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原発のコスト計算とドイツの脱原発決定の根拠など


 ちょっと雑多ですが、以前バラバラに紹介した原発に関する記事をまとめておきます。


 まずは、ゲンダイネットのNHK 原発報道の資格なし(2011年8月18日)。

 「“皆さまのNHK”が、なぜあからさまな原発推進報道をしてきたのか」としていますが、NHKはむしろ原発に厳しい番組も過去には作ってきていますから、単純には行かないと思います。

 ここらへんすぐに「~新聞は~だから」とか、「ここの大学は~」とか、御用学者だとか言いますけど、それは単に調べていないだけで大抵矛盾するものは見つけられます。

 でも、その点ゲンダイは非常に偏っていてわかりやすい報道機関だと言えます。


 それはいいとして、「NHKは総額900億円超の事業債を保有している。保有金額の上位5社は電力会社」というのは、確かに注意せねばなりません。

 これは過去に書いた

  ■石破茂政調会長など、東京電力株保有議員は発言に気をつけるべき
  ■東電パーティ券購入議員上位10人 ~麻生太郎、石破茂、枝野幸男ら~

 と同じ意味ですね。

 それから、「そもそもNHKは営利目的の民間企業とは違う。資産運用など必要ないはずだ」とありますが、これもいつも気になる点で、どこまで許されるのかはもうちょっと議論になるべきでしょう。


 次はコスト計算関係の記事を続けて。

 発電方法によるコスト計算が深入りするとたいへんなので、さらっと行きます。


 原発は安いと言ったのは誰だは日経ビジネスオンラインの2011年8月24日の記事。

 冒頭の話に戻りますが、「日経は原発推進」と日経ビジネスオンラインの記事へのコメントで書いている人がいたと思ったんですけど、日経ビジネスオンラインは全然そうじゃない意見をたくさん載せています。


"1999年公表の試算と運転年数などを同じに計算すると1キロワット時当たり5.6円で、石炭火力より0.3円、天然ガス火力より0.7円安い"

"翌年1月16日の小委員会で、電事連は試算を「5.3円」とさらに安く修正"

"各電源の運転年数をすべて40年とした試算でも、原発は4.8~6.2円と幅をもって示している"


 しかし、外部環境はがらりと変わったので、"7年前の試算がもはや何の根拠にもならない"とのこと。

 これから"考慮すべき重要項目として、原子力の広告費、バックエンドの精査、事故対応費用、追加的安全対策費用、燃料費上昇、再生可能エネルギーの技術革新・量産効果による価格低下など"。

 初めて知ったのは、"フランス、フィンランドの試算は石炭、ガス火力よりも原子力が安いという結果だが、一方で米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)、シカゴ大学、米議会予算局(CBO)の試算はいずれも原子力が高いという結果"なんだそうな。

 どうも財務体質の悪い会社に投資すると高コストになる(日本の電気会社は資金が潤沢)という理由らしいです。

 ただ、これだけ微妙な結果だと、ますます原料の値段に左右されますね。毎年試算し直した方が良いのかもしれません。


 あと、LNGがどんどん上がっているというのは事実で、これは電力自由化の問題点2 ~イギリスの電気代は安くなったか?~で触れている他、「輸出立国日本はもう無理」論 ~製造業はダメ~でも書きましたので引用しておきます。


 輸入が増加している原因としては、以下が上げられていました。

"鉱物性燃料の中で比重が高いのは、原油と液化天然ガスだが、後者の増加が顕著"

"日本のLNG輸入増が世界のLNG価格を引き上げている"

 関係ないですけど、LNGは発電所、特に東京電力での火力発電用燃料としてよく使われているようです。原発を擁護したいわけじゃ決してないんですが、LNGは近年どんどん価格が上がっており、原発を止めることでさらに価格を押し上げるというのは、客観的に見て事実です。

 嫌な書き方ですが「福島の事故を一番喜んだのはロシアだ」なんていう過激な言い方しているものもありました。これはロシアは天然ガスの産出が多い国のためです

この後は"なお、円高が円ベースの輸入価格上昇を抑えていることに注意が必要である。仮に円高が進まなかったとしたら、燃料輸入額はさらに増加していたことだろう"というのもあり、円高が「是正」されればさらに状況は悪化します。


 コスト関連では、もう一つ「原発の発電コストは決して安くない」に森永卓郎氏が反論 (NEWSポストセブン)を。

 森永卓郎さんは眉に唾をつけて読む方ですが、

"経産省のエネルギー白書2010年版に出ている各電源の発電コストは、原子力がキロワット当たり5~6円で、火力7~8円、水力8~13円とされているが、電気事業連合会の試算では、廃炉費用や使用済み燃料の処理コストはキロワット当たり0.8円程度である。事故の補償費用にしても、仮に10兆円として30年間で希釈し、東電(2009年度の電気料金収入は4兆5000億円)の原発の発電コストに上乗せしても、キロワット当たり1~2円上がる程度だ。確かに原発のコストは上がるが、せいぜい火力と同程度である"

 とのこと。

 また、「減価償却の終わっていない原発を廃炉して、一方で供給不足を補うために新たに火力発電所を建設する」は、無視されていた観点で気になっていました。


 ただ、原発推進派も脱原発派もそうなんですが、発電コストと原発の存廃は独立して考えるべきです。思想に影響されて正確な数字が出てこない気がします。

 正確なコスト計算が不要だとは決して思いませんが、コストにこだわりすぎで大局を見失うような。


 もう一つ燃料費に関わる記事で、【東京電力】政府支援は一時しのぎにすぎない 原発停止で直面する燃料費問題 (ダイヤモンド・オンライン、登録要 2011年12月1日)。


 原発は、燃料費が少なく、運転費用としての発電コストが安い。したがって、原発の発電比率が増えれば、収支は向上する。

 その一方で、原発は最新の火力発電所の2倍以上と建設費が高く、固定費も他の発電所より高い。たとえば、07年7月の新潟県中越沖地震により、 07年度は原子力設備利用率が44.9%と前年度より29.3ポイントも落ちたが、原発コストはわずか8.2%減でしかなかった(図②)。

 さらに、原発は1基当たりの発電規模が100万キロワットと巨大であり、予定外の停止が発生した場合、それを補うための費用は大きな負担となる。

 「8.2%減」は本当に少ないなという感じですけど、燃料費の占める割合が低い方が停止時のコスト削減が少ないこと自体は当然ですね。

 あと、私としては今までの原発の安全管理は不十分だと思っているので、停止してもしなくてもお金をかけて安全確保に努めるべきだと思っています。

 この考え方は反原発の方には原発コストが上がるので都合良いと思うのですが、あまり聞きません。安全のことをどう考えているんでしょうね?


 あと日経ビジネスオンラインのドイツの話を二つ。と言うか、シリーズ物でした。

 社会学者や哲学者が原子力に終止符を打った(日経ビジネスオンライン)によると、"「原子力のプロである技術者が原発の停止を勧告していないのに、なぜドイツ政府は脱原発に踏み切ったのだろう」と不思議に思われる方が多いかもしれない"が、"もう一つの諮問委員会である、「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」の提言書の方を重視した"ため、"脱原子力に踏み切った"そうです。

 「プロ」のRSKの鑑定書の内容を見た原子力に批判的なレットゲン環境大臣は、「あわてて原発を止める必要がないことがわかったが、航空機の墜落についての耐久性は十分ではないので、政府の脱原子力の方針には変わりはない」と歯切れの悪い発言をしています。

 さらにもう一つの諮問委員会が「原子力に批判的な人々が目立つ」など「初めから原子力廃止への決意を固めていた」というのは結論ありきということで、これはこれで茶番です。どうしてもどっちかに偏りますね。


 上記の引用部は私が気になったところをピックアップしたのでそうは見えませんが、

"社会学者や哲学者は技術者よりも知的に優越しているかのような言い方は極めて侮辱的である"

 あるいは、

"記事の内容に深く賛同します。脱原発ありきの委員会であったとしてもその内容は生命倫理の考え方からも至極当然だと感じました"

 とのコメントがついたように、社会学者や哲学者の言い分にほとんどを割いた内容のため、ドイツの決定を持ち上げている印象を与えた記事でした。

 しかし、その後編にあたる詳細なデータなしで原発廃止を提言した報告書(日経ビジネスオンライン)は正反対の印象を与える記事になっています。


 続いてそちらで気になった部分。

"彼らは日本について「災害に対して万全の準備を行なう模範的な国」という先入観を抱いていたため、福島事故後の現実とのギャップに愕然としたのである。ドイツ人は、世界でもトップクラスの地震国である日本で、震災と津波による原発事故の危険性が十分に配慮されていなかったことに、驚いている"

 とありましたが、それがそもそも思い違いだったんじゃないでしょうか?実際にはむしろ日本は悪い方の国だったのでは?


"保険会社は、原子炉事故をカバーしない。このため原子炉事故が起きたら政府、つまり納税者がつけを払わされる。だが技術者の研究活動によって生じるコストは、本来その産業が支払うべきだ。もしも法律で電力会社に原子炉事故のための賠償責任保険を買うように強制したら、保険料は高額になり、原子力による電力は安いというおとぎ話に終止符を打つだろう。脱原子力は、経済問題なのだ"

 先に書いたように、どうも先に思惑があって、互いに自分に有利な計算をしているように思えます。

 とりあえず、納税者に転嫁は間違いなくおかしいので、原発廃止があろうとなかろうと、そこは是正すべきでしょう。

"金融業界と原子力業界のリスク管理について述べた言葉を引用し、「ミスをした時の費用を他人が負担してくれる場合、自己欺瞞が生まれやすい。ビジネスの利潤は企業の懐に入り、損失は社会全体が支払うシステムは、リスク管理に失敗する」としている"
 という指摘も。


 著者は"「比較考量派」の見解の中で、再生可能エネルギー拡大や省エネが経済にもたらす負担と、原子力エネルギーが抱えるリスクが数字として比較されていないことには、いささか拍子抜けした"としていますが、やはり結論ありきだったせいでしょう。

 関連して、

"むしろ提言書は、「様々な世論調査によると、多くの消費者は原子力を使わない安全なエネルギー供給のためには、より高いコストを払ってもよいと考えている」と述べ、電力価格の引き上げについては、すでにお墨付きを得ていると言わんばかりだ"

 ともありました。

 でも、実際に世論がそれならそれで良いと思います。日本の人も高くても良いと言えば、それで解決だと思うんですが、どうにも覚悟不足だと感じます。 


 関連
  ■石破茂政調会長など、東京電力株保有議員は発言に気をつけるべき
  ■東電パーティ券購入議員上位10人 ~麻生太郎、石破茂、枝野幸男ら~
  ■電力自由化の問題点1 ~イギリスの場合~
  ■電力自由化の問題点2 ~イギリスの電気代は安くなったか?~
  ■「輸出立国日本はもう無理」論 ~製造業はダメ~
  ■その他の社会・時事問題について書いた記事

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