2011/10/25:
●インド人と中国人のカレーの匂いトラブル、住民調停センターが仲裁
●ささやかな問題が、シンガポールの移民問題に発展 背景に移民への不安
2021/10/11追記:
●移民国家シンガポールが豹変?「外国人に職を奪われている」と不満 【NEW】
●インド人と中国人のカレーの匂いトラブル、住民調停センターが仲裁
2011/10/25:「カレーに“食われた”大統領選挙の火種 (R25):は、R25らしからぬ丁寧な記事でした。記事によると、もともとはインド人と中国人のカレーの匂いトラブルについて。引っ越してきた当初は両家族とも友好的でした。しかし、インド人家族が作るカレーの匂いにだんだんと耐えられなくなった中国人家族が、政府組織である住民調停センターに仲裁の申し立てを行うことに。日本でもラーメン屋さんのそばに住むのは辛いって話がありますものね。
http://news.infoseek.co.jp/article/r25fushigi_wxr_detail_id2011101700021751r25
調停センターは両者から話を聞き、インド人家族からは「カレーを作るのは中国人家族が不在のときのみ」という同意をもらう一方、中国人家族には少しずつ匂いに慣れる努力をしたうえで「自分たちもカレーを作ってみるように」と進言しました。お互いに歩み寄るようにといった感じです。
「互いの主張を尊重した裁きで一件落着」といった話。この時点ではほのぼのであり、どちらかの家族が激怒したなんてことは書いていませんでした。ところが、この記事を読んだ読者たちが猛反発したというのです。住民調停センターの仲裁に、当事者である両家族以外の人たちが激怒することになったのです。
従来から根づいている中国の食文化を否定したとして、調停センターの判断に異を唱える動きがネットを中心に広がったといいます。これはシンガポール人が中国系が中心のためでしょう。知らない人も多いでしょうけど、シンガポールって7割が中国系の国なんですよ。ただし、もちろん反感の声ばかりではなく、Facebookには「みんなでカレーを作ろう」と呼びかけるイベントページが登場。「口論やけんかをやめ、寛容さをもってシンガポールの多文化生活様式を楽しもう」(ページ主宰者)と、6万人を超える賛同者を集めました。
●ささやかな問題が、シンガポールの移民問題に発展 背景に移民への不安
このようにある種の“民族感情”が刺激された背景に、シンガポール国内で高まる移民政策への不満があると記事では指摘しています。シンガポールの人口は約510万人。そのうちの35%は外国人であり、年々その割合は増加。外国人労働者に就労機会を奪われるというのは研究によると思い込みの場合がほとんどなのですけど、とりあえず、奪われていると考え、シンガポール人の生活が苦しくなる一方で、住宅価格や生活費が上がり続けるとして、不満をもつ人が少なくないといいます。
2011年8月末におこなわれたシンガポールの大統領選挙の争点もこの「移民政策」だったといいます。選挙で当選したのは、与党の支持を受け「シンガポール人を第一に考えて」いるトニー・タン元副首相でした。
ただし、これがシンガポールの総意であるとも考えづらいです。というのも、「人種間の差異を超えた結束」を唱えたタン・チェンボックさんとの得票差はわずか 7269票。中国系シンガポール人の多くも「人種間の差異を超えた結束」を唱えた候補に投票していたと考えられます。ほのぼのとした話で終わらなかった…というのは、こうした移民問題の難しさがもろに現れたためのようです。
●移民国家シンガポールが豹変?「外国人に職を奪われている」と不満
2021/10/11追記:シンガポールで何か…と検索。読みたくなるような記事が出てこなくて苦労しましたが、当初書いていた移民というキーワードを加えて、やっと
新型コロナ: シンガポールの人口、初の2年連続減 移民国家曲がり角: 日本経済新聞(2021年9月28日 18:30)というちょっと気になる記事を見つけ出しました。
<シンガポール政府は28日、2021年6月末時点の人口が545万人と、前年同月末に比べ4.1%減ったと発表した。20年に続く減少で、2年連続の減少は1965年の独立以来初めて。
入国規制の強化やビザ発給の要件引き上げによって、人口の3割弱を占める外国人が10%を超える減少となったのが主因だ。有能な人材を海外から呼び込み経済成長の源泉にしてきた移民国家は曲がり角を迎えている>
新型コロナウイルスの感染拡大の影響があり、一時的なものではないか?と思ったら、やはりこれを第一の理由に挙げていました。ただ、それ以外の理由もあるようです。2番目の理由は、<国民の間では近年、「外国人に職を奪われている」との不満が高まり、政府はシンガポール人でも代替できる職務へのビザ発給を絞っている>とのこと。当初のテーマと予想以上に近い記事でしたわ。
<専門職向けビザの取得に必要な月給額を20年だけで2回引き上げ、条件を厳しくした。取得要件を満たしても申請が却下される例も増えており、「以前は本社からの派遣が認められていた幹部職をシンガポール人の内部昇格に切り替える必要が出ている」(日系金融機関幹部)。
リー・シェンロン首相は8月、「自国出身の社員を優先的に採用する海外企業や、シンガポール人には形式的に機会を与えるだけの企業もある」と指摘した。公平な雇用慣行を定めた指針を法律に格上げし、関係当局の規制権限を強める方針も示した。専門職や中技能の労働者向けのビザの発給要件を今後も厳しくすると明言した>
ただ、行き過ぎた規制への懸念も。ローレンス・ウォン財務相はの国会で「シンガポール人と外国人の雇用は(一方が利益を得たら、もう一方が損をする)ゼロサムの競争ではない」と指摘。これはうちでも指摘したことですね。厳しい規制を課せば人材が香港やニューヨークなどに流出するだけだと危機感も示していたそうです。
【関連投稿】
■
シンガポール成功の理由 エリート主義と高度人材の受け入れ ■
ブータンが世界一幸福な国は誤解 実はむしろ日本より不幸な国だった ■
キルギスの誘拐婚 誘拐された女性の8割が結婚を受け入れる理由 ■
モンゴル人も親日的 日本は留学希望先で2位、経済支援で好印象 ■
ブータンの幸福と日本の経済を並べることの違和感 ■
海外・世界・国際についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|