2011/8/7:
●理系教科だけじゃなく、文系教科も科学?広義の科学なら多数該当
●「広義の科学」と「狭義の科学」だけじゃない、多数の意味がある
●何を「科学」と呼ぶか?は実はとてつもなく難しい問題だった!
●反証可能性があるものが科学という理解で概ね間違いないが…
●最も科学的な学説は既に否定された学説?科学は絶対的ではない
●科学じゃないから宗教は駄目?実は科学者よりも科学信仰な人たち
●科学は単なる知識で良い・悪いじゃない、本当に悪いのは誰なのか?
●理系教科だけじゃなく、文系教科も科学?広義の科学なら多数該当
2011/8/7:なんかうまいタイトルが思いつかなくてこの投稿は、「理系教科だけじゃなく、文系教科も科学」というタイトルにしていました。「何を言っているの?」と思われるタイトルだと思います。
まず、理系教科を科学と呼ぶのは、皆さん特に異存はないでしょう。ただ、この「科学」というのは、いろいろな定義がある…という問題があります。
…と偉そうに言ってみましたが、私も実は学校で学んでいる間は知らなくて、「宗教は科学だ」とおっしゃる方に「科学とはこういうものですよ」と説明するために調べたら、意外に科学の意味が広くて驚いたというものでした。でも、さすがに宗教は科学じゃありませんよ。宗教学なら広義の科学に入りますが…。
●「広義の科学」と「狭義の科学」だけじゃない、多数の意味がある
で、そのとき調べた感じで、「科学」には「広義の科学」と「狭義の科学」があるんですよと書こうと思って、一応
Wikipediaを覗いてみると、2つどころではなくいっぱい出てきてしまいました。
* (広義)体系化された知識や経験の総称。
* (広義)自然科学、人文科学、社会科学の総称。
* 自然についての体系的知識。
* 自然科学。
* (狭義)科学的方法に基づく学術的な知識、学問。
他にも以下の意味で用いられることも多々ある。
* 近代精密科学
* ドイツ語のWissenschaftの訳語(英語圏のscienceとも異なる用法)
* 英語圏のscienceの訳語(英語圏の意味であることを暗示するために「サイエンス」と表記することもある)
私の意図していた「狭義の科学」というのは上から4つ目の「自然科学」ですが、これとその前後の「自然についての体系的知識」「科学的方法に基づく学術的な知識、学問」あたりが、おそらく普段使われている「科学」という言葉と近いものだと思います。
一方、私の考えていた「広義の科学」というのは上から2つ目で、「自然科学、人文科学、社会科学の総称」です。そして、このうちの「人文科学、社会科学」が、いわゆる世間一般での文系教科にあたると思います。
●何を「科学」と呼ぶか?は実はとてつもなく難しい問題だった!
これだけいろいろ種類があるのでわかる通り、科学を定義することは難しいことみたいですね。Wikipediaでも、<科学の範囲の変化。科学を語ることの困難>として、次の様に書かれています。
<「科学」なるものが何であるかについて論ずるのは、歴史的なコンテクストに依存していて、容易なことではない。一言で言えば、歴史とともに「科学」の意味は変遷してきている。 また、どのような知識内容が「科学的」であるか(あったか)を定めるそれなりの基準を設定しようと努力することはそれなり意味はあるが、厳密な境界設定は実際上はほとんど不可能である、ともされる。 ただし、だからといって「科学」とは何であるか議論したり追究することが無意味というわけではない。人々が、ある種の知識を「scientia」「science」あるいは「科学」と呼び、それに一定の権威を認めて、その知識の拡大と深化に努力してきた事実は残っている>
●反証可能性があるものが科学という理解で概ね間違いないが…
私の当時のメモでは、「本質は観察と分類。古くは実証主義であったが、近年は反証主義」とありました。しかし、困ったことに、この反証主義も完璧ではありません。ただ、実証主義や反証主義の考え方は、ニセ科学を否定する際には便利です。宗教もそうですけど、ニセ科学は実証する気やより正しい見解があったときに認める気など始めからありません。
引用が長くなるので今後また見直したいところですけど、この問題に関連する「科学と非科学の境界設定」の項目では、以下のように書かれていました。
何が科学で何が科学でないのか、数世紀におよぶ議論は混沌としていたが、20世紀前半の科学哲学者カール・ポパーが反証可能性の概念を提示し、それを条件とすることで理論が科学(彼が考える狭義の科学)に属するかそうでないかを線引きできることを示してみせた。混沌とした議論に悩まされ続けていた科学者らの中には反証可能性の概念や反証主義をひとつの解決策として歓迎する人が多かった。現在でも、これを科学と擬似科学とを区分する基準として採用する人は多い。
(ただし、ポパー流の視点に基づけば、「光の速度は不変である」という仮説をおくことは、観察によって反証することが可能なので、科学たりうる。一方、ジークムント・フロイトの精神分析学やカール・マルクスのマルクス経済学は、観察によって反証するすべを持たないので、これら科学とは呼べないことになる。)
こうしたポパーの科学観に対しては1960年代から批判が加えられるようになった。その代表は科学史家トーマス・クーンのパラダイム論である。パラダイム論によれば、観察は、データを受動的に知覚するだけの行為ではなく、パラダイムすなわち特定の見方・考え方に基づいて事象を能動的に意味付ける行為である。従って、パラダイムそのものは個別の観察によって反証されるのではなく、別のパラダイムの登場によって「パラダイムシフト」の形で覆される。
また、科学に属する諸学問は科学的であるが、科学そのものは科学的ではなく一種の思想であるとする意見もある。
なお、論理実証主義をベースにし、「検証できないものは科学ではない」と考える科学者も未だに少なくないが、これには論理実証主義それ自体の検証が非常に困難であることをはじめ、数多くの理論的困難に出会い頓挫するため、これを境界の根拠にするのは難しい。
●最も科学的な学説は既に否定された学説?科学は絶対的ではない
あと、検索しても出てこなかったので間違っている気がして不安なのですが、「最も科学的な学説は既に否定された学説である」みたいな言葉が当時すごく気に入っていました。
上記の「反証可能性」や「別のパラダイムの登場によって『パラダイムシフト』の形で覆される」というのを見てわかるように、科学とは絶対ではなく、もっと確かな説が出てくれば塗り替えられるものです。ここらへん科学を仕事にする人も含めて勘違いされている気がしますが、科学の学説は絶対的なものではないのです。
この点からして、絶対に自説を曲げない疑似科学や、自由に信仰できる宗教は科学でないと言えます。
●科学じゃないから宗教は駄目?実は科学者よりも科学信仰な人たち
ただし、これは科学じゃないから駄目って言っているんじゃないですよ。ニセ科学はいろいろと問題があってさすがに認められませんし、宗教も悪質なところが多く問題含みではあるのですけど、宗教が科学ではないから良くない…といった主張は一応しません。
疑似科学は科学を装うことで騙そうとしているわけですから基本的に困りものですが、宗教に関してはとりあえず別。科学的なものだけが価値があり、科学的でない宗教が駄目というわけではないんですね。本来、これらは比較されるようなものではないですし、両立も可能なはずです。
冒頭で紹介した「宗教は科学だ」と言う人はおそらく「科学であれば良いことだ」という気持ちが込められていて、科学じゃないものにだって胸を張って打ち込んで良いのです。というか、「~は科学だ」という人ほど、科学万能主義、科学信者になっている気がしちゃいますね。
●科学は単なる知識で良い・悪いじゃない、本当に悪いのは誰なのか?
科学は単なる知識に過ぎず、それが偉いとか良いとかではないですし、逆に科学のせいで世の中が悪くなったと言ってる人もいらっしゃいますが、それもまた同様に違います。
キリスト教では、アダムとイブが神の言葉に従わず、知恵の実を食べたことで罪を背負ったとしています。ひょっとしたら、この逸話から知恵を罪だと思っている方も多いのかもしれませんが、「2人が楽園を追放されたのは、木の実を食べたからではなく、主なる神の言葉に従わなかったから」です。
また、ユダヤ教では、「エデンの園でのアダムとイヴはロボットのようなもので、彼らは木の実を食べ、追放されることで初めて自由意志を行使した人間になった」と考えています。「知識」や「科学」との関係で言うならば、こちらの解釈の方がすっきりします。(以上、
原罪 Wikipediaより)
もし本当に世の中が悪くなったのであれば、それは科学のせいなんかではなく、人間のせいでしょう。
本当は他に文系理系の話や、具体的な自然科学・人文科学などの分類をやろうと思ったんですが、話が長くなってしまいました。やや蛇足的になりますが、そちらは
理系が科学で文系は非科学…ではない 文系・理系の分類の例の方で書きます。
【本文中でリンクした投稿】
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理系が科学で文系は非科学…ではない 文系・理系の分類の例【関連投稿】
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Appendix
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