「法律で祝日を増やしても、実は消費は伸びない」(2012/1/12)という話と、「景気対策で祝日追加に意味なし むしろ祝日が不景気を作り出す?」(2016/11/22)という話をセットにしました。(2018/02/20)
●祝祭日の消費額は平日とほぼ同じ 普段の土日から見ると少ない!
2012/1/12:「え?じゃあ、祝日に関する政策って何だったの?」という話を
「休日を増やせば景気は良くなる」説のウソ なぜ、人々は金曜日に支出を増やすのか――熊野英生・第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト (ダイヤモンド・オンライン 2012年1月11日)で読みました。そもそも政府は祝祭日の効果を総括していないの?他に違う結果が出た資料があるんじゃないの?とも思いますが、今日はとりあえずこれに従って書ていきます。
熊野英生さんによると、「まとまった休暇が増えると、レジャー消費が増える」というアイディアは、レジャー産業からの期待の声が、そのままマクロの景気押し上げ効果という見解に化けてしまったのではないか?としていました。レジャー産業が利益を上げるというのと、国全体に利益があるというのは、本来別物ですからね。
そして、なぜこういう話を出したのかというと、「レジャーが増える=消費全体が押し上げられる」というアイディアは、少し詳しく分析してみると怪しくなってくるため。代表的な消費指標である総務省『家計調査』2007~2011年のデータによると、1日当たりの平均消費額は以下のようになります。
祝祭日 6677円
土曜日 7406円
日曜日 7097円
平日 6556円
祝祭日は平日に比べるといくぶんマシですが、あんまり効果は感じられません。また、普段からある普通の土日と比べると、祝祭日の正気学は圧倒的に低いということもわかります。祝祭日になると消費が刺激される…というイメージがありますが、このデータを見ると全然そんなことはないようです。
●祝日を増やしても経済効果はない?消費は増えておらず逆効果の可能性も
はっきりとした数値が記事では書かれていなったのですが、グラフから読み取った平日の1日当たりの平均消費額は以下です。前述の通り、祝祭日は6677円でした。これはやはり平日とあまり変わらないということがわかりますが、普段ある金曜日の方が祝日よりずっと消費が多いこともわかります。
月曜日 約6700円
火曜日 約6500円
水曜日 約6500円
木曜日 約6400円
金曜日 約7000円
ついでに祝祭日を細かく分類したものも見てみましょう。
平日 6556円
祝祭日 6677円
三連休 約6900円
春の連休 約7300円
秋の連休 約6500円
月曜日はグラフだと6700円を確実に上回っていましたので、祝祭日全体の6677円より上です。ただ、月曜休日を含むことが多いであろう三連休は約6900円でした。ただし、三連休が土曜日、日曜日、月曜日の組み合わせだとすると、全体の土曜日、日曜日、月曜日の平均と比較することができます。
これで仮定すると、以下のように普段の土曜日、日曜日、月曜日は平均約7100円の消費があります。一方、三連休は約6900円に過ぎません。なので、記事よりもっと突っ込んで言うと、月曜日の祝日を増やす政策は、消費を余計冷え込ませたとすら言えるのでは?と思ってしまいました。
全体の土曜日、日曜日、月曜日の平均 = (7406円 + 7097円 + 約6700円) ÷ 3 = 約7100円
●加えて大型連休の前後には消費が減っていることも注意
この他、記事では「注意しなくてはならないのは、大型連休の前後は一時的に消費を増やしすぎた家計が、消費を手控えるなどの反動(あるいは節約)が起こっていることである」と書いていました。つまり、数字が多かった大型連休というのも結局、消費する時期が動いているだけだということも指摘していたんですね。
祝祭日には、レジャー消費が増えるほか、外食費、食料(外食以外、たとえば菓子類)、ガソリン、宿泊費、旅行費用、シャツ・セーターといった費目でも支出額が確かに増えます。ここだけ見て、政治家などは「祝祭日の経済効果がある」と思うのでしょう。ところが、その一方で同じ時期には、家計は保健医療費、設備修繕費など住居費を減らしているといいます。
これと絡めてさっきの金曜日、月曜日の話なのですが、大型じゃない連休の前後ってどうなのでしょう?そこらへんも知りたいと思いました。
なお、先のむしろ消費を冷え込ませているというのは全体を見た結果ですが、使い道から考えると、他の産業の消費を奪って、レジャー産業にやや目減りした消費を移しているという結果になっています。祝祭日がレジャー産業保護政策、政治家による利益誘導であるというのは言えそうです。
●祝祭日の増加に意味なし それより政府は所得を上げよ
で、記事のまとめとしては、以下のとおりです。
達観すれば、消費額の変化に大きな影響を与えているのは所得環境である。所得が増加すれば、祝祭日の増加などよりも遥かに大きな経済効果がある。祝日の配列を変更することの是非を論ずるより、企業活動が活発になることが本質論である。
休日増加に伴う消費活性化というアイディアは、勤労者を念頭に置いているが、そもそも高齢者の消費ウエイトが上昇している。高齢者が増えるほどに、消費のタイミングは自然と分散される作用が働いているのが実情だ。
高齢者の存在を考慮すると、勤労者が働かずに休暇をとる時間を増やすことよりも、高齢者の消費が活発化して、その消費増が勤労者の所得に還流することを考える方がよい。
企業側の視点で見て、勤労者の休日の増加は、単純に労働生産性を低下させて、正社員の賃金水準を下げる。1980年代からの労働時間短縮の脈絡で休日を増やそうという制度改正は、日本人が働き過ぎていた過去の時代の話である。
勤労者に限定して働きやすさを追求するのならば、一律の休日を設けるよりも、休暇取得や労働時間の裁量について、柔軟性を高める方が優先されるべきだろう。
直接そうは書いていませんけど、祝祭日の増加による主な効果としては、以下のような理論でしょう。
労働生産性の低下
↓
賃金水準の低下
↓
消費額の低下
これをパッと見て、最初の「労働生産性の低下」に違和感を覚え、「労働時間の低下」にしようと思いましたが、祭日が増えて労働時間が下がっても、直接月単位の給料が減るわけじゃありません。これでいいのかも。
私は上で月曜日がどうとか、金曜日がどうとか書きましたが、そんな細かい違いより、この賃金水準を上げる方が確かに本筋ですね。祭日がどうのこうのという政策より、政府や議会はもっと重要な政策を検討するべきなようです。
●景気対策で祝日追加に意味なし むしろ祝日が不景気を作り出す?
2016/11/22:祝日の増加は経済的に望ましくないのではないか?という話は興味があり、何度か触れています。そんな関係の新しい記事を見つけましたので、こちらもメモしておきます。
先進国で最多となった「祝日」が、日本人の収入格差を広げている まぐまぐニュース! / 2016年10月5日 4時45分(嶌信彦)という記事です。
<休日が多いと公務員や会社員はいいが、非正規で働いている方々からすると時給であることが多いので、労働をしない日はおカネをもらえない。そういう意味でいうと、ここでも格差が拡大する要因となってきた>
格差の拡大という話だけですと、興味ないどころか嫌悪感を示す人が多いでしょう。ただ、他にも問題が指摘されていました。特に、祝日によって取引量が低下するところが結構あることなんかは、無視できないでしょう。
中小企業、零細企業や、シニア、主婦層など、さまざまな方々の意見を聞いてみると必ずしも歓迎しているとはいえない。零細企業の場合は休日に店を開けても人が来ないので売り上げが減少し、収入減になる。近年、団塊世代がリタイアし、普段から家でゴロゴロしている人も多く、奥さんはその分食事を作ったりしなくてはならず、主婦の仕事が増えたという人が多く、シニアにとっては休日増加の影響はあまり関係がない。
祝日が増加するのは一般的に喜ばれそうに見えながら、実は不満も結構ある。また、ハッピーマンデーで連休になるとお店自体がお休みとなり、収入が減るケースもあることからハッピーマンデーは考えものであるともいえる。
●休みが多いと儲からないのは当たり前
長時間働けば儲かるというのはブラック企業の正当化に繋がりかねません。実際問題、長時間労働によって能力が低下してくるわけですから、効率良く働くというのは大切なことです。うちでは、
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ただ、休みが増えれば増えるほど良いわけではないとわかりやすいのは、
ベトナムはボーナスとは別にテトの給料を支給 お年玉も別に必要であげなくちゃいけない対象も広いでやったベトナムの例でしょう。
「テト」と呼ばれるベトナムの旧正月において、暦の上でお休みになっているのは大晦日と三が日の合計4日間であり、実際に長期休暇になっているわけではありません。しかし、テトの前後は売上が落ちてしまうそうで、擬似的な長期休暇状態になってしまっています。そのため、広告会社では「テトはどうせお客さんが来ないから、1カ月間広告はお休みします」なんて言われるとのこと。これでは当然儲かるはずがありません。
政治家は祝日作ることばっかり好きで、最近も「山の日」が追加されました。本当、政治家は役立たずだと思いますね。
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