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議院内閣制のメリット・デメリット


 うーん、議院内閣制のメリット・デメリットもうまくまとまっているところがありませんでした。仕方ないので、私が勝手に作り出します。

 なお、以前書いた

  ■首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点
  ■二元代表制の問題点 ~橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長の減税案の例~

 あたりは、参考にしています。

(追記:議院内閣制・二元代表制別々に見るより、いっしょに見た方がわかりやすすかったと思ったので、そちらの形も用意しました。

  ■議院内閣制・二元代表制(首相公選制)の問題点と長所1 ~直接指名~
  ■議院内閣制・二元代表制(首相公選制)の問題点と長所2 ~オール野党・オール与党~)


■メリット

●国会の多数派が与党となり、安定的に政権運営しやすい。

 議院内閣制では国会議員が首相を選びますので、国会で最大多数を占めている派閥の推した人が通常首相となります。よって、首相を支持する与党と国会の最大多数の派閥(連立の場合もある)とが同じになりますので、安定的に政権運営しやすくなります。

 私はこれは議院内閣制の最大の魅力だと考えています。


 ただし、少数政党の乱立などで多数派協議が決裂したりすれば、与党が過半数を占めれない場合はあります。

 また、日本の場合、二院制をとり、かつ両院の権限の強さが近いので、政権は不安定になりやすいです。これはほぼ日本だけの特殊事情だと考えています。


 多数派協議が決裂の例として強烈なのは、政権が不在(政治空白)でも結構何とかなるで書いたベルギーの例です。

 当時の文章をそのまま転記します。

 連立難航、政権なし200日…ベルギーの事情? 読売新聞 2011年1月6日09時06分によると、ベルギーで、昨年6月の総選挙後、各政党による連立交渉が難航し、正式政権が存在しない状態が長期化し、ついに5日で正式政権の不在期間は206日となったそうです。

 これはベルギー特有の事情が存在し、オランダ語を話す北部のフラマン系(人口の約6割、ゲルマン民族、工業化)とフランス語を話す南部のワロン系(同約3割、ラテン民族、農業中心)で、ほぼ二分され、政策が近い政党でも言語圏ごとに存在するため、少数政党が乱立しているためだそうです。


 日本特有の問題としては前回書いた首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点から引用します。

 参議院と衆議院がほぼ同じ力を持っていることも問題だ。このため、衆議院と参議院の過半数を抑えないと自由な政権運営ができない。3年に一度は必ず行なわれる参議院選挙にいつ起こるかわからない衆議院選挙が挟まれ、政権を左右する国政選挙が頻発する。衆議院を勝つだけでは政権を取ったとはいえず、二つの参議院選挙でも過半数を抑えねばならない。つまり、6年のうちに衆参で三連勝しないと安定政権は取れない。一つの国政選挙で大勝すると後の国政選挙では大逆風となる傾向があるのでこれは相当難しい。日本の政権は常に不安定になるような仕組みになっているのだ。



●首相を任期途中解任することができる。

 意見の相違などで与野党の数に逆転が生じたり、あるいは与党は変わらなくても首相に不都合を生じた場合、首相を任期途中で変更することが可能です。

 たとえば、連立政権で連立政党の一部が離脱して、他の野党と協力して多数派を形成した場合(日本であれば衆参両院で)、内閣を不信任にした上で、野党だったメンバーで内閣を作り直すことができます。

 また、まかり間違って与党から見てもどうしようもない首相を選んでしまって「失敗したぁ!」と思ったときにも、内閣を不信任にすることが可能です。

 通常、首相が変わることはネガティブに捉えられることが多いですが、実はこういう良い面もあります。

 よく考えていなかったせいで中途半端に終わって失敗しましたが、与党の一部と野党が協力(と言うほど、連携していなかったのが失敗の原因の一つだと思いますが)して菅内閣を不信任にしようとしたのは、これらの例に近いです。(あれは成功してどうするつもりだったんだろう?と、今でも不思議です。おそらくさらに短命の内閣になったのでは?)


●与党と野党がはっきり分かれている。

 日本の場合は内閣に国会議員を入れる必要がありますが、通常野党からは閣僚を出しません。したがって、野党が内閣を弁護するメリットはなく、チェック機能が有効に働きます。

 また、与党は逆に内閣と極めて近いので、事実上、内閣ではなく与党が政策を決めることもあり得るなど、政策にある程度責任を持ちます。

 これは失敗例を見ないとわかりづらいと思うのですが、国政では例が思いつきませんので、次に書く予定の地方政治(二元代表制)の失敗例をご覧ください。

  ■二元代表制のメリット・デメリット


●極端な政策を行う人物は首相になりづらい。

 直接国民によって選ばれていないので、極度のポピュリスト(民衆に迎合した政治を行う人)や極端な政策を行う人物が首相に選ばれる可能性は比較的少ないです。少なくとも国会議員に支持される程度の政策は掲げていると言えます。

 こちらも同様にメリットだけ聞いてもわかりづらいと思いますので、二元代表制のデメリットを参考にしてください。

  ■二元代表制のメリット・デメリット
  ■既得権益改革とポピュリズム1 ~既得権益批判は安易な道か?~


■デメリット

●国民が直接、首相を選べない。

 国会議員が自党の党首・代表を首相に選ぶことは予想できますので、選挙直後は間接的に国民が首相を選んでいると言えます。

 しかし、首相=与党の党首・代表が辞任して選挙を行わなかった場合には、国民が首相を選んでいるとは言い難くなります。民意の反映という面では、どうしても弱いです。


●行政と立法との権力の分立が不十分となる。

 国会で多数派を維持していて、安定的に政権運営しやすい反面、行政(内閣)と立法(国会)の区別が不十分なため、独善的な政権運営を行うことも可能になります。

 これは三権分立を満たしていないように思えますが、一応三権分立の一つの形ではあります。もう少し詳しくは、

  ■三権分立の問題点1 ~日本の三権分立~
  ■三権分立の問題点2 ~憲法的にはOK~

 あたりを見ていただきたいのですが、権力の分立として不十分とくらいは言って良いと思われます。


●首相が大胆な政策を実行できない。

 基本的に首相となる与党の党首・代表は党の所属議員を中心に選ばれるので国民の都合でなく、議員の都合で選ばれるおそれがあります。

 また、与党の意見に束縛されるため、大胆な政策は取りづらくなります。たとえば、既得権益を大きく損なうような改革は、その既得権層から支持されている議員が反対するため、実現は難しくなります。


 前半については、首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点で書いたものをもう一度引用。

日本の政党はリーダー予備軍を決めて育成していく仕組みがない。(中略)

 皆ある意味「自分こそ総理に」との妄想を持ったまま、政治活動に励む。全員が頑張るのもいいのだが、リーダー選びで微妙な問題を引き起こす。国民のために本当に優れたリーダーを選ぶというよりも、自分に有利な人間を選ぶ。親しいか、大臣や役職にしてくれそうか、というように“自分が引き立つ”ような候補が好まれる。自分より優れた候補にしたら、自分の芽がなくなるから、どこか自分より劣った候補を好む傾向がある。

 私が勝手に作り出した理論ですが、後半の既得権益の部分ももう少し説明します。

 選挙で過半数を取るほど大きな支持団体というのはありませんが、支持団体はごく小さくても威力を発揮することがあります。たとえば、選挙で接戦である、あるいは無党派層などの浮動票が多いなどの場合、あてにできる票というのは重要性が増します。

 それから、記名式の比例代表や、中大選挙区の議員の場合、得票が少なくても当選する=1票の占める割合が大きいとなるので、やはり既得権益を持つ団体の票=組織票が効果を発揮しやすくなります。

 そのため、選挙に圧倒的に強い議員でない多くの議員は既得権益の影響を受けやすく、その支持が必要な首相も既得権益に配慮した政策が必要となります。


●独特の視点を持った人・フレッシュな人が首相になりづらい(1/15追加)

 前項とも関係しますが、独特の視点を持った人・フレッシュな人が、そもそも首相の前の段階である有力与党の党首・代表となることが少ないです。

 若手がなりづらいという傾向はイギリスと比較すると日本固有の事情であり、フレッシュな人というのも同様のことが言えるかもしれませんが、システム的になりづらいという点もあると思います。


 なぜかと言うと、党首・代表は議員の中から選ばれますので、どうしても議員として経験を積んだ人が選ばれます。議員として経験を積むことはもちろん良いことなのですが、その間にフレッシュさを失い、思考が保守的になりやすいです。

 アメリカ大統領の予備選候補者を見てみると、議員出身以外に知事からの転身の多さが目立ち、政界の経験がない人すらいます。知事がいきなり首相になれそうな党の党首というケースは日本では今のところほとんど見られず、議院内閣制を取っているところではなかなかなりづらいと言えそうです。


 うー、難産でしたが、こんな感じです。

 この後、二元代表制のメリット・デメリットもやりたいのですが、それもいっしょに見た方がわかりやすいと思います。

 しかし、二元代表制の長所(あるいは短所)と議院内閣制の短所(あるいは長所)は裏表、また、議院内閣制の長所と短所も裏表だと言える気がします。


 まあ、完璧な制度なんてないってことですね。

 続編
  ■二元代表制のメリット・デメリット
  ■既得権益改革とポピュリズム1 ~既得権益批判は安易な道か?~
  ■既得権益改革とポピュリズム2 ~橋下徹大阪市長はポピュリスト?~

 関連
  ■首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点
  ■小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~
  ■二元代表制の問題点 ~橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長の減税案の例~
  ■政権が不在(政治空白)でも結構何とかなる
  ■三権分立の問題点1 ~日本の三権分立~
  ■三権分立の問題点2 ~憲法的にはOK~
  ■その他の政治(全般)について書いた記事

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