ミネラルウォーターの話をまとめ。<ペットボトルやミネラルウォーターは環境破壊 欧米では水道水を推奨>、<日本ではむしろ「環境にやさしい」が売りの天然水を発売!>、<日本企業は価値が低いボルヴィックを高値で買って損した?>などをまとめています。
2023/09/04追記:
●湧き水はきれいで安全…のはずが100人規模の集団食中毒 【NEW】
●食品問題評論家「食中毒菌は湧き水・海・川…どこでもいる」 【NEW】
●フランスのダノン、サントリーに「エビアン」「ボルヴィック」売却へ
2011/10/28:先日、
仏ダノン、飲料水事業売却へ=サントリーに打診-売却額、数千億円規模 2011/10/21-19:19 時事通信社というニュースがありました。
<フランス食品大手ダノンが、サントリーホールディングスにミネラルウオーター事業の売却を打診していることが21日、分かった。ダノンの同事業は「エビアン」「ボルヴィック」などの有名ブランドを抱えており、売却額は数千億円規模に上るとみられる>
時事通信社より詳しいものとして、ブルームバーグの
仏ダノン、ウオーター事業のサントリーへの売却で交渉-関係者(2) 2011/10/18)という記事もあります。協議は非公開だとして同関係者が匿名を条件に語ったところによると、ダノンは同部門の売却で年内に合意に達することを目指しているとのこと。
しかし、ミネラルウォーター部門は不調なわけではありません。ダノンのミネラルウオーター事業の昨年の売上高は、継続事業ベースで前年比5.3%増の28億7000万ユーロ(約3032億円)で、売上高全体の約17%を占めていました。ミネラルウオーターの売り上げは先進国では伸び悩んでいるものの、新興諸国では増加傾向にあるためです。
一方、サントリーは国内の人口減少を踏まえ、海外事業を強化している模様。サントリーは09年にダノンが所有する豪州・ニュージーランドの飲料メーカー、フルコアを買収、米国では05年まで冷水器の共同事業会社を運営するなどの提携関係にあったといいます。
●日本企業にはチャンスだが、ダノンにとってはもったいない売却
実はこの売却話は以前にもあったようです。同じくブルームバーグには、
キリンやアサヒに売却打診、「エビアン」事業などを仏ダノン(Update1) 2010/11/10 12:30 JSTという1年ほど前の記事がありました。このときには現在と同じサントリーの名前も上がっていましたが、有力はキリンとなっていました。
日本の市場が独特だということもありますが、日本の製品はなかなか欧米圏で浸透させるのはたいへんそうな印象です。そんな中、向こうのブランドを貰えるというのですから、これはチャンスじゃないかなぁと感じました。
しかし、フランスのダノンはなぜこれをそんなに手放したがっているのだろう?と不思議にも思っていました。
●ペットボトルやミネラルウォーターは環境破壊 欧米では水道水を推奨
この私の疑問への答えは
仏ダノンはなぜ「エビアン」を手放すのか 田中陽 日経新聞 2011/10/26(閲覧に登録が要るかもしれません)に載っていました。
こちらによれば、理由は簡単で「消費者の厳しい視線にさらされているから」というもの。「わざわざ時間とコストをかけて遠くの山から水をくみ、運んでいいものか」という素朴な疑問が欧米の成熟社会から上がっていとされていました。
エビアンの公式サイトによると、エビアンの水源地は、フレンチアルプスの一部、標高850メートルに位置する台地にあるそうです。品質は申し分ないのですが、遠くから巨大な消費地にやってくるというのは事実。山から持ってくること自体が問題視されているんですね。
また、ペットボトルの原料は石油に由来するものが多いというのも問題。地球環境に負荷がかかるペットボトルを問題視する動きがあるそうです。例えば、ニューヨークのレストランではメニューからミネラルウオーターを外したところが登場。
こうした声に自治体も反応。ソルトレークシティーやサンフランシスコなどでは公費で瓶詰水の購入の禁止措置を条例化。ニューヨーク市では水道水を飲むように推奨。イギリスでも一部の公式行事でペットボトルでの提供を控えています。水道水で済むところを市販の水をわざわざ購入するのは、税金の無駄であるだけでなく、環境にも芳しくないというのが背景にあるそうです。
●なぜダノンがエビアンを売るのか?その本当の理由とは?
なるほど。先のブルームバーグにも「先進国では伸び悩んでいる」とありましたね。しかし、同時に「新興諸国では増加傾向にある」とも書いてありましたので、やはり日本企業にとってこれはおいしいぞと思ったら…違う感じなのです。
ダノンが水事業を積極的に展開している地域は新興国にシフトしており、既に同社の水事業に占める新興国の比率は50%を超え、先進国を尻目に2桁成長を続けているそうで。例えば、メキシコでは「Bonafont」が人気で、インドネシアには世界最大の販売量の「Aqua」があり、ブランドは今回手放すエビアンなどとは別なのです。
上下水道のような社会インフラが整備されていない開発途上地域にいる人々にとって地域の実態にあわせた価格設定のミネラルウオーターはまさに命の水になるとのこと。ダノンにとって社会的な課題に取り組み、地域の需要を満たす手ごろな価格の製品を提供し続けることが存在意義になっていると説明されていました。
社会的な意義は別として、重要部は手放さないってことなのかも。やっぱりしっかりしてますね。
●テスコが水ボトルをプラスチック製からアルミ製に一新
2018/08/29:元のニュースでも決まった話ではないと書かれていたのですけど、「エビアン」「ボルヴィック」売却の話は破談になったっぽいです。検索しても、日本企業の買収が決定したという話は見当たりませんでした。
今回紹介したい話はこの売却の続報ではなく、環境破壊関係のもの。
ペットボトルよさようなら。英国テスコ、水の販売もアルミ缶にシフト | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD(8月 26, 2018 )という記事です。
5大世界流通大手のテスコは、プラスチックごみを減らす努力の一環として、自社製品の水ボトルの容器をプラスチック製からアルミ製に一新したとのこと。英国のスーパーマーケット大手4社で初めてだそうです。
私はプラスチックを目の敵にする風潮に疑問を持っているものの、ペットボトルなどのプラスチックごみのリサイクル率は約10数%なのに対し、アルミのリサイクル率は約70数%であり、意味があるものでしょう。アルミのリサイクルには、原料のボーキサイトから新たにアルミの地金を製造するより、97%もエネルギーを節約することができるというメリットがあります。
一方で、こういうのは利便性の問題を考えていないことが多いのですけど、すごいと思ったのがそちらも考慮していること。「CanO Water」と名付けられたこのアルミ缶は、一度開封した缶を再び閉じることができるフタがついており、使用後も水を入れて水筒として利用できるほどだといいます。かなり良い感じです。
●日本ではむしろ「環境にやさしい」が売りの天然水を発売!
2020/04/23:「環境に悪い」とされているミネラルウォーターなのですけど、日本のコカ・コーラが販売する「い・ろ・は・す」は、、「環境にいい」「環境にやさしい」というキーコンセプトでやってきたみたいですね。
環境にやさしいボトル | い・ろ・は・す (I LOHAS) 公式サイトでも以下のような説明がありました。
<い・ろ・は・す天然水 ペットボトルが環境にやさしい理由
ペットボトルを資源として循環利用する “ボトル to ボトル”
使用済みペットボトルをリサイクルし、また新たなペットボトルへ生まれ変わらせることで、資源を最大限活用>
<簡単にしぼれる、軽量ボトル。
「しぼる」なら、たった1回のアクションでボトルを小さくできます。
ボトルをしぼって容器を小さくすれば省スペースにつながり、
地球にも家庭にも、ちょっとやさしい>
ただ、こうした措置は当初の「環境に悪い」への反論にはなりません。当初紹介した批判は、水道水で良いのになぜミネラルウォーター?それ自体が無駄じゃない?という批判だったためです。私自身はこうした批判に賛成するわけではないんですけどね。
●やっぱり時代遅れな飲み物なのか?ボルヴィック販売終了
2020/07/08:やっぱり日本企業はネームバリューの割に儲からないものを高く買わされたのかな?と感じる
「ボルヴィック」販売終了へ 12月末、キリンビバレッジ | 共同通信(2020/7/6 17:11 )というニュースがありました。
キリンビバレッジは、フランス産ミネラルウオーター「ボルヴィック」の販売を12月末の出荷をもって終了すると発表しています。とはいえ、売れなくなったためとはしておらず、輸入先企業との製造委託契約の終了に伴うものと説明。
19年のミネラルウオーター販売でボルヴィックの割合は1割程度で、今後は国産新商品を検討しているということで、単に日本と合わなくなっていた可能性も感じさせました。ボルヴィックは欧州では珍しい軟水で飲みやすさが人気とされており、欧州のミネラルウォーターとしては日本向きに見えたんですけどね。
●日本企業は価値が低いボルヴィックを高値で買って損した?
ところで、あれ?と思ったのが、販売しているのが当初書いていたときに売却とされていたサントリーではなかったこと。キリンビバレッジはフランスのソシエテ・デ・ゾー・ド・ボルヴィック社と契約し、2003年から取り扱っていると記事には説明があり、ブランド買取も行っていません。
読み直してみると、最初の記事は「売却で交渉」というもので、結局、このときにも売却は成立していなかった模様。
ボルヴィック - Wikipediaの年表を見ても、買取は行われなかった感じ。高値買いしなくてよかったですね。
1958年 - ボルヴィック社設立
1986年 - 日本での販売開始
2002年 - ダノンと三菱商事、キリンビバレッジによる合弁会社「キリンMCダノンウォーターズ」を設立
2013年 - 日本国内での事業スキーム変更に伴い、販売・マーケティングをキリンMCダノンウォーターズからキリンビバレッジに移管
2020年7月6日 - キリンビバレッジ株式会社が2020年12月末をもって国内販売出荷を終了すると発表
●湧き水はきれいで安全…のはずが100人規模の集団食中毒
2023/09/04追記:本当は別の投稿に追記したいのですけど、見直しが間に合っていないのでこちらにとりあえず追記しています。
私は小さい頃「湧き水って汚くないの?飲めるの?」と不思議でした。ただ、この子供の頃の幼稚な感覚の方がむしろ真実だったようで、最近の湧き水の名所では「一旦沸騰させてから飲んでください」と明記するところが登場。「念のため」ではあるでしょうが、実際、危険なのだと思われます。
話は変わりますが、以前から私が不満だったのは、水道水がなぜか危険なもののように言われていること。むしろ安全性が高いにもかかわらず、全く逆に危ないもののように扱われています。で、それからすれば、「湧き水や井戸水の方がよほど危険だろう」という話。危険性の理解が全く逆になっています。
で、今回改めてそういう話を思い浮かべたのが、
“絶景流しそうめん”93人食中毒 湧き水で?…大雨被害で「検査せず」[2023/09/01 19:25 テレ朝]というニュース。産経新聞なんかはさらに施設が悪いという感じの<流しそうめん店93人食中毒、約500人からも相談 水質検査せず湧き水使用>というタイトルで報じていました(以下、引用はテレ朝より)。
<高さ15メートルから落ちる迫力の滝。石川県津幡町の観光名所の一つ、木窪大滝。その滝を眺めながら楽しめるのが湧き水を利用した「流しそうめん」。これを目当てに年間1万人の観光客が訪れるほど人気だったといいます。>
<先月、この施設で食事を取った24人が腹痛や下痢などの食中毒症状を訴えた問題。食中毒の原因について、保健所はそうめんやイワナの塩焼き、かき氷、ウィンナーなどの食事と判断しています。
その後も相談が次々と寄せられ、患者は93人まで増加。さらに県は相談があったおよそ500人についても調査しています。>
●食品問題評論家「食中毒菌は湧き水・海・川…どこでもいる」
今回、施設が使用していた湧き水の原水から検出されたのは細菌・カンピロバクター。食品問題評論家 垣田達哉さんは「どこにでもいる。海とか川でも。食中毒菌はいると思っていただければいい」としており、本来、自然のものは危険なんですよね。全く逆の理解になっており、それこそ危険です。
<調理に使用していたのは山からの湧き水。津幡町によると、この施設では普段は塩素で殺菌処理をしていて、これまでにカンピロバクターが検出されたことはなかったといいます。なぜ今年に限って食中毒が起きたのでしょうか。
(中略)施設側は食中毒の原因について、「年に1度以上、実施すべきである水質検査を7月中旬に発生した線状降水帯による被害の影響から、営業開始前に行わなかったことが今回の事態を招いてしまった」と話しています。>
「大雨被害だから水質検査しなかった」との説明ですけど、正直意味不明。食品問題評論家 垣田達哉さんも、むしろ大雨のときほど水質が変わっており、検査が必要としています。地元地区の区長は「ぱたぱたと急だったせいもあるんですかね」としているように、単に忙しかったので金儲けを優先したということなのかもしれません。
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