池上:リーマンショックで破綻しそうになった企業に米国の保険会社AIGがありますね。当初は救済を断っていたFRBが、方針を転換して支援の手を差し伸べたことで倒産は免れました。フリードマン派はAIGも救済すべきではなかったと考えているのでしょうか? 岩井:もちろんです。でも、AIGの救済は正解でした。今から思うと、リーマン・ブラザーズも救済すべきでした。 破綻した金融機関の救済には必ず批判があります。日本では、1995年に住宅金融専門会社(住専)の巨額の損失が明らかになったときがそうでした。大いにマスコミにも責任があると思うのですが、「バブルの後押しをした住専はけしからん、国民の税金で救済するとは何事だ」という世論が巻き起こりました。 でも、あのとき早急に救済措置をとっていれば7千億円近い巨額の公的資金を使う必要はありませんでした。ところが、批判の声が大きいために救済が遅れ、結果として、日本経済は大きなダメージを受け、救済額も膨らんでしまった。 お金を扱う金融機関が破綻しそうになったとき、市場原理に完全に任せてしまうと、後になって悪くなる可能性が非常に高い。だが、金融機関の救済は必ず批判されます。「今までさんざん甘い汁を吸ってきた連中を、なぜ国民の血税を使って救済しなければならないんだ」という声が上がる。こうした世間の批判を受けた上で救済策を実行するのは、本当に勇気がいります。 池上:金融機関の救済には、論理と感情が交錯しますね。金融機関がつぶれてしまうと経済に大きな悪影響を与える、という論理は誰でもわかる。でも、その一方で、「なぜあんな高給取りの連中を税金で助けなければいけないんだ、自業自得じゃないか」、という心情が生まれるのも分かる。 だから、「国は、放漫経営でつぶれかかった金融機関は助けてやるくせに、こつこつやってきたうちの工場の経営危機には手を差し伸べてくれないじゃないか」という声が出てくる。日本だけではなく、今回、ウォール街でデモがあった米国でも似たような話がありますね。 岩井:猛烈にありました。ただ米国に限っては、「金融機関を助けるな」という主張には一理あります。「自分たちこそリスク管理の専門家だから、グラス・スティーガル法をなくしてくれ」言っていたのは、ほかならぬ金融機関自身なのですから。ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の白熱教室でもこのテーマは取り上げられていたと記憶していますが、調子が良いときは経営者に巨額なボーナスを支払い、悪くなったときに国家援助を受けるのには、倫理的な問題があります。その意味でもグラス・スティーガル法の実質廃止などの金融の規制緩和は、本当に大きな禍根を遺しました。 |
American International Group, Inc. (アメリカンインターナショナルグループ;AIG) はアメリカ合衆国ニューヨークに本拠を置く保険会社。 |
2007年にアメリカでサブプライムローン問題による金融危機が起こった。AIGもサブプライム関連の金融商品を抱えていたため例外ではなく、住宅価格の低下や金融商品の格下げの影響を受け多額の損失を抱えた。損失額は2008年通期で992億9000万ドルとなり、アメリカ企業史上最大の赤字額となった。 |
* 2008年10月7日、米下院で開かれた公聴会の席上で、AIGグループの保険子会社であるAIGアメリカン・ゼネラル社の幹部が、公的資金の投入による救済が決定した一週間後の9月22日から30日にかけてカリフォルニア州南部オレンジ郡の高級リゾート地に関係者を集め、総額44万ドル(約4500万円)の「会合」を繰り広げていたことが判明し、米下院のイライジャ・カニングス議員は「米国民が救済資金を出すのを横目に、マッサージを受け、マニキュアを塗っていたのか」と批判した。この件に関してはホワイトハウス広報官も「卑しむべき行為」と異例のコメントを行う事態となり、当初AIG側は「保険業界では常識的なことである」と正当性を主張していたものの、最終的には「もし開催を知っていれば中止させた」と弁明に追い込まれた。 * 2009年3月、AIGが幹部社員に対して総計1億6500万ドル(約162億円)にもわたるボーナスを支給すると報じられた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、ボーナスを支給される幹部は400人。3月13日に支払われたボーナスは、400人に対し1億6500万ドル(約160億円)。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ司法長官が17日に公表した結果によると、計73人が各100万ドル(約9800万円)超を支給され、そのうち11人はすでに退社しているという。支給額200万ドル超が22人おり、最高額は640万ドルである。これに対してバラク・オバマアメリカ大統領は「あらゆる手段を駆使してこれを阻止する」と宣言しており、アメリカ議会にて、国税である所得税においてボーナスの90%(地方税は10% 相当であるから事実上は100%)を課税する法案が下院で可決され、上院で審議されている。また上院のグラスリー議員は「日本の経営者にならって、頭を下げ謝罪して辞任するか、もしくは自殺するかを選んで欲しい。そうすれば私の気持ちは少しは晴れる」という発言を行い物議をかもした。一方、AIG側は「ボーナス支給は危機前の契約で決定されたもので、支払わないと法的責任が生じる」と弁明したが、社員の一部には「賞与返還要求は脅迫も同じ。脅迫に応じる道義的責任はない。」と居直り、逆に「脅迫」に反抗して法的処置を模索する動きまである。米メディアは高額ボーナスを受け取ったこれら幹部・元幹部を「AIGボーナスベイビー(bonus baby)」と揶揄している。 以上、Wikipedia AIGより |
米ダラス地区連銀のフィッシャー総裁は15日、「大きすぎてつぶせない」銀行の問題について、より管理可能な規模に解体する国際的な規制強化案を支持する考えを示した。 総裁は、コロンビア・ビジネス・スクールでの講演で「大きすぎてつぶせない銀行への確実な対処方法は1つしかない。これらの巨大銀行が容認されるのは危険すぎる」と指摘。「巨大銀行をより管理可能な規模に解体する国際的な規制改革案に賛成する」と述べた。 大きすぎてつぶせない銀行、管理可能な規模に解体を=地区連銀総裁- ロイター(2011年11月16日)より |
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