がんに関する話をまとめ。<従来の胸部X線検査より良い肺がんの匂いがわかるがん探知犬>、<困り物のウイルスにがん治療をさせようというすごい発想>、<病気の匂いがわかる犬 マラリア、てんかん発作などの病気も>、<犬は病気以外にも災害救助や爆発物・麻薬・象牙の発見できる>などをまとめています。
5番目に追記
2022/10/23追記:
●胸部X線検査と胸部CT…証拠があって推奨さているのはどちら? 【NEW】
●従来の胸部X線検査より良い肺がんの匂いがわかるがん探知犬
2012/1/8:がんに関する話題が溜まったので、それで一つ。まずはインパクトの強い
胸部X線検査より、喀痰検査より、診断感度が高い?肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」登場 がん特有の匂い物質と呼気検査(ダイヤモンド・オンライン、2011年11月28日 井手ゆきえ)から。
欧州呼吸器学会誌に、吐いた息から肺がんを嗅ぎ分ける「がん探知犬」の研究結果が報告されました。それによると、肺がんに特有の匂いを嗅ぎ分けるように訓練された犬は、肺がん患者の呼気サンプル100例中71例を「陽性」とし、健康な人の呼気、COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の呼気400例に対しては93%に「陰性」の判断を下しました。
一般診療で胸部X線による肺がんの検出感度は80%、喀痰検査は40%前後。したがって、93%である「がん探知犬」の診断は、それ以上の結果だと言えます。
●日本のラブラドールレトリバーも9割以上の確率
実を言うと、臭覚に優れた犬が「がんの匂い」に反応することは以前から知られていたそうです。最初の報告は1989年に医学雑誌「Lancet」に掲載された論文。コリーとドーベルマンの混合種の雌犬が飼い主のホクロに異常な関心を示したため、不審に思った飼い主が受診したところ、悪性黒色腫が発見された例が紹介されていました。
これが世界中で大反響を呼び、同様の報告が相次ぐことに。なかには通常の尿検査で「陰性」だった患者が探知犬の「陽性」判定を受けて、精査したところ腎がんが発見されたという例もあるそうです。
日本でも研究があり、千葉県南房総市の「セントシュガー がん探知犬育成センター」では2005年から研究が続けられています。今年初め、医学誌「Gut」に報告された九州大学医学部第二外科のグループとの共同実験では、ラブラドールレトリバーの「マリーン」(9歳、雌犬)が9割以上の確率で大腸がん患者の呼気サンプルを嗅ぎ分けたといいます。
●それでも「がん探知犬」が実用化されない理由
猫が人をなめる意味で書いたように、匂いなどから人間がわからない情報を得る動物はいます。実家の犬も風邪を引いて寝ていると、盛んに匂いを嗅ぎますので、何かいつもと違いがあるんじゃないかと思っています。
そんな感じで結構動物好きな私としては、健康診断で犬にがん検知をしてもらえると嬉しいのですけど、検診施設に「がん探知犬」が配属される…なんてことは、現実にはあり得ないとのこと。犬好きには残念な報告なんですけどね。
この理由は臭覚の個体差や特殊訓練に費やす時間とコストが問題であるため。研究者も今回証明されたがん種特有の匂い物質「揮発性有機化合物」の特定の方に力を入れており、すでに一般的に使われている匂い感知器の「電子鼻」を医療用に改良することが想定されているみたいです。
●困り物のウイルスにがん治療をさせようというすごい発想
次もダイヤモンド・オンラインで、
がん細胞だけに感染し、がん細胞だけを死滅させる ウイルスはがん制圧のパートナーになり得るか? ウイルス療法という記事。なんと普通は病気の原因であるウイルスが、がんをやっつけるというお話です。
ウイルスはヒトのような宿主の細胞に寄生し、自分のDNAあるいはRNAを移植、宿主細胞のエネルギーやタンパク質を借りて自分の大量コピーを作る物質です。寄生(感染)された細胞は、ウイルスの大量コピー過程で自前の遺伝子の設計図が書き換わってしまい、さまざまな機能不全を起こして死滅してしまいます。
この恐るべき細胞殺傷力をがん細胞だけに向けられないか、という発想が「がん治療用ウイルス」を生み出しました。ちょっと怖いですけどね。
今現在、実用化に近いのはカナダの企業が開発したウイルスで、欧米で抗がん剤との併用試験の最中だそうです。国内でも、東京大学医学部脳神経外科のグループがヘルペスウイルスを改変した「G47Δ」を使い、脳腫瘍の一種である膠芽腫を対象に臨床研究を行っています。安全性や抗腫瘍効果を慎重に検討している段階ですけど、期待は大きいとのこと。
●胸部X線検査と胸部CT…証拠があって推奨さているのはどちら?
もう一つ、これもインパクトあるのでは?という
肺がんX線検診で死亡率低下せず 米で15万人調査 2011年10月28日9時25分 朝日新聞という記事を読みました。(2022/10/23追記:最新の科学的根拠については、この次の小見出し部分で補足しています)
年に1度、X線による肺がん検診を受けても、死亡率低下にはつながらないとする大規模調査の結果を、米国立がん研究所などが米医師会雑誌(JAMA)電子版に発表しました。55~74歳の約15万人を対象に、半数は4年間連続でX線検診を受けた人、半数は何も受けなかった人に無作為に分けて、肺がんによる死亡との関係を13年間、追跡調査したものです。
実を言うと、そもそも国際的に肺がん検診を実施している国はほとんどないのだそうです。ただ、日本はその例外の珍しい国。国が年に1度の肺がん検診を自治体に勧めています。科学的根拠がはっきりしない検診を続けるべきかどうか、議論となりそうだ、と記事ではしていました。
2022/10/23追記:「本当に意味ないのなら、続ける理由なんて一つもないんですし、さっさとやめれば良いんですけどね」と書いてしまっていたのですが、これはまずかったですね。新しい説の方が良さげに見えるものの、新しいものは逆に言うと、証拠不足が多いとも言えるためです。そこで、肺がん検診の補足として、
肺がん がん検診ガイドライン | 社会と健康研究センターを読んでみました。ガイドラインでは、現状最も科学的根拠の蓄積された手法が採用されているのが一般的です。
このがん検診ガイドラインによると、「非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法」は証拠があって推奨。逆に推奨されないものもあり、「低線量の胸部CT」については、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であると明記されていました。
・非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法
<死亡率減少効果を示す相応な証拠があることから、対策型検診及び任意型検診における肺がん検診として、非高危険群に対する胸部X線検査、及び高危険群に対する胸部X線検査と喀痰細胞診併用法を推奨します。ただし、二重読影、比較読影が必要です>
・低線量の胸部CT
<低線量の胸部CTによる肺がん検診は、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、対策型検診としては勧められません。任意型検診として行う場合には、受診者に対して、効果が不明であることと、被曝や過剰診断などの不利益について適切に説明する必要があります。なお、臨床現場での撮影条件を用いた非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではありません>
●新型コロナウイルスでも犬が感染者を特定…その正解率は?
2020/08/04:新型コロナウイルスでも犬の話題がありました。ドイツ・ハノーバー医科大学の研究者が、新型コロナウイルス感染症の感染者と被感染者の唾液や粘液を嗅ぎ分けるよう、犬を訓練することが可能かどうかを実験しています。実験に参加した犬はドイツ連邦軍に所属する探知犬だとのこと。なので、一から特訓したわけではなく、たぶんもともとプロ(?)の犬だったのだと思われます。
このドイツ連邦軍に所属する探知犬には、まず1週間にわたる訓練を実施しました。その訓練の後に、犬の前にランダムにサンプルを提示し、正しく匂いを嗅ぎ分けられるかをテスト。感染者と非感染者を合わせて嗅がせたところ、訓練された犬による嗅ぎ分けの正解率は94%でした。
犬が新型コロナウイルスを嗅ぎ分ける理由について、Maren vonKöckritz教授は「病気になった患者は代謝が変化します。犬はこのような代謝の変化を嗅ぎ取っていると考えています」と説明。以前の記事ではわからず、知りたいと思っていたメカニズム的な話もここで出ていました。
●病気の匂いがわかる犬 マラリア、てんかん発作などの病気も
また、知らなかった!と驚いたのは、がん以外でもすでに病気の匂いがわかる犬の実例があったということ。がんだけじゃなかったんですね。記事では、これまでも、犬はがんやマラリア、てんかん発作の匂いを嗅ぎ分けることが可能だと研究で示されてきたと書いていました。
こうしたことを伝えた記事は、
犬は新型コロナウイルスの匂いを嗅ぎ分けるように訓練可能 - GIGAZINE(2020年07月28日 14時00分)というもの。もともと書いていた話では、訓練にかかるコストを考えると現実的ではないという話でしたので、今回の話もそうなんだと思って読んでいました。
ところが、マラリアの匂いについて研究を行ったロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究者は、訓練がうまくいけば犬は1時間あたり最大250人を評価可能で、病気を診断するための設備が整っていない場所において、このような犬の存在は非常に重要としていたとのこと。可能性が高いかのような書き方でした。
●新型コロナウイルス探知犬、すでに空港に配備されていた!
2021/05/26:前回追記した新型コロナウイルス探知犬に関しては実用性があるといった書き方で、最初のときに書いていた話と違って驚いたのですが、ついに
コロナ探知犬いよいよ、非常に高い成功率、研究 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2021.05.21)という記事が出るようなことになってきました。マジでやるようです。
記事によると、米ペンシルベニア大学獣医学部の研究チームは、犬にも感染の有無を探知できる能力があるかどうかを究明する取り組みを進めてきとのこと。また別の大学の話ですね。4月14日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された論文によると、新型コロナウイルス陽性者の尿や唾液には、犬がそれと特定できるにおいがあることが明らかになったそうです。
犬は96%の確率で感染者のにおいを正しく探知できました。汗が付着したTシャツを用いた現在進行中の実験でも、非常に高い成功率が得られているとのこと。 空港やスタジアムなどの公共の場を巡回して感染者を見つけ出せるかもしれないとして、実用化に期待をかけているようです。
ただ、驚いたのが、すでに活用例があるということ。英国やフランスなどでも、同様の研究が完了または進行中であるだけでなく、フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港では、乗客から感染者を見つけ出すための探知犬がすでに配備されているそうです。すごいですね。
●犬は病気以外にも災害救助や爆発物・麻薬・象牙の発見できる
今回の記事では、このように犬が探知できる病気について、以前よりさらに多くの例を挙げていました。新型コロナウイルス以外ですと、パーキンソン病、糖尿病、いくつかの種類のがん、てんかん発作の前兆、マラリア、その他の病気を早期の段階で見つけ出すことができるといいます。
メカニズムに関してもよりわかりやすい説明があり、人間の細胞の代謝によって分泌される尿、唾液、汗などに含まれる揮発性有機化合物のにおいで新型コロナウイルスの感染者を探知すると書かれていました。ここらへん、 ナショナルジオグラフィックはさすが。また、病気以外に犬の嗅覚を利用している事例も多数挙げていました。
<自然災害の発生時には捜索・救助チームに協力し、軍事行動においては隠れた爆発物を見つけ出す頼もしい仲間となっている。税関では、検査官と組んでドラッグや象牙などの密輸品を捜索する探知犬も活躍している。さらには、密猟者を追跡したり、絶滅危惧種や侵略的外来種を検知することもある>
●従来の方法よりむしろ新型コロナウイルス探知犬が良い理由とは?
再び新型コロナウイルス探知犬の話に戻ります。すでに実用化されているようなのですが、この方法が有効かどうかは、専門家でも見方が分かれているみたいですね。パンデミック(世界的大流行)との闘いに探知犬がどこまで活躍するかについて判断するには時期尚早という見方もあるそうです。
以前と同じで、犬の能力を応用して、人工の「鼻」が開発するという方向性も考えられている模様。これは犬そのものを利用しないやり方です。一方で、犬がむしろ最も適している!といった勢いで評価されている意見は、以下のようなもの。人間にとっても犬に検査してもらった方が、利便性や安全性で優れているという見方でした。
<汗に含まれる感染者のにおいを探知できるよう訓練された犬ならば、人々の列に沿って歩きながら、すばやく感染者を嗅ぎ分けることができる(中略)。しかも、新型コロナウイルスは汗を介して人や動物に感染しないことが複数の研究で明らかになっているので、リスクは最小限に抑えられる>
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