●談合・カルテルを密告すれば制裁しない!密告推奨の課徴金減免制度
2020/10/20:リーニエンシー、またはリーニエンシー制度とも呼ばれる、課徴金減免制度があります。
日本大百科全書(ニッポニカ)の解説によると、日本の場合は、事業者が自ら関与した入札談合やカルテルの事実を公正取引委員会(公取委)へ申告し、証拠資料を提出することにより、制裁措置が減免される独占禁止法(独禁法)上の制度です。
早期に申告した事業者ほど優遇され、調査前と調査後あわせて最大5社(調査後は最大3社)まで減免を受けられます。早いもの勝ちなんですね。1番目なんかは、申告した事業者は、違反行為により得た不当利益として徴収される課徴金が全額免除され、刑事告発の対象からも外されます。
イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国やアメリカ、オーストラリア、韓国などでは広く普及し、国際カルテル事件の摘発に成果をあげていました。ただ、日本では導入が遅く、2006年から。事業者に抜け駆けを奨励する制度は定着しにくいとの懸念があったものの、2015年3月末までに減免を申請した件数は836件にも上っています。
●課徴金減免制度は悪い人に金を出すのが問題点…という誤解
誰もが居心地の良い東大へ ゲーム理論研究の第一人者に聞く 松井彰彦教授インタビュー | 東大新聞オンラインでは、ゲーム理論が専門で「障害と経済」というテーマで研究している松井彰彦教授(経済学研究科)に話を聞いています。その中で、実際に利用されているゲーム理論の例として、リニエンシー制度を挙げていました。
<ゲーム理論における囚人のジレンマを応用した、リニエンシー制度というものがあります。カルテルや談合を密告すると、その順番に応じて課徴金が減免される制度です。これは悪い人にお金を与えているようにも見えますが、実際には密告を増やすことで、そもそも悪いことをできなくする制度です>
上記のように、課徴金減免制度は悪者に利益を与える制度だという不快感があり、これが制度のデメリット・問題点という理解の人もいるでしょう。ただ、それは誤解であり、大局的には世の中を良くする制度だという説明ですね。この誤解に関しては、この後もう少し日本大百科全書(ニッポニカ)の解説から抜き出していきます。
ただ、その前に別の話も。日本人にはそもそも密告こそが悪いと考える人も多いかもしれません。抜け駆けを奨励する制度は定着しにくいとの懸念があったのもそのせいでしょう。例えば、柔道の暴力問題があったとき、右派の政治家や右派の新聞は暴力をふるっている疑いのある側ではなく、内部告発者側を匿名で卑怯だと叩いていました。どっちの味方なの?という話です。
●制度にメリットがある理由 そもそもカルテルは密告なしではバレない!
さて、悪い人に「お金を与えている」制度ではなく、そもそも悪いことをできなくする制度…ということについて。まず、課徴金、いわゆる罰金が全額免除もしくは減免されるということであり、直接的に「お金を与えている」というわけではなさそうです。この説明では、たぶん違和感は消えないでしょうけどね。
また、このような制度があった方が制度がないより良いだろうというのは、そもそもカルテルや談合は密告がないとほとんど証明できないためです。きれいごとを言って犯罪を解決できない世界と、割り切れないところがあっても不正を減らしていける世界のどちらが良いか?といった感じでしょうか。
<カルテルに対する制裁はたいへんに厳格であり、カルテルは事業者間の信頼関係を前提として秘密裏に実施される。そのためカルテルや入札談合は証拠収集が難航し、摘発できないという特徴があった。課徴金減免制度は、1番目に申告した場合の優遇措置が突出していることから、不正に関与した事業者に1番目に「自首」する強い動機を与えることで、入札談合やカルテルを崩壊させ摘発を容易にするねらいがあり、司法取引に類似した制度といえる>
●密告しなかった取締役に訴訟も…談合をしづらい世の中になるというメリット
方向性が異なる話としては、どうも密告したからと言って、必ず減免されるわけではないというところも現実としてはあるようです。前述の通り、減免を申請した件数は836件だったのですが、うち、減免されたのは245社に過ぎないとのこと。これはイメージと異なりますよね。
それから、おもしろいと思ったのが、取締役らが違反行為を自主申告しなかったことに対し、制裁減免の機会を逃したとして、株主から株主代表訴訟・賠償請求訴訟を起こされるケースもあるという話。「密告すれば減免されたのになぜしなかった?」という話ですね。これは良い方向性だと思いました。
というのも、取締役がカルテルや談合を密告しなかったことで賠償請求される…というプレッシャーがあれば、密告しやすくなりますし、そもそもカルテルや談合に参加しないという判断も起きやすくなります。やはりこの制度が世の中を良くしているという話でしょう。なので、株主の方にはガンガン訴訟してもらいたいところです。
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