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お金は歴史的な発明 ~科学も哲学も文学も民主主義もお金が生みだしだ~


 世界経済危機の原因と対策銀行が大きすぎて潰せないのなら、小さくして破綻させましょうで書いた岩井克人×池上彰対談の続編の「実はお金があったから、科学も哲学も文学も民主主義も生まれたのです」岩井克人×池上彰対談(3))(要登録 2012年1月30日 日経ビジネスオンライン)という記事なのですが、内容はかなり違った方向になっています。

 ただ、これはこれでまたたいへんおもしろかったです。

岩井:3年ほど前のことです。お金についての小さな国際会議がベルリンでありました。非常に学際的で、経済学者の他、社会学や歴史、哲学などの専門家が15人ほど集まって三日間ほど集中的に議論しました。そのなかで私がもっとも刺激を受けたのが、イギリスから招かれたギリシャ古典の大家であるリチャード・シーフォードさんの発表でした。

 彼の研究の発端となった疑問は「なぜ我々は、古代ギリシャ人を近い存在に感じるのか。なぜ古代ギリシャは現代なのか」というものでした。具体的に言えば、ギリシャ神話の悲喜劇は、今読んでも、古さを感じさせず、現代の文芸作品と同じような感動を与えてくれる。そしてギリシャが紀元前の世紀に実現した民主主義の仕組みは、現代の民主主義の原型ですし、さらに、ギリシャにおいて、現代につながる哲学や科学が始めて生まれました。

(中略)

私が衝撃を受けた、というよりは歓喜したのは、シーフォードさんが出した解の方にありました。なぜギリシャと現代はそっくりなのか? 彼の結論は「ギリシャは世界史上で最初に、完全な貨幣経済を実現した社会だったから」というものでした。

池上:何と、お金の発明がギリシャ文明の前にまずあった、ということですか!

岩井:ギリシャでは紀元前7世紀ごろから、貨幣が流通するようになりました。ユーロ統合まで使われていたギリシャの通過単位ドラクマが既にこのとき誕生しています。貨幣はコインで、その素材は、金と銀の合金でした。ただし、当時はまだ金と銀の合金を安定して製造する技術はありませんでした。ですから、最初から金と銀が混ざっている合金を掘り出して、それを鋳造してコインにしていたのです。よって、金と銀の比率はコインによってバラバラでした。

 つまり素材としての価値はコインごとにバラバラだったのです。金の含有量が多いコインも少ないコインもあった。でも、古代ギリシャでは、金の含有率というコインのものとしての価値を流通させるのではなく、どのコインも1ドラクマという抽象的な「お金」として流通させたのです。

 悪貨と良貨で価値が違うという考え方はおそらくごく一般的だったろうと思います。日本も江戸時代までそうでした。

 さらに言えば、その後の金本位制という考え方も、お金の抽象化としては不十分かもしれません。金本位制を世界的に止めるようになったのは、1929年の世界大恐慌の後のようです。


 では、続きを。


池上:物としての価値ではなく、みんなが認めた貨幣単位をコインのかたちで流通させる。まさに貨幣経済の誕生がすでにこのときのギリシャであったわけですね。でも、それがなぜ現代文明とそっくりな古代ギリシャの文明と結びつくんでしょうか?

岩井:この世の中に、個々のモノや個々の人間を超えた、抽象的な価値や普遍的な法則が存在すること、しかも神様とは独立に存在しうること。これが近代文明の基本です。科学も哲学も政治も文学も、すべて抽象的な価値や普遍的な法則を共有することで、初めて成立する。まず、具体的なモノとしてはバラバラなお金を、抽象的で普遍的な価値として、社会全体が日常的に使い合うという貨幣経済の誕生こそは、まさに近代文明に通じる古代ギリシャ文明の礎なのだ、というのがシーフォードさんの説だったのです。

池上:抽象価値を共有する。それが文明である。そして初めてギリシャ人が共有した抽象価値こそは、「貨幣=お金」だった、というわけですか。目から鱗が落ちる話です。それにしても、ユーロ危機発祥の地ともいえるギリシャが、紀元前6世紀に「お金」を生んだことでと、現代文明の基礎が出来上がった、というのは何とも皮肉な話です。

岩井:まったくですね(笑)。古代ギリシャでは貨幣の流通をきっかけに、抽象思考の実践が行われました。イデア論を唱えたプラトンなどはまさにその申し子です。ギリシャ哲学は、お金から生まれたともいえます。それはまた、この世には個々の事物の雑多さを超えた、普遍的な法則性が存在するはずだという、科学的な世界観の出発点にもなった。

 それだけではありません。金の含有率は違っても、1ドラクマコインはすべて1ドラクマの価値を持つ、同じである、平等である、という考え方は、個人の間の平等性を前提とする、まさに民主主義の誕生につながります。さらに、お金の流通が進むと、人間は共同体的な絆から切り離されます。つまり、「個人」となります。これまで共同体的な規制や慣習にもとづいて行動すればよかった個々の人間が、英雄でもないのに、自分で自分の運命を切り開いていかなければならなくなる。それは必然的に、悲劇や喜劇を生み出します。

 かくして、お金が日常的に人々の間で流通し始めたことが、今につながる文明社会を生み出したのだ――。こうシーフォードさんは結論づけました。

 私も仮説としては前から同様のことを考えていたのですが、経済学者が「お金が文明を産んだ」というとどうしてもポジショントークに聞こえてします。ところが、経済と一見全く縁のない古典学者が指摘した。そこに私は大変嬉しいショックを受けました。

池上:近代がお金を作ったのではなく、お金が近代を作ったのですね。誰かが発明したのか、自然発生的に生じたのかはわかりませんが、私たちの文明は、科学も哲学も文学も民主主義も、まず先にお金ありきである、と。これからも私たちは、お金とは縁を切れそうにありませんね。

岩井:インターネットが発達し、電子マネーが普及し、形をもった紙幣やコインがたとえ姿を消そうとも、単に電子情報が紙や金属に変わるだけです。「お金」は「皆がお金だと思うからお金である」というお金を支える構造は変わりません。電子マネーは、お金の持つ「価値の抽象性」をますます高めるだけで、お金そのものの性質は一切変化しないのです。

池上:インターネット上でデータだけのお金が流通する、ということは、商取引が光速化するわけですね。例えば、電子マネーが完全普及すると、お金そのものが消えてしまうような気がしますが。

岩井:ところが、逆なのです。電子マネーというのは、貨幣の究極の形態です。紙幣やコインというモノではなく、形を持たない抽象的な数字そのものがお金として流通するというのは、お金の究極の形態です。お金とは何かが、もっともはっきり見えて来たのです。

 これは本当におもしろいなぁという感想がピッタリの話です。

 一般的には「電子マネーなんて形がないし、何かおかしい!」と思うのですが、紙のお金も金属のお金も突き詰めていくと抽象的なものであり、物質自体に価値があるわけではないというのはよくわかります。


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