24時間営業のオンラインショップをタイムセールや閉店時間を設けるなどで、敢えて不便にすることでもメリットがあるという話をやっています。また、閉店時間を増やす営業時間短縮については、リアル店舗でも効果があり、こちらは後半で成功例を紹介しています。
冒頭に追記
2022/10/23追記:
●会社の株式もタイムセールで買う時代?割引で買えるサービス登場 【NEW】
●会社の株式もタイムセールで買う時代?割引で買えるサービス登場
2022/10/23追記:
株の安売り妙手か奇手か LINE証券タイムセール: 日本経済新聞(2021年7月21日 2:00)という記事を発見。正直LINEは良い印象がない会社ですし、資産が少ない人にはリスクが高すぎるため投資自体もおすすめしていないのですが、おもしろいことを考えたな…とは思いました。
<市場関係者が話題にしているのが、タイムセールと呼ぶLINE証券のキャンペーンだ。株式数は限られるが、終値の最大7%引きで著名企業の株式を買うことができる。(中略)LINE証券には野村グループが49%出資する。野村流の若年層の開拓作戦なのだろうか。
野村証券は個人顧客の預かり資産が着実に増えているが、年配客が中心で、口座数はじりじり減っている。起死回生を目指して、18年6月にLINEグループとの共同出資の証券会社を設立した。ここにきてエンジンがかかり始めたようで、口座の絶対数はともかく、伸び率では侮れなくなってきた>
タイムセールそのものは珍しくないのですが、株式は前代未聞じゃないかと思われます。そもそも株式の売買は<価格差があれば情報が瞬時に伝わることと、証券会社に最良執行義務を課すことによって成り立っている一物一価の世界>であるためです。安いお店と高いお店がある…という商品じゃないんですよね。
<LINE証券はタイムセールを1カ月に1回ぐらいの割合で実施している。直近の7月8日の例でいうと、対象銘柄はJR東海、日立製作所、三井住友フィナンシャルグループ、ANAホールディングス、日産自動車の5銘柄だった。購入できるのはすべて単元未満株で、それぞれ購入額が3万円強になるように株数を指定している。(中略)
当日の東証終値の3%、または5%、または7%引きで購入できるが、どの割引率が適用されるかは抽選によって顧客ごとに決まるという>
私が思ったのはすぐに売却されてしまうのでは?ということ。記事によると、まず、数に限りがあり、買えるとは限りません。ただ、うまく買えれば、午後9時に約定。しかも、購入時の手数料はかからないといいます。この条件ですと、必ず利益が出る顧客サービスのように見えるかもしれません。ただし、売却できるのは、約定の翌日午前9時からというのがネックになります。
<売却してどれだけのサヤが抜けるかは翌日の株価次第だから、必ずしも割引額の2000円強が確保できるわけではないが、そこはゲームとして面白いのだろう>とされており、意外にお得ではない可能性がありそう。とりあえず、最大でも2000円強で平均はもっと低い上に全く買えない人すらいるのですから、顧客獲得キャンペーンとしてはかなり安上がりだと思われます。
●ビジネス・仕事のアイデアと工夫 タイムセールのメリット
2012/1/23:オンラインショッピングはいつでも買えるというのが便利で、24時間営業は当たり前。これは大きなメリットのように思えます。しかし、その魅力をわざわざ捨ててしまって、閉店するオンラインショップというのもあると知って驚きました。
住宅産業どん底のアメリカでなぜ急成長?インテリア販売サイト「ワン・キングズレーン」の工夫 (ダイヤモンド・オンライン、2011年11月30日、瀧口範子)によると、ワン・キングズレーンというアメリカのサイトがそうしたことをやっているとのこと。
ワン・キングズレーンの特徴は、いわゆる「フラッシュセール」と呼ばれる時間限定販売。フラッシュセールは数年前から、はファッション販売サイトで始まったものだと説明されていました。開店早々の午前9時から2時間などの限定で、デザイナーものの服を50~70%ディスカウントで売るといったやり方です。
このワン・キングズレーンはインテリア商品の会社。同じ手法を利用して、期間限定を3日間にして、インテリア商品を売っている…といったことをやっているようです。こうしたフラッシュセールは、メーカーの在庫処理のために利用されることがほとんど。掘り出し物を見つける興奮と制限時間の焦る気持ちとが相乗効果を起こして人が集まるとされていました。
記事ではこのように「フラッシュセール」としていましたが、一般人に馴染みのある言葉だと「タイムセール」で言い換えられそうです。意味的にはおそらくほぼいっしょですよね。実はこういった手法は何もアメリカじゃなくともやっているんじゃないかと。検索すると、
楽天タイムセール バーゲン市場というものが見つかりました。
●ディスカウントを好む一方で安物は買いたくないという心理
しかし、「ワン・キングズレーンからはもうひとつ学べることがある」とあり、以下のようなことが書かれていました。
<それは、在庫処理のセール品に見えないセッティングだ。ここでは単に商品写真を並べるだけでなく、凝った室内セットを用意して、そこで商品を撮影する。そのスタイリッシュなさまは、インテリア雑誌も顔負けだ。同サイトでは、1ヵ月1000カット以上の撮影を自前でやっているという>
アメリカの消費者は、定価ではモノを買わないのが常識で、いいディスカウントディールをいつも探しているそうです。それでいて、ただの安物買いというレッテルに甘んじたくもないとも考えています。難しいですね。そこで、工夫を凝らした安物販売のサイトが必要とされているそうです。
ただ単に安物を買うというのは、プライドが許さないんでしょうかね。何らかの言い訳が必要というのは、全然違う例ですけど、健康志向を打ち出してスイーツを売る…といったことを思い出しました。間食を我慢していても、「体にいいものだから食べていい」と買っちゃうあれです。
●マジで「閉店」…不利なように見える営業時間短縮の効果
あと、タイムセールではなく、マジで「閉店」といった方が良いやり方で、もう一つ今度は日本のオンラインショップの話も紹介。
週に1回「閉店」するオンラインショッピングサイト「EC-FACE.JP」(ンターネットコム(2011年12月9日16時00分))という記事からです。
ウェブサイト制作・運営会社の渋谷フェイスがオープンした通販サイト「EC-FACE.JP」は、24時間、365日、いつでもショッピングが楽しめるのがオンラインショッピングで、あえて「閉店時間」を作っているそうです。このサイトは毎週1回、金曜日の正午になると「閉店」して、サイト内の商品を入れ替える更新作業を行うのが最大の特徴。夜ではなく、真っ昼間にやるんですね。
メリットがなさそうに見えるものの、実は毎週新しい商品がラインナップされることにより、いつ訪問しても同じ商品が並んでいるというマンネリを感じることがないという長所があるとのこと。「今週はどんなものがある?」とウインドウショッピングをする感覚で、訪れることを習慣にできるサイトだとされていました。
●ネットだけではない!リアル店舗にもある営業時間短縮の効果
ここまでオンラインショップの話ばかりでしたが、現実のショップでも営業時間をむしろ短くしようという試みは行われることがあり、いろいろと利点があります。例えば、人件費などの削減、あるいは作業性の向上というのは利点だと言えるでしょう。
また、"営業時間の短縮を余儀なくされた"というタンメン屋さんが、追い込まれて逆に成功した話を書いた
最強のタンメン、千葉に現る! 営業時間短縮して月商3倍~タンメンしょうや(日経ビジネスオンライン)という記事もありました。
記事で紹介されていたタンメンしょうやは、「客の数よりもハエの数のほうが多かった」という状態で、1998年に加盟していたラーメンチェーンから離脱。それでも業績は一向に改善せず、現在の店主である横田省三さんが、1995年に脱サラをして家業に戻ってきても苦境は続いていました。
省三さんが本腰を入れてラーメン店の立て直しに乗り出したのは2003年から。まず手をつけたのが、メニューに写真を付けて見栄えをよくすることと、チラシ撒き。そして2004年に客との会話を通じて、おいしいと評判が高かったタンメンにメニューを絞り込んでいます。これにより、売り上げは下げ止まったとのこと。しかし、なかなか客足は伸びませんでした。
そして、ここからさらにピンチに。当時は、定休日もなく、夜遅くまで店を開いていたものの、両親も高齢になり働けなくなったのです。一方で、新たにスタッフを雇うだけの余裕もありません。ということで、営業時間の短縮は狙ってやったものではなく、仕方なく…でした。ところが、これがうまくいったのです。
2006年に営業時間を短くしたことで余裕が生まれ、2007年からは旗振りや看板の付け替え等の営業宣伝活動に着手できるようになりました。すると、認知が広がったことで、売上は急激に伸び始め、月商200万円まで増えたとのこと。何がどう転ぶかわからないものですね。
●「24時間365日」はメリットではない アマゾンは別の点で成功
2020/05/31:アマゾンがネットで売るものとして本を選んだことは素晴らしかったと思います。価格の割に送料がかからないためです。ただ、これについて、
非連続の中の連続(1) アマゾンの場合 2012年11月1日 楠木 建 (ダイヤモンド・オンライン)では、「誰もが思いついくビジネス・アイデアだ」と書いています。
記事によれば、実際、無数の企業が書籍のEコマースに雪崩を打って参入しており、アマゾンはその1社に過ぎなかったとのこと。ネットでは先行者有利なイメージがあるものの、アマゾンはとりたてて「先行者」であったわけでもないともされていました。私のイメージとは違っていたので、びっくりです。
アマゾンに先行者のイメージがあるのは、他社が失敗してしまったためでしょう。楠木 建さんは他社について、既存の書店でも「やろうと思ったらできてしまうこと」をやっていたとしていました。これが元の投稿に関係する「時間」の話であり、「24時間365日」はやろうと思ったらリアル店舗でもできることだとしていたんですよ。
逆に言うと、アマゾンは、リアル店舗でできないことをやってみせたという話。このアマゾンが優れていたこと、リアル店舗ではできなかったことというのは何でしょうか。楠木 建さんによると、そのビジネスが真の意味でのイノベーションだったのは、どうも顧客一人ひとりに最適化した売り場を作れたこと…といった感じみたいですね。以下のような説明がありました。
<顧客がアマゾンの店舗に入ってくる。すると、その途端に本屋さんのフロア構成から棚の配置が、その特定の顧客に合わせて一瞬にして変わる。0.1秒後に別の顧客が店に入ってくる。途端に、今度はその新しい顧客に合わせて書棚の配置が一斉に変わる。しかも一人ひとりの顧客に合わせて、そのお客さんが好みそうな本を勧める販売員が来店する顧客全員にアテンドする。こうした売り場づくりは、これまでのリアルな書店が宙返りしてもできないことだ>
●タイムセールは良くない?「特売」よりも「毎日安い」が良い説
2021/10/24追記:期間を限定したセールというのは、楽天市場が月に1回か2回やっています。この楽天市場と争うアマゾンの場合は回数が少ないですが、やはり年に何回かセールをやっていますよね。また、リアル店舗でも{~セール」は昔からお馴染みで、比較的日常的にやっている「特売」も似た考え方だと思われます。
ただ、一方で、こうした手法は時代遅れという見方もあるんですよ。流通アナリストでプリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之さんによると、「目玉商法」的なものは、安いときと高いときの価格差が明らかに異常であるため、一時的な客寄せにはなるかもしれないものの、長続きしないとしていました。
逆に鈴木孝之代表が、正しいディスカウントだとしていたのは、「エブリデー・ロー・プライス(EDLP)というやり方。通常価格を大幅に下げるのではなく、最初から常に低価格で売るのが大手の主流のやり方だそうです。「エブリデー・ロー・プライス」の名の通り、「毎日安い!」ってことですね。
これは生鮮食品に限らず、ユニクロがやっているような衣料品や、ニトリが手掛ける家具・ホームファッション商品でも見られるといいます。ただ、この2社は、小売業ではなく、製造小売業。つまり、自分たちで作ることで恒常的に安くするという工夫をしていました。規模の小さいスーパーで「毎日安い」は難しいしょう。
(
大根など野菜を「1円」で販売し公正取引委員会が「カネスエ」など2スーパーに警告へ|ニフティニュース(2017年09月19日 18時48分 NEWSポストセブン)より)
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