2011/11/24:
野菜の放射性物質はアウトだけどタバコならセーフの謎理論
暗殺に使用された可能性もある放射性物質ポロニウム210
たばこに含まれる放射性物質ポロニウム210は危険だという記事
植物はいいもの…なんてことはない たばこの葉に放射性物質が含有
やっぱり危険?米国環境保護庁が紹介する研究だと…
肺がんの原因はタバコ中の化学物質だけ…というのは大間違い
紹介されている数字の乖離が大きすぎて心配になる
●野菜の放射性物質はアウトだけどタバコならセーフの謎理論
たばこに含まれる放射性物質については、以前も読んだ話でも出てきたので聞いたことはあります。ただ、そのときはそんな微量のものなんて気にしたって意味ないだろうと、スルーしていました。
でも、そう言えば、武田邦彦中部大教授のシリーズで書いたように、野菜の放射性物質は量に関係なくアウトだけど、たばこはそんなに体に悪くないって言い張っている人もいらっしゃるので、軽く触れておきます。
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武田邦彦中部大教授のめちゃくちゃな「タバコと肺がんはほぼ無関係」宣言 ■
武田邦彦中部大教授の青酸カリとセシウムの話 ■
武田邦彦中部大教授の論法なら、タバコは青酸カリを入れたようなもの 強調しておきますけど、私は別にたばこは放射性物質が入っていて危険だと主張したいわけじゃないですよ?人類が放射性物質を利用し出す以前から、多くの食べ物には普通に放射性物質入っているんですし、問題となるのは量です。
(問題となるのは量というのは、
武田邦彦中部大教授の青酸カリとセシウムの話でも、チラッと書きました)
●暗殺に使用された可能性もある放射性物質ポロニウム210
まずは、いかにも毒性が強そうな名前のポロニウムさんの説明を、
Wikipediaより。
ポロニウムには安定同位体が存在せず、すべてが放射性である。ポロニウム194からポロニウム220までの質量範囲がある。主な同位体は、加速器で生成されるポロニウム208(半減期2.898年)、ポロニウム209(半減期102年)、自然界に存在するポロニウム210(半減期138.376日)がある。
ポロニウム210
ポロニウム210は自然界に存在するポロニウムの同位体のうち一番長い半減期(138.376日)を持つ。1 mgにつき5 gのラジウムとほぼ同数のα粒子を放射する。1 gのポロニウム210のアルファ線は、熱エネルギーを140ワット生成する。
暗殺に使用された可能性もあり、量が多ければ危険な物質であることは間違いありません。
2006年11月にイギリスで発生した、元ロシア連邦保安庁 (FSB) 情報部員アレクサンドル・リトビネンコの不審死事件で、ポロニウム210が被害者の尿から検出されたことが明らかになった(死因は体内被曝による多臓器不全と推測され、暗殺その他の謀略死の可能性が広く指摘されている。なお、事件の詳細は同氏の項参照)。
●たばこに含まれる放射性物質ポロニウム210は危険だという記事
検索で出てきあ
たばこ会社が絶対客に知られたくない真実... 煙草には放射性物質が入っている 2011.10.06 23:00(ギズモード)という記事は、明らかに糾弾している感じでした。
タバコの放射性物質はポロニウムー210。「アルファ粒子と呼ばれる有害な粒子を放出する」放射性物質です。
この粒子は吸い込むと、タバコから検出される他の発がん性物質と相まって喫煙者の肺に倍のダメージを与える(がんを誘発する)のです。
ABCニュースが報じていたのですが、UCLAの研究員らの調べで、タバコ各社がタバコの中に放射性物質があることを1959年の段階で既に知っていたという事実が明らかになりました(日経サイエンスで翻訳紹介されたスタンフォード院生の2009年の論文の方が発見は先ですが、今回UCLAで未検分の文書27件を調べた結果、隠蔽の事実が具体的に裏付けられた)。
1960年代通してタバコ各社はポロニウム(polonium)の研究を行い、普通の喫煙者が向こう20年でどれだけの放射性物質を吸引するか見積もり、これががんの原因になることも知っていたのだけど、自分たちの試算が外部の誰かに気づかれると困るので隠してしまったんですね。
●植物はいいもの…なんてことはない たばこの葉に放射性物質が含有
もういっちょギズモードから、
たばこの放射性物質について(米政府の解説)2011.10.11 12:00というもの。これは、
米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency、日本の環境省に相当)がサイトに出している解説の訳だそうです。
こちらはまず放射性物質に関係ない話から。現在たばこを吸っていない人でも、空中のたばこの煙が原因で心臓疾患にかかって死ぬ人が多くいます。セカンドハンドスモーク、いわゆる受動喫煙を起こすケムリ には4000種を超える化合物が含まれています。
これらのうち69種はホルムアルデヒド、鉛、ヒ素、ベンゼン、放射性ポロニウム210など既知の発がん性物質だとのこと。ポロニウム210以外にも発がん性物質は多数あるようです。
この発がん性物質の意外な由来としては、植物…たばこの葉から来ているものがあります。特に多いのが鉛210とポロニウム210。たばこの葉の放射性核種は、そのほとんどが土壌と肥料から入ったものだそうです。
●やっぱり危険?米国環境保護庁が紹介する研究だと…
米国環境保護庁によると、研究の結果、肺に吸い込む時、たばこの煙には鉛210とポロニウム210が存在することが分かっています。問題は量であり、たばこの葉に含まれる鉛210とポロニウム210の濃度は比較的低いとのこと。ところが、塵も積もれば山となりで、喫煙者の肺の中にたまると非常に高濃度になる恐れもあるといいます。
たばこを肺に吸い込むと、肺の通り道の気管支が枝分かれする場所(細気管支)に煙が当たり、たばこの煙に含まれるタールがそこに溜まっていきます。そのため細気管支の中でも非常に大事な部位の組織に、鉛210とポロニウム210が吸い寄せられてしまうとされていました。
研究では、普通の市販のタバコにフィルターをつけても、喫煙者が肺に吸い込む煙から放射性物質は微量しか除去できないことが分かっています。溜まった物質のほとんどは鉛210ですが、この鉛210(半減期22.3年)が崩壊して支配的な放射性核種になるにつれポロニウム210(半減期138日)が急成長。こうして時間の経過に伴い、細気管支の組織に直にたまるポロニウム210は非常な高濃度となり、この細気管支に局所的に放射線量が集中する、と解説されていました。
たばこ業界でよく使われるリン酸肥料には、ラジウムとその崩壊生成物(鉛210とポロニウム210含む)が含まれています。このリン酸肥料をたばこ畑に毎年撒くと、鉛210とポロニウム210の土中濃度も上がってしまうとのことでした。
●肺がんの原因はタバコ中の化学物質だけ…というのは大間違い
他のデータも載っていました。UCLAのKaragueuzia教授のチームが独自に試算してみたら、たばこの中の放射性粒子がもとで今後25年で死亡する可能性のある人は喫煙者1000人のうち120~140人と出たそうです。
「我々も肺がんの原因はタバコ中の化学物質だけだと思っていたが、肺にこうした『ホットスポット』ができることは業界も学会も認めている。そうなるとアルファ線が原因で悪性腫瘍が長期的に発達してる可能性も高くなる。ラッキーな人はα線被曝した細胞が死んでくれるが、死ななければ変異してがん性細胞になる恐れもある」(Hrayr Karagueuzia教授)
量が問題って上で書きましたけど、この研究ではしっかり影響出るという結果になっちゃってますね。
米国環境保護庁の資料で飛ばした部分ですけど、「セカンドハンドスモーク(副流煙)」にもポロニウム210は入っているそうですので、こちらも似た傾向かもしれません。
●たばこのポロニウム210が危険というのはデマ?反論も
なお、反論も見っけたので、バランスを取るために紹介しておきましょう。
ポロニウム-210含有をたばこ会社が隠避していたとする“アホ”くさい報道 2011-09-30 11:06:53(虎の門針灸院ノート)というものです。
「たばこを1日に1箱半吸うと1年間でレントゲン300回分の被曝に相当する」は、信用できる情報ではありません。(出所は、Thomas H. Winters and Joseph R. Difranza, “Letter to the Editor,” New Engl. J.Med 1982,306:364-365ですが、「喫煙による被曝量は年間8000ミリレム(≒8ミリシーベルト)である」という記述は、実際の測定に基づいたものではなく、1965年の生体組織検査報告からの推定であり、いい加減なものでした)。
信用できるものとしては、1日30本を1年間吸い続けても0.036 mSvで、胸部X線撮影1回分の被曝量0.1~0.6 mSvの1/10に過ぎません。海外の多くの研究報告もほぼ同様の見解です。(中略)
紙巻たばこの放射線濃度の算術平均値から求められる、1 mSv y^-1となるような1日の喫煙本数は約108本で(5箱以上)との試算も有ります。
たばこに含まれるポロニウム210はリン肥料由来とのことですので、量から見て、一般的な野菜からの被曝量の方が寧ろ多い可能性がありますが、騒がれた事は無い様です。
リン肥料由来なら他にも入っていそうだなというのは、私も思いました。ただし、放射性物質の人体への影響度を見ていると、一般的に吸入の方が経口よりはるかに危険ですので、たばこの煙と野菜での被曝量の違いについてはそれも関係あるかもしれません。
●紹介されている数字の乖離が大きすぎて心配になる
同時にここでは、日本の“RADIOISOTOPE誌”の、「喫煙者の実効線量評価―たばこに含まれる自然起源放射性核種―(放射線医学総合研究所 岩岡和輝、米原英典)」にも、「喫煙者の年間実効線量は0.19 mSv y^-1であり、ICRP.82の介入免除レベルである1 mSv y^-1よりも低い値であった。」と、記されている、として好意的に紹介されていました。
しかし、先程の部分では、「信用できるものとしては、1日30本を1年間吸い続けても0.036 mSv」とありました。「0.036 mSv/年」と「0.19 mSv/年」ではあまりにも数字が違いすぎます。本当に信頼できるものなのか、心配になりました。
この他に、「紙巻たばこの放射線濃度の算術平均値から求められる、1 mSv y^-1となるような1日の喫煙本数は約108本で(5箱以上)との試算も有ります」ともありました。この数字なら「0.19 mSv/年」とも辻褄が合う感じで、やはり「0.036 mSv/年」の方と合いません。「0.036 mSv/年」の方が怪しく見えますが、こっちが「海外の多くの研究報告もほぼ同様の見解です」とされているんですよね。よくわかりません。
ただ、多い方の数字を見ても、年間1mSvを下回っていますので、一応そこまで大きな問題ではないのかなとは思います。
2018/08/24追記:そういえば、これは飽くまでポロニウム210単独の話。タバコにはその他多くの健康を害する化学物質が含まれていて、健康被害が大きいこともすでにわかっています。吸っても問題ないという意味ではありません。
【本文中でリンクした投稿】
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武田邦彦中部大教授のめちゃくちゃな「タバコと肺がんはほぼ無関係」宣言 ■
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