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医療問題 ~混合診療、国民健康保険、国民皆保険制度~


2022/09/07まとめ:
●「株式会社による病院経営」では金儲け優先になる可能性を危惧 【NEW】


●医療問題 ~混合診療、国民健康保険、国民皆保険制度~

2022/08/12追記:医療関連の話をまとめよう…と思いました。しかし、見直しに時間がかかりすぎて終わりません。まとめるどころか逆に短くなってしまったのですが、とりあえず、見直しが終わったところまで再投稿していくことにしました。

2012/1/2:今さら…ということになりますが、1年以上前の日経ビジネスオンラインの医療特集をまとめて読みしましたので、感想をちょこちょこと…。まず、混合診療は原則解禁すべき? (日経ビジネスオンライン 木村 憲洋 2010年6月1日) という記事。混合診療とは、同一の疾患に関する不可分の治療の中で、医療保険の適用となる医療サービスと、保険適用にならない医療サービスを併用することだそうです。

 日本では「混合診療は原則的には認められていません」ので、「保険適用の医療サービスと保険適用外の医療(自費診療)を併用すれば、通常なら3割負担で済む保険適用部分も全額自費診療扱い」となるようです。厚生労働省の禁止の理由は、以下の通りでした。

(1)有効性や安全性が担保できない怪しげな診療が横行する恐れがある
(2)自由診療が一般化することで経済力によって受けられる医療に格差が生じかねない

 一方、「解禁派が訴える最大のポイントは、医療機関が患者から自由に徴収できる費用の範囲を拡大すれば、患者ニーズの多様化に対応できるという点」だそうです。これは事実なら理解できるものです。ところが、積極的な解禁派は別の理由で規制緩和を訴えている模様です。

 記事によると、医療財政の立て直しのために、現在保険の対象になっている医療サービスを保険から除外する動きが活発化。「いわゆる“規制改革派”が混合診療の原則解禁を強く求めたのは、それによる医療給付費削減が大きな狙いの1つ」だったそうです。

 これは要するにお金を稼ぐため。動機が不純すぎでしょう。患者の視点なんかは全然ありません。もちろん 医療財政自体が潰れてしまえば、そりゃあみんな困るので「崩壊させないために」は一応大義名分にはなり得ます。ただ、ちょっとズレているような気がしますね。

 なお、国民皆保険制度は堅持すべき? (日経ビジネスオンライン)では、混合診療の問題点として、以下のような別の理由を挙げていました。こちらの方が説得力があるかもしれませんし、先程の金儲けのための規制緩和・混合医療解禁・自由診療推進に繋がってきます。

「混合診療がなぜ皆保険制度の脅威になるかというと、まず、患者の経済力により受けられる医療に大きな差が生じ、同時に、医療機関側が利益を期待できる保険外診療に力を入れる結果、貧富による“患者選別"が広がる恐れがあるから」

 ただ、実を言うと現時点でも「保険外併用療養費制度では、国が認めた医療サービスに限って、混合診療が認められ」ているようです。とりあえず、抜本対策をせず、この活用を増やすべきというところでしょうか?このやり方なら現在保険の対象になっている医療サービスを、国が認めた保険外医療サービスにすることもでき、医療給付費削減もできそうです。

2022/08/12追記:この頃の私はもっと自由診療をできるようにすべきでは?と疑問に思っていました。ところが、その後、いろいろ読んでいて知ったのは、そもそも自由診療にはニセ科学が多いということ。効果がきちんと確認できた医療は保険適用となるしくみのため、自由診療がニセ科学だらけになるのは必然でした。

 ということで、そもそも自由診療はニセ科学が多く含まれるのだから、ニセ科学による治療を普及させないためにも自由診療に制限を与えるべき…というのが一番納得できる理由です。ただ、逆になぜかどの記事でもこういった理由は説明しておらず、前述のような別の理由になっていました。


●国民皆保険制度が医療費の増大を招く…という誤解 逆に少ない?

2012/1/2:ここから上で少し引用した国民皆保険制度は堅持すべき? (日経ビジネスオンライン 木村 憲洋 2010年3月9日)を再び。今度ももう少しじっくり見てみます。ここでは、日本の国民医療費が年々増え続けて、すでに保険料と窓口負担でまかなえる額を大幅に超えていることを指摘しています。医療費を保険料で払っているというのは誤解で、税金が投入されているようです。

<07年度の場合、保険料でカバーしているのは全体の約50%、窓口負担でカバーしているのは約15%に過ぎません。残りの35%は、公費(税金)を投入しているのです。医療費の伸びが大きな問題となっているのは、増え続ける公費負担分が国家財政を圧迫しているからです>

 なお、よく言われる「皆保険制度がシステムとして医療費の増大を招きやすい」というのは嘘だといいます。なぜか?と言うと、そもそも「日本の総医療費の対GDP比は8.0%で、これはG7の中で最低の数値」であるため。医療費が増えるどころか、最低の少なさであるようです。

 「日本の窓口負担は被保険者本人なら原則3割で世界的に見ても高い水準ですが、これは、モラルハザード対策の一環として相応の負担を求めているとの見方もできます」ともあります。これはこれで問題である可能性が出てきますが、皆保険制度が逆に医療費を抑えている可能性すらあるという見方みたいですね。


●医療費を保険料と窓口負担で払っている…は誤解 実は税金投入

 一方で、その前にあった話で問題だと言えるのは「35%は、公費(税金)」というところでしょう。窓口負担と 保険料で支払っている…というのは大きな誤解なわけですから、保険料が不当に安すぎるのだと考えられます。ここらへんは、逆に税金のみで払っているところもあるそうで、以下のような話がありました。

<先進国の中には、英国のように、公費のみを財源として公的保険を運営している例もあります。保険方式と税方式のどちらが優れているかは一概には言えません。
 保険方式は相互扶助の精神に基づくシステムで、非常に大まかに言えば、医療リスクの高い高齢者をリスクの低い若年層が支えるという考え方です。税方式に比べれば給付と負担の関係が明確になるという長所はありますが、高齢化が進めば多くの高齢者を少ない若年層が支えねばならず制度の継続性が危うくなりますし、保険料の未納・滞納者が増加すれば、不公平感も拡大します。また、医療においても、最低保障分は公費で賄うのが筋といった意見もあります。
 ただ、日本において、財源確保のためにこれ以上保険料を上げるのは、現実的には難しいかもしれません>

2022/08/29追記:上記の説明は、日本が採用している保険方式は少子高齢化の状況では若者圧迫である…といった書き方。ただ、税金方式でも結局、税金を支払っているのは主に現役世代である高齢者以外であるため、圧迫されるのは同じなんですね。税金方式でも根本的な解決にはならないと思われます。

 最初のとき年金を含めて、現在の高齢者が若いときに保険料が不当に安すぎたのでは?といった話を書いていて今回の見直しで削除しました。私は「若いときに支払った医療保険や年金の保険料が高齢者になって戻ってくる」というしくみだと思っていたんですよ。ただ、これはどうも誤解のようです。

 実際には、医療保険も年金も主に今現在必要なお金だけを支払う…という考え方だった模様。こうなると、高齢者が少なかったときの現役世代、つまり現在の高齢者の過去の保険料が不当に安すぎて、高齢者が多い現在の現役世代は保険料が高すぎる…ということが起きます(年金も税金が投入されています)。

 そもそも将来に備えよう…という制度設計でなかったため、問題が起きたのは必然でした。「今さえ良ければ良い」という考え方で、起こるべくして起きた事態ですね。また、以前より多い高齢者を以前より少ない現役世代で支えるという無理ゲー状態であるため、良い解決策がない…ということにもなってしまっています。


●規制緩和で医療は崩壊する 混合診療の全面解禁、株式会社による病院経営

2013/1/29:<自民党政権の復活でどうなる日本の医療!?「景気回復」の大号令で行われる規制緩和の行方>(2013年1月10日 早川幸子 [フリーライター] ダイヤモンド・オンライン)は、タイトルで分かるように記事では安倍晋三政権がどう、自民党の復帰がどうと書いていおり、一見、この時期しか通用しない話に思えます。
http://diamond.jp/articles/-/30344

 ただ、ここで出ている話は安倍政権になったから言っている…というものではなく、医療に携わる人は以前から同じようなことを言っていたんだろうな…という内容。さらに未来においても同じようなことを言い続けるだろうと思われますので、後々になっても読める内容だと思います。

 で、どんな話か?と言うと、混合診療の全面解禁、株式会社による病院経営などの規制緩和の話でした。<規制緩和は、その分野に新たな企業が参入できたり、自由な経済活動ができるなどプラスイメージが語られることが多い。しかし、いいことばかりなのかは大いなる疑問だ>としています。

 さらに、<もしも、医療分野で規制緩和が行われた場合、国民が受ける医療にはどのような影響が出るのだろうか>と規制緩和を行った後に起きることをいろいろと説明。結論としては規制緩和は悪いことだらけであり、日本の医療は崩壊する…という、最高レベルに極端な結論になっていました。


●医薬品の値付けの自由化・審査の短縮化はまずい…その後問題発生

2022/09/03追記:規制緩和で問題とされていたもののひとつは、「医薬品や医療機器の値付けの自由化、審査の短縮化」でした。これは今になって読み直してみると、確かに問題だと思うもの。というのも、実際に、ここらへんに関わる問題が後の日本で発生しているためです。

・医薬品や医療機器の値付けの自由化、審査の短縮化
<日本の医療費はひとつひとつ国が決めており、全国一律の公定価格だ。医薬品や医療機器も同様で、これが日本の医療費を低く抑える役割を果たしている。
 しかし、規制が撤廃されて企業が自由に価格を決められるようになると医薬品や医療機器が高騰して、健康保険財政を圧迫するようになる。その結果、保険料の値上げが起こったり、効果が認められても高額な医薬品は健康保険を適用しないといった措置がとられる可能性が出てくる。
 新しい医薬品や医療機器の承認までの時間は以前より短縮されているものの、さらなるスピード感を求める声もある。しかし、薬や医療器材は命に直結するので審査は早ければよいというものではない。場合によっては患者に健康被害をもたらす可能性もある>

 上記では、日本は公定価格のおかげで医薬品の価格は抑えられている…という主張だったのですが、後にこの制度でも価格を抑えられない…という事態が発生して問題になりました。小野薬品工業、日本だけ高いオプジーボで荒稼ぎ 英国の5倍の薬価で書いた話です。

 これ自体は今の制度に不利な話。ただし、高くなった理由は開発費を医薬品の価格に転嫁したためでしたので、企業が自由に価格を決められるようになると価格が抑えられるというものではなく、それどころか逆に高価格医薬品が大量に出るのは確実。自由化どころかさらに価格を抑えるしくみが必要でしょう。

 また、「審査の短縮化」絡みでも危なさを見せました。こちらは、日本製・メイドインジャパンが海外よりすごいというのは本当なのか?で書いた話です。審査短縮のために緊急承認の制度ができて、初の日本製・新型コロナウイルスの経口薬がその審査の対象となったものの、承認されませんでした。この審査がかなり危険なものだったのです。

 少人数での治験でこの薬は、当初発表していた評価項目だと全く結果が出せませんでした。なので、より大規模な治験を行って精度を上げる、薬を開発し直す…などすべきでしたが、なんと結果が出てから評価項目を変更し、なおかつ強引に薬の効果を主張。実際の効果とは無関係に承認ありきになっていました。

 幸い承認は見送られたものの、日本ヤバイ…と思ったのが、このめちゃくちゃな主張に一部同調する人がいたことです。一部マスコミも「何のための緊急承認なのか」「安倍元首相が期待した薬なのに」などと、承認すべきだったと報道。時間短縮が目的化して、効果がなく副作用のみある薬が承認される危険性があります。


●「株式会社による病院経営」では金儲け優先になる可能性を危惧

2013/1/29:ダイヤモンド・オンラインの記事では、すでに紹介したように「株式会社による病院経営」と「混合診療の全面解禁」についても問題視されていました。また、「株式会社による病院経営」は自由診療と絡むものですし、金儲け優先への危惧という意味では前述の医薬品の値付けの自由化と根本はいっしょです。

・株式会社による病院経営
<(略)通常の株式会社による病院経営が許されるようになると、患者の治療よりも株主への対応が優先される可能性も捨てきれない。株主に支払う配当を確保するため、本当に必要な治療を省略してコスト削減したり、反対に不要な検査や治療を行ったりするのではないかと心配する声もある。(略)
 さらには価格の決まった健康保険では稼げる利益に限界があるため、自由診療が勧められて患者の負担は増大する危険が指摘されている>

・混合診療の全面解禁
<新しい治療法や医薬品は評価が定まらず、効果が未知数のものも多い。中には健康被害を及ぼすものもあるので、日本では一定の規制を設けて国が有効性と安全性を認めた治療法や医薬品しか健康保険を適用していないのだ。
 混合診療を全面解禁すると、評価の定まらない治療、効果の疑わしい治療も出回るようになり、医療の安全が保てなくなる。また、本当によい治療ができたとしても、医療機関や医薬品メーカーが「自由診療のほうが儲かってよい」と判断すれば、健康保険の適用申請を行わなくなり、保険診療では医療技術の進歩を享受できなくなる可能性がある>

2022/09/07追記:私は当時「既得権益側の意見であることに注意」としていて、規制緩和にある程度賛成でした。ただ、前述の通り、制度のしくみ上、ニセ科学が自由診療に含まれてしまうなどの理由で、現在読み直すと懸念は妥当かな…というところです。


【本文中でリンクした投稿】
  ■小野薬品工業、日本だけ高いオプジーボで荒稼ぎ 英国の5倍の薬価
  ■日本製・メイドインジャパンが海外よりすごいというのは本当なのか?

【関連投稿】
  ■日本が医師不足は嘘「医学部新設がむしろ医師不足を引き起こす」と医師会が主張し、同志社大学に反対
  ■がん保険の必要性の検討材料
  ■医療・病気・身体についての投稿まとめ

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