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つづら折りの語源と「つづら」と読む字 ~九十九に関する話2~


 九十九に関する話でつづら折りだけで長くなりましたので、別に分けました。(前回は、アッラーフの99の美名など ~九十九に関する話1~)


●つづらおれ・つづらおりは、漢字で書くと「九十九折」。

 つづら折りとは、勾配を上り下りする道が、ジグザグ状に急カーブの折り返しで連続している様子。

 髪留めの一種であるヘアピンに形が似ていることから、英語に由来するヘアピンカーブ(Hairpin curve)、ヘアピンコーナー(Hairpin corner)、幾重にも曲がりくねった動物の腸に似ていることから、漢語的に羊腸小径(ようちょうしょうけい)とも。

 語源は諸説あり、

* 葛籠の元々の原料であるツヅラフジのつるが複雑に曲がりくねっていることにたとえたもの
* 熊野古道の一つであるツヅラト峠越えの古道に折り返しのカーブが多かったことから
* 鼓の皮を止める糸が鋭角な切り返しで右左となっている様子に似ていることから(これだけだと説明不足ですが、「つづみ」の転で「つづら」ということでしょうか?)

などです。

 ちなみにツヅラフジは「葛藤」と書きますが、ツヅラト峠の表記は不明。ツヅラトとはつづら折れのことと書いているサイトもありますが、それだとお互いに由来としあって無限ループになっている気がします。


●その他の「つづら」と読む字。

 辞書を見ると「九十九折」は「葛折」とも書くようで、他のほとんどの「ツヅラ」がつく語は「葛」の字を用いています。珍しいのは「つづらか 【円らか】」という語で、「目を大きくみはるさま」の意です。

 あと、九尾(つづらお、奈良県吉野郡天川村大字九尾)という地名があり、これは不思議なことに「九十九」じゃないくて、ただの「九」です。

 でも、「つづら」で変換すると様々な字が出ることに気づきました。これだけで一つ書けそうだなと思い、結局アッラーフの99の美名などとは分けました。


 「葛」の字を用いているというものも、中には「葛籠」と二字で「つづら」になっているものがあります。大辞林のつづらそのままですが、以下のとおりです。


つづら 【葛/〈葛籠〉】

(1)ツヅラフジのつるを編んで作った、衣服などを入れる蓋(ふた)付きのかご。のちには竹やひのきの薄片で網代(あじろ)に編み、上に紙を貼って柿渋・漆などを塗ったものも作られるようになった。《葛籠》

(2)ツヅラフジなど、山野に生えるつる性の植物。《葛》
「上野(かみつけの)安蘇山―野を広み/万葉 3434」

(3)襲(かさね)の色目の名。表は青黒色、裏は淡青色。《葛》


 グーグル日本語入力で「つづら」を変換すると出るものを、既出のものを含めて書きだすと、以下のとおりです。

・葛篭
・葛籠(篭の旧字)
・葛
・廿楽
・綴ら
・防己
・九(九尾の他、松阪市に九曲(つづらくま)城というのもがありました)

 また、「つづら」で始まる単語というのを含めると、以下のような漢字も使われていました。

・十九渕
・黒桂
・津々羅山


 妙な漢字が多いですが、「津々羅山」は素直。広島県安芸高田市の山のようです。

 それ以外の癖の多い漢字を見ていきますが、最初は「廿楽」。


・廿楽

 「廿」がまず何と読んでいいのかわかりませんでしたが、数字の「にじゅう」でした。古い文書の日付では、普通に使われていたのを見ていたのですが、久々で全く思い出せませんでした。ちなみに「さんじゅう」だと「丗」と縦線が一本増えます。

 「九十九」でも「九」でもない数字が出てしまいましたが、Wikipediaによると苗字。「埼玉県桶川市に多く、約80件にのぼる。もともと平安時代、京都鞍馬で朝廷に仕えていた雅楽の集団で、20人(廿人)で組織したのが由縁としている」とあります。

 漢字は良いとして、読みの説明ができませんが、雅楽ですので、先の「九十九折」の語源の一説にあったものと同じく、「つづみ」が転じて「つづら」ということでしょうか?

 全国の苗字(名字)11万種で見たところ、読みは「ツヅラ」「ジュウラク」「ニラク」「ツズラ」「ニジュウラク」「ニシラ」とあり、「つづみ」はありませんでしたけど。


・十九渕

 数字繋がりで次は「十九渕」。これは「九」がついているものの、いろんな数字が出てきてわけがわかりません。

 これは地名で「和歌山県 西牟婁(にしむろ)郡白浜町 十九渕(つづらふち)」。由来などは不明。「九尾」などもそうですが、「九十九」から前半の字が抜けたのかなぁと、勝手に想像しています。


・防己

 また何でだよ?と言うものですが、「防己尾城(つづらおじょう)」というものがあり、また「つづらお」です。ただ、鳥取県ですので、奈良県の「つづらお」とは関係なさげです。

 これも由来が見つかりませんので勝手に想像しますが、アオツヅラフジの根茎を乾燥した生薬(しょうやく)を、木防己(もくぼうい)と言うそうです。木防己は防己(ぼうい)の同類であり、防己とツヅラの繋がりは見つけられます。(イー薬草.ドット.コムより)


・黒桂

 最後のこれも地名で、「山梨県 南巨摩(みなみこま)郡早川町 黒桂(つづら)」。

 例によって由来不明で想像しますが、さらにわかりません。元は黒桂で別の読みをしていたところに、「つづら」という別称が混ざっちゃった形でしょうか?

 どうも険しい山があるらしいのでつづら折りな道だとか、もしくは黒桂河内(つづらごうち)川という川があるのでその流路だとか、ここらへんが由来だと勝手に想像してみます。


 で終わりだったのですが、先の苗字のサイトで試しに「ツヅラ」で検索すると出るわ、出るわ。今までにないものだけ、括弧内に他の読み方をつけつつ、ご紹介します。

「ツヅラ」と読む苗字。
・廿(ハツカ、ハタチ)
・都築(ツヅキなど)
・設楽(ヒダラなど、私はシタラで覚えていましたがサイトでは未記載)
・葛貫(クズヌキなど)
・黒葛(クロクズなど)
・九折(単独でツヅラ。クオリ)
・甘楽(アマラク)

「ツヅラ」で始まる苗字。
・甘原(ツヅラハラ)


 いっぱいあるものですね。「甘楽」なんかは「廿楽」の誤字から発展したのではと思われますし、他にも誤読が疑われるものがあります。

 九十九の読み方も、読み間違いや転訛(てんか)という説がありましたが、これを見ていると本当にいくらでも変わっていく感じがします。


 関連
  ■九十九電機の社名の由来がすてき
  ■アッラーフの99の美名など ~九十九に関する話1~
  ■その他の言葉・漢字・名前について書いた記事
  ■八ッ場はなぜ「やんば」と読むの?
  ■「べつかい」か「べっかい」か? 別海の読み
  ■本土方言と琉球方言での東西南北の語源 ~琉球方言でニシは北?~

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