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土耳古、白耳義、伯剌西爾、日耳曼などで、「耳」「爾」を「ル」と読む理由


2012/3/5:
●土耳古、白耳義、伯剌西爾、日耳曼などではなんて読むの?
●国名の「ル」の漢字表記で多いのは「耳」と「爾」
●全然読めないのになぜ?「耳」「爾」を「ル」と読む理由
●中国の国名表記が日本に伝わってきた可能性は?
●「ル」以外にも中国語由来と思われる漢字が存在していた!
●昔の西洋学者は中国語も堪能で借用した…みたいな可能性は?
2021/06/05:
●ベルギーの「白耳義」は「耳」だけでなく「白」の読み方も不思議 【NEW】


●土耳古、白耳義、伯剌西爾、日耳曼などではなんて読むの?

2012/3/5:タイトルを見た時点で読む気が失せるわけのわからなさだと思いますが、それぞれ以下のように読むそうです。

土耳古 トルコ
白耳義 ベルギー
伯剌西爾 ブラジル
日耳曼 ビルマ

 このうち「日耳曼」は"ゲルマンまたはゼルマンと読むのでは?"とのメールをいただきました。ありがとうございます。検索すると確かにそう書いているところが多く、他に「ジャーマン」説もあります。大辞林でも「ゲルマン」を採用していますので、ほぼ間違いないでしょう。

 一方で、「日耳曼=ビルマ」も多数見えており、ネット記述より信頼性が高い出版されている書籍でも「日耳曼」にビルマのルビが見えます。誤読が広がった可能性は高いと思いますが、めいめいが好きに当て字を使っているために、たまたま同じ字を当ててしまったということもあり得るかもしれません。ただちに間違いとは言えそうにありませんでした。(ここらへんの補足は、2013/7/26追記)


●国名の「ル」の漢字表記で多いのは「耳」と「爾」

2012/3/5:私が気になったのは、「ル」の発音をどの漢字で示すのかというところ。上記以外にも、国名の漢字表記一覧 Wikipediaに記載の国名では、以下のあたりが「ル」の入る国名です。やはり「耳」と「爾」が多くなっています。

トルクメニスタン 土耳古斯坦
ネパール 涅巴爾
東ティモール 東的木児
モルディブ 馬爾代夫
モンゴル 莫臥児
アルジェリア 阿爾及
セーシェル 塞舌爾
ニジェール 尼日爾
アイルランド 愛爾蘭
アルバニア 阿爾巴尼亜
セルビア 塞爾維
マルタ 馬耳他、馬爾太
モルドバ 摩爾多瓦
エルサルバドル 薩爾瓦多
アルゼンチン 亜爾然丁、亜尓然丁 (尓は爾の異体字)
マーシャル諸島 馬歇爾諸島
セルビア・モンテネグロ 塞爾維・黒山、塞爾維門的内哥羅
ペルシア帝国 波斯帝国


●全然読めないのになぜ?「耳」「爾」を「ル」と読む理由

 実を言うと、以前書いたマイトツ?ガランモ?米突・瓦蘭姆・立脱耳が読めない!において、立脱耳(リットル)、米的耳(メートル)で「耳」を「ル」と読ませる理由がわからないと書いていたところ、コメントで<「耳」という字は、たぶん中国語では「r」のような発音だったと思います>と教えていただいたことがあります。

 そこで早速、デイリーコンサイス中日辞典 (三省堂)で検索。すると、耳の発音は「er」となっていました(ピンインの表記はなし)。同じく「尓(爾)」も「er」となっています。(ちなみに日本語では「爾」も「耳」と同じで、「ニ」や「ジ」と読みます)

 これだけ見ると読み方がわからず、「エル?」と思ってしまいますが、どうも検索すると「アル」、「イーアルサン(一二三)」の「アル」です。先程までと同様に辞書で「二」について調べると、発音は「er」となっており、間違いなさそうです。

 つまり、先程書いたリットルの「立脱耳」は「リッタッニ」や「リッタッジ」ではなく、「リッタッアル」なのです。発音完璧じゃないですか!

 リットルに比べると他の国名での発音はそんなにすっきり爽快!というわけには行きませんが、とりあえず、「耳」が「ル」と読むのだというお約束ができあがったのかもしれません。(「er」がもっと「ル」に近い音という可能性も考えられます)


●中国の国名表記が日本に伝わってきた可能性は?

 現在普通に中国語と呼ぶ場合、北京語由来の現代標準中国語のことを指し、中日辞典も当然それです。中国は昔も今も方言による違いが大きいですし、時代によって言葉も変わってきたはずです。

 メートル、グラム、リットルを漢字ででは漢和辞典を調べて、漢音の「ジョウ」、呉音の「ニ」、「ニョウ」という例を出していましたが、これは当然日本に伝わった時代が違いますし、おそらく中心となって使われていた地域も違います。比較的新しい時代の発音を使用している可能性については、全然思いつきませんでした。

 ところで、先の国名の漢字表記一覧 Wikipediaには中国語の表記も載っています。ビルマは現在ミャンマーですので未記載したが、他は以下のとおりです。

トルコ (日本)土耳古 (中国)土耳其
ベルギー (日本)白耳義 (中国)比利時
ブラジル (日本)伯剌西爾  (中国)巴西

 上記を見てわかるようにタイトルで出した国に関しては、一つも日本の漢字表記とは一致していません。なので、「土耳古」などの表記が、直接中国から日本に伝わったという線は薄いと思われます。


●「ル」以外にも中国語由来と思われる漢字が存在していた!

 また、「土耳古」「濠太剌利」「伯剌西爾」は、なぜそう書くようになったのか?(日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~)では、「土耳古」以外にも中国語の発音の影響が見える国名表記を例示していますが、"こうしてみると中国語からきているものが多いようだが、出処が不明なものもけっこうある。ご存じの方はぜひご教示いただきたい"ということで、詳細ははっきりしないようです。例えば、以下のような記述がありました。

「土耳古」……なぜ「ル」が「耳」になるのかわからない。「トルコ」を英語風に読むと「タァールキー」。中国語では耳は「アール」と発音するので中国からきたのかもしれない。

「濠太剌利」……「濠」の読みは「ゴウ」なので、なぜ「オー」を「濠」と書くのかよくわからない。明治時代初期の小学校の教科書で使われたのが最初らしいということはわかっている。中国語で「濠」は「ハオ」と発音するので、それからきたのかもしれない。

「伯剌西爾」……「伯」は日本語では「ブ」とは読まないので、中国語に由来するようだが、中国では「伯剌西爾」とは書かないのでよくわからない。ただ、日本では江戸時代から「伯剌西爾」と書いている。


●昔の西洋学者は中国語も堪能で借用した…みたいな可能性は?

 いい加減な推測をしてみると、蘭学(洋学)を学ぶ人は歴史的に重要な外国語である中国語にも秀でていて、伝統的な漢字の読み方以外の中国発音を知っていたため、和訳の際に利用した…みたいなことはないだろうかと思いました。ただ、検索してみても、オランダ通詞に中国語との関連性は見えない(中国語通訳は「唐通事」という別の役があった)ので弱い説ですね。

 「蘭学者」ということで、 以前重力・引力・分子・遠心力・動力は、志筑忠雄(中野柳圃)の造語で紹介した志筑忠雄(しづきただお)はどうだろう?とウェブ検索するとうちのブログが出てきました。彼の場合は、「中国の文献や仏教用語なども参考にしつつ」だったようです。ただし、和訳済みかもしれませんし、中国語発音が正確にわからなくても読めてはしまいそうです。

 その他に「蘭学 中国語」で検索したところ、「蘭学書は中国語に翻訳され、長崎から江戸と運ばれた」という記述は見つけました。江戸時代の中国はほぼ清の時代にあたり、首都は北京です。そうなると、西洋知識の第一人者たる蘭学者たちが、北京語ベースの中国語発音を知っているというケースはあっても良いかなとは思います。

 しかし、トルコの中国語表記「土耳其」に「耳」=「ル」の用法はありましたので、何かの用例を見て全部ではなく一部を拝借したという方が現実的かもしれません。


●ベルギーの「白耳義」は「耳」だけでなく「白」の読み方も不思議

2021/06/05:最初のときには書いていなかったのですが、ベルギーの「白耳義」の場合、「耳」だけでなく、「白」も不思議。「べ」や「べい」などと読む漢字があるのに、わざわざ「白」を使う意味がわかりません。念のために「白」の読み方を確認してみたものの、やはり普通は「べい」などとは読まないようです。

 「白」の部首・画数・読み方・意味 - goo漢字辞典によると、音読みはハク、 ビャクで、訓読みしろ、 しら、しろ・いです。強いて言うと、「ビャク」が近いですかね。ちなみにあき・らか、もう・す、せりふ とも読むことがあるそうで、これもびっくりです。セリフを漢字で「科白」書くことがあるものの、「白」一字で使っているケースは見たことがありませんでした。

 「べ」という発音ですが、これも中国発音由来でしょうか。前述の通り、中国語のベルギーでも「白」は不採用で「比利時」でしたので、中国語発音だったとしても謎ですが、可能性はありそうです。ただ、白の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典によると、発音は「bái」であり、ベイではなさそう。日本では「白酒」を「パイチュー」とするなど、「パイ」を使いますよね。

 もう一つの方向性としては、「白耳義」をそのまま読んだ「パイルギ」や「ビャクルギ」などがベルギーを意味する外国語の実際の発音に近いという可能性。このアプローチだと可能性がいろいろあってたいへんですが、とりあえず、昔日本への影響が大きかったオランダ語のベルギーを検索してみました。「België」というつづりのようです。

 問題は発音なのですが、なんと言っているかわかりづらいく、カタカタでも言い表しづらいですね。日本人にとっては英語のBelgium の発音も鬼門なようです。ただし、オランダ語のベルギー、英語のベルギーともに最初だけは日本人的にも「ベ」と言っているのだけは伝わり、今回問題の「白」の発音部分については解決。やはり「パ」や「ビャ」などとは聞こえませんでした。


【本文中でリンクした投稿】
  ■マイトツ?ガランモ?米突・瓦蘭姆・立脱耳が読めない!
  ■重力・引力・分子・遠心力・動力は、志筑忠雄(中野柳圃)の造語

【関連投稿】
  ■チャッカマンの一般名は何か?
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