既得権益改革とポピュリズム1 ~既得権益批判は安易な道か?~で書ききれなかった部分です。
前回、既得権益はごく一部の人に利益を与えているものなので、それを改めても住民1人1人の利益としてはどうしても薄く実感できないものになるという話をしました。
また、逆に一部の人に利益を与えたとしても、住民1人1人としては僅かな損失しかないため目に見えづらいということも、少し書きました。
こういった人々の目につきやすい損失(または利益)と、人々の目につきにくい損失(または利益)があるなぁと思う例は他にもあります。
たとえば、橋下徹大阪市長は府知事時代に購入したビルが使えないものだったということに対して、弁償しろという訴訟を起こされています。これはよく見えている損失です。
また、名古屋市や阿久根市では、市長に有利となるリコールに対して税金のムダ使いだ、歳出削減を訴えているのに矛盾しているという批判がありました。(実際には、対立側もリコールをしていたり、リコール潰し的な行動で税金を使ったりしていたのですけど)
これらは目に見えやすい損失であり、もう一つ重要なのは責任の所在がわかりやすい損失だということです。
一方、日本の多くの自治体で言えることなのですけど、現在まで続けてきた赤字体質の財政や財政だけでない自治体の疲弊というのはどうでしょう?
ある程度報道され、批判されているので、隠れた損失とまでは言えませんが、責任のはっきりしない損失とは言える気がします。
たとえば、ビルの代金を支払えという声があるのに、今までの財政赤字を支払えという活動はあまり聞きません。自治体の魅力を失わせてきたにも関わらず、その責任を問う声も聞こえてきません。
どうもこれらは見えづらい損失であり、責任の所在がはっきりしない損失のようです。
誰か一人、あるいは複数であったとしてもはっきり見えない責任であるので、皆改革を試みないどころか、気軽に借金を増やし続けて、どんどんと財政を悪化させてきました。
この損失の方がよっぽど批判されるべきものであり、深刻なものであるでしょう。
もう一つこの二つの損失の違いを書いておくと、リコールやそれによる選挙などは一時的な損失であるのに対し、財政の赤字体質はほぼ永続的な損失であるということです。
役所は慣例に倣う習慣があり、支出を一度増やすとそれを毎年続けるということが多く、放って置くと増える一方です。
ですから、無駄な予算を年間1000万円増やすというのは、1000万円の損失ではすまず、2年で2000万円、3年で3000万円と半永久的な損失になります。
これもまたどこもかしこも赤字の自治体だらけということになった原因の一つでしょう。
逆に言えば、年間1000万円の歳出削減もまた一時的なものではなく、半永久的なものだとも言えます。効果は1000万円だけではないのです。
ただ、これは長い目で見た場合であり、住民には即効性がなくわかりにくいものです。
私はほとんどテレビ映像を見ていませんが、たまたま見た橋下徹大阪市長の話で好感を覚えたのは、市長が変わったからと言っていきなり良いことばかりになるわけじゃないという点を強調していたことです。
今までの酷すぎる使い方を減らすだけで大幅黒字になるわけじゃないので、そんな簡単にいろいろ良くなるわけがありません。
でも、おそらくそれを理解できない人たちが必ずたくさんいるので、橋下徹さんの人気も時間が経てば陰りが見えてくると思われます。
以上のような理由で、既得権益を改めたり、歳出削減を行うことが政治家にとって損だという理由です。
そうじゃなくこの改革が容易なことであれば、最初から今のような財政状況にはならなかったでしょう。
必ずしも有利にならないから、誰も実行せず、むしろ悪化させ続けて、現在の日本を作り上げてきました。
前回の終わりに書きましたが、不思議なのはこれよりよほどポピュリズムであると思われる公約・政策に対する批判が甘いことです。
既得権益叩きよりは、たとえば、民主党の子ども手当だとか、自民党の定額給付金だとか、左派政党のよくやる財源を考えない虫の良い公約だとかのバラマキ政策の方が、よほど悪質なポピュリズムだと思います。
(ついでに言うと、エコカー減税やエコポイントも全体から取った税金を製造業に振り分ける政策ですので、もう少し検証されても良いと思います。必ずしも悪い政策だとは言いませんが、長期的に考えて製造業に偏った政策を取り続けるのが日本にとって良いことなのか?というと大いに疑問があります。また、公共事業も効果がないわけではないのですが、目に見えやすい利益で後々まで残るので、選挙対策として有効な面があるもの否定できません)
これらの政策の方がより民衆受けを狙ったもので、長期的な展望に欠けるものです。
既得権益改革だけを標的とする批判には、納得が行きません。
関連
■
既得権益改革とポピュリズム1 ~既得権益批判は安易な道か?~ ■
二元代表制のメリット・デメリット ■
議院内閣制のメリット・デメリット ■
首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点 ■
大阪市長選は橋下徹前知事VS既得権益の様相 ■
橋下徹大阪前知事サイド、平松邦夫前大阪市長サイドを応援した人、組織 ■
その他の政治(全般)について書いた記事
Appendix
広告
【過去の人気投稿】厳選300投稿からランダム表示
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
|