もともとは「裁判官はきちんと考えた上で量刑しているのしょうか?」というタイトルで書いていた、裁判官の刑期の決め方がいい加減すぎるという話でした。その後、「日本の裁判ヤバイ あり得ない刑罰に検察も裁判官も弁護士も気づかず」「ほぼ同じ内容の判決文が3つで誤字がそのまま!コピペか?」などの、日本のやばい裁判の話を追加していっています。
2021/12/17追記:
●ほぼ同じ内容の判決文が3つで誤字がそのまま!コピペか? 【NEW】
●検察にツッコまれた裁判官、判決を取り下げてやり直しに
2009/6/15:「法律上定められた刑の範囲内で,実際に言い渡すべき刑の種類や程度を決める裁判所の判断」を「量刑」といいます。「懲役~年」といったあれです。かねてから疑念を抱いていたのが、裁判官がこの量刑をきちんと行っているのか?というもの。検察側の求刑を減らして言っているだけで、きちんと検討していないのでは?と疑っていたのです。
で、やっぱりそこまで考えていない裁判官がいるんだなとわかる事件が今回ありました。秋田地裁で男2人がカーナビ機器などを盗んだとして窃盗罪に問われた裁判の公判が行われた件です。純夫裁判官はまず、1人に懲役1年2月の実刑を、もう1人に懲役1年6月、執行猶予4年の判決を言い渡し。ただ、この判決はいい加減だったようです。
裁判官はそもそもの検察の求刑の懲役2年6月を1年6月と間違えており、検察側が誤りを指摘したことで休廷。再開後に馬場裁判官は1人に懲役2年、もう1人に懲役2年、執行猶予4年とより重い判決を改めて言い渡したそうです。馬場裁判官はこの再開時に「求刑年数を誤解していた。申し訳ない」と述べたとのことでした。
(<間違えて判決言い渡し やり直しで量刑重く> 産経新聞より)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/263711/)
●求刑の刑期をもとに計算しているだけで自分の頭で考えてない?
これに関するニュースを検索してみても、同様の短い記事だけで大きな問題になっていないようです。ただ、これは本来たいへん問題がある出来事だったと思われます。私は裁判官がきちんと考えた上で量刑していれば、このようなことは起こり得なかったと思われるためです。
一方、裁判の世界では、「量刑相場」という概念が知られています。
量刑相場(Wikipedia)によると、通常、量刑は、求刑の刑期の「七掛け、あるいは八掛け」とか、「求刑より1ランクないし2ランク低い」ものとなることが多いとの説明。要するに、自分の頭で考えなくても、検察の求刑の数字がわかれば大体の数字が計算できてしまうんですね。
求刑よりも重い量刑の判決や逆に求刑の半分以下の量刑ということもあり、これに従わない判決を下す裁判官もいるにはいます。ただ、大体の裁判官は先述の計算に基づいて決めているだけであってきちんと考えていないのではないかと疑っていたんですよ。要するに、その都度言い渡すべき刑の重さの妥当性を考えず、かなり機械的にやっているのでは?という疑いです。
●テキトーに懲役が決まる!いい加減な判決の社会的な影響は大きい
今回の場合も、重い方の懲役1年2月(14月)は、勘違いの求刑の懲役1年6月(18月)の8割程度になっています。そして、言い直した懲役2年(24月)は、懲役求刑の懲役2年6月(30月)のちょうど8割であり、まさにそのような感じ。
また、言い直した懲役2年は、最初の勘違いの求刑の懲役1年6月よりも重い量刑になっています。たとえ求刑が懲役1年6月であっても、「求刑が軽すぎる。これはもっと重い罪であるはずだ」といった判断はできるはずです。というより、そうでなければいけません。しかし、こんな簡単に覆ってしまうという時点で、そもそも十分に検討していなかったということがわかります。
別にいいじゃん!と思うかもしれませんが、自分が関わる裁判でこんなことやられたら困りますよ。自分は悪いことしないから関係ないというものではありません。自分が被害者の事件で、裁判官がいい加減な判決を下すという可能性だってあるのです。
裁判の判決は当事者に重大な影響を及ぼすのは勿論、その社会的な影響を考えれば全ての人に関係してくるものだと言っても良いでしょう。たいへん問題があります。
●検察が重すぎる求刑に気づき異例の判決取り消し控訴
2017/10/06:最初の投稿とは違うケースで、やっぱり裁判官は機械的にやっているんだなという話がありました。ただ、このケースでは、裁判官だけでなく、被告側の弁護士や検察もみんな問題に気づかなかったという驚きのケースでした。より日本の裁判の問題が感じられる深刻なニュースだと言えるかもしれません。
NHKによると、今回問題が起きた裁判は、40代の男性が、およそ2.4グラムの大麻を所持していたとして大麻取締法違反の罪に問われたものでした。検察が懲役1年6か月を求刑し、2017年3月に東京地方裁判所も懲役1年6か月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しました。
営利目的を除く大麻の違法所持の罪の最高刑は懲役5年で、求刑や判決は法令の範囲内。この点だけ見ると、あり得る判決でした。しかし、東京地方検察庁が同じような内容の事件の最近の判決およそ100件を調べたところ、懲役1年を超えたケースは1件もなく、およそ7割が執行猶予のついた懲役6か月の判決だったということで、極端に重い判決でした。
このため検察は「ほかの同じような事件と比べて求刑が重すぎた」として、判決の取り消しを求めるという異例の控訴をします。前例が全くなかったかどうかはわからなかったものの、検察側が自ら刑を軽くするような控訴というのは、ちょっと聞いたことがありませんね。とりあえず、この控訴の結果、2審の東京高等裁判所は懲役の期間を3分の1の6か月と、一気に軽くする判決を言い渡しています。
「求刑重すぎた」検察が判決取り消し求める異例の控訴 | NHKニュース 10月5日 4時41分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171005/k10011168041000.html
●日本の裁判ヤバイ あり得ない刑罰に検察も裁判官も弁護士も気づかず
上記を見てわかるように、これは裁判官だけの問題ではありません。元裁判官の門野博さんは、裁判所や弁護士の問題も指摘していました。
「裁判所と弁護士にも執行猶予がつけば、検察の求刑どおりで大丈夫だという感覚があったのではないか。執行猶予は取り消される可能性もあり、1審判決が確定していれば同様の事件より長く服役するおそれがあった。不当な求刑を見過ごした裁判所や弁護士も今回の事態を重く受け止め改善につなげるべきだ」
はてなブックマークの人気コメントでは、誰が悪いかで反応が分かれていたものの、とりあえず、裁判所や弁護士にも問題があったであろうというのは間違いないでしょう。特に弁護士が、被告のために全く仕事をしていないというのはヤバイです。冤罪でもガンガン通りますよ、これ…。
hi_kmd 一番問題が大きいのは、裁判所だ。検察のいうことを丸呑みすることに慣れすぎているのではないか。
wow64 弁護士と裁判官がおかしいだろ。右から左へ受け流すだけの仕事かよ
ockeghem 間違いに気づいて、前例がなくても取り消しを求めたのはいいな
murasakizaru 法曹三者とも仕事してない、国選刑事の弁護士報酬って安すぎて、検察の言いなりでオートマでやらないと赤字なんだよね。
zyugem 弁護士何してたん?
LawNeet 検察官だけ仕事してる。1審の公判担当検察官がちょっとアホだったっぽいけど、事後に恥を忍んで異例の控訴で訂正してるし組織として機能してる。弁護士と裁判官はなんなんですかね、量刑DBも見てないのか…?
●誰も真面目にやってない…日本の裁判はだいぶヤバイ?
はてなブックマークの人気コメントでは、「機械がやるような仕事」という反応もありました。
laiso “同じような内容の事件の最近の判決およそ100件を調べたところ、懲役1年を超えたケースは1件もなく、およそ7割が執行猶予のついた懲役6か月の判決だった” こういうのいずれ機械がやる仕事だなー
この関係ですと、過去に
AI僧侶が登場、裁判官も弁護士に「もっとAI使え」 ノーベル賞もAIの時代になるか?という話をやっています。直接上記と同じ話ではありませんが、資料や証拠が整理されていないと、判事から弁護士に「ちゃんとAIを使ってください」という指導がされるというものです。
まあ、先のコメントで「量刑DB(データベース)」というのがあったように、今回の日本のケースは問題外でしょうけどね。
量刑相場 - Wikipediaにも、"裁判官は、個別の事情のみならず、過去の裁判例の量刑に関する資料(一部は電子的にデータベース化されている。)も参照して、量刑を行うこととなる"と書かれていました。
日本の裁判はだいぶヤバイんじゃないかと思います。
●ほぼ同じ内容の判決文が3つで誤字がそのまま!コピペか?
2021/12/17追記:またちょっと毛色が異なる感じではあるものの、やはり裁判官が自分の頭で考えずにただ機械的にやっているだけ…と疑われる事例がありました。今回は、研究論文などで問題になっているコピペという方向性です。手抜きでコピペで判決を決められるってのは、そもそも検討していないということですからひどすぎですね。
このコピペ判決の話があったのは、
判決文3件に酷似箇所=誤字も同じ「コピペ」疑い―生活保護訴訟、弁護団が指摘 | 時事通信ニュース(2021-12-16 12:42)という記事でした。国が生活保護費の基準額を引き下げたのは生存権を保障する憲法などに違反するとして、受給者が各地で起こしている集団訴訟での判決文です。
<5月に出された福岡地裁の判決文では、テレビやパソコンについて「生活扶助により支出することが想定されない非生活扶助相当品目(医療費、NHK受診料等)とは明らかに性質を異にするというべきである」と言及していた。「NHK受信料」と書くべきところを誤記したとみられるが、9月の京都地裁判決、11月の金沢地裁判決でも「受診料」と記していた。
誤記を含む文章全体も字句や語尾は若干異なっているものの、構成はほぼ同じだった。三つの判決文には他にも同様に酷似した箇所があるという>
生活保護費減額をめぐっては、29都道府県の1000人超が国や自治体を相手取り、引き下げの取り消しなどを求めた訴訟を起こしていました。ただ、今のところほぼ全部原告が敗訴。今回のコピペが指摘された判決でもすべて原告の訴えを退けており、最初から棄却ありきで検討すらしていなかったと考えられます。
<各地の訴訟を支援する団体の事務局長、小久保哲郎弁護士は「棄却という結論ありきの判決つまみ食いだ。裁判官には真面目に自分の頭で考えていただきたい」と批判。大阪訴訟弁護団の和田信也事務局長も「偶然にしては出来過ぎだ。オリジナルデータのようなものがあり、コピペで使い回しているのではないか」と指摘した>
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