●「輸出立国モデル」は無理がある 輸出が増えて輸入が増える構造
2012/1/3:
円安に良いことなど一つもなく、悪い影響ばかり 強い円論などにまとめた<円高のメリット ~「円高は良いこと」論の詰め合わせ~>と対になる「輸出立国日本はもう無理」論のセットを。まずは向こうでも少し出てきたとりあえず、
生産は回復したが貿易赤字は拡大――大きな曲がり角にきた「輸出立国モデル」 (登録要 ダイヤモンド・オンライン 2011年10月6日 野口悠紀雄)という記事からです。
貿易赤字は拡大したのは、輸出が減少した半面で、輸入が継続的な増加を続けていること。このうち、輸出が減少したのは、自動車の輸出が減少したことの影響が大きいため。一方、輸入が増加しているのは、鉱物性燃料の輸入が増えているからです。
問題は、どちらも、一時的なものだけでなく、構造的要因を含んでいるということ。また、前回も引用したように、<円高が円ベースの輸入価格上昇を抑えていることに注意が必要である。仮に円高が進まなかったとしたら、燃料輸入額はさらに増加していたことだろう>ということで、円高のおかげでむしろ救われているという味方です。
前述の通り、輸出が減少したのは、自動車の輸出が減少したことの影響が大きいためでした。そして、これが長期的なトレンドだろうというのは、「輸出立国日本はもう無理」論と関係。組み立て、将来的には部品も海外移転の傾向があり、輸出は増えないとされていました。確かに長期的にはそうなるでしょうね。
●アメリカの知日派教授「アメリカでは日本のニュースはほぼない」
これ以上にショッキングなタイトルの記事が、だいぶ前に日経ビジネスオンラインで出ていました。
日本は変われない(2010年5月27日)というものです。話しているのは、ニューヨーク大学のエドワード・リンカーン教授。日米関係を安全保障ではなくビジネスの視点で語れる知日派の重鎮なんだそうです。
エドワード・リンカーン教授は、アメリカの日本への関心について、<日本について学びたいという興味は依然としてあるということです。中国への興味はもっと急速に高まっているのかもしれません。だからといって、日本への興味が著しく低下しているわけではない>としていました。
大学では日本語学習が増えているが、高校では減るところもあるとのことで一進一退。全体的なところで言えば、以下のような状態だそうです。
<さて、1997年以降、何か起きたでしょうか。ずばり言えば、何もありません。日本に関するニュースは米国でほとんど報じられなくなりました>
<日本では素晴らしいことも、とんでもなく悲惨なことも起きない。ニュースがなく、退屈なのです>
●いつまで「モノ作り」なんて言ってるの?それは新人のやる仕事
上記は今日のテーマに関連する話ではありません。この後、輸出立国に絡む「モノ作り」の話が出てきました。かなり日本人にとっては耳に痛い話をしています。でも、これは正論だとも思います。
<分野にもよりますが、日本は米国内で「インビジブル(見えない)」になっているように感じます。携帯電話のような製品では全く存在感がありません>
<日本の役人や企業人に日本の強みは何かと聞くと、いまだに「モノ作り」という答えが返ってきます。日本は何が得意ですか?モノ作りです──とね。
でも、モノを製造するのが得意なのは日本だけではありません。そろそろ現実を直視したほうがいい。日本人だけがモノ作りの特殊な才能と技能を持っているわけではありません。韓国や中国、それに米国にだって良いモノは作れます。人件費の安い国に移っていくのは製造業の宿命です。設計やデザインに技術者をシフトさせるべきなのに、そういう声はほとんど聞こえてきません>
mizuiro_ahiruの日記さんというブログの記事ですが、
製造業は新入社員の仕事(2011-09-14)は国を擬人化しておもしろくこのことを書いていました。
<米先輩「お前が成長しないのは、いつまでも製造業ばかり特別扱いして、『脱工業化』を悪いことのように決めつけて新しい仕事を憶えないからだ。昔覚えた仕事の改善提案ばっかりでお茶濁して、実はこの20年間、新しいことに一番挑戦してないのはオマエだよ。自覚してる?。」>
<米先輩「ていうかオマエさぁ、いつまでも新入社員の仕事ばっかしてて、このままずっと給料もらえると思ってないよね?。」>
●中国も人件費が上がったから製造業も逃げる…じゃあ、日本は?
コメント欄を見ていると単純化し過ぎという批判もありますが、概ねわかります。ほぼ同じなら安い給料の人にやってもらうのが普通で、誰にでもできることにわざわざ大金は出しません。何度か書いていますが、製造業は付加価値を増やすか、徹底的に自動化して人件費を減らす(でも、同時に雇用も増やせという無茶を言う)かしないと、不利になるのは仕方ありません。
ずいぶん昔ですが中国も人件費が上がったのでベトナムへ……という記事を見ましたが、今検索かけると、<安い労働力、優秀な人材を求めてベトナム、タイ、中国の内陸部などに入り込んできたが、今後日本企業は、ミャンマーに向かうであろう> とさらに移転が進むという話までありました。
これは、
辛抱強く手先が器用なミャンマーの人件費は日本の100分の1 2011.12.18 16:00(週刊ポスト2011年12月23日号)という記事の話。言っているのが大前研一さんですので当てになりませんが、人件費の安さが強力な武器になるというのは認めなくてはなりません。
それに負けない武器を持つのだという気概のある企業はもちろん応援したいですし、そういう努力する企業というのはそれ以外の危機に対応できる可能性のある良い企業です。しかし、円高がどうのこうのと誰かのせいにばかりしている企業を、今のまま残そうというのは無茶な話でしょう。
当たり前ですが、人々の従事している仕事というのは、1000年前と今では違います。それは同じく100年前とも違いますし、それどころか10年前とだって違うでしょう。時代に応じて仕事の種類・割合が変化するのは当たり前で、むしろ新しい動きがあるから、人類は発展してきました。
昔のやり方をそのまま残そうと固執しても無理ですし、むしろ無駄で、成長の妨げではないかとすら思います。いい加減、発想を転換することが必要でしょう。
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