中学必修化の柔道 実は死亡事故多発に絡んでもう一つ気になった話を。
前回の最後で「部活より授業中に教える先生の方が相対的に劣ることが予想されますので、深刻な問題と言わざるを得ないでしょう」と書きましたが、2011年4月から中学で必修化されて増えるであろう柔道の授業のことを考えると、たいへん不安な即席黒帯の話です。
「体育教員は6日で柔道黒帯」報道 講道館「問題なし」の理由とは(2012/1/17 20:12 J-CAST)によると、
読売新聞(ネット版)は2012年1月16日、「愛知の柔道教員、6日で黒帯 30年間全員合格」との見出しの記事を報じた。
「計6日の講習」の内訳は、1年目に受け身などの基礎や安全管理を学ぶ2日の講習を受け、1年後に実戦や審判などを経験する4日間の講習を受ける。県教育委員会が県柔道連盟に委託したものだ。講習が終われば、全受講者が「合格」し黒帯を取得している。
受講者について「柔道経験がほとんどない『白帯』の体育教員」と指摘した上で、「平均2年程度かかる」黒帯取得が、「愛知の場合は短期間の上…」と指摘し、昇段試合(点数制)の勝敗を考慮していないことと合わせ、「関係者からはこうした段位認定のあり方を疑問視する声が出て」いるとしている。
|
記事では"黒帯取得のための「修行期間」は、6日間と言えば6日間にも見えるが、1年といえば1年にも見える"ともありましたけど、1年は嘘ではなくとも詐欺的です。
しかし、この記事にもチラッと載っていましたが、6日間どころではなく僅か2日で黒帯を与えている場合すらあります。
猛者揃い?わずか2日で柔道黒帯 大分の体育教員研修(朝日新聞 2012年1月17日8時2分)によると、
大分県柔道連盟が県内の中学、高校の体育教員に、2日間の講習を受けるだけで柔道の黒帯(段位)を授与していたことがわかった。講習は、同県教育庁が連盟に委託して開いており、約30年前から毎年1回行っている。
県教育庁体育保健課によると、2011年度は14人が、10年度は5人が受講し、全員、初段になり黒帯をもらった。これまで受講した体育教員のほとんどが合格したという。
剣道も柔道の講習と同じ日に2日間の講習を開き、11、10年度あわせて、受講した4人全員が初段に合格したという。
|
といった具合です。
先のJ-CASTの記事に戻りますが、愛知のケースについて講道館は「読売新聞の記事を受け、現地の関係者に確認し、対応に問題はないと判断しました。その旨も伝えました」と回答してるようで、大分のケースでもやはり講道館は「(対応に)問題なし」と県の連盟に伝えたといいます。
その理由は、
受講する柔道担当の体育教員は、「白帯ではあっても受け身すら知らないド素人というわけではない」。
大学時代に受けた柔道授業など「それなりの経験」を経ている上に、初年度講習から次の講習までの1年間の間に、練習などを重ねておくように、という意味合いがあることも考慮に入れている。さらに、体育教員としての運動能力の高さも評価している。
通常の「初段になる試験」では、「修行年限1年半以上」の場合、昇段試合で「3点」(同級者に勝てば1点、引き分け0.5点など)取ればよい(ほかに規定の技披露=形・型=や筆記試験など)。「1年半」未満でも、試合で高得点をとれば黒帯を得ることができる。
複数の高校柔道教育関係者によると、「素人で入学した1年生が、1年目に黒帯を取ることもある」そうだ。
|
ということです。
ただこれ、読売新聞の「柔道経験がほとんどない『白帯』の体育教員」という報道と矛盾しているようにも見えます。
講道館の担当者の言葉に注目してみると、見極めのポイントの一つは「受け身」のようです。
でも、「受け身」はそもそも学校の授業で必ず習うレベルのものです。「受け身」ができればというのなら、来春以降柔道を習った中学生たちはみな翌年には黒帯を狙えそうです。
あとは「運動能力の高さ」が入りますが、特別扱いであるというところは否めないでしょう。
私が一番気になるのは子供たちの柔道の授業への影響なんですが、愛知県教委などによると、学校での柔道指導に黒帯(初段以上)の資格は必要ないそうです。
安全指導などの講習を受けるだけで「白帯」(初級者)のまま指導する教員も少なくないということで、記事では「黒帯取得と授業での柔道指導の安全性とは切り離して考えているようだ」としていました。
でも、これはこれで不安になる書き方ですね。
確かに安全な授業さえできればそれで良いのですが、
中学必修化の柔道 実は死亡事故多発で書いたように、指導経験者が教える確率が高く、かつ運動能力の高い生徒が多いであろう部活動であっても、死亡事故の多さは異常な高さです。
ですから、安全指導の講習の方はやっつけでなくみっちりとやって欲しいものですが、
愛知の柔道教員、6日で黒帯…30年間全員合格(2012年1月16日11時11分 読売新聞)によると先の愛知県では、
"県教委も問題はないとの考えで、「段位はあった方が、無いよりは充実した指導ができる」として、学習指導要領の改定で柔道などの「武道」が必修化される新年度は受講者枠を44人に増やす方針だ"
としています。
これは明らかにインスタント黒帯教師を柔道必修化と関連付けて考えており、先の「黒帯取得と授業での柔道指導の安全性とは切り離して考えているようだ」という記事の判断には疑いが残ります。
子供たちはつまんないと思うかもしれませんが、危険性の低い運動だけやるという対策は必修化でも可能です。
前回も引用の
中学の「武道必修化」スタート目前 「柔道」安全対策に大きな課題(J-CASTニュース 2012/1/10 19:28)では、「もし必修化を強行するなら、『日本の文科省は子供の命より面子が大事だ』」とまで言っている方(哲学者の牧野紀之さん)すらいました。
安全を蔑ろにして死者を続出させるような真似だけは、絶対にないようにするべきです。
関連
■
中学必修化の柔道 実は死亡事故多発 ■
葬式に菊は日本らしい風習なのか? ■
お弁当は日本が誇るべき文化? ■
日本人の国民性アンケートとエスニックジョーク ■
ニューハーフへの差別 ■
その他の文化・芸術・海外との比較などについて書いた記事
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|