2012/2/12:
自民党と公明党、お互いに有利な選挙制度にしようとケンカ
大政党が反対、他小政党が賛成 要するに自分たちに有利だから
小選挙区制が理想的というのは幻想、お手本のイギリスでも失敗
選挙制度改革で政治は良くならない 小選挙区制見直しよりも参議院改革を
中選挙区制に戻して解決ということでもない
小選挙区制は完璧でなくてもまだマシか?
参議院改革の他、憲法違反となっている一票の格差の是正も大事
参議院を弱くして長期的視野に立つ課題をやる議会に
2012/3/5:
憲法の改正の必要な参議院廃止、維新が公約
地方VS中央という対立構造から抜け出せていない維新
「衆議院と参議院の違い」を明確にするべき?
2018/07/27:
参議院改革をすべき…は間違い 人間の欲深さを甘く見すぎていた
●自民党と公明党、お互いに有利な選挙制度にしようとケンカ
2012/2/12:"「自民党内どうなっているのか」公明に不信感(2012年2月1日09時00分 読売新聞)"によると、自民党と公明党が揉めているようです。
衆院選挙制度改革で、自民党内に小選挙区比例代表連用制の導入の是非をめぐって足並みの乱れが生じている。
連用制の導入を求める公明党は不信感を強めている。
自民党の石原幹事長は31日の記者会見で、「連用制には反対だ」と述べ、現行の小選挙区比例代表並立制の維持を前提に、与野党協議に臨む考えを強調した。連用制は現行制度に比べて中小政党に有利とされている。塩谷総務会長も同日、「安定して過半数を取る政党が少なくなり、不安定な状況が予想される」と慎重姿勢を示した。
一方、党内には、民主党と公明党の接近を警戒し、“落としどころ”を探る動きも出ている。田野瀬良太郎幹事長代行は1月29日のNHK番組で、並立制と連用制を組み合わせる案を提案した。(中略)
ただ、こうした案は自民党内で正式に議論されておらず、31日の公明党政治改革本部では、「いろいろ声が出ているが、自民党内は一体どうなっているのか」と批判する声が上がった。
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20120201-OYT1T00161.htm
小選挙区比例代表連用制はザクッと言うと、現行より比例代表制にぐぐぐっと近づく方式です。
小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~で書いたとおり、大政党は小選挙区が良くて、中小政党は比例代表制や中選挙区制が良いのです。
要するにお互いに自分の得意な方に持って行こうと一生懸命なわけです。国民不在ですね。
●大政党が反対、他小政党が賛成 要するに自分たちに有利だから
下書き終えてから見つけた
小選挙区比例代表連用制、導入すべき? BLOGOS編集部によると、各党協議では公明、国民新、社民が導入を主張、民主党も検討する姿勢を見せているそうです。
この脇にあった「著名人の声」ってところで馬場正博さんって方が、私と似たような感想を残していました。
「この件は大政党の民自が反対、他小政党が賛成。一般人には利害以前に制度の内容が理解できない。そもそも比例なんて議員数削減でなくなるはずじゃなかったのか。これは本物の国民不在。」
(民主党の場合小政党とも言えないので、「検討する姿勢」というのは、やや自分たちには不利な選択かもしれません)
もう一人載っている下地幹郎さんは賛成意見なんですが、この方は国民新党の衆議院議員。おもいっきり利害関係者であり、自分たちに有利だから賛成といったものでした。
●小選挙区制が理想的というのは幻想、お手本のイギリスでも失敗
ところで、今の小選挙区制が政治を悪くしているという考え方があり、
小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~でもその話を書きました。
関連して、
英国の政治は民主的じゃない?かつての“お手本”も制度疲労(要登録 大竹 剛 2012年1月20日(金)日経ビジネスオンライン)という記事もあります。
現行の英国の選挙制度は単純小選挙区制(Fast Pass The Post=FPTP)であり、それを踏まえて以下をお読みください。
どのような選挙制度を選ぶかは、選挙で何を重視するかで決まる。大きく2つに分けるとすれば、それは、(1)民意を正確に反映する、(2)強い政権をつくる、のいずれかだ。前者を選ぶのなら、得票率で議席を割り振る比例代表制が好ましいとされ、後者ならFPTPなどの小選挙区制に重きを置くことになる。英国は、歴史的に後者を選択してきた。
だが、今の英国は、そのような環境にない。事実、2010年の総選挙の結果、どの政党も過半数の議席を獲得できないハングパーラメント(宙ぶらりん国会)状態となり、保守党は自由民主党との連立政権樹立を余儀なくされた。「民意を正確に反映できないばかりか、強い政権も作れない。両方の側面で、英国は最悪の状況にある」とロッジ氏は手厳しい。
ハングパーラメントは36年ぶり、連立政権樹立は戦後初であったために、FPTPが単独過半数の政権を生み出さなかったのは特殊事例のように思われるかもしれない。だが、保守党と労働党が政権交代を繰り返しながら強い政権を生み出してきたと思われがちな英国でも、過去100年、ハングパーラメントは7回(補欠選挙の敗退による過半数割れ2回を含む)も起きているほか、安定的で強い政権と呼べるほど議席数で差がつかなった政権も4回ある。「FPTP が強い政権を作れるというのは、神話に過ぎない」とロッジ氏は指摘する。
特に過去30年間、FPTPの制度疲労は顕著になってきている。英国が2大政党制に近かった1970年頃までは、保守党と労働党で約90%の得票率を獲得していた。しかし、それ以降は少数政党が得票率を増やし始め、2010年には保守党と労働党の合計得票率は65%まで減少した。つまり、過去30年の間に2大政党制の基盤は崩壊し、2大政党制の下で強い政権を生み出す役目を果たしてきたFPTPも、少数政党が力を付けた多政党制の下では機能しなくなってきた。
ただ、3党で鼎立(ていりつ)している英国はともかく、少数政党乱立となると、その不都合もまた大きいものです。私も「これがいい!」と選ぶことができず、何とも言い難いものがあります。
●選挙制度改革で政治は良くならない 小選挙区制見直しよりも参議院改革を
一方、
「選挙制度が諸悪の根源は間違い」第2回飯尾潤・政策研究大学院大学教授に聞く(安藤 毅 日経ビジネスオンライン 2012年1月10日)という記事もありました。
こちらは
首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点を書いた直後に読んだ記事ですが、飯尾潤・政策研究大学院大学教授は、そこで書いたのと同じようなことを指摘していました。
"選挙制度も問題だが、今の政治停滞の原因は、選挙制度によるものではほとんどない"
"衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」において、参院が強すぎることが問題の本質だ。
野党に転落した自民党は、本来は自分たちがまた政権に戻った際に同じ構図に困らないように参院改革の提案をしていくべきなのに、ひたすら政権の足を引っ張ってばかり。
どうせ、今年の通常国会では赤字国債発行法案を人質にして野田内閣を追い込もうとするのだろうが、仮に政権を奪還しても、その後、今度は民主党側からしっぺ返しをされることは目に見えている。こうした衆参関係の整理に手を付けない限り、政治の混乱は続きかねない"
●中選挙区制に戻して解決ということでもない
ただ、他の視点も出ていました。
"もう1つの問題は、国会運営が非効率ということだ。議院内閣制なのに、国会審議で政府の言い分が通らない。これでは、責任を持って政権運営ができない。
大臣がずっと国会に張り付いていなければいけなかったり、日程ばかりが重視されたりする構図もずっと変わらない。機能する国会に向けた改革が必要だ"
"3つ目は、政党の改革だ。とにかくまとまりがなさすぎ、民主党でも身内が足を引っ張っている。きちんと結論に従うような仕組みの整備が急務だ。
仮に中選挙区制に戻し、個人中心の選挙に戻すと、こうした傾向はますます強まるだけだ。個人的な思いを実現する政治や政党ではだめだという基本的認識が足りなすぎる。
何でも選挙制度のせいにしてもいけない。ほかの大きな問題にこそ、目を向けるべきだ"
2つ目の話はよくわからず。3つ目は、
小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~で書きました。
そのとき私はどういう結論にしたんだっけ?と読みなおすと、中選挙区制に良いところはあるし、個人的には好きだけど、"中選挙区制に戻して万事解決となるかと言うと、疑問ですけどね"ということで、結局、態度保留でした。
●小選挙区制は完璧でなくてもまだマシか?
これに関しては飯尾潤・政策研究大学院大学教授の以下の指摘は一理あります。
"私は、衆院は政権選択の場とし、参院は審議できる能力や経験がある人物を選択できる仕組みにすべきと考える。結論的には、衆院は現在の「小選挙区比例代表並立制」の根幹は維持すべきだろう。
政権選択の場とする以上、政党を中心に動くことが重要になるが、単純比例にすると、有権者は人物を選んで投票できなくなる。
政治家を育てていくには、小選挙区があったほうがいいと思う。そうなると、今の制度からはあまり変えられない。
しかも、きちんとした政権を作るには、衆院は選挙での勝ち負けがはっきりしたほうがいい。民主党の失敗は、連立を組み、少数政党に振り回されていることだ。
仮に衆院の選挙制度を変えると、権力の集中が足りなくなり、政権は一層弱くなるだけだ"
先のイギリスの例であるように小選挙区制も完璧じゃありませんが、比例代表制を重視しすぎると政権選択にマイナスなのは否定できないでしょう。
●参議院改革の他、憲法違反となっている一票の格差の是正も大事
いずれにしろ、衆議院と参議院の力関係を適切にするというのが焦点でしょう。
私は選挙制度改革より、優先すべきことがあると考えており、一つがこの参議院改革です。(
首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点でも書いています)
それともう一つは憲法違反となっている一票の格差の是正です。この一票の格差の是正は、自民党に不利になる可能性が高く、彼らはこれまた熱心ではありません。
結局どちらも揉める内容であり楽な道というわけではないのですが、重要性が高いのはこちらです。政治家の方々には是非よく考えてもらいたいですし、マスコミや国民もそのことを訴えるべきです。
●憲法の改正の必要な参議院廃止、維新が公約
2012/3/5:選挙制度改革としては一票の格差是正が最優先だと思っています。一方、それとセットで議論されている小選挙区制、比例代表制などの選挙制度改革は各政党の都合が主体です。
日本の政権の不安定さの要因としては、本質的には強すぎる参議院のせいだと考えていますので、小選挙区制などの見直しに時間を浪費するのはあまり感心しません。
参議院改革については、橋下徹大阪市長の船中八策に、憲法の改正の必要な参議院廃止が入っていました。
維新の会、参院廃止を提唱へ 政権公約で既成政党に挑戦状
橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会が、次期衆院選に向けた事実上の政権公約「船中八策」に「参議院の廃止」を盛り込む方向で調整していることが10日、同会関係者への取材で分かった。「既成政党ではできない改革」を旗印に検討を進める構え。衆院定数削減を唱えながら協議が進展しない国政に“挑戦状”を突き付ける狙いがある。
参院廃止は八策のうち「財政再建・行政改革」分野の柱に据える。同会幹部らは参院に関し、解散がなく中長期の課題に取り組めるという理念が失われ「衆院選落選者の救済機関」になっている側面があると分析。
共同通信
●地方VS中央という対立構造から抜け出せていない維新
"解散がなく中長期の課題に取り組めるという理念が失われ「衆院選落選者の救済機関」になっている"という問題点の指摘はそのとおりで、本来の理念では参議院での政党による党派争いは起こらないはずです。この指摘は良いんですけど、参議院の代わりのポジションに都道府県知事らを据えるって話がどこかであったのには気になりました。
参議院は廃止なので最初の理念も放棄なのかもしれませんが、都道府県知事の任期なら「中長期の課題」に対応するには不適切です。
日本の政治は予算の期限の一年先までしか物事を考えられない、という批判があります。さらに衆議院議員はいつ選挙があるかわからないので、結局議員は数カ月先のことまでしか思考できないとも言われます。じゃあ、海外は違うの?ってのは疑問ですけど、とりあえず、長期的な視点というのは必要でしょう。
また、これに関しては「地方VS中央という対立構造から抜け出せていない」という批判も的外れではなく、そういう意味でも視野が狭いと思います。
私がそもそも今の国会議員が気に入らないのは、「国会議員」って名前なのに地方への利益誘導を手柄にするような行為があることです。国会議員なんだから国全体のこと考えるべきでしょ。
私がもともと地方分権を支持する大きな理由として、地元への利益誘導を止めて、財源・権利を与えた上で地方のことは地方に考えさせて、国会議員は国全体の利益という視点で物事を考えるべきだというのがあります。過激過ぎて賛同は得られないと思いますけど、私は一度当選した選挙区からは立候補禁止くらいで良いと考えています。
国会議員は地方の利益代弁者である必要ではないという意味では、他の橋下徹さんの政策である地方分権はその解消にプラスに働くはずです。「地方VS中央という対立構造」は道州制の実現で、ある程度解決させるべきでしょう。橋下徹さんの維新の公約は、かなり私が賛成しているものが多かったです。ただ、都道府県知事うんぬんの話は賛成できないものでした。
●「衆議院と参議院の違い」を明確にするべき?
参議院を含めた選挙制度改革としては、以前読んだとき、
国民の代表の選び方 - Chikirinの日記(2009年8月9日)もおもしろいと思いました。
ちきりんさんは、「衆議院選挙では“国民が国の方向性を選ぶ選挙”ができるようにし、参議院では“少数意見と地方の意見の代表者”も取り入れるための選挙と位置づける」といった考え。
・衆議院は二大政党なるけど、法律を通すためには参院の少数意見の代表者達を説得する必要もある。だけど「リーダーシップ」は明確になる。
・「衆議院と参議院の違い」も明確になる。参院はまさに「数の論理ではなく、多様な意見を代表する良識の府」になる。
2010年の参議院選挙のときに、これとほとんど同じようなことを書いているものを読んで、その重なりっぷりに驚いたのですが、昔過ぎて思い出せませんでした、残念。当時はこれらの意見がおもしろいなと思ったのですが、今考えると結局少数意見の代表者達の説得がうまく行かないという問題は現状と同じような気がします。
理想は立派だけど、結局うまく行かないこともあるよねってのは、
二元代表制のメリット・デメリットで書いたケースと似ています。
●参議院を弱くして長期的視野に立つ課題をやる議会に
参議院改革の話に戻ります。とりあえず、私が今一番良いと思うのは、
首相公選制の意義と日本の議院内閣制の問題点でも引用した
【特別寄稿】前参議院議員 田村耕太郎 「政界再編も大連立も機能しない! 日本の政治を統治機構から変える究極の選択」(登録要 ダイヤモンド・オンライン 2010年12月23日)です。
・衆議院の再議決の要件を二分の一にする
・参議院の役割を長期的視野に立つ課題、外交・教育・マクロ経済政策に限定させる
上は実質的な参議院の弱体化(無力化?)で、下が参議院の役割自体の限定です。方向性としては、こちらが良いかと。ちゃんと調べていませんが、このタイプは海外で近い制度があるんじゃないでしょうか?
また、強すぎる参議院=二院の力関係が大差ないというのは日本が例外的なはずです。(解散について書いたものですが、
イギリスなどの議会の解散では両院制、二院制といった呼び名くらいは見れます)
おそらく欠点がないはずがないのでそちらも見てからですが、現在のところ私としてはそういった方向性を支持します。
ただ、
小選挙区の問題点・選挙制度改革 ~小選挙区制度は失敗だった?~で選挙制度改革がやってますポーズだけ書いたとおり、こういう制度改革はちっとも話が進みません。一票の格差是正すらできないのですから、ハードルの高い参議院改革なんて夢のまた夢です。最初にも書いたとおり、今は一票の格差是正が最優先ですから、まずは目の前のことに集中してほしいです。
●参議院改革をすべき…は間違い 人間の欲深さを甘く見すぎていた
2018/07/27:「選挙制度改革で政治は良くならない ~小選挙区制見直しより参議院改革を~」と「参議院改革 ~橋下徹市長の船中八策での廃止論、強すぎる参議院の選挙制度改革~」の二つの投稿を合わせました。軽く見直したものの、内容はほとんど変えていません。
ただ、今読み直すとだいぶ失敗したなという内容。今回、全体のタイトルを「選挙制度改革で政治は良くならない ~小選挙区制見直しより参議院改革を~」をベースにして、「選挙制度改革で政治は良くならない 小選挙区制見直しや参議院改革」に変えました。参議院改革にしても、政治が良くならないのはいっしょだと考え直したためです。
参議院が強すぎるのは確かではあるものの、合意を無視して独善的な政権運営をされるのはもっと困ります。私は安倍政権の「政治主導強化」を強く支持していたのですけど、まさか政治主導強化によって安倍政権に有利な捏造・隠蔽などが多発した上で、強引すぎる政権運営をされるとは予想していませんでした。
俗に言う性善説は全く信奉していなかったのですけど、それでも甘かったですね。安倍政権を甘く見ていました。こんなにひどいとは思いませんでしたわ。誠に申し訳ありません。
人間は多くの場合私利私欲に走りますので、必ずストッパーが必要なんでしょうね。そういう意味では、強すぎる参議院はストッパーになりやすく、むしろこのままの方が良いかもしません。
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