リチウムイオン電池の話をまとめ。<日本はマジで中国・韓国に危機感…国が主導して国家プロジェクト>、<日本逆転の秘策とは?「品質で勝負する」では中国に勝てない>などをまとめています。
2023/09/22:
一部見直し
●中国のリチウムイオン電池が伸びて勧告の脅威に…日本は?
2019/08/27:あとで読もうと思ってすっかり遅くなってしまい、状況が変わっているかもしれませんけど、2018年9月13日に
爆走中国EV、電池業界に起きている異変:日経ビジネス電子版(佐藤 登)という記事がありました。
ヨーロッパのEV推進の流れで、韓国勢および中国勢の電池各社が勢力を増強しているとのこと。中国の電池業界トップ2の中国寧徳時代新能源科技(CATL)およびBYDに勢いがあり、韓国勢にとっても大きな脅威という書き方をしていましたので、もともとは韓国が強かったんですかね。
また、韓国と中国が伸びているというのは、「逆に見ると、欧州および米国での日本勢の電池各社の存在感がかなり薄らいだ格好」だとしていました。日本企業は残念ながら、蚊帳の外であるようです。
●リチウムイオン電池シェアで韓国・中国が躍進、日本は高級路線
記事によると、2000年前後の電池システムは日本勢が独壇場。後にパナソニックに買収されることになる三洋電機は、米欧の大手自動車メーカーからの圧倒的な信頼を勝ち得ていたといいます。韓国サムスンSDIがモバイル用リチウムイオン電池(LIB)の量産を開始したのは2000年からと遅く、2010年代もしばらくは日本の方がずっと良い状態でした。
ところが、韓国勢のスピード感の速さには目を見張るものがあり、2010年後半には、サムスンSDIのモバイル用リチウムイオン電池が、それまでトップシェアを占めてきた三洋電機を超えます。車載用電池のビジネスでも、韓国勢は2010年を過ぎると頭角を現しし、技術力、マーケティング力、安全性・信頼性を確立し、日韓の性能や安全性に対する差異はなくなったとのこと。韓国嫌いの人は日本企業が昔そう言われていたように、「技術を盗んだだけ」と言うでしょうけどね。
とりあえず、この差が消失したことにより、日本の優位性はなくなりました。そして、リチウムイオン電池コストの低減を重視するという方向性に変化します。他に、自動車各社は、モジュール(セルの集合体)以降を自社で手掛けるビジネスモデルにへと大きく転換したという話もありました。
現在、リチウムイオン電池のコストリーダーはLG化学。日本はコスト低減を目指している企業がそもそもないということで、戦略からして需要と合いません。パナソニックは価格競争に持ち込まない戦略といっているとのこと。作者はこの方針に懐疑的でしたが、これも戦略の一つとして良いと思いますけどね。日本企業はコスト勝負で勝てない場合が大半ですから。
ただし、EV各社の資金繰り悪化によるしわ寄せが電池業界に及んでおり、中国ではエコカーに対する補助金を削減する方向性で一気に苦しくなるということもありそうだとのこと。結果的に生産規模を拡大しなかった日本企業が、大打撃を受けなくて済んで勝ち組に…といったこともあるかもしれません。
●日本はマジで中国・韓国に危機感…国が主導して国家プロジェクト
日本にとって悪い話気味だったので、前向きそうな
中韓勢からシェア奪還、ニッポンは全固体LiBに期待をかける! (2018年7月9日) (LIMO)という記事も読んでみました。
記事によると、国際研究開発法人 新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)が主導して、全固体LiB(リチウムイオン電池)の国家プロジェクトが発足。世界的に需要が拡大する電気自動車(EV)をはじめとする車載用をターゲットに、産官学が総力を結集して「オールジャパン体制」で技術を確立していくといいます。
プロジェクトの狙いは、中国・韓国メーカーがますますプレゼンスを増すリチウムイオン電池(LiB)市場において、起死回生の有力技術となる全固体LiBを実用化するため。日本側も中国・韓国に日本メーカーがやられていてピンチという認識なんですね。台湾も伸びている…といった記述も一部見られます。
記事では、前述のリチウムイオン電池全体、車載用リチウムイオン電池だけでなく、リチウムイオン電池の材料分野でも4大主要材料のうち、正極材、負極材、電解液の3つは中国勢がトップだとされていました。4分野中3分野で中国勢がトップなのですから、大げさでなく中国が伸びているとわかります。
●日本逆転の秘策とは?「品質で勝負する」では中国に勝てない
最初の記事は高級路線に否定的。私は高級路線について「仕方ないのでアリ」というスタンスでしたが、こっちの記事でもやはり否定的でした。「品質で勝負する」という考え方もあるが、海外勢のキャッチアップは早いために難しいという見方だったのです。
「海外勢のキャッチアップは早い」というのは、要するにすぐに中国が日本の品質に追いつく…という意味ですね。リチウムイオン電池ではありませんが、粗悪品と揶揄された中国の太陽電池セルの場合、すでに一部では日本製よりも品質が高いという評価となっているそうです。
ということで、日本が狙うのは品質でもないところ。全固体リチウムイオン電池という既存の可燃性の電解液(液体電解質)を不燃性の固体材料にして、正極材と負極材を含めた部材すべてを固体とするもの…だそうです。液漏れリスクがなく劣化が少ないため、安全性、耐久性に優れ、かつ長寿命化が期待できるとのこと。エネルギー密度、出力においても優秀です。
「結局、これも一種の高級路線なんじゃない?」と思ったのですが、これにより、セパレーターおよびセルのパッケージ化が不要となり、バッテリーモジュール全体の高エネルギー密度化、コンパクト化および低コスト化が可能とされていました。前述の通り、日本がコスト勝負するのは無理があるので良い路線だと思います。
●日本の国家プロジェクトが成功すればEVが飛躍的に進化する!?
ただ、国が主導して…というのは、個人的には好きじゃありません。自分の懐が痛む心配がないために、非現実的なことをして失敗することが多いため。実際、日本政府主導のものやオールジャパン体制、日の丸なんとか…といったものは、ことごとく失敗しているんですよね。
また、この事業は実を言うと、今に始まったものではなく、2013~2017年度に実施した第1期に続くものとされていたんですよ。すでに第1期を終えているのに、現状日本が覇権を取り戻せていないというのは、やはりうまくいっていないのかな?という印象を受けます。
ただ、気に食わないことに、日本以上に民間企業に介入する中国政府の方針は結構うまくいっている感じなんですよね。リチウムイオン電池でもガンガン補助金が入っていて、これが成功の理由であるかのように日本では報じられています。同じ国主導でもなぜか大きく結果が異なるんですよね。
あと、前述の高性能化が実現されれば、EV(電気自動車)が長距離用途もカバーするようになるとしていました。これについて、「EVの位置づけが変わってくる」という言い方も記事ではしていましたけど、おそらくデメリットを克服してEVの性能・使い勝手が劇的に良くなるということなのでしょう。
ただ、日本では「EVなんか使い物にならない」と叩いている人が多く、日本の自動車会社の親玉であるトヨタもEVを叩いていた時期がありました。このプロジェクトが成功した場合、その憎らしいEVが天下を取るということになるかもしれず、成功したら成功したで皮肉なことになりそうです。
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