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高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪うというよくある誤解「労働塊の誤謬」


2012/2/19:
高齢者が仕事を辞めないから若者の仕事がない?
高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪うというよくある誤解「労働塊の誤謬」
「世の中には一定量の仕事しか存在しない」なら高齢者と若者の雇用率は反比例するはず
高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪わない理由
ミクロで見ると、高齢者が若者を邪魔しているように見える
2018/05/21:
若者の得意な仕事と高齢者・移民の得意な仕事は全然違う


●高齢者が仕事を辞めないから若者の仕事がない?

2012/2/19:日経ビジネスオンラインの年配者は若者に「職」を譲るな 働かない市民への支出は繁栄をもたらさない(2012年2月17日)という記事からですが、イギリスのThe Economistの和訳ですのでエコノミストの記事と言った方が正しいです。

 こちらではまず、就業年数の延長に人々が反対する理由として、「35~40年も働けば、いい加減もう休んでいいだろう」という考えを挙げていました。ただ、それだけではなくまだ別の理由があると続けて指摘。

 それは、「若者が職に就けるように年配者は身を引かなければならない」というもの。例えば、英フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、ルーシー・ケラウェイさんは最近の記事で「のん気な我々の世代がそこここに居座っているから、若者が先に進めない」と書いていました。


●高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪うというよくある誤解「労働塊の誤謬」

 ただ、これは感情論であり、きちんとした根拠はないと記事では指摘。

 例えば、前述の「高齢者が仕事を辞めないから若者の仕事がない」という考え方は、「世の中には一定量の仕事しか存在しない」という考え方に基づいており、明らかに間違い。この概念は、経済学で「労働塊の誤謬」と呼ばれているものだそうです。

 実を言うと、かつては女性の社会進出を阻む口実としてこれは持ち出されたもの。また、現在でも、反移民の立場を取る政治家が、移民は国内の仕事を奪う脅威だとしてこの理論を利用しているというポピュラーな間違いでした。


●「世の中には一定量の仕事しか存在しない」なら高齢者と若者の雇用率は反比例するはず

 もしも「労働塊」の理論が正しいのであれば、高齢層の雇用率が高ければ、その分、若年層の雇用率が低くなると考えられれます。そして、「世の中には一定量の仕事しか存在しない」のであれば、高齢層の雇用率が低い国では若年層の雇用率が高くなると考えられます。

 しかし、OECD(経済協力開発機構)に加盟する富裕国の雇用水準を見ると、そんな傾向は微塵も見られません。高齢層の雇用率が高いグループは、若年層の雇用率も高くなっています。ここだけ言われると、そりゃそうだろうという話ですね。

 この結果に、「この相関関係は、各国の経済が景気循環の異なるステージにあることを示しているだけだ」という反論がああるかもしれませんけど、中国のような急成長を遂げている国のほとんどはOECDに属していません。


●高齢者・移民・女性が若者の仕事を奪わない理由

 では高齢層の就業が若年層の就職を妨げないのはなぜでしょう? それは女性が社会に出ても男性が職にあぶれないのと同じ理由だと記事ではまず書いていましたが、これはわかりづらいですね。この後の説明もまたわかりづらいもので、以下のように書いていました。

"生計のために働く時、人は収入を得る。そしてそのお金で、他者が生み出した商品やサービスを購入する。この場合の「他者」を構成しているのは老若男女のすべてである"

 何を言いたいの?というものですけど、たぶん労働者が増えることにより経済が発展し、新たな仕事を作り出すため、新たな労働者が増えたとしても仕事がなくなるわけではないといった意味じゃないかと思われます。

 記事ではもう1つ、思考実験を行っており、こっちの方がわかりやすいかもしれません。高齢者が早期に退職した場合、若い世代が大きな利益を得られるかというとそうではないという話。なぜかと言うと、彼らが収入を失くしたことで、彼らが若い世代に依存する割合が増えるためです。


●ミクロで見ると、高齢者が若者を邪魔しているように見える

 これらの話はわかるにはわかるんですけど、小さな組織で見れば高齢者が若者の雇用機会に影響しているところはあります。

 私の会社もそうですが、リーマン・ショック以前は団塊世代の退職対策というお題目を掲げて、積極的に新人を採用していました。当時から再雇用という形で以前の年齢ならリタイアしている人を雇っていましたが、組織ごとに雇う人数は当然有限で上限があり、退職者をそのままに新人をどんどん入れるというわけには行きません。

 ある程度入れ替える形になるため、「高齢層の就業が若年層の就職を妨げる」形が成立している気がします。マクロとしてはわかるものの、ミクロとしては高齢者が若者を邪魔しているように見えるんじゃないかと…。


●若者の得意な仕事と高齢者・移民の得意な仕事は全然違う

2018/05/21:なお、エコノミストは書いていなかったものの、もっとわかりやすそうなシンプルな説明として、若者の得意な仕事と高齢者・移民の得意な仕事は全然違うというものがあります。

 例えば、退職が近い高齢の会社員と新入社員のスキルが同じか?と言うと、確実に違うでしょう。将来について求められる役割というのもまた違います。移民の場合も、言葉の重要性において、大きな差があることも簡単に想像できます。

 一方で、一部の分野で重なるところの仕事の取り合いで、間接的な影響ならありそうに思えます。ただ、こちらに関しても、意外!メキシコ不法移民で損するのは合法移民で、米国人は得していたといった話を紹介しているように、そう単純ではなさそうでした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■意外!メキシコ不法移民で損するのは合法移民で、米国人は得していた

【関連投稿】
  ■成果主義のデメリット・問題点 正当な評価の難しさ・客観性のない基準
  ■年功序列制度・総正社員化のメリット・デメリット 成果主義もそれほど良いものではない
  ■非正社員化が正解 年功序列・終身雇用・正社員は無理
  ■年功序列と終身雇用制度のデメリット 仕事に見合わない高い給料を貰う社員
  ■食べログの評価方式は人事評価精度にも良い カヤックの360度評価
  ■ビジネス・仕事・就活・経済についての投稿まとめ

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