子供を思い通りにコントロールしたい…と思うのは理解できます。ただ、良いことか?と言うとそうではなく、いろいろと問題になるもの。「言うことを聞かない子は悪い子」とされがちではあるものの、それは子供を親の所有物とするような考えで、実際には親とは異なる別のひとりの人間であるため、そのことを考えて対処する必要があります。
2018/12/23:
●科学的根拠なき教育論がはびこるが、基本はビジネスと同じ
●言うことを聞かない子は悪い子か?子供は親の所有物ではない…
●幼稚園の教育方針は、運動会を見れば分かる!なぜ?
●幼稚園と保育園を出た子で意外な差が!その違いとは?
2020/03/19:
●自己肯定感を重視すれば、親が思うような立派な子に育つ?
●科学的根拠なき教育論がはびこるが、基本はビジネスと同じ
2018/12/23:子供の教育に関する記事は、科学的根拠のある研究論文に触れていることはほぼありません。非常に大事であるにも関わらず、エビデンスを軽視というかそもそも無視されており、自己流の育て方がもてはやされています。そんな状況ですから、自称専門家がはびこっているという困った状況かもしれません。
ただ、幸いなことに、教育分野に比べると、研究論文の紹介があるビジネス分野との共通点が多く見られるので、参考にできるものはありそうです。例えば、子育てでも企業においても、叱るより褒めることが多いことがわかっています。さらに褒めるよりも、認めるとかプロセスを評価するとかが良いことも同じ。
早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄准教授も、組織と子ども、この2つを育てるのに共通しているのは「自己肯定感を高めることの重要性」ではないかとしていました。これは私が「認める」と表現したものと同方向のものです。
チャレンジングな事業に立ち向かうには、「自分はやればできる」という自信や、セルフエフィカシー(自己効力感)を備えていることが重要なのは、経営学の研究でも分かっている、と説明されていました。子どものありのままの感情を受け入れて存在を尊重する考えは、そのまま組織論に生かせるともおっしゃっています。
(
「親の言うことを聞く子どもになってほしくない」:日経ビジネスオンラインより)
●言うことを聞かない子は悪い子か?子供は親の所有物ではない…
そういう言い方をされると反発すると思われますが、親は自分たちの子供を所有物か何かと勘違いしているフシがあります。なぜそう言えるか?と言うと、自分とは違う人格と個性を持っているにも関わらず、なんでもかんでも思い通りにコントロールしようとしているため。でも、親の思い通りにならないのは、人間として当然。このため、すべて制御しようというのは非科学的な考えだと言えます。
入山章栄准教授は、「親の言うことを聞く子どもにだけはなってほしくない」、「自分の価値観で自分のことを決めて欲しい」とすら言っていました。元記事のタイトルになっていたのは、この部分ですね。これらは前述の「認める」と密接に関連する話でもあります。子供を人間として認めてあげましょう。
ただ、相手を思い通りにコントロールしたいという欲求が人間にはあるというのも、紛れもない事実でしょう。私もわかります。入山章栄准教授も、息子と自分をつい重ねて、「昔のオレみたいに本を読んでないのはどうしてだ」といらだったりするそうです。
じゃあ、そのままで良いか?と言うと、そうではありません。例えば、人間はミスをする生物で交通事故で人を死なせることなどがありますが、それを根拠に「交通事故を起こしても良い」とは言いませんよね。人間の悪い性質を理解して、それを軽減する工夫が必要です。
子供のコントロール問題は交通事故削減以上に有効な対策が思いつきませんけど、まずは、「子供をコントロールしようとしてしまいがち」と知り、抑えることを心がけるだけでも、改善への第一歩となるでしょう。
●幼稚園の教育方針は、運動会を見れば分かる!なぜ?
後編の
「育児とは、答えが見えない永遠の学習」:日経ビジネスオンラインでは、奥さんによる「幼稚園の教育方針は、運動会を見れば分かる」説が出てきていました。実はこれがまた「自己肯定感」と関係ある話なんです。
まず、運動会は幼稚園によって驚くほど違いがあるとのこと。一糸乱れぬ統制で完璧に叩き込まれた組体操を運動会で披露するところがある一方、びっくりするほど“激ユル”な幼稚園も。運動会の出し物は、ぎちぎちに練習しなくてもできそうな感じで、大きな布の端を子どもたちが持って「せーの」で上げ下げするだけ、というところもあるそうです。
さらに、子どもたちは子どもらしく列を乱し、それぞれが伸びやかで、リラックス。運動会を終えて教室に戻るとき、先生が一人ひとりを抱きしめていたのも印象的だったとのこと。
「これは価値観の違いなので、決してそういうところが悪いわけではない」など、規律型が悪いわけではないと入山章栄准教授は何度も強調していました。しかし、前述の通り、経営学的には、人が成長するには自己肯定感を高めることが重要だとわかっています。
あと、ここまで書いて、
高IQの子供だけが通う保育園に学ぶ良い幼児教育と悪い幼児教育という話をやっていたのも思い出しました。やはり子供を認めてあげている…という保育園の話です。
●幼稚園と保育園を出た子で意外な差が!その違いとは?
また、「幼稚園を出た子と保育園を出た子で、将来の活躍度を総合的に追跡すると、実は保育園出身者の方が活躍しているという結果が出た」と聞いたという変わった話もありました。普通は幼稚園の方が良いイメージでしょうから意外ですね。ただ、本当かな?と思うもの。入山章栄准教授も「研究の真偽は分からない」としています。
その真偽はさておき、幼稚園と保育園で大きく違う点としては、「多様性」「ダイバーシティ」ではないかとしていました。一般的な保育園は、“カオス”。共働きで比較的裕福な家庭の子もいれば、厳しい家庭の子や、シングルペアレントの子もいたりして、バックグラウンドが実に多様。
さらに、厚労省管轄の保育園は「教育の場ではない」ために、基本的に先生たちに統一された教育方針が幼稚園よりはなくて、1日のカリキュラムもゆるくて自由時間が多いとのこと。これは私立の学校、公立の学校でも言えるのではないか、といった話もされていました。
●自己肯定感を重視すれば、親が思うような立派な子に育つ?
2020/03/19:そういえば、誤解されそうだなと思うのが、自己肯定感を重視したとしても、親が思うような立派な子に必ず育つわけではないということ。そもそも子供は親の思い通りにならないが結論なのですから、将来的にも思い通りになる…ということにはなりません。
嫌な話になってしまうものの、知能や運動などの能力的なところは、偶然の要素もある遺伝の影響が大きいです。もちろん性格にも遺伝の影響があり、子育てでは改善が難しい部分があります。また、性格は友達関係といった、親や学校の教育以外の要素が大きいこともわかっています。繰り返すように、思い通りにしようというのは無理なのです。
あと、自己肯定感を重視した方が良いというのは、確率的に良いということ。経営的に悪い手法でもうまく行ってしまうこともあり、逆に良い手法でもうまく行かないことがあります。飽くまで確率が違っていて比較したときに差が出る、という話。個別事例で見ると、例外はいくらでもあります。ここらへんの誤解は、教育に限らず物事全般に見られますので、注意が必要でしょう。
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