●ギャンブル豪遊の借金を子会社から借り入れ…大王製紙事件
2012/3/1:まず、大王製紙・前会長井川意高(もとたか)さんの巨額借り入れ事件の話をおさらい。
借金渋られ、別の子会社に頼んだら発覚 大王製紙前会長(朝日新聞、2011年11月24日4時2分)によると、すでに借り入れていた子会社にさらなる借り入れを求めたところ渋られ、今年9月に別の子会社に指示して新規に借り入れたことが、問題発覚につながっていたことがわかったそうです。
<井川前会長は昨年5月~今年9月に、連結子会社7社から総額約106億8千万円を借り、大部分を海外のカジノでのギャンブルにあてたことが判明している。このうち今年7~9月に4社から計32億円を借りた分について、会社法違反(特別背任)容疑で逮捕された。
関係者によると、この4社のうち3社は、9月2~6日に井川前会長の本人名義の口座に計約9億5千万円を振り込んでいた。この3社はそれまで前会長に貸し付けたことはなく、すぐに親会社の大王製紙に報告。同月16日の会長の辞任と問題の公表につながったという>
系列企業、20年前から財布代わり 大王製紙前会長 2011/11/22 12:19 (日経新聞)によると、昼間は経営者として剛腕を振るう一方、夜は東京・六本木などへ頻繁に繰り出し、芸能人らと交遊を深めていたことでも知られるそうです。
ただ、重要なのは、特別背任容疑で逮捕された井川前会長は父親の絶大な影響力を背景に社内に君臨してきたということ。役員らと強い主従関係を結び、複数のグループ企業を財布代わりに使う行為は20年以上に及んだとみられます。役員は「前会長の能力だけでなく、(引用者注:井川意高の父)高雄氏の実力を恐れ、部下は次々に前会長との主従関係を結んでいった」とも証言していました。
●優秀な経営者だから…と擁護できないひどさ 事後対応も問題
いかにもダメ世襲なおぼっちゃまくんに見えるこの井川前会長、実を言うと、優秀という評が多かったようなのです。2つ目の記事では、以下のようなエピソードがありました。
<小学校卒業まで同社の四国本社がある愛媛県で育った井川前会長は、幼少のころから利発で弁が立ったという。同社元幹部の記憶に強く残るのは、前会長が小学生当時に開かれた親族の結婚式。地元選出の国会議員や市長らが次々とあいさつする中、幼い前会長も堂々としたスピーチを披露した。
時事問題などを話題に絡めながら、会場に時折笑いを起こす見事な話術で、「将来どんな人物になるのかと、出席した大人たちが一様に舌を巻いた。当時から井川家の中でも特別な存在だった」と振り返る>
また、
「エリエール」が汚れてしまった 大王製紙・前会長は「マカオ」大好きカジノ狂い (J-CAST)にも"仕事ぶりについては、「謙虚で仕事熱心」との評も多い"とありました。しかし、「無担保で80億円以上を借り入れ、約55億円が返済されていない」ですから、問答無用で駄目でしょう。会社にとんでもない迷惑をかけました。
この井川前会長やオリンパスの社長なんかは当然続投できるような状況ではありませんでしたが、問題が噴出してからの行動も到底反省しているとは思えず、対応の酷さには呆れるものでした。また、オリンパスの次の社長も問題の対応にも問題があり、大王製紙の方は問題を起こした前会長の親ら親族が経営の主導権を握ろうと争っている状態で、不祥事に対する反省が全く見えません。
●むしろリスクマネジメントは後回しすべき?先にやるべきは…
一方、
反省なきトップは退場、反省あるトップは続投 あの日、ジャパネット高田社長はなぜすぐに反省できたのか 武田 斉紀 2011年10月24日(月)によると、ジャパネットたかたによる大量の顧客情報漏洩事件(2004年)後の高田明社長の対応や、石原プロモーションによる『西部警察』ロケでの事故(2003年)後の渡哲也社長(当時)の対応は、「リスクマネジメント」のあるべき姿を説明する事例として有名だそうです。
記事では、ひとたび不祥事や事件、事故を起こしてしまった時には、「リスクマネジメント」という発想を一旦捨てるべきではないかとしていました。自社のリスクを測る前に、まず「本気で反省し謝罪すること」。同時に「目の前で起こっていることへの迅速な対応」と「原因の究明と再発防止」の3つが重要としていました。
「リスクマネジメント」上の好例としてよく取り上げられる事例の中にも、これらの重要性は見えるとのこと。共通しているのは、トップが自社や組織の「リスクマネジメント」よりも、「反省」を優先していることだといいます。まず、石原プロモーションの事例は以下のように書かれていました。
<石原プロモーションの事故は、『西部警察』のロケ中に俳優の一人が自動車の運転を誤り、見学していたファンの列に突っ込んで5人が重軽傷を負ったもの。渡さんはすぐさま被害者を見舞い、土下座をして謝った。そして翌日記者会見を開くと、自分の言葉で誠心誠意謝罪したうえで、「ファンあっての番組でファンにケガをさせてしまった以上、制作は中止します」と宣言した。
テレビ局側は10億円ともいわれたスポンサー料を失うことになる。プロダクションとしてはその責任も問われるだろう。今後の局との関係にも影響が出るやもしれない。それでも渡さんは迷わず中止を申し出たそうだ。事故直後に局に殺到していた「番組を中止しろ」との抗議電話は、会見後には「やめないで続けてほしい」という嘆願に変わっていたという>
●不祥事企業トップはジャパネットたかた高田明社長を見習え!
うちでタイトルにしたのは、ジャパネットたかたの話。2004年、同社の51万人にも及ぶ顧客情報が漏洩していることが明らかになったとき、高田明社長は、すぐさま「販売自粛」を宣言しました。販売自粛はその間の売り上げゼロを意味し、しかも、一年で最も需要の集中する時期で、大規模なセールの真っ最中だったそうです。
<それでも高田さんはすぐさま朝の会議で話し合い、2時間後には記者会見を開いて「販売自粛」を発表した。
日経ビジネスアソシエ2006年9月5日号で高田さんはこう語っている。「原因はすぐにわかりませんでしたが、事件が起こってしまったのは事実です。“原因は調査中ですが販売は続けます”というのは、お客様に対してあまりに失礼だと思ったのです」>
リスクマネジメントを一旦忘れるべきというのは、「自分にとってのマイナスを極力小さくしたいという思いが、ミスから逃げてしまう要因になります」「ミスや過ちをきちんと認めて丁寧な対応をする方が、結果としてマイナスを小さく済ませることになるのです」という高田明社長の言葉からも感じられます。
<原因が明らかになり、再発防止策を打った50日後に販売を再開。減収は約150億円と前年度の売上高の2割に上ったが、同社は世間の信頼を回復することができた。売上高は事件前年(2003年度705億円)から、7年で2.5倍になっている(2010年度 1759億円)。
石原プロモーションの事例も、ジャパネットたかたの事例も、初期対応に邁進する姿勢に「リスクマネジメント」という言葉は出てこない。自社や組織の未来は一旦横に置いて、「反省」と事後対応と再発防止の3つに専念している。そのことが認められてトップは続投し、再び信頼を獲得して再生を実現しているのだ>
オリンパスや大王製紙には問題外ですが、リスクマネジメントで重要なのは小手先のテクニックではなく、真摯な態度なのか…という、予想外な話でした。
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