2012/1/20、2018/03/12:
長生きの秘訣は社長になること?
トップと最下層で死亡率は4倍もの差
健康な人ほど出世するから当然なのでは?
健康状態を均一に補正して比較してみると?
寿命は「裁量権」の問題 ストレスの影響は大きい!
部下に裁量権を与えることで別のメリット
●長生きの秘訣は社長になること?
2012/1/20、2018/03/12:
エッ、社長って短命じゃなく“長生き”するって本当? 人間の生命力を引き出す「選択の自由」の不思議な力(日経ビジネスオンライン 河合 薫 2012年1月12日)という記事がありました。
社長のストレスが少ないと言うと、きっと社長さんらは怒るでしょう。記事でも、「お前ら! 俺の苦労も知らずに勝手なこと言うな! どんだけストレスを感じてるか、お前たちは分かっているのか!」とトップは怒るかもと書いていました。
ところが、データで見るとそうじゃないのだそうです。英国の大規模調査である「ホワイト・ホール・スタディー」を見ると、「組織のトップは組織の下層で働く人たちよりも、寿命が長い傾向にある」ことがわかってしまったのです。
●トップと最下層で死亡率は4倍もの差
この調査研究は、英ロンドン大学がストレスと死亡率の関係を解明する目的で1967年から継続して行っている疫学研究で。被験者は、ロンドンの官庁街で働く約2万8000人の公務員です。
被験者が公務員であるというのは、この調査研究の特徴。ロンドンで働く公務員は、「非常に裕福でもなく、非常に貧しくもない人々」の集団であり、全員が同じ健康保険システムに所属し、失業の不安はないという、比較的均一の集団であることが、この研究最大の売りなのだそうな。
しかも、英国の公務員は階級組織であり、明確な分類によって職員のランクが決まっているため、階層の違いと健康の関連を調べるにはもってこいの対象だったといいます。
これによると、40~64歳の年齢層において、階層の最下段にいる公務員はトップにいる人々と比べて死亡率が4倍も高かったそうです。ただし、この数字は問題があります。これについては、後述しますが、先にそもそも健康な人がトップになっているのでは?という見方について。
●健康な人ほど出世するから当然なのでは?
最初に読んだときに私が問題を感じたのは、社長の条件の一つに「健康」を含むことは多いということ。すると、そもそも健康でないと思われる人が社長になる(出世するでも良いです)確率は少ないわけで、比較としては不適当ではないかと感じました。
作者も「っていうかさ~、もともと生命力の強い人がトップになるってことなんじゃないの? うちの会社も先代は101歳まで生きたし」と書いていました。
また、「トップは金も持ってるから最新の医療も受けれるし」といった問題もあるかもしれません。
●健康状態を均一に補正して比較してみると?
ただ、改めて読み直すと、健康状態は補正をかけていますし、やはり差が出ているということかもしれません。
この研究では、喫煙率、高血圧、血清コレステロール値、血糖値など、リスク因子のすべてを加味した補正を加えたうえでの死亡率も比較。すると、補正後の死亡率の差は、補正前より減少しました。ただ、最下層にいる公務員は依然として、トップにいる人々と比べて死亡率に2倍近くの開きがあります。
さらに、喫煙者同士に限った比較でも冠動脈疾患による死亡率は、職階に基づく明確な違いが示されたため、トップが長生きする傾向は高かったと言えてしまうようです。
また、お金の問題も、ロンドンで働く公務員は、「非常に裕福でもなく、非常に貧しくもない人々」の集団だとされていたので、これも一応クリアされているという説明なのでしょう。
●寿命は「裁量権」の問題 ストレスの影響は大きい!
米コロンビア大学経営大学院で教鞭を執る社会心理学者のシーナ・アイエンガー教授は、「選択」というキーワードでこの結果を説明。動物園の動物の寿命が、野生の動物よりはるかに短いのは「選択の自由」がないからであり、ストレスの多いはずのトップの寿命が長いのも、「自分でさまざまなことを決めることができる選択の自由があるからだ」と結論づけけていました。
アイエンガー教授の説く「選択の自由」とは、産業ストレスの分野では裁量権、あるいは機会、心理学ではローカス・オブ・コントロール、などが類似概念となるそうです。これらは簡単にいうと、「自分で自由に決めることができる権利」、あるいは「その感覚」のことで、一般的には「裁量権」という言葉が用いられるケースが多くなっています。
そして、これまで多くの調査結果においても、「自分で自由に決めることができる権利があるという感覚」はストレスの雨に対峙するための大きな傘であるとともに、働く人のやる気を喚起し、職務満足感や人生の満足度を高めるうえで非常に重要な役目を担うことがわかっているそうです。
●部下に裁量権を与えることで別のメリット
とりあえず、この理論が合ってるとしてですが、下記のような作者の意見には賛成します。
自分で自由に決めることができる権利があるという感覚」を社員に持たせることができたトップは、自らの寿命だけでなく、会社の寿命を延ばすことが可能になるはずだ。
実際、「社員1人ひとりがリーダーにならなくてはならない」として、部下に裁量権を与え、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)は無用」とする会社も最近は出てきている。
これはつい先日書いた
売上目標のない会社 a-zスーパーセンター、メガネ21、未来工業がまさにその例でした。3社ともホウレンソウがないというわけではありませんが、これらの会社のやり方には共通の方向性があり、それは裁量権の付与、選択の自由という考え方に親和性のあるものが多かったです。
そして、そういったやり方の中で社員がどうなっているかと言うと、生き生きとした姿を見せています。
社員教育を受けていないという従業員の働きぶりを、実際に目にして驚いた。実に素晴らしい接客態度である。お客様が欲しいという商品を、店中を走り回って探している。商品がなければ、すぐに発注する。従業員一人ひとりがお客様の立場で、お客様のために自由に活動している。従業員が会社に管理されているといった雰囲気は一切ない。眺めていて、なんとも「管理がない気持ち良さ」を感じる。
選択の自由で実際に長生きするかどうかはわかりませんけど、気持よく働けるということは魅力的なことの一つです。ただ、これは今思うと、結構難しいところがありましたね。本来、上司が決めるべき決定を部下にやらせた場合、失敗の責任も部下に…とされてしまうことが多くなるためです。それじゃ、のびのびなんて働けません。
実際には上司の命令で失敗したときすら、部下の責任となってしまう職場も多いのでしょうけど、基本的に失敗の責任は上司にあります。裁量権を与えるだけでなく、失敗の許容とのセットが望ましいでしょう。
【本文中でリンクした投稿】
■
売上目標のない会社 a-zスーパーセンター、メガネ21、未来工業【関連投稿】
■
管理職、専門職、その他事務・労務職 死亡率が高いのはどれ? ■
感情労働とは?「決められた感情」で人に接することを求められる仕事 ■
内部告発者が保護されず犯人探しの上いじめらるという日本文化 ■
パワハラ(パワーハラスメント)の定義と事例 職場のいじめ被害 ■
Wikipediaにない頭脳労働と肉体労働の項目 ■
ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|