ジョブズの訃報にあたり、最も有名になった言葉は恐らくこの表現でしょう。「Stay hungry, stay foolish」(ハングリーであり続けろ、愚かであり続けろ)。 このうち「hungry」の方はなんとなく理解できます。やりたいことを一生懸命がんばれ、といった意味なのでしょう。でも「foolish」の方は、腑に落ちない人もいらっしゃるのではないでしょうか。この「foolish」の意味を知るには、ジョブズとヒッピー文化の関係について理解する必要があります。 「Stay hungry, stay foolish」という表現は、ジョブズが2005年6月12日にスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチで登場したものです。「今日が人生最後の日だとしたら、私は今日する予定のことをしたいと思うだろうか」「みなの時間は限られているから、誰か他の人の人生を生きることで時間を無駄にしてはいけない」などのメッセージに続けて「Stay hungry, stay foolish」と語ったのです(注:本章の訳文はウェブサイト「himazu archive 2.0」より引用しました)。 ジョブズがスピーチの中で触れている通り「Stay hungry, stay foolish」という表現は、1968年から1972年にかけて発行された伝説の雑誌「The Whole Earth Catalogue」(全地球カタログ)の最終号から引用したものです。この雑誌は、当時のヒッピー文化を牽引した存在。ヒッピーたちにとって便利なモノや、思考のきっかけになるようなモノ(これらの中には現在の環境保護運動につながる思想も存在した)を、通販カタログの体裁で徹底的に網羅した内容でした。ジョブズはスピーチの中で、同誌について「グーグルが誕生する35年前にあった、ペーパーバック版グーグルのようなもの」と表現しています。 ヒッピー文化は「ベトナム戦争への反発」を契機に発展したカウンターカルチャー(対抗文化)です。伝統や体制への反抗、戦争反対、自然回帰などを志向しました。長髪で、エスニック調の衣類を身にまとい、花飾りやボディペインティングなどを施したファッション――が一般には有名かもしれません。ビートルズは一時期、この文化に傾倒した活動を行っています。 この文化が米国西海岸で発達した関係で、そこで生まれ育ったジョブズも同文化の強い影響を受けたようです。先日発売されたジョブズの公認自伝「スティーブ・ジョブズ」(日本語版・講談社、日本語訳・井口耕二、上巻は10月24日発売)には、少年時代のジョブズがマリファナやLSD(幻覚剤)を体験したことがつづってあります。マリファナやLSDはヒッピー文化において精神解放の手段とされていました。またジョブズは「悟り」を求めてインドに旅行した経験も持っています。この経験が後の東洋思想(とりわけ禅)への傾倒、さらにはミニマリズム的なデザイン感覚(余分なものを取り払う感覚)にもつながることになります。 |
ジョブズのヒッピー文化への傾倒は、アップルの企業文化にも大きく影響しています。つまり「既存の価値観をいったん否定する」という考え方がアップルにも息づいているのです。 その価値観を象徴する表現が「Think Different」ではないでしょうか。これは1997年、ジョブズ復帰直後のアップルがテレビCMなどを通じて展開した広告キャンペーンのコピーです。アインシュタイン、エジソン、ガンジー、ピカソなど各界の偉人を登場させ、以下のようなナレーションをつけて放映したのです。 「クレージーな人たちがいる。反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に 丸い杭を打ちこむように、物事をまるで違う目で見る人たち。彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。(中略)彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う。自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」 これは当時のアップルが、ウィンテル体制への挑戦者である自らの立場を「世界を変える立場」だと宣言した内容でした。独善的とも尊大とも思えるニュアンスも含め、良くも悪くもジョブズらしいメッセージだったように思います。 まとめると、ジョブズがスピーチで語った「Stay hungry, stay foolish」という言葉には、こんな意味があるのではないでしょうか。まずhungryという言葉には「一度の人生だから自分が重要だと思ったことに全力で取り組みなさい」というメッセージが。そしてfoolishという言葉には「あなたの取り組みを邪魔する既存のあらゆる価値観と戦い続けなさい」というメッセージがあるように思います。とりわけfoolishという言葉には、反体制的なヒッピー文化が息づいていると言えそうです。 |
アイザクソン: 彼が手術を受けたのは結局9ヶ月後だったんです。 (中略) CBS: なんだってあんな頭のいい男がこんなバカなことを... アイザクソン: う~ん...なんというか彼には、自分が何かを無視すれば、自分が何かの存在を望まなければ、呪術思考も持てると思ってた節があるんですね、それでそれまではうまく事が回ってきた... |
マクロビオティックは「自然食」とも呼ばれ、調理法や使う素材に、いくつかのルールを設けた料理を食べる「食事療法」とされています。 18世紀頃にドイツの研究者がこの言葉を使用していましたが、今日行われているマクロビオティックの基礎を開発したのは、なんと日本人。 明治時代の医者であった「石塚左玄(いしづか さげん)」氏が提唱していた「食育」を元に、第二次世界大戦前後から活動していた思想家・食文化研究家の「桜沢如一(さくらざわ ゆきかず)」が再構築し、世に広めたと言われています。 (中略) 桜沢氏は60年代頃に、東洋思想を紹介するために渡米しました。 この頃、アメリカではベトナム戦争の反動から自由を求め、肉体と精神の充実、そして自然回帰を目指す「ヒッピームーブメント」がピークの時期にありました。このときヒッピーと呼ばれる人々は、西洋とは異なる東洋の柔軟な思想に興味を示しており、桜沢氏が紹介した「禅」も歓迎されたそうです。 それと同時にマクロビオティックの原則である「自然のものを食べる」という考え方も、従来の高脂肪な欧米型とは異なり、生活習慣病になりにくい食事として注目されるようになりました。 マクロビオティックってなんだろう?より |
24日には、ジョブズ氏公認の伝記「スティーブ・ジョブズ 1」(ウォルター・アイザックソン著、講談社)が発売された。それによると、ジョブズ氏は大学を中退後、カリフォルニアで禅を教えていた2人の日本人に出会い、禅に傾倒。永平寺(福井県)で出家しようとして止められた。結婚式も仏式で、お経をあげたほどだ。 |
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