2012/2/10:
●国王夫妻来日で「ブータンブーム」が起きていたのに気づかず!
●日本は経済的に豊かなのにブータンより幸せじゃない…は間違い
●GNH(国民総幸福量)ランキング、ブータンは1位ではない
●先進国が上位に入れない幸せランキング、価値観が変わった?
●充実した社会保障を求めながら増税を拒む日本人は幸せになれない?
●国王夫妻来日で「ブータンブーム」が起きていたのに気づかず!
2012/2/10:以前日経ビジネスオンラインでブータン特集をやっていて、これがめちゃくちゃおもしろかったのでいつか書こうと思っていました。でも、まあ、需要ないだろうし…と思っていて、後回し、後回しにして全然やってなかったんですね。みんなブータンに興味ないと思っていました。
ところが、
豊かでも不幸せな日本人は理想郷に出会えるか?ブータンだけではない「本当に幸せな国」の条件 (2011年12月2日 友清 哲)という記事を読んでびっくり。冒頭に<ブータン国王夫妻の来日で「ブータンブーム」が起きたことは、記憶に新しい>と書いてあったのです。
ええっ、本当!? ブータンブームだったんだ。全然知りませんでした。知っていればそのタイミングで紹介したんですけどね。そのときならきっとたくさん読んでもらえました。
何か損したなぁと思ったのですけど、「今からでも書けばまだ関心あるかも、早くやろう」と思ったにも関わらず、それからまた2ヶ月。またすっかり遅くなりました。私はよくこういうことをやってしまいます。
●日本は経済的に豊かなのにブータンより幸せじゃない…は間違い
このブータンブームの存在を知った記事では、最初のところで以下のようなことも書いていました。
<それ(引用者注:ブータンブーム)をきっかけに、「国民の幸せ」という概念が注目されている。ブータンでは、ほぼ全ての国民が“幸せ”を感じて暮らしているというのだ。その一方、ブータンと比べれば経済的にはるかに豊かであるはずの日本では、若者から大人まで「将来に希望が持てない」と嘆いている。いったいこの「差」は何なのだろうか。経済的な豊かさが真の幸福につながらなくなってしまった今、「本当に幸せな国の条件」とはどんなものかを考えてみよう>
「国民の幸せ」に関するものは私も興味あります。ただ、たぶん他の方と違う観点みたいですね。上記以外にもブータンに関して書いたものを読みましたが、私はすごく違和感を覚えました。
詳しくはその日経ビジネスオンラインの記事を元に書きますけど、経済的な豊かさと幸せを結びつけている時点でブータン的幸せを享受するのは到底無理だと思います。経済と絡めて「ブータン素晴らしいね」と言っている方は、ブータン人的な感覚からとても遠いところにいる可能性が高いです。
●GNH(国民総幸福量)ランキング、ブータンは1位ではない
記事で、<ブータンが「国民総幸福量」を国の豊かさの基準としている>ために、<経済的には必ずしも恵まれていない小国にもかかわらず、ブータン国民はなぜそれほど「幸せ」を感じられる>としていました。実を言うと、ここにも違和感があります。「国民総幸福量」を国の豊かさの基準としているからと断定するには、そう断定した理由を説明すべきです。
文句つけてばかりだとあれですが、記事にはそのGNH(国民総幸福量)ランキングのトップ20が載っていました。これだとブータンは8位だそうです。
<GNH(国民総幸福量)ランキング>
1位・デンマーク
2位・スイス
3位・オーストリア
4位・アイスランド
5位・バハマ
6位・フィンランド
7位・スウェーデン
8位・ブータン
9位・ブルネイ・ダルサラーム(通称ブルネイ)
10位・カナダ
11位・アイルランド
12位・ルクセンブルク
13位・コスタリカ
14位・マルタ
15位・オランダ
16位・アンティグアバーブーダ
17位・マレーシア
18位・ニュージーランド
19位・ノルウェー
20位・セイシェル
●先進国が上位に入れない幸せランキング、価値観が変わった?
記事では、先進国の中でも世界情勢にそれほど大きな影響を与えない経済規模の国や、ニュースでほとんど名前を聞くことがない小国が、軒並み上位であることに注目。一方、経済大国と言われる国々や成長著しい新興国は、20位以内にさえランクインせず、そろって下位に甘んじていることを指摘していました。
23位・アメリカ、 35位・ドイツ、41位・イギリス、50位・イタリア、62位・フランス、82位・中国、90位・日本、125位・インド、167位・ロシア
これについて、記事では、<いったいこの「差」は何なのか。それは、もはや経済的な豊かさが国の幸せに直接結びつかないことを、このランキングが如実に物語っていることを意味する>とまた断言。ただ、そもそもかつては「経済的な豊かさが国の幸せに直接結びついていた」という証拠がなく、やはり理由の説明が足りないところです。
●充実した社会保障を求めながら増税を拒む日本人は幸せになれない?
「幸せな国家」の条件として、作者は二点挙げています。これは同時に両方を満たすという二点ではなく、二つのタイプがあるという分析のようです。まず、ひとつが、国民が経済的な豊かさとは別に、「充足感」を持っているか否かというポイント。ブータンはこちらのタイプと分類されています。
もう一つが、国家の主導による充実した社会システムづくり。わかりづらい言い方ですけど、要するに充実した社会保障制度のようなものであり、デンマークなどの北欧型の国を想定しています。「ブータン的な国=精神性」「デンマーク的な国=社会システムの充実度」という言い方もしていました。
「デンマーク的な国」は一方で、重い税負担があります。これについて、記事では、この点において、多くの国民が年金や医療費の充実を求めながら、増税に難色を示している日本とは、やはり対照的と言わざるを得ないともありました。
私は日本人の良さを前面に出した記事もよく書きますけど、ここだけ見ると日本人はひどく強欲に見えてしまいますね。そしてもしそうであれば、日本が幸せの国でないということは至極納得です。
●日本は経済的に豊かなのにブータンより幸せじゃない…は間違い
2019/11/29:「日本は経済的に豊かなのにブータンより幸せじゃない」が、なぜ変なのかという話を書いていませんでした。これはこの投稿の後書いた
GDPより幸福度という脱成長論 でも幸せの国ブータンは経済重視だったでわかるでしょう。
ブータンの目指す幸せが、経済成長と反対の概念ということではありません。むしろ「経済成長を最も重視している」といって良いことになっています。経済と絡めて「ブータン素晴らしいね」と言っている方は、ブータン人的な感覚からとても遠いところにいる可能性が高いと書いたのは、そういう理由でした。
さらに、ブータンが幸せのことをよく理解しているというのは、持続的な成長を目指しているということ。幸せと関係が深いのは今現在経済的に発展しているかよりも、今より良くなるか?といった前向きさの方です。今現在経済的に発展している国が幸せとは限らないのも、この考え方で行けば当然なのです。
【本文中でリンクした投稿】
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