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2011/12/19 金正日総書記死去、朝鮮総連も寝耳に水 朝鮮の混乱と日本への影響
2011/12/23 金正日総書記死亡の謎 ~暗殺説、北朝鮮の看板アナウンサー~
2009/6/8 北朝鮮の金正日総書記は本当に崇拝されていたのか?脱北者の話
2012/2/12 金正日総書記の最近の北朝鮮での評判
●2011/12/19 金正日総書記死去、朝鮮総連も寝耳に水 朝鮮の混乱と日本への影響
大きいニュースだったので、ざざっと読んで更新します。
朝鮮中央テレビは19日、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)朝鮮労働党総書記が17日午前8時半に死去した、と発表しました。また、朝鮮中央通信は「現地視察中に、精神・肉体の過労によって心筋梗塞が起き、心臓ショックによって列車内で急死した」と伝えています。
三男で党中央軍事委員会副委員長の正恩(ジョンウン)氏(28)が権力を継承するとみられ、同通信は「今後は党、軍の指導者として金正恩同志がいる」と強調、葬儀委員として、正恩氏を最初に挙げたそうです。(この段落、※1より)
実は朝鮮半島の情勢把握を担当する公安調査庁は、19日に何らかの特別放送が予定されているという情報を持っていたようです。
しかし、職員が「驚いた」と繰り返したように、特別放送の予定にも緊迫感が感じられなかったため、あまり重要視していなかったようです。ところが、「ふたを開けたら死去だった」わけです。
同庁は今月16日、北朝鮮情勢について「金総書記の三男・金正恩党中央軍事委員会副委員長の動向を頻繁に報じており、各種の宣伝活動を通じて、後継者としての格別な地位を内外に示している」とする調査結果を公表しており、混乱は見られないという立場なのでしょうか?(この段落、※2より)
一方で、今後の混乱を警戒する声も大きいです。
内閣情報調査室の情報担当者は「日本国内にどんな影響があるのか不確定。注意深く見守らなければ」と慎重な口ぶりで、別の担当者も「今後、軍部がどう動くのかが最大の関心事。軍の統制が利かなくなるのではないかという懸念があり、上司から情報収集を命じられた」と緊張した様子で話したそうです。(※2より)
また、野田首相も万全の態勢を取ることなどを指示したそうですが、韓国青瓦台(大統領府)は19日、国家安全保障会議を開き、全軍に非常態勢をとるよう命じています。(後半、※1より)
中日新聞も「後継体制の整備は完了しておらず、国内はもとより朝鮮半島や北東アジア情勢が流動化する可能性がある。外交、軍事など、すべての分野を指揮した金総書記の死去により、核問題や日本人拉致問題の行方はいっそう不透明になった」との見方でした。(※1より)
最近あまりニュースがなくおとなしかったものの、内部の対立はまだあり、三男で盤石とは行かないのでは?という印象は、私も感じていました。
一般の方も同じ印象を持つ方が多いようで、朝鮮半島統一を願うイベント「ワンコリアフェスティバル」の実行委員長を務める鄭甲寿(チョンカプス)・コリアNGOセンター代表理事は「突然の死亡でびっくりした。北朝鮮の混乱が心配。後継者の準備が十分にできていないのではないか。急激な変化が起こる可能性があり平和的に事態が推移してほしい」と話したそうです。
在日本大韓民国民団(民団)鄭進(チョンジン)団長も「金正日国防委員長死亡についての談話」で、「不健康説は以前から流されてきたが、それにしてもあまりにも突然の知らせだ」と驚きを表現。さらに「来年は金日成誕生100年を期して『強盛大国』の大門を開くと豪語し、金正恩への3代世襲が不十分ながら進んでいるところだった。この突然の死で北内部が不要な混乱に陥らないよう望むとともに韓半島の平和と安定に動揺がみじんもないことを強く願う」と記しています。(いずれも※2より)
民団はともかく朝鮮総連すら寝耳に水だったようで、東京・千代田区の朝鮮総連中央本部には数十人の報道陣が詰め掛けたものの、朝鮮総連側は「テレビを見て(金総書記の死亡を)知った。今は対応できる状況ではない」と説明。(※3より)
朝鮮総連愛知県本部の文光喜委員長も正午すぎ、ニュースで金正日総書記の死去を知ったということでした。(※4より)
また、今後の見通しが立たないのは朝鮮総連もいっしょのようで、先の文光喜委員長は「日朝関係、在日社会にどんな影響が出るのか、予想もできない」と戸惑いも見せたとのこと。(※4より)
別の総連関係者も「信じられない。中央本部と連絡がまだ取れていない。大事な問題なので、これからどうするかはまだ何ともいいがたい」と答えたようです。(※4より)
ある朝鮮総連の事情に詳しい専門家は「朝鮮総連はこれまで内部的に、金正恩(キム・ジョンウン)氏への権力の3代世襲をめぐる対立が少なくなかった。今後は対立がさらに深まる可能性がある」と指摘しており、朝鮮本国だけでなく、どうやら朝鮮総連においても金正日総書記死去は混乱の火種となりそうです。(※3より)
参考記事
※1
金正日総書記急死 69歳、列車内で(2011年12月19日 14時11分 中日新聞 ソウル=篠ケ瀬祐司)
※2
金正日・北朝鮮総書記死去:在日社会にも衝撃/急激な変化懸念(その2止)(毎日新聞 2011年12月19日 東京夕刊)
※3
<金総書記死去>朝鮮総連にも衝撃走る 「報道で知った」 (2011/12/19 16:49 KST 聯合ニュース)
※4
「影響予想できない」「信じられない」戸惑う在日関係者(2011年12月19日15時2分 朝日新聞)
●2011/12/23 金正日総書記死亡の謎 ~暗殺説、北朝鮮の看板アナウンサー~
大ニュースだと思ったので、上記を大慌てで書きましたが、わりと皆さん落ち着いた様子です。思った以上に感心ないのかもとも思いましたが、もう少し書きます。
金総書記死去、謎呼ぶ「空白の2日」 不自然さ多く(※1 登録要 日経新聞 2011/12/20 21:41 (2011/12/20 22:12更新))によると、北朝鮮の金正日総書記の死去を受け、韓国メディアなどで死因や死亡時期を巡る臆測が広がっているようです。
たとえば、列車の中での死去という説明に「最高指導者の体調の変化に気付かないのはおかしい」と韓国メディアなどが指摘しています。(※1)
東亜日報は「(北朝鮮の)発表で最も疑問が残る点は列車内で死去したことだ」と指摘。金総書記の健康維持は北朝鮮にとって「最優先課題」であり、体調の変化に北朝鮮当局が全く気付かないまま総書記が現地指導を続けたことは理解し難い、としています。(
金正日総書記、死の謎…暗殺説も ※2 2011.12.21 05:04 サンスポ)り)
世襲を採用する北朝鮮では出生と死亡の情報が権威を保つカギとなるそうで、ここは「自分たちの都合の良いように操作している」可能性があります。(※1)
そもそも発表された時刻に列車が走行中だったかどうかでも見解が分かれているようです。
金総書記死去:韓国で情報錯綜(毎日新聞 2011年12月21日 22時31分 更新:12月22日 2時52分)は、
国家情報院は20日、非公開で開催された国会の委員会で、衛星情報などから金総書記の専用列車が17日以前から平壌市内の駅に停車していたと明らかにした。これが事実なら、死亡日時や場所などの発表は虚偽の可能性が出てくるが、21日付朝鮮日報は、韓国軍当局が「列車は移動中だった」とみていると報道。結局、軍はこれを否定し国情院に合わせた格好となった。 |
と報道。韓国の当局の混乱を伝えています。
また、保守系与党のハンナラ党議員は自身のツイッターで「内部の権力闘争の結果、他殺されたのではないか」と書いており、暗殺説まで飛び出してきました。(※1)
暗殺説は毎日経済で「誰かに殺害されたのではないか、という可能性が提起されている」と掲載。東亜日報も「強硬派の仕業ではないか」とする北朝鮮脱出住民(脱北者)出身の専門家の見方を伝えたそうです。(※2)
ここらへんは憶測しすぎかなと思いましたが、
最近では04年4月に平安北道の龍川駅で発生した列車爆発事故が、金総書記を狙った内部テロだったとされる。金総書記が乗った専用列車が龍川駅通過した30分後に爆発。161人が死亡、1350人以上が負傷した。当局は硝酸アンモニウムを積んだ列車が爆発したと発表している。(※2) |
という記事を読むと、荒唐無稽とも言い難い気もします。
これと絡み、死因についても疑いがもたれています。北朝鮮は金総書記の病理解剖検査を行い「疾病の診断が完全に確定された」としたました。
しかし、この発表を東亜日報は「死因などをめぐり、臆測が出る余地が多いということを自ら認めたものだ」と強調。毎日経済も「(詳細な検査を同時に発表したのは)死因は他にあるのではないかという疑心があるためだ」として、疑問の声を沈静化するには至りませんでした。(ここまで※2)
また、19日正午、死去の一報を読み上げた朝鮮中央テレビの看板女性アナウンサー、リ・チュンヒさんに絡んだ憶測もあります。
リさんは抑揚の利いた低い声で国際社会でも有名でしたが、登場は2カ月ぶりでした。最近は「粛清か」との見方も出ていたとありましたが、私もずっと出ていないという報道を読んで、それも含めた死亡(68歳だそうです)の可能性も頭に浮かんでいました。
今回の報道でその可能性は否定できた(録画でもなければ)わけですが、金総書記のお気に入りとされる彼女が不在だったことで「2カ月前に総書記に何かあったのではないか」との臆測も招きました。(ここまで※1)
韓国のインターネット上の情報で、これまた憶測にすぎないものですが、
60日ぶりのカムバックが金正日の死去時点と正確に重なり、その間の空白が金正日をめぐる権力闘争過程と関係があるのではいう分析が出ている。 (中略)
この文章の筆者は「リ・チュンヒが消える頃、金正日が死去したのではと推測する人たちがいる」とし「クーデターを基本前提に、金総書記の死去を伝えるリ・チュンヒを見ながら、クーデター勢力が鎮圧されたか、またはこの勢力が政局を完全に掌握したのではという意見が提示される」と分析した。 |
といった内容です。(
<金総書記死去>ミステリー「看板アナウンサーの空白も疑問」2011年12月21日17時56分 中央日報日本語版より)
さらに死去の2日前の15日に訪朝した韓国宗教団体との食事に30分以上、遅刻した労働党幹部は「非常緊急会議があったので遅くなった」と発言しており、このとき既に金総書記は死去していたのではとの疑念もあるようです。(※1)
●2009/6/8 北朝鮮の金正日総書記は本当に崇拝されていたのか?脱北者の話
北朝鮮の民衆から崇拝されているとされる金正日総書記ですが、私は割と信じていませんでした。こういうのは大袈裟に書かれていて、本気で崇拝している人もいるだろうけど、一方で冷めている人も実は多いんじゃないかと思っていました。
ところが、毎日新聞の
韓国:脱北者に目立つ経済苦以外の理由…定着支援施設でを読んで驚きました。北朝鮮が嫌で出てきた脱北者のような人でさえ、総書記を崇拝している節があるのです。
以下、その部分を抜き出すと、健康状態が懸念される金総書記について、黄海北道出身の女性は「家庭で言えば父なので胸が痛い」と語っていたり、経済難についても「(総書記は)人民の実態を知らされていない。部下が悪い」と述べたりしています。飽くまで総書記は悪くないと思っているみたいです。
「06年の(最初の核実験の)時は大きな祝賀行事があり、誇らしい気持ちもあったが、生活は何も変わらなかった」、「(核実験は)人民には何の利益もない」などと否定的な言葉もありましたが、前述の発言からするとこれも総書記のせいではなく部下のせいと考えているのかもしれません。
もっとも記事タイトルにもある通り、取材した人の中には経済苦での脱北ではなく、「暮らしには困っていなかったが、中国で韓国の様子をテレビで見てあこがれた」(中国の放送が見れるそうです)という理由で出た人もいるので、あまり逼迫(ひっぱく)感はなかったのかもしれませんが。
プロパガンダってのはすごいなぁと思いつつ、今日はここで終わりにします。
●2012/2/12 金正日総書記の最近の北朝鮮での評判
上記で、北朝鮮が嫌で出てきた脱北者のような人でさえ、総書記を崇拝している節があることに驚いたと書きました。ところが、最近の記事を読むと、総書記への不満が随分溜まってきているようです。
まず、
北朝鮮デノミ:住民たちの不満高まる(2010年02月04日 朝鮮日報)によると、米国の自由アジア放送(RFA)は内部消息筋の言葉を引用し、「以前は住民も(金総書記を)少しは擁護していたが、今では“金正日”と呼び捨てにしている」と伝えたそうです。
また、ある在中韓国人は朝鮮日報との電話インタビューで、「最近会った北朝鮮の役人が金総書記のことを“狂人”とののしっていたのに驚いた。貨幣改革前は、(朝鮮族が)金総書記をけなすと激怒していた役人だ」と話したそうです。
これ以外にも、
北朝鮮、やせこける兵士たち 「変化」に期待する住民(IZA 2009/02/21)でも、その不満が高まっている様子がわかります。
この記事によると、昨秋9月、金正日総書記の健康異変説が流れたときには、絶望の中、待ちに待った変化への期待として「やった」という感じで話は一気に国内に広まったそうで、密告のため公には話せないものの、仲間内では興奮を隠せない口ぶりで「次の時代」への関心を話す人もいたそうです。そして、その後金総書記の健在ぶりが伝えられると、それが失望へと変化したようです。
さらに
北朝鮮の商店、外貨取引を再開…韓国情報(2010年2月9日 読売新聞)でも、北朝鮮の住民の間では金正日総書記を「こいつ」と呼んで非難していることや、ある脱北者男性が「デノミ前は不満があっても、米国や韓国のせいにしていたが、今回は違う」と話していることを伝えています。
以前では、「プロパガンダってのはすごいなぁ」という感想を述べましたが、やはりそれでも騙しきれないものはあるようです。この流れが一過性のものでないことを願いつつ、今日はここで終わりにします。
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