。人間社会全体としては、働かない人を助ける必要があります。つまり、社会保障のようなものが必要です。ただ、個々の組織としてはその必要はなく、ダメ社員をリストラして、もっと優秀な社員と入れ替えるということが可能なのです。

 パレートの法則・働きアリ(2-6-2)の法則をビジネスなどに活かせる可能性はあり、長谷川英祐准教授もそれを考えているようでしたけど、上記のような人間とアリの重要な違いを無視して荒唐無稽な話をしちゃうのはダメダメです。


●成果主義やリストラによるパフォーマンス低下もある

 あと、最後に混乱させるようなことを書いちゃうのですけど、成果主義やリストラによってパフォーマンスが低下するケースは確認されています。なので、リストラ最高!ってことでもないです。
(関連:大失敗の成果主義 相対的な順位を知ると営業成績低下の研究結果など)

 ただ、ギスギスしつつもめちゃくちゃ稼いでいる成果主義企業が実際あるので、「個人の能力差が大きすぎるために、パフォーマンス低下分以上のメリットがある」といった感じなのだと思われます。

 途中で書いたように、ダメ社員の全力よりも優秀な社員の低パフォーマンスの方がずっと良いというのが現実なんでしょうね。残酷な話なんですけど…。


【本文中でリンクした投稿】
  ■働かない「働きアリ」 必ず1割の働きアリがサボる習性
  ■大失敗の成果主義 相対的な順位を知ると営業成績低下の研究結果

【関連投稿】
  ■成功報酬・インセンティブより未達成ペナルティ・罰則が効果的…は本当? たとえ有効でも違法行為の可能性
  ■インセンティブはピザと褒め言葉が効果的 現金報酬はむしろ逆効果の可能性
  ■成果主義と罰則がうまく行かない理由 行動経済学の実験の意外な結果
  ■意外に日本人には成果主義が合っているかもしれない理由 年功序列の不満
  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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