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士農工商という身分制度はなかった 幕府は被差別部落を作ってないにまとめ中。
●江戸時代に身分制度があった!でも士農工商は不適切…矛盾する?
ところで、身分制度とはどういう意味でしょうか。
身分制度 Wikipediaによれば、「生まれつき属すべき職業的・社会的・文化的な身分が固定されている制度のこと」とあります。
Wikipediaの士農工商の項目には、戦国時代後期から太閤検地や刀狩によって、「それまで比較的流動性があった武士と百姓が分離され、その身分が固定化されるようになった」とあります。また、これに続いて「こうした兵農分離政策は江戸時代に強化され身分の移動は少なくなった」ともあり、江戸時代には身分制度があったとは言えるでしょう。
士農工商が身分制度であり、そうでないという説は許さないという方は混乱するかもしれませんが、これは別に矛盾していません。身分制度は士農工商である必要がなく、他の形でも良いですし、特段名前がついていなくても良いのです。
ただ、士・農・工・商という順列によって江戸時代の身分制度を表すのはいささか無理があることのように思われるし、幕府側でも士農工商を積極的にそのように使っていたわけではない…というだけの話です。
なお、
鎌倉幕府成立は1192年じゃなくて1185年で紹介したように、鎌倉幕府という言葉は後世の言葉です。それと同じように、士農工商で江戸時代の身分制度を示す必然性があれば、この用語を使うのは良いと思います。士・農・工・商の場合は、単純に全然適切ではないことが問題なんですね。
●江戸時代には社会階級があったのは確実…ただし、明治時代にも存在
それから、社会階級という言葉も存在していますので、これも
Wikipediaで見てみましょう。
こちらは「身分・職業・学歴・財産などにより、社会構成員が集団ごとに互いに上下関係を持った概念に分類されときの、各社会集団のことをさす」といった説明でした。江戸時代はもちろん社会階級がありましたし、他の時代でも存在していました。例えば、明治時代には次のように書いています。
明治時代(より正確には大日本帝国憲法成立)以降、それまでの封建的身分社会における階級は天皇の一族である皇族、公家大名などを中心とした華族、武士階級を中心とした士族、農民や町人を中心とした平民に分けられた。これらの分類の呼び名を族称という。四つの族称に分類された各階級の人々は明治新政府の発した四民平等の方針の下でそれぞれの階級間の通婚を許され、基本的には天皇の前に平等とされた。
これは近代国家として世界に通用する日本を建設する上で不合理な身分制の残る国というイメージを払拭する狙いがあり、また天皇を中心とした富国強兵を押し進める上では階級間の差別等を是正する効果があった一方、封建的要素も色濃く残した。
特に華族については、それまでの支配階級として既得権を奪うことで世情が混乱するおそれが考慮されたり、天皇を中心とした国家建設に向けて皇室の藩屏を担う存在が必要とされたため、それまでの支配階級を特別な身分として遇したものである。華族は、貴族院議員への選出や官僚への登用、学習院への修学などで、様々な特権を享受した。(中略)
家柄という江戸時代以来の価値観は厳然と残り、明治以降の社会構造は身分社会を厳格なものから多少緩やかなものとしたに過ぎないという向きもある。
●士農工商穢多非人がなくても一種の身分制度があるし差別も存在する
最初は平等だよといった感じの説明で始まっていますが、途中からはもう一種の身分制度と言っても良いような感じ。明治時代行こう平等になった…というのは、事実を無視した空想ではないかと思われます。
まず、華族を特別な身分として遇し、特権を与えた時点で、平等は崩れて、公的・法的に認められた身分ができあがっています。それから、そもそも身分がないのであれば、皇族・華族・士族・平民とわざわざ別々に定義する必要がありません。また、華族制度という身分制度的な言葉も存在しているようです。
ついでに身分、身分による格差・差別ということになると、もうこれはいつの時代にもあると言えるでしょう。身分についても
Wikipediaで見ると、「身分(みぶん)とは、人の社会的状態の中で外形的なもののことである。身分の例としては、地位・職業などがある」といった説明になっています。
そうなると、職業あるところに身分あり…となりますから、やはり身分からは逃れることができないようです。そして、職業差別という言葉があるように、残念ながら現在でも職業と差別は無縁ではいられません。
●現代の日本でも身分が法的に存在する?日本国憲法などで規定
Wikipediaでは、現在の日本の身分について、「法的な身分としては、皇族の身分、公務員の身分、法人・結社の役員、従業員等の身分がある」とした上で、以下のように書いています。現在でも法的に決められた身分があるんですね。
「日本においては裁判官が憲法上の身分保障を受け(日本国憲法第78条、第79条、第80条)、職務上の独立性が求められる公務員に関しては法律で強い身分保障の制度を定めているほか、一般職の公務員についても不利益処分の基準・審査手続を法定する(例: 国家公務員法第74条~第75条・第89条以下)など身分保障が図られている」
ただし、身分制度とは先に書いたように「生まれつき属すべき職業的・社会的・文化的な身分が固定されている制度のこと」。「生まれつき」の時点で多くのものは否定されます。とはいえ、「皇族の身分」は生まれつきですので、現在でも身分制度が残っていると言えてしまいそうでした。
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