中国では、すでに宅配ボックスが数万ヵ所に設置されており、日本の宅配システムが「世界最高」などと言っていられないという話がありました。「日本は遅れてる~」という感じの話です。でも、本当かいな?と思ったので、検索していろいろ探してみました。
2017/7/30:
●日本の宅配ボックス事情は中国より遅れてるって本当?
●日本でも古いダイヤル式は減って電子式が増加中か
●中国で普及しているのは、屋外型の共用宅配ボックス
●中国はとにかくスピードが早い「日本も学ぶべき」
●意外なことに中国でも日本と同じく深刻な人手不足に
2018/11/04:
●電柱宅配ロッカーという変わり種宅配ボックス、日本が発明
2020/12/10:
●新たな置き配の実験 町の900世帯対象に電柱宅配ボックス
2021/11/07追記:
●日本の最先端宅配ボックスの便利化・差別化競争の現状とは? 【NEW】
●日本の宅配ボックス事情は中国より遅れてるって本当?
2017/7/30:出典なしの良くないページでしたが、とりあえず、
宅配ボックス - Wikipediaを見ました。こちらによると、中国では共働きが多い大都市部を中心に、近年は宅配ボックスが急速に普及し始めており、宅配ボックスメーカーは既に20社以上あるとのこと。
中国でよくある仕組みは、以下のような電子的なものだそうです。中国の宅配ボックスで検索すると、この方式のを実際に使ってみた!という体験談が多く出てきました。
・配達員が配達時に受取人の電話番号を宅配ボックスに入力すると、システムが自動的に暗証番号を生成して受取人の携帯電話にSMSで暗証番号を通知し、受取人はその暗証番号を宅配ボックスに入力すると受け取れる
"配達員は配達通知書を手書きする必要がなく、SMSで受取人に直接通知されるので家族に荷物を知られる恐れが少なく、受取時に磁気カードも要らないという点から、日本よりも先進的な仕組みと言える"ともありました。
●日本でも古いダイヤル式は減って電子式が増加中か
私が知っていた宅配ボックスは、以前住んでいたマンションに設置されたダイヤル式のもの。ただ、Wikipediaでは、"宅配ボックスの初期型であり、近年はマンションではあまり見られないタイプだが、最低2箱からの製品もあるので今でもアパートで採用が多いタイプである"としていました。
<ダイヤル式>
操作方法:宅配ボックスのそれぞれの箱の扉に3桁または4桁のダイヤルがある。配達員は荷物を入れ、ダイヤルを配達員自身がその場で決めた番号に合わせてこれを暗証番号とし、「宅配ボックスに入れました。箱番号は○番で、暗証番号は○○○○です。」という配達通知書を作成して郵便受けに投函する。受取人はダイヤルを暗証番号に合わせることで扉が開き、荷物を取り出せる。
「近年はマンションではあまり見られないタイプ」という記述からすると、日本でも電子式が増えているのかもしれません。
<電子式(液晶パネル式)>
操作方法:液晶画面があり、配達員は画面や音声で案内される手順に従って荷物を入れた後、「宅配ボックスに入れました」という配達通知書を郵便受けに投函する。受取人が扉を開く方法は、部屋ごとに決まっている固定暗証番号(入居時にマンション管理会社から渡された書類に書いてある)を使用するタイプと、予め住民に配布されている磁気カード等を使って扉を開くタイプの2タイプがある。
●中国で普及しているのは、屋外型の共用宅配ボックス
ただ、そもそも日本で今注目されている宅配ボックスって、個人の住宅に置くようなタイプですよね。私が住んでいたマンションのものは個人用ではなかったものの、室内だったというのが中国と違う点。中国での宅配ボックスの写真を見てみると、屋外にどーんと置いてあるタイプがほとんどなんですよ。ちょっと雰囲気が違いますね。
また、
うちの小区にも宅配ボックスが設置された シャンハイリンゴ(2017/4/5)では、普及が進んでいるといった感じの記述がありました。
<うちのような小区(xiǎoqū、団地みたいな意味)にさえ設置されたのですから、きっと上海、いや中国全体でこうしたシステムが急速に普及しているのだと思います>
●中国はとにかくスピードが早い「日本も学ぶべき」
検索していてもあまり数字的な話が出てこなかった中で、
(PDF)成長の勢いが止まらない中国の宅配便事情 株式会社クララオンライン コンサルティングチーム(2017.3.17)でやっと詳しい話が見つかりました。
こちらによると、宅配ロッカーはは都市部を中心に10万台以上。日本が何個なのか不明だったものの、日本よりずっと多いといった書き方。さらに、荷物を代わりに受け取ってくれる拠点である“代収点”というものも多いそうです。一方で、中国らしく、保管中の紛失や破損、なりすましによる勝手な荷物の受け取り等の問題も生じているとしていました。
ただ、それでも全体としては評価するまとめで、ドローンによる無人配送の試みも早い段階から行われている上に具体的な計画もあり、「ラストワンマイルの問題を解決するスピード感には学ぶものがある」としていました。このスピードというのは中国の強みであり、赤字だった日本企業を買収してあっという間に黒字転換したり、アフリカのインフラ整備でありがたがられたり…といった実績を残しています。
(関連;
鴻海買収のシャープもう復活?日本企業は中国・台湾に負けて当然 15年連続の赤字の三洋電機は数年で黒字に、
アフリカの大統領「日本が中国から学ぶことを勧める」と注文)
とはいえ、スピードが重要というのは、スタートアップなど仕事全般として重要なことであり、中国だけの特殊ケースということではないでしょう。あのグーグルもスピードを重視しています。中国だけの話ではなく、一般的な話だと考えるべきかもしれません。
●意外なことに中国でも日本と同じく深刻な人手不足に
話がそれてきましたが、中国では日本同様に宅配便サービスが深刻な人手不足だと書かれていて、意外に思いました。日本の人手不足は特殊なもので、中国みたいなところは人が余っていて人件費も安い、というイメージだったためです。
中国でも人が足りない理由は、宅配便の伸び方が凄まじいためでしょう。そういえば、他の記事でも、中国人は何でもかんでもネットで頼むという話がよく出ていました。これは具体的な数字を見ると、よくわかります。直近の日本における宅配便の年間取扱個数は約38.7億個で、 前年比では3%程の伸び。それに対し、中国は、およそ 8倍となる313.5億個で、その伸び幅は51.7%という考えられないような伸び方をしています。
また、中国の宅配便業界が人手不足となったのは、賃金が良く、労働時間も短いデリバリースタッフに転職してしまうからという事情もあるそうです。
とはいえ、この転職の多さは健全な話だとも言えます。日本でブラック企業が多いことの理由の一つは、転職の少なさだと思われます。こうして悪い環境の企業から人がちゃんと逃げれば、企業側も対応して工夫してきます。一方、サービス残業・長時間労働で従業員を非人間的に働かせることでやりくりできてしまうと、企業側も変わろうとしません。
最後でまた話がそれちゃいましたけど、
日本は最もロボット・AIに仕事を奪われる国?労働生産性が低いためかでやったように、日本は中国よりも人がやらなくて良いことを人にやらせているようでした。もっと省力化を進める必要があります。
●電柱宅配ロッカーという変わり種宅配ボックス、日本が発明
2018/11/04:日本でかなり変わったタイプの宅配ボックスが登場しました。電柱に宅配ロッカーを取り付け、近くに住む住民が荷物を受け取れるようにする「電柱吊宅配ロッカーサービス」というもの。関西電力が今試し始めたところなんだそうです。
これは、関西電力が2016年に行ったビジネスコンテストで出たアイデアを参考にした企画。電柱は「どこにでもある」「電源がある」「配達場所として明確にできる」――という3つの特徴が、宅配ロッカーに向いているといいます。
(
「電柱に宅配ロッカー」 全国初、関電が試行 2018年11月02日 06時57分 公開[ITmedia]より)
おもしろいですね。ただ、写真を見てわかるように多くの荷物を受け取れるわけではありません。また、公共の場所に設置するのは問題があることも予想されます。今回試験しているのはすべてマンションということで、設置できる場所の条件がありそうでした。
宅配ロッカーは会員登録制で、マンション住人のみ利用可能。荷物が届くとメールが届き、暗証番号か交通系ICカードで解錠するしくみだとのこと。おもしろい試みであり応援したいですし、宅配事情改善の一助となることは否定しませんけど、残念ながら日本の宅配事情をガラッと変えるような切り札にはならないと思われます。
●新たな置き配の実験 町の900世帯対象に電柱宅配ボックス
2020/12/10:前回追記した電柱宅配ロッカーの関係で、<新たな「置き配」の実証実験 住宅地の電柱に宅配ボックス 京都 | 新型コロナウイルス | NHKニュース>(2020年10月19日)という話が出ていました。電柱を宅配ボックスに活用する大規模な実証実験が行われるのは、全国でも初めてだとのことです。
また、「置き配」は、深刻な人手不足を背景に宅配便の再配達を減らす観点に加え、対面せずに受け取れることから最近は新型コロナウイルス対策としても注目が集まっているともされていました。ただ、前回の追記から2年経って実験レベルですからね。日本は相変わらずスピード感がないな…と正直思ってしまいます。すみません。
とりあえず、この新しい実験は、マンション住人といった限られた人でなく、多くの住人を対象としているということで、かなりの進展ではあるでしょう。電柱を管理している関西電力が京都府精華町などと連携した実験。対象は町内のおよそ900世帯で、宅配ボックスは電柱3か所に設けました。1つで300世帯をカバーするイメージですね。
宅配便の不在票を受け取った利用者が、コールセンターを通して近くの電柱を指定して、配達業者がボックスに荷物を預け入れる仕組みで24時間いつでも受け取れる…というしくみ。不在通知を受け取って初めて使えるというものなので、最初からは使えないようです。これもたいへん不便な点ですが、実験段階の現状としてはやむを得ないのかもしれません。
●日本の最先端宅配ボックスの便利化・差別化競争の現状とは?
2021/11/07追記:
宅配ボックス、便利化・差別化競争の現状 | 財経新聞(2020年11月13日)という記事も気になってブックマークしていました。富士経済によると、2025年の「宅配ボックス」市場規模は2017年に比べ約2倍となる220億円が推定されるとのこと。記事では、そうした拡大市場にあって1994年から展開を図っている業者に、日本宅配システムがあるとしていました。マンション向けで伸びてきた企業だといいます。
現在の主力商品は「monocompo」シリーズ。キュリティ強化のためで、盗難防止の抑制力を高めるコンピューター制御システムが特徴の一つだとのことです。また、子供が誤って入ってしまうなどの事故を受けて、熱や動きで人の出入りを感知する人感センサーも内蔵。安全に力を入れているというのは日本らしいですが、その分普及しづらい気もします。
一方、おもしろいのは、連携システムがあるということ。例えばクリーニングに出したいものがある場合、宅配ボックスに入れておく『宅配クリーニング』というものがあります。ただ、多機能性というのも日本企業らしいやり方で、シンプルなシステムに負けてしまう…ということが起きがち。宅配ボックスの場合はどうなるでしょう。
また、説明では「部屋番号」とか「オーナー」とかいった言葉が出てくるので、念頭にあるのはマンションなどの集合住宅向けみたいですね。私はどちらかと言うと、個人や不特定多数の人の宅配の問題を解決する宅配ボックスに興味があるため、ちょっと方向性が違う感じ。とはいえ、どちらの宅配ボックスももっと普及してほしいところです。
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