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議院内閣制・二元代表制(首相公選制)の問題点と長所2 ~オール野党・オール与党~


 議院内閣制・二元代表制(首相公選制)の問題点と長所1 ~直接指名~の続きで、そのときと同じことを書きますけど、これは以前書いた

  ■議院内閣制のメリット・デメリット
  ■二元代表制のメリット・デメリット

 を議院内閣制、二元代表制というくくりではなく、同時に見る形に編集し直したものです。

 これは二元代表制の長所(あるいは短所)と議院内閣制の短所(あるいは長所)は裏表、また、議院内閣制の長所と短所も裏表だと言えるため、いっしょに見た方がわかりやすいだろうという理由です。

 なお、まとまった資料がなかったので、私の独断の部分が多くなっていることにはご注意ください。


 後半は与党、野党に関するものでセットにしています。


■与党が首相(首長)を指名して、かつ政権に参加するしくみ

●議院内閣制では、行政と立法との権力の分立が不十分となる。

 国会で多数派を形成して首相(首長)を指名し政権に参加しますので、行政(内閣)と立法(国会)の区別が不十分なため、独善的な政権運営を行うことも可能になります。

 これは三権分立を満たしていないように思えますが、一応三権分立の一つの形ではあります。もう少し詳しくは、

  ■三権分立の問題点1 ~日本の三権分立~
  ■三権分立の問題点2 ~憲法的にはOK~

 あたりを見ていただきたいのですが、権力の分立として不十分とくらいは言って良いと思われます。


●二元代表制では、行政と立法との権力の分立がはっきりする。

 前項と重なりますが、国会の場合、議員が総理大臣を選びますが、当然多数派を形成した派閥の長が選ばれます。また、内閣にも国会議員が多く含まれます。

 よって、行政(内閣)と立法(国会)のメンバーが重なっている、もしくは極めて近い関係になるため、権力の分立(三権分立)としては不十分となります。


 一方、二元代表制は立法府のメンバーは行政に参加せず、選出もしないため、行政と立法とが密接である可能性は下がります。

 本来、二元代表制の形としてはこういったオール野党の体制であるようで、与党は存在しません。

 したがって、行政への監視機能は十分に発揮されます。


 ……というのが理想なのですが、そうならない場合も多いです。


●二元代表制では、議会の多数派が与党とは限らないので、首長の政策が全く実行できなくなるおそれがある。

 前述のとおり、基本的にはオール野党なのですが、そうなると首長側が提出した条例、予算などをすべて否決することが可能になります。

 首長は民意によって選ばれたのにも関わらず、全く公約を実行できない事態になりますが、当然議員も民意の代表であるわけで、こちらの意志も否定することはできません。


 「行政と立法との権力の分立がはっきりする」で書いたように、行政への監視機能は十分に発揮されるわけですが、一歩間違うと全否定という状態になります。

 首長の暴走を防ぎつつ、お互いに意見が異なる場合は話し合いで解決して妥協点を見出すというのが二元代表制の理想なわけですが、それは飽くまで理想であり、そうならないという事例がときどき起きています。

 二元代表制の問題点 ~橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長の減税案の例~から、そういった事例の載った記事を再度引用します。

 あちこちの自治体で首長と議会の対立が先鋭化している。憲法が定める「二元代表制」が機能不全に陥ったのか。いや、成熟への過渡期と、とらえたい。

(中略)

 名古屋市の河村たかし市長は「公約が否決された」と議会リコールを仕掛け、辞職を申し出た。住民投票と市長選は、愛知県知事選とトリプルで二月六日にある。鹿児島県阿久根市では市長リコールが成立し、失職した竹原信一前市長の再審判は一月十六日に迫る。埼玉県草加市をはじめ各地で議会解散、二度の首長不信任、出直し選挙と続く例も少なくない。二元代表制の限界なのだろうか。



●議院内閣制では、国会の多数派が与党となり、安定的に政権運営しやすい。

 一方、議院内閣制では国会議員が首相を選びますので、国会で最大多数を占めている派閥の推した人が通常首相となります。よって、首相を支持する与党と国会の最大多数の派閥(連立の場合もある)とが同じになりますので、安定的に政権運営しやすくなります。

 私はこれは議院内閣制の最大の魅力だと考えています。


 ただし、少数政党の乱立などで多数派協議が決裂したりすれば、与党が過半数を占めれない場合はあります。

 また、日本の場合、二院制をとり、かつ両院の権限の強さが近いので、政権は不安定になりやすいです。これはほぼ日本だけの特殊事情だと考えています。


 先の多数派協議が決裂の例として強烈なのは、政権が不在(政治空白)でも結構何とかなるで書いたベルギーの例です。

 当時の文章をそのまま転記します。

 連立難航、政権なし200日…ベルギーの事情? 読売新聞 2011年1月6日09時06分によると、ベルギーで、昨年6月の総選挙後、各政党による連立交渉が難航し、正式政権が存在しない状態が長期化し、ついに5日で正式政権の不在期間は206日となったそうです。

 これはベルギー特有の事情が存在し、オランダ語を話す北部のフラマン系(人口の約6割、ゲルマン民族、工業化)とフランス語を話す南部のワロン系(同約3割、ラテン民族、農業中心)で、ほぼ二分され、政策が近い政党でも言語圏ごとに存在するため、少数政党が乱立しているためだそうです。


 日本特有の問題としては前回書いた首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点から引用します。

 参議院と衆議院がほぼ同じ力を持っていることも問題だ。このため、衆議院と参議院の過半数を抑えないと自由な政権運営ができない。3年に一度は必ず行なわれる参議院選挙にいつ起こるかわからない衆議院選挙が挟まれ、政権を左右する国政選挙が頻発する。衆議院を勝つだけでは政権を取ったとはいえず、二つの参議院選挙でも過半数を抑えねばならない。つまり、6年のうちに衆参で三連勝しないと安定政権は取れない。一つの国政選挙で大勝すると後の国政選挙では大逆風となる傾向があるのでこれは相当難しい。日本の政権は常に不安定になるような仕組みになっているのだ。



●議院内閣制では、首相を任期途中解任することができる。

 これまで書いてきたように、基本的には首相は議会の多数派から出ます。しかし、意見の相違などで与野党の数に逆転が生じたり、あるいは与党は変わらなくても首相に不都合を生じることもあります。

 その場合にも、議院内閣制では首相を任期途中で変更することが可能です。

 たとえば、連立政権で連立政党の一部が離脱して、他の野党と協力して多数派を形成した場合(日本であれば衆参両院で)、内閣を不信任にした上で、野党だったメンバーで内閣を作り直すことができます。

 また、まかり間違って与党から見てもどうしようもない首相を選んでしまって「失敗したぁ!」と思ったときにも、内閣を不信任にすることが可能です。


 通常、首相が変わることはネガティブに捉えられることが多いですが、実はこういう良い面もあります。

 よく考えていなかったせいで中途半端に終わって失敗しましたが、与党の一部と野党が協力(と言うほど、連携していなかったのが失敗の原因の一つだと思いますが)して菅内閣を不信任にしようとしたのは、これらの例に近いです。(あれは成功してどうするつもりだったんだろう?と、今でも不思議です。おそらくさらに短命の内閣になったのでは?)

 
●二元代表制では、議会が首長を任期途中解任することができない。

 議会が首長を任期途中に直接解任することができません。これは二元代表制の意外な短所です。

 しかし、首長のリコールということは、住民の投票によって可能です。

 したがって、首長を任期途中解任することができないわけではありませんが、議会がそれを行うことができませんので、その場合に比べてハードルが高くなります。


●二元代表制では、首長の政策実現不可能と首長リコール、議会リコールの連続になるおそれがある。

 これは最初の方の「二元代表制では、首長の政策が全く実行できなくなるおそれがある」の関係です。

 前項の「二元代表制では、議会が首長を任期途中解任することができない」で書いたように、リコールは手軽にできるものではありませんが可能なことではあります。


 リコールは首長にだけではなく議会にもできますので、首長の支持者は首長派で過半数を取ることを目指して議会リコールを仕掛けることがあります。しかし、ここで過半数を取ることができなければ、結局議会との対立構造は変わりません。

 また、議会の多数派の支持者としても、認められない政策を提案する首長は好ましくないので、首長リコールをして別の候補者を首長にしようと試みることがあります。しかし、これもまた同様に新たな候補者が当選できなければ、事態に変化はありません。

 両派の支持が均衡している場合、リコール後の選挙が思惑通りにならないことが見られ、この二つのリコールが次々と起こることもあり得ます。

 阿久根市のケースがまさしくそういったケースでしたが、議会多数派と良好な関係の首長という組み合わせになるまで、首長選と議員選を繰り返すことになります。

 これが二元代表制の最大の弱点で、最も問題のある部分だと考えています。


 しかし、次に書くようにこれとは全く逆のケースの問題もあります。


●二元代表制では、議会が責任を果たさなくなる場合がある。

 行政と立法との権力の分立がはっきりする、オール野党となって監視すると矛盾しているように思えるのですが、二元代表制では、一転して議会が実質的にオール与党となったり、監視機能が働かなくなったりする場合が実際にあります。

 また、「首長の政策が全く実行できなくなるおそれがある」の関係で、首長が議会に完全に従うということも考えられます。

 その他、与党として行政に参加しない分、責任感が欠けるという副作用も考えられそうです。


 河村たかし名古屋市長と議会との対立の経緯で使ったものですが、

河村市長が支持を集める背景には、根強い政治不信が存在するという認識もあり、片山善博総務相(当時)は「これまでの二元代表制の下で(市長と市議会が)それぞれチェックし、牽制(けんせい)し合う機能があまりなくて、裏で手を握り、八百長、談合の傾向が強かった、それではいけないというのが阿久根、名古屋で、今までのアンチテーゼ

 というのは、前半の例です。


 また、竹原信一阿久根前市長の議員時代に、ある議員の税金による観光旅行や領収書偽造が判明したものの、多くの議員はそれを問題視しないかったということがありました。

 そのとき市長が何か改革に動いたという話もありませんでしたので、竹原信一阿久根前市長が市長と議会は馴れ合いだとしたのも、あながち的外れではないでしょう。


 もう一つ阿久根市の話を出すと、竹原信一さんを市長選で破った新市長が最初に提案して議決したのは、議員給与削減の全額を元に戻す案と、市長、副市長の給与の減額幅を少なくする案でした。

 確かに竹原信一さんの給与削減は過激だったのですが、人件費だけで市の財政を使い切るほど困窮している状態で真っ先にやるのが自分たちの給与の話だと言うのですから、市民も舐められたものです。

 阿久根市の場合は竹原信一前市長派の議員がまだいますので野党不在の例ではありませんが、市長と議会の馴れ合いの構図は見て取れます。


●議院内閣制では、与党と野党がはっきり分かれている。

 これは前項の裏返しです。

 日本の場合は内閣に国会議員を入れる必要がありますが、通常野党からは閣僚を出しません。したがって、野党が内閣を弁護するメリットはなく、チェック機能が有効に働きます。

 また、与党は逆に内閣と極めて近いので、事実上、内閣ではなく与党が政策を決めることもあり得るなど、政策にある程度責任を持ちます。



 完璧な制度はない、一長一短というところなのですが、一番大きいと思うところだけ書きだすと、

議院内閣制・メリット  政権が安定
議院内閣制・デメリット 首相(首長)は間接指名
二元代表制・メリット  首長(首相)は直接指名
二元代表制・デメリット 行政が不安定

 と書けると思います。

 前回まではそこまでツッコミませんでしたが、個人的には二元代表制の不安定さという問題はあまりにも大きいので、議院内閣制をベースにした制度の方が良いと思っています。


 関連
  ■議院内閣制・二元代表制(首相公選制)の問題点と長所1 ~直接指名~
  ■議院内閣制のメリット・デメリット
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  ■既得権益改革とポピュリズム1 ~既得権益批判は安易な道か?~
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  ■小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~
  ■二元代表制の問題点 ~橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長の減税案の例~
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  ■三権分立の問題点2 ~憲法的にはOK~
  ■河村たかし名古屋市長と議会との対立の経緯
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  ■大阪市長選は橋下徹前知事VS既得権益の様相
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