2012/1/20:
●セブンイレブン系セブンファームは黒字の見込み
●ローソン・イオンも企業農業参入、テクノロジーを活用
●ワタミやサイゼリヤ、セコム、JR東日本なども参入
●カゴメはやはりトマトの生産、タカラバイオはキノコを生産
●カゴメは11年赤字だったがついに実質営業黒字化を達成
2012/1/21:
●日本は食べ物を捨てすぎ…セブンファームの理念
●セブンイレブンの方針で大量に出るゴミ、堆肥として利用
●セブンイレブンのゴミから製品を作ることで「循環」
●ローソンは自社グループやなどで7割を賄う予定
●セブン&アイの「環境循環型農業」はソーシャルビジネスでCSR?
●社会貢献活動として農業を…というのは実は無責任?
●セブンイレブン系セブンファームは黒字の見込み
2012/1/20:TPPに関連した記事である
小売りが低コスト農業 TPPに備え セブン&アイ、北海道に20ヘクタール ローソンなどクラウドで管理(日経新聞 2012/1/19)では、日本がTPPに参加すると割安な農作物が大量に輸入され、日本の農業が大打撃を受けるとの意見を紹介していました。
ただ、記事はTPPに後ろ向きなものではなく、「農家の高齢化が進む農業の再生は待ったなしの改革」であるとしています。さらに、全国規模で農場を展開する小売り大手の取り組みは既存の農業を変えていく起爆剤にもなりそうだとして、大手小売りが手掛ける農業の生産性向上に乗り出す動きを伝えていました。
たとえば、セブン&アイは「セブンファーム北海道(仮称)」を設立予定で、ブロッコリーやカボチャなど年間約1000トンの生産を見込みます。新農場からは夏場はほぼ毎日販売できるといい、北海道内のイトーヨーカ堂のほか関東の店舗でも販売する予定です。
セブン&アイで注目すべきは、現在「市場経由より1割ほど安く販売しても農場経営は黒字化している」という点。新農場でも「価格は市場経由に比べ1割ほど安くなる見込み」だそうです。難しいと言われる黒字化が可能だということですね。
TPP反対論者で基本的に農業で黒字化は無理といった主張がありましたが、セブン&アイは現時点ではプラスになっているようです。今後どうなるかはわかりませんけど、座して死を待つよりはずっと良いでしょう。
●ローソン・イオンも企業農業参入、テクノロジーを活用
コンビニではセブンのライバルであるローソンも農場「ローソンファーム」に出資。ここでは、ネット経由でシステムを利用するクラウドコンピューティングを使って農作業の即時管理を始めるとのこと。農作業に当たる人がタブレット端末を持ち歩き、農薬の使用量や収穫計画を入力するといいます。
コンビニではありませんが、小売業という意味では同じジャンルになるイオンも2011年12月、子会社が運営する全国の農場でクラウドシステムを導入したそうです。農場に取り付けたセンサーで気温、降水量や土の状態を把握し、将来は需給も予測できるようにするとのことでした。
なお、記事でははっきり書いていませんでしたが、自社の農場を持つというのは、卸売を通さずに取引できるという点でもメリットがあるかもしれません。卸売を通さずに直接取引するという試みは以前から広く見られるもので、利益が出やすくなるやり方です。
●ワタミやサイゼリヤ、セコム、JR東日本なども参入
関連する記事を…ということで検索すると、
セコムが、JR東日本が・・・農業参入する企業の面々をチェック(MONEYzine 2010年01月09日 14:00)という記事が出てきました。記事では、農地が借りやすくなったことに加え、「植物工場」や「野菜工場」の可能性が見えかけていることもあって、農業に参入する企業が目立つようになってきたとしています。
上記までですでの紹介済みの企業以外では、ワタミ、サイゼリヤ、セコム、JR東日本、JR東海などの名前が出てきています。この中ではセコムなんかが予想外過ぎて特にインパクトがありますが、他にも鉄鋼、化学、ゼネコン各社が参入するとされていました。
参入する予定…ではなく、すでに参入しているところとしては、米国や豪州などで牛や豚の生産飼育を手がけている日本ハム、経営統合するキリンHDとサントリーHD も、花き事業を手がけているとの情報があります。ここで出てきた「花き」というのは、漢字で書くと「花卉」で、観賞用の植物全般を指す言葉です。
●カゴメはやはりトマトの生産、タカラバイオはキノコを生産
記事ではさらに他の例も多く載っていました。例えば、1999年に、生鮮トマト栽培に本格的に参入したカゴメ。現在は、簿価14億円強で従業員・パート約150人体制の加太菜園(和歌山)などで生産。「こくみトマト」ブランドとして、スーパーマーケットなどでの販売も手がけています。09年3月期の実績は、生産高が15億円、販売は65億円強。カゴメの全体に占める割合は単純計算で、生産高は2%、販売は4%弱といったところです。
ブナシメジやエリンギ、マイタケなどのきのこ類を手がけているのはホクト、雪国まいたけ、タカラバイオの各社。タカラバイオは、宝酒造と同じ宝HDですが、ホクト、雪国まいたけはおなじみの企業であり、企業参入というくくりで良いのか?というほど馴染んでますね。どうなんでしょう?
アクシーズと秋川牧園は、鶏肉の生産が主要事業。アクシーズは売上のほぼ3割は日本ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)向けで、同社はKFCのフランチャイズ店舗も展開。秋川牧園は生活協同組合を主要販売先にしているそうです。ここらへんは異業種参入ではなく、農業をやる企業という意味ですかね。
●カゴメは11年赤字だったがついに実質営業黒字化を達成
このうちカゴメが気になったので検索すると、
PDF資料に2010年の生鮮野菜事業の収益が載っていました。これを見ると営業利益は4700万円の赤字。一方で、持分法適用会社(連結子会社ではないが、当該会社の投資先であり影響力を行使しうる会社)を加えると、5400万円の黒字です。
PDFではこれを「営業損益はほぼブレイクイーブン。持分法適用会社を加えた実質ベースでは、本格参入12年目にして、念願の実質営業黒字化を達成」としています。
本体だけで黒字化してみせてほしいところで、11年赤字だったというのもやはり収益化が困難なんだなと思わせますが、ここまで持ってこれたのは努力の甲斐があったというところでしょう。こういう積極性ある試みは、応援したくなります。
●日本は食べ物を捨てすぎ…セブンファームの理念
2012/1/21:前半の補足的に、もう少し小売りの農業参入について。セブンファームに関しては、オフィシャルサイトの
セブンファームの理念に以下のようにありました。ただし、コンビニの場合、
コンビニ弁当の廃棄が多い理由 本部が多く注文させるから過剰にという理由があり、額面通りには受け取れませんけどね。(2019/02/28追記)
もったいないことですが、食品は販売期限が切れた瞬間「ゴミ」として扱われます。
食料の約60%を海外に頼りながら、それでも大量の食べものを捨てている。
それが、日本の現実。残念ながら、私達の店舗も例外ではありませんでした。
しかし、販売期限が切れたばかりの食品を「資源」と見直せば、実はそこから栄養価の高い堆肥がうまれます。
この新しい発想のもと、この度イトーヨーカドーは富里市農業協同組合の皆様とともに農業生産法人
「セブンファーム」を設立。直営農場の運営を昨年スタートしました。
店舗から出される販売期限切れの食品などを堆肥へリサイクル。
その良質な堆肥を使って地域の農家の方々に教わりながら野菜を育て、できた野菜は輸送コストをできるだけかけずに地元のイトーヨーカドーの店頭へ。
それは、日本初の「環境循環型農業」です。
●セブンイレブンの方針で大量に出るゴミ、堆肥として利用
農業会社『セブンファームつくば』設立のお知らせの
PDF資料を見ると、「環境循環型農業」と呼んでいるものの概要がわかります。
(1)店舗
・セブンファームで栽培作物を店頭で販売
・食品残さを堆肥場へ運搬
今まで通り店舗は食品を販売。しかし、以前は廃棄されていた売れ残った食品は、堆肥場へ運搬することになります。ブログを始めた初期のころ、廃棄されるコンビニ弁当の計算などをしましたが、実は廃棄にかかる費用が馬鹿になりません。コンビニ本部は積極的に売れ残りが出るような仕入れを強いてますので、コンビニの場合は営業を圧迫するほど。食べ物が大量のゴミになっているのは、コンビニの方針のせいです。
ということで、廃棄しないためにセブンイレブンには、禁止していた弁当の割引販売をむしろ推奨するくらいしてほしいのですが、それでも売れ残りは絶対に出るのでこういった試み自体は良いことだと言えそうです。
●セブンイレブンのゴミから製品を作ることで「循環」
(2)堆肥化工場
・お店で出た食品残さを堆肥化処理
店舗から回収してきた食品残さをここで堆肥に変えます。ここはノウハウがいるところだと思いますけど、堆肥化工場を所有しているのはつくば農業生産組合だそうです。つくば農業生産組合はセブンファームつくばへも10%出資しており、このリサイクルがうまく行けばお互いに利益が得られるようになっています。
(3)セブンファーム
・残さで作られた堆肥を使って作物を栽培し、イトーヨーカ堂に出荷
以上のように(3)でセブンファームが出てきます。セブンファームつくばの場合はレタス、小松菜、水菜、ジャガイモ、茄子、南瓜、トウモロコシ等、露地野菜を中心に10 品目程度作り、茨城県内のイトーヨーカドー全店で販売。そして、(1)に戻ってグルグルと回るわけで、「環境循環型農業」の完成となります。
●ローソンは自社グループやなどで7割を賄う予定
もう一つ前回で書いたローソンファームに関しては、
(2011年12月27日10時49分 朝日新聞)という記事を発見。ローソンの新浪剛史社長は朝日新聞のインタビューに応じ、店の魅力を高める「切り札」として、野菜の生産に関わっていく方針を明らかにしました。店で扱う野菜のうち、自社グループや提携先が生産する割合を、5年後には7割以上に引き上げたい考えだそうです。
ローソンは現在、出資する農業法人「ローソンファーム」を全国4カ所に設け、収穫した野菜を買い取って店頭で販売しています。ただ、当然これで7割は不可能。将来的には全国50カ所に拡大する他、各地のJAとも買い取り契約を結んでいく予定とされていました。
新浪社長は「ものを売るだけではなく、原材料の調達や作るところから関わりたい」とも述べています。農家以外にも、新たな冷凍技術や土壌改良に使うバイオ酵素を扱うベンチャー企業への出資も検討するとのこと。こういう方向性だとローソンもグループ内で循環するような形を将来的に作るかもしれません。
ローソンは今のところ当てはまらないものの、先のセブンファームの一連のリサイクルの過程を見ると、地産地消的な概念にも当てはまるのがわかります。前回で書いたようにこの体制で利益を出せているという話でしたが、輸送・運搬コストが少なくても済むというのも利点なのでしょう。
●セブン&アイの「環境循環型農業」はソーシャルビジネスでCSR?
ネットでは他にこのセブン&アイの「環境循環型農業」をソーシャルビジネスやCSRといった言葉で表している例がありました。このうち、ソーシャルビジネスとは、環境や貧困などの社会問題の解決を目的として収益事業に取り組むビジネスのことです。
CSRの方は企業の社会的責任と訳されますが、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすることを指すそうです。
CSRには、<適切な企業統治とコンプライアンス(法令遵守)を実施し、「リスクマネジメント」、「内部統制」を徹底する活動>と<持続可能な社会を実現するため、環境や労働問題などについて企業が自主的に取り組む活動>という側面があるそうですが、セブンファームの場合はおそらく後者の活動を意識して言っているのでしょう。
●社会貢献活動として農業を…というのは実は無責任?
私は以前<寄付よりもっと役に立つ社会貢献 ソーシャルビジネスも利益を重視>(
寄付・補助金が悪い理由とは? エコポイント・エコカー減税・公共事業・スポーツチームへの税金投入などにまとめ)というものを書いているように、、持続性なく気まぐれで、企業の懐事情で捨ててしまうような活動は好みません。
スポーツ支援活動などと言ってスポーツチームを持っても、お金がなくなればハイさよなら…という例は、そういった無責任さを示すものとしてはわかりやすいでしょう。
これについてはまた別の機会にもう少し詳しく書きましたが、「利益を出せる」というのは「持続できる」というとても大切なことであり、必ずしも無償奉仕が良いわけではないということです。ですから、農業で利益を出そうというチャレンジもまた非常に重要なものだと思います。社会貢献活動で終わらせてはいけません。
【本文中でリンクした投稿】
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寄付・補助金が悪い理由とは? エコポイント・エコカー減税・公共事業・スポーツチームへの税金投入など【関連投稿】
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