年金などの社会保障問題1 ~子供たちの未来を奪っているのは老人世代~の続きです。
昨年大阪市長に当選して、今報道の多い橋下徹さんの記事でこんなものがありました。
"大阪市の橋下徹市長は4日、年頭の記者会見にのぞみ「無駄を省いて住民サービスを拡充するときには、高齢者ではなく、現役、将来世代に税を投入していきたい」と語った。
「無駄を省いて行政改革をやって住民サービスを拡充することは当然のこととしてやります」と述べた橋下市長は「高齢者を切り捨てるわけではないが、高齢者に直接税を投入するのではなく、日本の状況をみると現役世代や将来世代に税を投入し、将来世代を強化しその活力によって高齢者を支えるという施策の見直しをしたい」と語った"
(
「高齢者でなく、現役・将来世代に税投入」活力でシニア支援(産経新聞 2012.1.4 13:01 )より)
前回は社会保障の例で書きましたが、それに限らずあらゆることを行うには当然財源が必要です。しかし、以下に国の場合で説明するように、現在のお金の出入りのバランスはかなりおかしくなっています。
したがって、財源を供給する現役世代を支援すべきという橋下徹市長の考え方は正論だと思いますが、選挙で重要な投票率の高い高齢者層の反発を招く発言であり、勇気がいると思います。(この選挙の都合があるからこそ、状況が悪化したというのもあるでしょう)
これ以降は、現在の社会保障の構造がおかしいという話についての記事です。
裕福な高齢者にはガマンしてもらうべき(日経ビジネスオンライン 藤末 健三 2011年3月11日)では、今までの社会保障の考え方を改めないと立ちゆかない財政の状況を以下のように説明しています。
"一般会計の歳出規模は約92兆円だが、(中略)社会保障関係費が最大で28.7兆円である。また、他の経費と比べて、社会保障関係費の伸び率は際立っている。これは、高齢化による医療や介護、年金のコストが急増していることが原因であり、これらのコストは今後も増え続けることが予想される。なお、上の図は一般会計で負担している社会保障関係費のみを示しているが、社会保障全体に使われるお金の合計は、2010年度では約105兆円である(うち、年金が53兆円、医療が32兆円、介護等が20兆円) "
"その財源は、保険料が57兆円で約3分の2、税が33兆円で約3分の1である。保険というなら本来は保険料で賄わなければならないのに、一般会計から公費(国庫負担)を投入しているわけだ。現在、医療保険、年金については5割、介護保険は6割が公費で賄われている"
"税と社会保障の負担と受益の関係を世代ごとに見ると、図のように、高齢者は大幅な受益超過だが、若年層・将来世代は大幅な負担超過である"
以上のように、社会保障政策は明らかに破綻しており、痛みを伴う抜本的な改革が必要です。
しかし、おそらくこれで解決とは全然行かないでしょうが、貧しい高齢者に負担をかけない対策を取る余地はあります。
" (引用者注:現在、医療保険、年金については5割、介護保険は6割が公費で賄われている)結果、低所得者も負担する一般会計の公費を投入しつつ、高額所得者も恩恵を受けるいびつな結果になっている。つまり、富裕な高齢者が安い保険料・自己負担で寛大な給付を受けつつ、そのコストは税金という形で低・中所得者に、さらに政府の借金という形で将来の世代に、それぞれ負担を押し付けているのが実情である。これは果たして正しいあり方だろうか"
"資産面について見ても、下図の通り、4000万円以上の貯蓄がある世帯の割合が17%ある一方、100万円未満の貯蓄しかない世帯も6%と無視できない。
このように、高齢者は経済的な格差が大きい。しかし、富裕な高齢者も生活に困窮する高齢者も同じように社会保険料を負担し、給付を受けている。これは明らかにおかしい "
また、以下のような理由もあり、「社会保障と税の共通番号制度」をという話になっています。
"民主党の子ども手当についても、国会で、所得に応じた給付を行うにはどうすればよいか質問したら、住民は税務署から所得証明書を取り寄せ、証明書を市町村窓口に提出し、市町村窓口は証明書を税務当局に確認して、支払作業を行うことになるということだった。所得の正確な確認には1000億円近いコストがかかる"
前回と今回は現在の社会保障を書いたものを中心に記事を選んだのですが、財政の考え方としてはどうするの?というこれからを書いた記事では、上記と同じように、社会保障と税を一体的に把握しよう(歳入庁の創設など)という提案が見られます。
今のやり方は無駄がありますし、とりっぱぐれのようなものもあり、改善の余地はかなり残されています。
ところが、全然こういう話が日本では進んでこなかったんですけど、
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ギリシャ危機は起こるべくして起きた ~破綻の常習犯、公務員天国、脱税による税金不足~ で書いたように、海外でもそういう例が見られます。どこもダメなんですね。
最後はもうひとつ日経ビジネスオンラインから、
ゲーム理論で説明する、財政改革が進まない理由というものを。
"財政再建の手段として、通常、増税と歳出削減が考えられる。米ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授と伊ボッコーニ大学のロベルト・ ペロッティ教授は、財政再建を行った諸国を分析し、増税による財政再建よりも、歳出削減の方が成功しやすいと結論づけた。その場合、増税と歳出削減を「3 対7」で組み合せることが成功法則の一つになると指摘している。つまり、もし10兆円の財政赤字縮減を目指す場合、3兆円の増税と7兆円の歳出削減が望ましい。この法則は有名で、一時は多くの新聞や雑誌が取り上げた"
ええ?初めて聞きました。増税論者となんぼでも国債発行しろという人たちばかりで、削減はあんまりやる気ないですよね。
"「オーストラリアやスウェーデンでは、歳出削減のために社会保障の抑制を試みた傾向がある」との指摘も多い。急速な高齢化に伴い、日本の社会保障費(年金・医療・介護)は毎年1兆円以上のスピードで膨張している。今のまま社会保障費が伸び続ける場合、10年で10兆円以上も膨張してしまう。日本の状況を考えた時、この指摘は重要である"
どの年齢層の将来にも関係しますし、特にお年寄りは反対するでしょうけど、先に書いたように社会保障費は明らかに無茶です。前回も書きましたが、未来の子供たちから富を搾取した上での保障といった構造です。
"各プレイヤーは以下の2つの動きをする、ということだ。第1に、他のプレイヤーが自主的に既得権益を放棄して財政再建に取り組むことを期待する。第2として、自らが持つ権益は維持する誘因、つまり「ただ乗り」の誘因を持つというものだ。そして、この「ただ乗り」の誘因が財政再建を遅滞させると分析している。つまり、「総論賛成、各論反対」のメカニズムである"
これは私も思っていました。文中で出なければ書こうと思いましたが、まさに「総論賛成、各論反対」です。
海外でも「総論賛成、各論反対」の例が見られますけど、実際に痛みが見えてくると反対しますし、マスコミもそれをおもしろがって取り上げます。
故にこの既得権益にメスを入れるような改革は難しいですし、実は既得権益に関わる改革を訴えることは、選挙でも長期的には不利に働くと思われます。(このテーマはいずれもう少し詳しく書きたいです)
賛成反対のバランスを取るマスコミの報道も大事でしょうが、反対意見はポジショントークに過ぎないことも真実です。
既得権益に関わる大胆な改革を行わずに、増税だけで財政再建は無茶でしょう。ですから、「総論賛成、各論反対」は乗り越えねばなりません。
こういった改革ができない間にも社会保障費はガンガン伸び続けて、必要な税金も増え続けます。それはさらに未来の世代から搾取し続けるということを意味しています。
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