2018/04/04:
●ネット通販をやめて逆に売上・利益が増加 ケンズカフェ東京のガトーショコラ
●ネット通販取りやめと値上げで客層が良くなった
●商品の絞り込んでたった一つに
●何かを捨てることで新しい何かが入ってくる
●来店だと送料が嫌など、様々な理由で顧客満足度が上昇
●基本的に人間は高いものほど良いと思ってしまう
●ネット通販をやめて逆に売上・利益が増加 ケンズカフェ東京のガトーショコラ
2018/04/04:東京・新宿御苑近くにある「ケンズカフェ東京」はガトーショコラ専門店。もともとはイタリアンレストランだったのですが、毎月赤字に。デザートだったガトーショコラが好評だったため、こちらに特化しました。
また、このお店はかつては売上げの6割以上を占めて、いわばメインであったネット通販を2015年頃に一切やめ、店売りに特化しています。現在は同店での直販の他、銀座と池袋の百貨店に卸しての数量限定販売のみだそうです。
下がると思っていた売上げは、ネット通販をやめた年は前年と同程度。現在では通販メイン時の約3倍です。また、利益率も以前よりも2割ほど上がっているとのことですから、利益はそれ以上の上がり方なのでしょう。
(
ケンズカフェ東京「ネット通販やめたら売上げ3倍、利益率は2割増」 -- 地方百貨店や高級車販売店からの注文も入って | 店舗と商品 | ニュース | 商業界オンライン 2018年4月1日 長谷川 敏子 より)
●ネット通販取りやめと値上げで客層が良くなった
いろいろ過去の投稿を思い出す話が多かったのですけど、まず店主の氏家健治さんがネット通販を辞めた理由の「みんながネット通販に慣れてきたからこそ、僕は逆張りでいこうと」というのは、以前やった逆張り経営のことを思い出しました。
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ただし、実際にはもっとちゃんとした理由があります。これは、
安いお店の客はクレーム多く民度低い?低い家賃で滞納率も高く?に関係ある話。
売上げだけを考えたら、通販をやめるという選択はできなかったものの、「将来、どういうお客さまと出会いたいか」と考え、数年前、試みに通販をやめてみました。すると、商品を本当に欲しいと思うお客が遠方からわざわざ来店したり、東京の知人に頼むなどして、どのようにしてでも手に入れることに気づいたのです。
「なぜ来店するお客さまは素敵なのに、通販のお客さまはクレームを言ってくるのかと考えたんです。結果として今が良くなっているのは、良いお客さまに出会えているからですね」
実は価格も最初からこんなに高かったわけではなく、少しずつ値上げしていました。値上げするごとに、客の品質が上がっていったのです。
"当初1本500グラム1300円だった商品を少しずつ値上げしている。1500円から2000円に値上げした際、一部のお客は離れたが、全体の客層は良くなった。3000円に値上げしたら、もっと良いお客が来るようになった"
●底辺の客を捨てるでけでなく、商品を絞り込んでたった一つに
上記は言い方悪いですけど、底辺の客を捨てるという選択。このようにビジネスでは、足し算より引き算の方が大事ということが多いです。
ケンズカフェ東京でもう一つ引き算のうまさが出ていたのは、商品の絞り込みをしているということ。もともとはイタリアンレストランでしたので、他の料理を全部捨てています。さらにガトーショコラ専門店というだけでなく、商品はたった一つ、280グラムで3000円のガトーショコラのみにしてしまいました。
iiPhoneが売れる理由?実は選択肢が多い方が売れず1つの方が良いという過去の話を思い出します。
●何かを捨てることで新しい何かが入ってくる
捨てることの効果は意外なところでも出ています。氏家健治さんが通販をやめた後、予想外なところから注文が入るようになりました。例えば、地元の優良顧客を抱えた地方百貨店の外商部や、高級車の販売店から顧客への手土産としてたくさんの注文が入るなど、質の高い顧客に見合う商品としての用途が増えました。
さらに、3年ほど前にはコンビニ大手「ファミリーマート」のスイーツ監修をする仕事が舞い込みました。氏家健治さんは店を増やすつもりはないが、コンビニのスイーツは監修してみたいと思っており、これは引き受けたようです。
「通販をやめたら、この仕事が入ってきた。何かを捨てたら、何かが入ってきた感じです。コンビニ1万8000店舗で、僕が監修したスイーツが販売されている。店を複数持つよりも良かったと思います」
●ネット通販、意外に手間と時間とお金がかかる
氏家健治さんはコスト意識がすごいですね。コスト意識と言うと、トヨタのカイゼンのように修正を繰り返すようなことを考える人が多いのですけど、氏家健治さんは本質的なところを見てズバッと切り捨てています。これはなかなかできません。感心しました。
例えば、先の店を複数持ったりするよりもコンビニ商品を監修した方が良い、というのもそういうところ。複数の店舗経営に時間と気力を取られるよりも、コンビニでやってもらう方が効率的です。
ネット通販では、たとえ有料でもAmazonに物流を頼んだ方が良いとしているお店の人がいます。発送だけでも、手間と時間とお金がすごいかかるんですよ。以下のような話がありました。
<同店の商品は全て手づくり。数量をたくさんつくれないため、利益を上げるには単価を上げるか、無駄なコストを減らすしかない。通販の場合には商圏は広いが、梱包や発送、受発注管理などに手間ひまがかかる。(中略)
さらに誤配や遅延があり、「誕生日にガトーショコラが届かなかった」「商品が届かなくて子どもが泣いている」など、顔の見えない顧客からのクレームが氏家さんを悩ませていた。(中略)
一方で、店売りなら目の前にある商品をすぐに手渡すことができ、1本3000円を3秒で売ることができる>
●来店だと送料が嫌…など、様々な理由で顧客満足度が上昇
また、様々な理由で顧客満足度の上昇にも繋がっています。例えば、「同じような商品でも、通販をやっているものとやっていないものでは、ありがたみが違います。これは思った以上の効果でした」といったもの。その他に、以下のような話がありました。
・来店したお客には焼きたての商品が渡されるので、よりおいしく、ますます評判になり、グルメサイトでのレビューの点数が上がった。そして、そのレビューを見たお客がさらに来店するという好循環になった。
・「通販の場合には送料を負担に感じますが、遠方から来店して交通費がかかっていても、負担には思わないんですね」
・顔を見てコミュニケーションがとれる。ネット通販はダンボールに入って届くが、高級感ある化粧箱とロゴ入り紙袋に入った商品を渡されるため、ありがたみがある。
●基本的に人間は高いものほど良いと思ってしまう
記事では、このような売り方にできたのは商品が最高品質だということがある、と説明されていました。ただ、うちでは紹介していなかったかもしれませんけど、なんてことない商品でも値上げで売上が増えたという事例があり、結構使えるかもしれません。
(どこにでもあるまんじゅうだったかな? ただし、「お土産品にした」という新たな付加価値はあった覚えがあります)
また、人間はものの評価を正しく行えず、情報に大きく左右されることも研究でわかっています。これは先の「レビュー」なんかがそういったものの一つなのですけど、それ以外にやはり「価格」もあるんです。つまり、価格が高いだけで満足度が上がりやすいのです。
一方でこのお店の特殊事情と言えそうなのが、ネットで売れまくっていた時期があるということ。もともと知名度の高さがあったために、販路を絞って希少性を高めたことの効果がでかかったのだと思われます。ネットでもリアルでも売れていない商品だったら、さすがにここまで見事な展開にはならなかったかもしれません。
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