社会保障と財政の関連で4回分くらいの文量が溜まっていましたが、とりあえず、社会保障費用に焦点を当てて二回やります。
今回は「子供の未来を奪っているのは老人」という何か怒られそうなくらい過激なタイトルになっちゃいましたけど、そういう側面があることは目を反らすべきじゃないと思います。
欧州で若者のデモ頻発、格付け会社に卵やペンキ (読売新聞)は2011年10月8日21時52分と古い記事ですが、
イタリアでは7日、同国政府の財政緊縮策や教育費削減に抗議し、学生たちが全国約90都市で一斉にデモを繰り広げた。
北部の商都ミラノでは学生たちが、同国の長期国債格付けを引き下げた米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス事務所に卵やペンキを投げつけた。首都ローマでは学生数千人が「借金を作ったのは我々ではない」と訴えて行進。学生組織は「若者の29%が失業中だ」との抗議声明を発表した。 |
という内容です。
これ自体は一応正論です。世代的なバランス、イタリアではどうなんでしょうか?内容によりけりですね。
とりあえず、日本の状況にはよく当てはまると思います。しかし、多くの方はそれを認識していないんじゃないかと思います。
次の記事はところ変わって、韓国のもの。
小学生の給食無償化は税金の無駄遣いか?(日経ビジネスオンライン)という記事です。
"2011年8月24日、ソウル市は大騒ぎとなった。「公立の小中学校に通う全生徒の給食を無償にすべきか」というテーマである住民投票が行われたのだ。 "
"ソウル市のオ・セフン市長が突然、見直しを唱え始めた。
「お金持ちの子供の給食まで無償にするのは過剰福祉」
「福祉を持続可能なものにして韓国財政の健全性を保つのか? それとも、過剰福祉を選択して、借金を残すのか?これを選択する時期にきている」
「国家財政を危うくする過剰福祉に歯止めをかけなくてはならない」 "
"ソウル市長は「所得水準下位50%の子供の給食だけ無償にすべき」という意見。
「無償給食を実施しているのはOECD加盟国の中でスウェーデンとフィンランドだけ」
「貧乏な子供にだけ無償で給食を提供する。残りの予算で教育競争力を強化すべき」
と主張した。"
"ハンナラ党のホン・ジュンピョ代表は
「ギリシャは無差別福祉を行った結果、財政赤字が悪化した」
「日本の民主党は子ども手当月2万6000円、高校授業料無償化、高速道路通行料無料を公約したが国家財政の問題で実現できず国民に謝罪した」
として、無料給食に賛成する民主党を非難した。 "
一方の対立意見。
"「子供たちに貧富の差を感じさせるべきではない。子供たちがみんな平等に無料で給食を食べられるようにすべき」
「韓国の児童福祉支出はOECD平均より12兆ウォン(約9200億円)も少ない」
「OECD加盟国の中で児童手当がないのは韓国、メキシコ、トルコ、米国だけである」
「親の所得で子供を区分してはならない」
「選別福祉ではなく普遍的福祉を目指すべきである」
「児童福祉は平等であるべき。子供の頃から差別をあじわわせてはいけない」
「既に一部の自治体では小学生全員を対象に無料給食を始めている。何の問題も起きていない」
(中略)
同じくソウル市の野党の進歩新党も無償給食に賛成した。「ソウル市の住民投票は、ソウル市民だけの問題ではない。韓国の福祉が拡大されるのかどうかを決める投票である。今の政権は福祉拡大という時代の要求に逆らっている」。民主労働党もこれに同調した。「ソウル市長は普遍的福祉を亡国政策と主張する。だが、普遍的福祉が行き届いている先進国ほど国家財政も健全である。世界的金融危機を、福祉予算を減らす言い訳にしてはならない」。 "
"住民投票の結果、投票率は25.7%で住民投票は無効となった。"
「無料給食」というのはテーマ的にセンシティブなものだと思いますが、その後の展開はいただけません。
記事のサブタイトルは"福祉をめぐる「ポピュリズム」論争"でしたが、先の住民投票の結果を受けて国政選挙でも無償政策を次々と打ち出し、まさにポピュリズムな感じに。
子供のためと言いながら、未来世代に借金してしまえば、それは実質子供からの搾取です。この点から目を反らしているのは、大きな矛盾になります。
最後に紹介する記事はどこに持ってくるのか迷ったもので、印象操作的で申し訳ないのですが、極端に悪い人の例です。(
マクドナルドの定年制復活は他人事じゃない?団塊さんが心配する「変化に気づかない若者たち」 登録要、ダイヤモンド・オンライン、2011年11月30日 梅田カズヒコ)
【今回の団塊さん】 山本良和(仮名、男性) 年齢:63歳(1948年生まれ) 最終学歴:大卒 業種:貿易 職種:自営業 出身:大阪府 現在の住まい:東京都国立市と香港を行ったり来たり 婚姻:奥さんと2人暮らし 家族構成:奥さん、息子2人 |
――今日は若者の1人として「団塊さん」に話を聞きたいんですが、今、若者の間で年金制度などを含めたこの国の制度に不信感を持つ若者が増えていると思います。人生経験の長い山本さんにどうすればよいか、1人の若者として聞きたいです。
わからないね。僕はもうこうやって後は老いるだけだから、今の若者に日本をどうにかしていって欲しいと思っているけど。今の若者は具体的に何が不満なの?
――年金制度には不満があると思いますよ。実際に給与明細を見ると、我々のような若者の所得だと、負担金としては厚生年金の控除が最も高額なんです。しかも、この負担額はこつこつ増えているし、返ってくるかは謎です。絶対に負けるギャンブルをしているようなものですよ。
年金制度については、僕らも半信半疑で納めていたからなー。僕らの頃は、今ほど長生きじゃなかったから、年金をもらえる年齢になる前に死ぬかもしれないと思っていたしね。
あなたは30歳だっけ? そうすると、年金が支給されるのはまだ30年以上も先なんだから、そんな細かいことを気にしてても、人生面白くないと思うよ。
――でも、30年後は必ずやってきますからね。ほら、地球の環境問題ってあるじゃないですか。あれって、今の我々がどんなに環境破壊を繰り返しても、30年後に地球が破滅することなんて、さすがに起こり得ないと思うんですよ。
ただ、今のうちに今後のことを考えておかないと、「100年後、200年後の地球がヤバイ」という話だと思うんです。年金制度もそのように、いつかやってくる未来のために考えないといけないよね、という話だとは思うんです。
ただ、財源がないからしょうがないよね。君も経済の勉強をしているから詳しいと思うけど、年金制度って子どもが生まれなければ破綻する制度でしょ。あなたは子どもがいますか?
(筆者、「いない」と答える)
私は2人の息子がいます。年金制度を破綻させない最も有効な手段は、それぞれが責任を持って次の世代の担い手を育てないからじゃないかな。年金制度を崩しているのは、もしかしたらあなたかもしれない。
――痛いところを突いてきましたね。ただ僕は、今日は若者の不満・不安を代表して来ているので反論しますと、現実問題として、派遣社員やアルバイトの人が子どもを産むのはハードルが高いと思いますよ。現在は派遣社員などの比率が増えているので、未婚者の割合が増えたり子どもの数が減っているのは、必然だと思うんです。
色々理由はあるかもしれないけど、一番は「子どもなんていらないや」という考え方だと思うんだよね。昔は娯楽が今ほど多くなかったから、子どもを生んで育てるのが一番の楽しみだったんじゃないかな。
今は楽しいことがたくさんあるから、子どもを生まなくなってきているんだと思う。世界の国の統計を見ていても、豊かな国ほど子どもを生まないから、日本が豊かであることの裏返しだと思うな。 |
最後は経済的な問題から話をすり替えていますが、インタビュアーはここを突っ込むともめると思ったのか、「社会保障の問題になると、話が長くなってしまうので」として、別の話題に入っています。
ただ、私はもう読んでいて頭に来て仕方がなかったです。人を馬鹿にしすぎ。まさに他人ごとといった無責任さです。
年金は自分も最初から信用していなかったしと言っていますが、「じゃあ、今から約束分を減らしますけど良いですか?」と言われると怒るタイプでしょう。この方の世代はまだその現実味がないから全然真面目に考えていませんが、それより下の世代にとっては切実です。
この人は財政的な問題について突かれると話を逸らしていますし、子どもを作らなきゃいけないという他人の人生設計を決定するような政策も到底無理でしょう。パターナリズム的な押し付けの極限です。
参考
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リバタリアン・パターナリズムの例 少子化シリーズで似たようなこと書きましたけど、それが不可能なことなのにも関わらず、常に人口増加を続けないと成り立たないという社会保障の設計を見過ごしてきたことがそもそも無責任です。
(少子化シリーズで書いたことの絡みで言えば、社会保障の設計し直しとともに、経済成長させる政策も重要です。左派の人で社会保障充実を訴えながら、経済だけが大切じゃないと言う人がいますが、それは未来世代への迫害です。左派って本当は弱者の味方のはずなのに、おかしくありません?)
続編
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年金などの社会保障問題2 ~橋下徹市長発言「老人より現役、将来世代に税を」~ 参考
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少子化の問題点 ■
少子化のデメリットに対する反論 ■
少子化対策 ■
少子化のメリット 最初に書いたようにこの方は特に酷い例なんでしょうけど、自分さえ良ければそれでいいやというのが、先行逃げ切りが可能な高齢者やその手前の世代の本音なのかもしれません。
関連
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その他の政治(全般)について書いた記事
Appendix
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