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所得格差を憎んでも仕方ない 所得より税金の不平等の方が問題


2012/2/9:
●グローバル化が所得格差の原因…というのは本当なのか?
●反グローバル主義者は自由貿易を攻撃し、保護主義を推奨
●所得格差を憎んでも仕方ない、本当に必要なのは底辺層の底上げ
●実は富裕層の税金は高くない…所得の不平等より税金の不平等の方が問題
●お金持ちを固定化しないことが国益にもなる?
●ズルしている人たちから税金を貰うだけで税金増が可能!
2020/05/30:
●貧困層を支援したら経済成長が遅くなる…実は全く逆だった?


●グローバル化が所得格差の原因…というのは本当なのか?

2012/2/9:先進国らが加盟する経済協力開発機構(OECD)が出した報告書では、最上位10%と最下位10%の家計所得の比率が加盟国の平均で過去最大の9対1に広がってしまいました。先進国では、フランスなど数カ国を例外に、1980年代半ばから所得の不平等度を示すジニ係数が上昇し続けています。

 例えば、米国では上位1%の富裕層が08年の国民所得の18%を占めます。80年には8%だったのに、ここまで増えました。8%でも十分驚きですけどね。日本でも1%の富裕層国民所得の9%を占めているということで、やはり驚くべき富の集中が起きています。

 一方で、同時期に、所得税の最高税率は70%が35%に下がっていました。お金持ち優遇の流れです。これを書いていたグローバル化が悪いのか フラットな世界と不平等(日経新聞 土谷英夫 2012/1/23付)では、階層が固定化しつつあり、「アメリカンドリーム」の空洞化が起きているとしていました。

 OECDのの報告は、このような格差が広がった時期は、貿易や資本移動を通じた経済統合が進んだ時期と重なると指摘。とはいえ、これが本命の理由ではないと見ているようですね。不平等化の要因としては、グローバル化よりも、技術進歩、政策や規制・制度の改変、労働環境や家族構成の変化などの作用が大きいとしていたようです。

 例えば、情報通信技術の進歩は、高スキルの労働者の需要を高め賃金を上げるものの、そうではない低スキルの労働者は取り残されてしまう…ということが起きているとのこと。嫌な言い方になりますが、できる人とできない人の差が広がり、所得格差に繋がっているというわけです。


●反グローバル主義者は自由貿易を攻撃し、保護主義を推奨

 一方、アンチ・グローバル化の批判者らは、まず自由貿易はまずいとしています。「自由貿易は民主主義を害す」というフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドさんは、なんと保護主義を勧めていました。

 ただし、インド出身の国際経済学者ジャグディシュ・バグワティ米コロンビア大学教授は、先進国の身勝手ではないかといった見方。貧しい国が成長する手立てとして、むしろ自由貿易が重要だと考えるためです。グローバル化が、世界の底辺層を底上げしている事実があるともされていました。新興国側の視点では、全然考えたことがありませんでした。盲点…と言うか、私の考えが足らなかったんだなぁと反省します。

 ところで、こうした所得格差の拡大対策として、OECDが勧めるのは、高スキル労働を担える人的資本への投資、教育の充実。税や社会保障の再配分効果を高めるため富裕層の負担増も選択肢とする、といったものでした。前述の通り、富裕層の税率は激減していますしね。

 ただ、記事では、「国際機関の勧告としては何やら物足りない」と否定的な評価でした。強欲をあおる報酬体系や、国境をまたぐマネーの暴走の規制が必要だろうとのこと。ただ、一国ではできないことであり、経済のグローバル化を統治する仕組みの不在が問題だと、ロドリック教授などは指摘しているそうです。


●所得格差を憎んでも仕方ない、本当に必要なのは底辺層の底上げ

 ところで、格差という観点は本質じゃないのではないか、と私は考えます。重要なのは底辺層の底上げであり、上位が上がるか下がるかではないでしょう。格差を縮めるだけならみんなで貧しくなれば良いのですが、そんなこと誰も望んでないですよね。

 たとえば、2億円稼いで40%の8000万円納税している人がいます。それは不平等だと制約をかけて、その人の収入を1億円まで下げました。果たしてこれで皆さん幸せになれたでしょうか?

 納税額は半分の4000万円まで減っているんですから、再分配で底辺層に使えるお金も減っています。もしかしたら、こんな国嫌だと海外に行ってしまい、それ以降税金はゼロになるかもしれません。

 そんな馬鹿なことするよりはもっと稼いでもらった方がずっと良いです。3億円稼げるようになれば、税金は1億2000万円にもなるのです。むしろもっともっと稼いでくださいって願うべき。格差の数字だけ見ていてもそれは本質じゃありませんし、憎んでも仕方ありません。


●実は富裕層の税金は高くない…所得の不平等より税金の不平等の方が問題

 所得税の上げ下げもその数字自体が正解・不正解ではなく、税金を最大にできたかどうかで評価すべきかもしれません。所得税を上げすぎると、高所得者の海外への流出を招きかねないという問題を抱えています。当然再分配できる税金が激減であり、本末転倒となるわけです。

 この所得税の税率を論じる前に、さらに先に「憎む」べきところというのはあり、現状の税制度の建前と実態に乖離がある場合です。たとえば、ロムニー氏、納税申告書を公開 優遇税制使用で反発必至)- AFPBB News(2012年1月25日08時17分)という記事が、アメリカの本当の問題を浮かび上がらせています。(2019/01/08追記:アメリカほど極端ではありませんが、日本でも似たような問題が起きています)
 米大統領選の共和党候補指名を争うミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ(Massachusetts)州知事は24日、2010年と11年の納税申告書をネット上で公開した。(中略)

 納税申告書によると、年収は、10年が約2170万ドル(約16億8500万円)、11年が推定2090万ドル(約16億2300万円)。10年の納税額は約300万ドル(約2億3300万円)で、年収に占める割合はわずか13.9%だった。これは、所得の最大35%が連邦税として差し引かれてしまう大半のサラリーマンよりもはるかに低い税率だ

 この数字は、貧富の格差が広がり各地で「オキュパイ(占拠せよ)」運動にも発展した米国で、多くの国民にショックを与えることは否めず、混戦模様の指名争いにおいて思わぬ展開を呼ぶ可能性がある。

 これは明らかにおかしいでしょう。「憎む」べきであり、まず是正すべきである点はここです。高所得者の方が納税する割合が多いというのが建前なのに、その逆の現象を起こしています。経済格差の話で言えば、格差を固定化、拡大しようという方向の税制度です。

 一度下書きを終えた後に読んだ記事を補足的に追加。ロムニー候補が勤めたプライベート・エクイティ・ファンドはモンスター会社か 経済を活性化する? トップは儲けすぎ?(要登録 日経ビジネスオンライン  The Economist 2012年2月2日)に、次のような説明がありました。
 米国の税制がプライベート・エクイティ・ファンドに巨額の収益をもたらす理由がもう1つある。ヘッジファンドマネジャーが受け取る成功報酬は「キャリード・インタレスト」と呼ばれ、キャピタルゲインとして課税される。このため、所得税に比べて税率が低いのだ。ファンドの人間はキャリード・インタレストは投資による収入であると主張する。だが、リスクにさらされている資本の大部分はあくまで投資家のマネーであり、ファンドのものではない。

 米国と英国の政治家は、この抜け穴について2007年から議論を続けている。そろそろケリをつけてほしいものだ。キャリード・インタレストは実質としてボーナス以外の何ものでもない。しかるべき税率で課税される必要がある。

●お金持ちを固定化しないことが国益にもなる?

 私はこういった税制の不備を格差という意味ではなく、国の競争力という意味でも憂慮すべきことだと思います。

 能力のある人はその報酬を正しく得るべきですので、高報酬が悪いとは考えません。しかし、歪んだ税制度で金持ちを固定化してしまうことは、能力とは何の関係ありません。今お金があるというだけでうまく生かしていない人からはどんどんと取り上げて再分配し、中流、あるいは所得の低い人から現れる才能のある人に機会を与えた方がずっと国のためになるでしょう。

 アンフェアな条件で勝つ人より、フェアな条件で勝つ人の方がよりずっと才能があるわけで、そういう人たちに産業の中心になってもらった方が、海外との競争でも勝てる確率が高まるんじゃないかと思います。好きな言葉じゃありませんが、よく言うガラパゴスの中にはこういった構造のものがあります。歪んだ環境で差をつけて勝ったとしてもそれは国内だけの話であり、海外では通用しないでしょう。


●ズルしている人たちから税金を貰うだけで税金増が可能!

 話が逸れましたが、この税の不均衡を正すことは効果が大きいです。これをするだけで、所得税の変更を伴わなくても税収増が可能になります。また、捕捉できていないせいで取り立てられていない税金というのも多くあります。これは、本来支払うべき税金が支払われていないのをルール通りにもらうだけでも、税収が増えるということです。

 所得の不平等よりもこういうズルがある税金の不平等の方を問題視すべきだと思うんですよね。お金持ちを憎むのは、意味がありません。

 なお、最初の記事では「超リッチ層にヘッジファンドや投資銀行幹部など金融関係者の比重が高い」というお金持ち憎しな話がありました。ただ、そもそも金融関係者が金持ち…というのは、俗説である疑いもあります。この話も本当は今日書きたかったんですけど、長くなったのでまた今度やります。→ 金融業界の人ばかり金持ち…は嘘 本物の金持ちはサラリーマンだった!?に続きました。


●貧困層を支援したら経済成長が遅くなる…実は全く逆だった?

2020/05/30:以上のように所得格差を憎んでも仕方ない、本当に必要なのは底辺層の底上げ…と書いていたのですけど、所得格差の是正そのものは経済にとってもプラスみたいですね。その後、所得格差の何が問題? → 格差拡大で経済成長マイナス、幸福度低下で暴力が増加という話をやっています。

 そこでやった記事では、最新のIMFの研究によると、貧困層・中間層の所得が全体に占める割合が増えると、その国のGDP成長率も増大することがわかっている、と書かれていました。逆に、富裕層の所得が全体に占める割合の方が増えてしまうと、GDP成長率は縮小してしまうそうです。

 なので、国が成長するためには、富裕層に所得が集中しすぎる状態を是正した方が良いみたいですね。貧困層にお金を回すと経済成長がゆっくりになる…というイメージがあったものの、実際には逆でむしろプラスになるようです。経済成長と所得再分配は成立するという非常においしい話でした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■金融業界の人ばかり金持ち…は嘘 本物の金持ちはサラリーマンだった!?
  ■所得格差の何が問題? → 格差拡大で経済成長マイナス、幸福度低下で暴力が増加

【関連投稿】
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