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東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?


★ 2012/1/22 スマートメーター導入のメリット・デメリット
★ 2012/3/22 東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?
★ 2012/4/10 東電スマートメーター利権の問題で国際入札が延期の可能性
★ 2012/4/11 東京電力のスマートメーターは時代遅れのガラパゴススマメ
★ 2012/6/27 スマートメーター,海外の活用事例と日本での問題点
★ 2012/7/10 東電スマートメーター有力発注先に幹部天下り
★ 2012/7/16 東電、スマートメーター問題で敗退 導入延期・国際標準規格採用
★ 2012/7/26 スマートメーターは意味がない?スマートメーター批判と人力での消費電力の計測


★ 2012/1/22 スマートメーター導入のメリット・デメリット

 スマートメーターとは、「電気使用料の検針作業を人が行わず、通信機能を持った電気メーターが自動的に電力事業者へ遠隔報告する (AMR)」メーターだそうです。 また、

・料金確認目的のみならず、電力使用量を常に観測する事で供給計画に役立てる。
・今後登場するさらに高機能なスマートメーター (AMI) では、事業所内や家庭内のエアーコンディショナーや照明、温度計、セキュリティ機器などの制御まで行うことが構想されている。

 というのがWikipediaの説明です。

 Wikipediaには「スマートメーターの導入は2009年末現在、欧州での導入が先行している」ともあったのですが、流行「スマート」の欧州事情(登録要 日経新聞 住環境計画研究所所長 中上英俊 2010/10/25 7:00)という記事を見ると、日本とはずいぶん違う世界が見えます。

欧州と我が国との大きな差があることを再確認した。それはイタリアの電力公社の方からの発表だった。

 イタリアでは全戸にスマートメーターを設置することが決定しており、順次取り付けが始まっているそうだ。早速効果の一端が披露されていた。それを聞いてちょっと驚いた。「最大の効果(確かそう発言されていたように記憶する)は、毎月の需要家の電力消費量が把握できたことと、需要家にその情報を毎月知らせることができたことだ」。われわれ日本人からすると「?」ということになる。

 われわれが電力会社から受け取る電気料金の請求書には、前月の使用実績がちゃんと記載されている。毎月検針しているのだから当たり前のことだ。とすると、この発言はイタリアでは検針が毎月ではないわけだ。何と1年に1回だったそうだ。では毎月の料金請求は何に基づいていたのか?答えは、前の年の使用実績を12カ月に案分して請求されていたわけだ。

 イタリアはユーロ危機において破綻の危険性が指摘されていますが、何とも大雑把なものです。他の欧米諸国も似たようなものなんでしょうかね?

 記事からはもう少し引用します。

以前私が家庭における待機時消費電力の問題を提起した折、最も大きな関心を示したのが家庭の主婦の方々だった。各家庭で家電製品のプラグを抜いて待機時の消費電力を節減したら、翌月の電気料金が1000円を超える単位で削減される家庭が続出したそうだ。それを契機として、家電メーカーへの消費者からの待機時消費電力を削減した機器の開発要求が続々と寄せられ、それまで消極的であった家電メーカーが一転自発的に待機時消費電力の削減を達成し、今や世界でも最も成功した事例となっている。

 この結果をまとめて欧州で開かれた待機時消費電力削減の国際会議でわが国の事例を発表したのだが、欧州やオーストラリアの研究者から「それは日本だからできた話で当方では無理だ」との反応だった。そこで理由を聞いたら、検針は年に1回だから、日本のようにプラグを抜いたら電気代が減ったかどうかは、すぐにはわからない、ということだった。

 この書き方からすると、みんな「年に1回」なんですね。そりゃあ、スマートメーターの威力は絶大ですわ。

 しかし、日本は現在月一で検診しているわけで、これは膨大な人件費をかけているとも言えます。


 スマートメーター導入のメリット・デメリットとして、Wikipediaには以下のように書かれていましたが、人件費削減分を「供給者のメリット」だけじゃなく、「消費者のメリット」としても反映してほしいですね。

 * 供給者のメリット
  o 検針のための人件費や時間を削減できる。
 * 消費者のメリット
  o 外出先からの家電制御が容易になる。
 * 供給者のデメリット
 * 消費者のデメリット
  o 設備負担が電気料金に上乗せされる。
  o 意図しない機器制御を受ける恐れがある。
  o クラッカー等による電力系統を通じた生活の覗き見が可能になる


 一方、アメリカでは、スマートメーターに関する以下のようなトラブルがありました。


"訴状の内容によると,今回Oncor社を提訴した同社顧客のRobert Cordts氏やJennifer Cordts氏の住宅の1カ月当たりの電気料金は,スマートメーターの導入以前は平均400~700米ドルだったのに対し,スマートメーターの導入後に 1800米ドルに跳ね上がったという。起訴人がOncor社にこの高額請求に関して苦情を申し立てたところ,Oncor社は「地方の天気が意外に寒かったこと」を理由に挙げて説明したという。結局,高額の請求書が3カ月間続いたと起訴人は主張する。訴状では,「Oncor社がスマートメーター導入後に高額の料金を課すことに関して,顧客に納得できる説明をしていないことが虚偽や過失の行為」としている"

米テキサス州でスマートメーターをめぐる訴訟,電力ユーザーが電力事業者を訴え(2010/04/03 02:51 Tech-On!)より


 興味があったので、関連記事もと探してみると、スマートメーターの落とし穴(2010/04/14 10:20 Tech-On!)というものも。

 これによると、"通信機能付きの電力量計(いわゆるスマートメーター)の導入が始まっています"が、"スマートメーターを導入した住宅の電力料金が急激に上がったという現象があちらこちらで発生しているのです"とのこと。


"原因は,現時点で断定されていません。今後の係争を通じて,判明していくことになるでしょう。とはいえ,原因の候補はいろいろと指摘されています。その中で,米国にいる複数の識者が指摘するのが,スマートメーターの導入により,「電力量の計測が正確になったこと」でした。これまでの電力量計が古過ぎて,正確に電力利用量を計測できていなかったというのです。

 米国の一般的な電力量計は,電力量(電圧や電流)に応じて円盤が回転する「誘導形電力量計」です。円盤は軸受けで支持されます。このため,時間が経つにつれて徐々に軸受けの劣化が進んで摩擦が増え,回転速度が遅くなることがあるそうです。米国の場合,40年程度前の電力量計を未だに使っている住宅も少なくありません。このため,これまでは実際の電力料金より少ない料金を支払っていたケースが多々あると,前述の識者は指摘していました。スマートメーターで電力量が正確に測定できるようになり,結果的に「電力料金が上がった」ようにみられているというのです。

 そんなことかと思われる方もいるかもしれません。これだけ聞けば,なんだか笑い話のように聞こえなくもないからです。けれども,このことは大きな問題をはらんでいるように思います。現時点で,スマートメーターの導入に対して,消費者への配慮が足りないことが如実に表れているためです。消費者からみれば,電力事業者が勝手に電力量計を変え,勝手に電力料金を上げたと考えるのは仕方ないように思えます。 "


 うちもぐるぐるですし、日本全体で大部分がそうでしょうね。おそらくうちは20年もの。

 「そういう問題があるのか」と思ったんですが、イマイチ納得しきれないところがあったのでもう少し検索。


 すると、個人ブログみたいですが、テキサス州の電力会社、Oncor社がとうとう市民から集団訴訟を受ける:スマートメータを導入したら電力料金が高…(Ippei Suzuki’s Blog)というものが書かれていました。


"本質的な問題は、スマートメータの導入と同時に、Time Of User価格制度、と呼ぶ、夜間割引制度を導入している点にある、と指摘している。

この新しい料金体系について十分に説明を指定ない、というのがどうも議論の対象になるのでは、と想像する。

 特に夜間料金の割引と同時にピーク時の料金引き上げを行っているのが上記の料金高騰の原因ではないか、という指摘である"


 こっちの方がより有り得そうな話で、妥当な説明ですね。

 "Oncorは、古いメータと今回の新しいスマートメータとの比較をあらためて行っており、スマートメータに問題が無いことを証明しようとしている"そうですが、そうやって証明してしまうと、便乗値上げしたという事実が顕になるかもしれませんね。

 と言うか、古い話なんでその後どうなったかわかるかな?と、今調べてみたもののよくわかりませんでした。

 こういった便乗値上げや、「設備負担が電気料金に上乗せされる」ということも含めた移行に伴う説明不足は、今後日本でも考えられそうです。そういう意味では、参考になる事件でした。


★ 2012/3/22 東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?

 スマートメーターに関しては以前書いていますが、ダイヤモンド・オンラインで記事があって迷いつつも取り上げることにしました。これ以前にスマートメーターがガラパゴス仕様になるという話を読んだのですけど、調べたらそれもダイヤモンド・オンラインでした。まずこちらから。(2011/8/9のもの)


 スマートメーターとは、いつ、誰が、どのくらいの電気を使っているかリアルタイムに把握できる新しい電気メーターだ。これまで検針員が各家庭を回ってチェックしていた月々の電気使用量も、データ通信のみですむ。なにより時間帯ごとの使用量が測れるので、時間帯別の料金メニューが作れ、節電や電力需要のピークカットに役立つと期待されているのだ。

 そこで政府は7月29日、まだ90万台と試験導入レベルにあるスマートメーターを、今後5年間で推計4000万台(電力需要の8割分)まで一気に導入するプランを発表した。「スマートメーター特需」がやって来る期待感から、電気メーター製造を手がける一部メーカーの株価が上がるなど、盛り上がりを見せている。

 ところが、である。

 電力10社はこれまで、自社の“縄張り下”にある電気メーターについて、形状から仕様までバラバラに独自設計してきた。さらに各電力会社とパイプを持つ電気メーター5社(大崎電気工業、東光東芝メーターシステムズ、三菱電機、GE富士電機メーター、エネゲート)が、それぞれ受注シェアを分け合っており、量産メリットが生まれず「相対的に高い値段のままだった」(業界関係者)。これが多品種少量の“ガラパゴス”と呼ばれるゆえんだ。

 ここにきて「もしスマートメーターも“ガラパゴス化”したら、1台1万円前後まで下がった欧米の2~3倍の価格になり、導入コストが高止まりする」(経済産業省関係者)。実際に東京電力(1200台)と関西電力(79万台)が試験導入しているスマートメーターは別物だ。その理由の一つが、「メーターの標準化が進むと、電力会社ごとに抱えている技術者の仕事が減るから」といわれている。


スマートメーター特需の陰に ガラパゴス化と情報独占の懸念(要登録 ダイヤモンド・オンライン 2011/8/9 週刊ダイヤモンド編集部)

 この記事から7ヶ月。懸念が現実になります。


家庭に大量導入される次世代電力計のスマートメーターをめぐり、今年10月に第1回が予定される国際入札。閉鎖的な電力業界にオープンな調達手段の道が開け、「1000億円以上のコスト削減になる」と期待される。(中略)

 ところが──。

「これは完全な“出来レース”だ」。大手電機メーカー幹部は、冷笑する。東電と長らくズブズブの既存メーター4社(東光東芝メーターシステムズ、大崎電気工業、三菱電機、GE富士電機)の“不戦勝”が濃厚なのだ。なぜか。

 そのからくりは「独自仕様」と「スケジュール」にある。

 今回、参加メーカーが秘密保持の誓約書を書いた上で、東電から渡されたスマートメーターの「仕様書案」(約90ページ)を入手した。サイズや機能、必要な規格などが細かく列記してある。

 この仕様は「デザインからネジ1本まで、東電と既存メーカーが共同開発した高価な特注品。この『型』ありきで、すべて進んでいる」(業界関係者)。

 東電と特許まで固めた既存4社は無論、いつでも作れるスタンバイ状態。新参メーカーには、受注保証もないまま、この難解なメーター作りに、単独でカネと時間を注げというのだ。

 スケジュールもわざと“綱渡り”で設定してある。

 4月中旬まで意見や提案ができるが、採用されない限り、すべて非公開。「東電はあらゆる反論を用意して、微修正で終わる」(電機メーカー幹部)という見方が強い。

 さらに「正式仕様の発表直後に、完成メーターを検定試験に出さないと、入札に必須な型式認定が間に合わない仕掛け」(関係者)になっている。

 結局、東電の電気メーターを、これまで独占的に分け合ってきた4社が圧倒的に有利なのだ。

東電の高コスト体質は温存! 国際入札“出来レース”の全内幕 (要登録 ダイヤモンド・オンライン 2012/3/19 週刊ダイヤモンド編集部)

 問題はこれだけではありません。

 “出来レース”以上にとんでもないのが、東電のスマートメーター導入に伴う「隠れコスト」の存在だ。主に二つある。

 一つ目は、スマートメーターでやりとりするデータの大きな通り道として、総額1100億円で自前の光ファイバー網を敷設する計画を進めていることだ。

(中略)

 NTT東日本など通信会社の光ファイバー網を借りれば済むのだが、「セキュリティが担保されない」と主張。月内に、原子力損害賠償支援機構に計画を報告する段取りになっているという。

 二つ目は、東電が採用するスマートメーターが、将来的に莫大な追加コストを必要とすること。

 スマートメーターは近所の家々がリレー形式で伝える「無線メッシュ」という方式でネットワークを形成するが、実は家同士の距離が離れていると、データがうまく伝送できない。その際は「中継機」と呼ばれる高額な機材が、大量に必要になる可能性がある。

 ところが、この追加コストをまるで表に出していないのだ。

 こちらの方は狙いがよくわかりません。

 普通の会社であればコストがたくさんかかることは良いことじゃないのですが、電気の場合は「なんぼでも国民が払ってくれるから大丈夫」です。

 これも既存メーターのような感じで「仲間のために仕事を使って作ってあげましょう」、あるいは「自分たちの仕事できる縄張りを増やしましょう」ってことなんですかね?

 よくわかりませんけど、とりあえず、大幅なコスト増はスマートメーターのメリットを失わせます。

 決して支持できるような方向性ではないでしょう。


★ 2012/4/10 東電スマートメーター利権の問題で国際入札が延期の可能性

前回の記事がそうであったように、この問題に週刊ダイヤモンドは一生懸命です。新たにすでに国際入札が延期濃厚に 東電vs機構の思惑が正面対立 (要登録 ダイヤモンド・オンライン 2012/4/9)という記事が入ってきました。

 取材を通して、スマートメーターをめぐって、東電が発注してから、生産、運送、取り付け、インフラ整備まであらゆる工程で金を発生する「メーター村」というべき利権構造があることが浮き彫りになっています。

『週刊ダイヤモンド』4月14日号の第2特集「知られざるもう一つの電力ムラ スマートメーター利権」では、東電と機構のバトルだけではなく、“メーター村”の全貌に迫りました。

 読んで頂ければおわかりになると思いますが、信じられないほど隅々にまで利権がいきわたっていることに驚かされます。



 週刊ダイヤモンドではこれを「スマートメーター利権」と名付けて特集しているようですが、「詳しくは買ってね!」ということです。

 しかしながら、ある程度はウェブの記事でも書いてあります。


 この延期と言っているのは、実は東電ではありません。

 延期を密かに告知および主導しているのは、政府の原子力損害賠償支援機構です。

 東京電力が、政府の原子力損害賠償支援機構と共に取り組むスマートメーターの国際入札。欧米の主要メーカーも参画し、今後5年間で1700万台を発注する世界でも類を見ない規模の一大プロジェクトだが、機構は外資メーカーなど約10社に、早くも異様な“延期方針”を伝え始めている。

 ちょっと理由がよくわからなかったのですが、

"スマートメーターは「東電改革」の第一歩"

"スマートメーターの導入はこれまでの手動検針による人件費を削減するだけでなく、新たな省エネ産業の開拓、発送電分離など電力改革全体にも影響を及ぼす「改革の1丁目1番地」(同"引用者注:経済産業省関係者")だ。ここでつまずくと、東電と周辺企業の利権がさらに強化されるだけでなく、改革までもが骨抜きになる。経産省幹部は「東電とのだまし合いに勝ち抜くしかない」と表現する。"

"東京電力が原子力損害賠償支援機構とともに今年10月に実施する国際入札です。約1700万台という世界でも類をみない台数を、しかも海外の主要メーカーも交えて入札するという「改革の象徴」となるべきプロジェクト"

 という位置づけになっています。


 しかし、東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?で書いたように、

 事の発端は、3月12日に開かれたメーター仕様の説明会。巨大受注に目を輝かせ参加した国内外61社に渡された仕様案は、東電が既存4社と共同開発した「ねじ1本まで決められた高コストな独自仕様」だった。スケジュールもわざとタイトに設定されており、「内情を知る既存4社しか受注できない」(外資メーカー)と「出来レース」の様相が濃厚となっていた。

 という事態になっていました。

 だから、週刊ダイヤモンドによればこの延期というのは、「外資参入による門戸開放を狙う」原子力損害賠償支援機構の反撃なんだそうです。

 解説としては、以下のような感じでした。

「大きな仕様の変更があれば初回の入札で導入台数をゼロにすることが可能。つまり、実質的に半年以上延期にする」(経済産業省関係者)ことで、出来レースを食い止めようとしたのだ。それで時間に余裕ができれば仕様変更の余地ができ、意欲を失った外資メーカーらに新規参入を促すことができる。

 実はこの国際入札延期は、先月時点で池田信夫さんも提案していたようです。

 東電のスマートメーター「国際入札」は延期して見直せ(2012年03月26日 12:02 池田信夫ブログ)では、以下のようにありました。

この「談合入札」が問題なのは、コストが上がるだけではない。技術が東電の独自規格で、電力使用量を30分ごとに東電に送る機能しかないことだ。このように遠隔検針だけのために2000億円以上かけてメーターを取り替えるのはナンセンスだ。大事なのはこの機会にスマメをHEMS(住宅エネルギー管理システム)などの中枢と位置づけ、住宅やビルの電機製品を情報化することだ。

特に原発が停止して電力供給に不安が出ている今、工場やオフィスの節電需要は増えている。そういう節電を請け負う「省エネエージェント」も出てきたが、その一つファイナルゲートによれば、「現状では電力計を見ながら手動で空調の温度を調節するなどの方法しかない」という。これをITで自動化し、電力使用量をリアルタイムに監視して消費電力を抑制するシステムを導入すれば、最大40%の節電が可能だという。

これは日本全体のエネルギー問題にとっても重要である。電力会社の発電能力は夏のピークに合わせて決まっており、これを平準化すれば原発が止まっても停電は起こらない。そのためには、電力消費量の多いときは料金を上げるピークロード料金を設定し、利用者が電力消費をシフトするインセンティブを作り出す必要がある。もし1年を通じて電力消費が均一になったとすると、必要な発電能力は現在の60%に減るので、新たに発電所を建設する必要はなくなる。

(中略)

日本の電力会社の規模は年間売上高ベースで約15兆円。サービスを変えないで電力消費を4割減らすことができれば、最大6兆円の新しいビジネスが生まれる。こうした省エネ型の「スマートシティ」の市場規模は、2030年には世界全体で累積3100兆円になるという推計もある。スマメを標準化して小口電力を自由化すれば、電気代も低下するだろう。

ところが現在の東電のスマメは検針データを電力会社に送る機能しかなく、HEMSにも送ることができない。通信プロトコルも東電独自で、他の電力会社とも互換性がない。海外では高機能のAMIが配備されているのに、今わざわざこんな低機能のメーターを配備する目的は、小口電力の自由化を妨害するためとしか考えられない。

こんなガラパゴス型メーターをつくるより、すでに国際的に標準化されたAMIのインターフェイスを使い、メーターの情報はWi-Fiや3Gなど標準的な技術を使ってIPで共有すればいいのだ。アメリカでは通信キャリアやベンダーが競争して新しいビジネスを創造し始めている。東電の入札は延期し、仕様の策定からオープンに議論すべきだ。

 池田信夫さんの指摘は主に仕様に関してですね。

 本当は出し惜しみして次回にとっておきたかったのですが、この仕様に関してはかなり問題視している人が多く、紹介しようと思っていました。


 記事中には「遠隔検針だけのために2000億円以上かけてメーターを取り替えるのはナンセンス」とありますした。これはスマートメーター導入のメリット・デメリットでも書いたように、消費者にも恩恵がなければ無意味ですし、理解は得られません。(得られなくてもできてしまうことがあるのが、今の電力事業の仕組みみたいですけど)

 それから、理由がよくわからなかったのですけど、池田信夫さんの「(東電の不可解なスマートメーター仕様は)小口電力の自由化を妨害するため」という指摘は、他にない視点だと思いました。

 いくつかわからない部分もあったのですけど、東京電力の姿勢は受け入れがたいものがあるので、どちらかと言うと延期の動きは良い方向のような気がします。





★ 2012/4/11 東京電力のスマートメーターは時代遅れのガラパゴススマメ

 以前書いた東電スマートメーターの不可解な仕様についてですが、その前に電力業界全体の問題を書いたスマートメーターは電力自由化を阻む「トロイの木馬」電力業界は「ガラパゴス」携帯の失敗を繰り返すのか(2012.03.15(木)JB PRESS)から。以前のダイヤモンド・オンライン記事も使っていましたが、こちらでも「ガラパゴス」という言葉を用いています。
 
経済産業省で3月12日に開かれた「スマートメーター制度検討会」で、今年からスマートメーター(次世代電力計)の導入を始める方針が確認された。しかしその規格については、経産省が標準化を求めたのに対して電力各社が難色を示し、結論が出なかった。

 これは地味な技術的問題のように見えるが、実は電力業界を揺るがす問題なのだ。

(中略) 

 (引用者注:スマートメーターは)イタリアやスウェーデンなどでは全世帯に配備されているが、日本ではほとんど導入されていない。電力を節約すると売り上げが減る電力会社が嫌ったからだ。

 しかし震災と原発事故で電力不足が深刻になり、政府もスマートメーターを今後5年間で4000万台導入する計画を発表し、専用に980MHz帯の周波数を割り当てた。電力会社もスマートメーターの導入に乗り出し、実証実験を行っている。

 ところが各社のメーターはまったく規格が違い、データも相互に読めないので、全国で10種類以上のスマートメーターがバラバラに配備されることになる。日本の携帯電話がよく「ガラパゴス」とからかわれるが、このままでは電力計は国内でさえ規格が統一できない「超ガラパゴス状態」になる。

 なぜこうなるかと言うと、現在のアナログ電力計は、電力計5社でシェアを分け合う電力ゼネコンとも言うべき構造のためその維持というのがまず一つです。

 これは前回までにも出てきた話なのですが、驚いたのが企業向けと違い電力会社の独占となっている家庭用の小口電力(契約電力 50kW未満)の話です。

 電力会社にとって小口(家庭用)は「原価+適正利潤」の規制料金で利益を保証されていため、ドル箱のようです。どれだけ高収益かと言うと、小口(家庭用)の販売電力量は全体の38%しかないのに、なんと営業利益では91%を占めているというほどです。

 まさに国民から搾り取る構造になっていますし、電力会社としてはこの搾取構造を何としても死守しなくてはいけないと思うのは容易に想像できます。


 続きです。

 これも本来は自由化する予定だったが、電力会社が抵抗して先送りされてきた。しかし電力会社への批判が強まり、小口も自由化されるのは時間の問題だ。

 そこで電力会社は、今まで渋っていたスマートメーターを「前倒しで配備する」と言い始めた。しかも出すデータは「時間がない」という理由で、検針情報だけでリアルタイムに送ることもできず、電機製品を制御する信号の受信もできない。HEMS(Home Energy Management System:家庭用エネルギー管理システム)との通信インターフェースもないので、家電ともつながらない。

 これを設置するのも各地域の電力会社なので、小口電力が自由化されても、この独自規格のスマートメーターを配備しておけば、新規参入するPPSは各家庭に電力計を設置しなければならない。7700万個もある電力計をスマートメーターに変更できる業者は、電力会社以外になく、検針情報をPPSが課金に利用することも想定されていない。

 つまり独自規格・低機能のスマートメーターは、電力会社の地域独占を守るトロイの木馬なのだ。電力が全面的に自由化されても、独自規格でこのガラパゴス型スマートメーターを配備しておけば地域独占を守ることができ、電力ゼネコンも安泰だ。実に巧妙な参入障壁である。

 さすがに経産省は電力業界の狙いに気づき、標準化を進めようとしている。総務省も電力各社を呼んで通信規格の統一を要請したが、拒否された。「なにしろわれわれの所管業界じゃないもので・・・」とある課長は嘆いていた。

 (中略)現在の地域独占型スマートメーターが全世帯に配備されると、電力自由化が止まるばかりでなく、日本の家電は世界のどこにも輸出できないエコーネットに囲い込まれ、インターネットにもつながらない。検針情報は電力会社からもらうしかないので、家電もリアルタイムで制御できない。

 日本の携帯電話では、通信業者が独自規格で端末を囲い込み、ファミリー企業がそれに従属してガラパゴス端末を作り続けて壊滅した。スマートメーターも、このままではグローバル競争に取り残されるおそれが強い。

 物理的な計測器は各社独自で作るとしても、データ形式は統一して同じ半導体で処理し、通信も無線インターネットで行えば、新しいベンダーが参入してコストも安くなるだろう。しかし電力ゼネコンにとっては、競争が起こって単価が下がるのは困るのだ。

 前回の東電スマートメーター利権の問題で国際入札が延期の可能性で私がわからないと書いた

"池田信夫さんの「(東電の不可解なスマートメーター仕様は)小口電力の自由化を妨害するため」"

"スマートメーターの導入はこれまでの手動検針による人件費を削減するだけでなく、新たな省エネ産業の開拓、発送電分離など電力改革全体にも影響を及ぼす「改革の1丁目1番地」"

 もこれでよくわかりました。恐ろしいことになっていますね。


 この記事で既に"検針情報だけでリアルタイムに送ることもできず、電機製品を制御する信号の受信もできない"ことは指摘されていますが、そちらにより重点を置いた 「時代遅れ」の東電スマートメーター仕様、新たな電力システム構築に壁 村上憲郎のグローバル羅針盤(31)(2012/4/3 7:00 日経新聞)というものを。


 思わずタイトルにも使ってしまいましたが、この記事ではスマートメーターを「スマメ」と略しています。初めて見ました。流行るんでしょうかね?

 音だけ聞くと「酢豆?」と思ってしまいますが、かわいくて良いと思います。


 余計なこと書いていないで、本題です。

 村上憲郎さんは「スマートメーター(スマメ)を中核とする新しい電力システムの導入が原子力発電所停止による電力不足危機を解消する切り札として待たれている」として、「期待される機能」を想定していました。

 ところが、東京電力の全需要家向けのスマートメーターは、この「期待される機能」を全く持ち合わせないのです。


 村上憲郎さんは電力会社とつながる通信ルートである「Aルート」と、家庭やオフィスビルとつながる「Bルート」に分けて考えていますが、今回は電力会社とつながる通信ルートである「Aルート」についての問題点です。


 Aルートの最も基本的な機能は、月々の料金を徴収するための基本データである電気使用量の遠隔検針である。ハッキリ言う。東電が調達しようとしているスマメのAルートの機能は、「これだけ」である。

 というのは、スマートメーターはそれ以外の機能も備えることができるものであり、大々的に資金をかけてまで取り付けるスマートメーターとしては理解不能なためです。


 理想的なスマメの機能像との乖離といえば、例えば、私がこの連載25回「夏の電力不足回避へ、カギ握る事業者『節電アグリゲータ』の育成」で紹介したDR(デマンド・レスポンス)導入に必要な機能がある。

 (中略)東電はスマメで30分ごとに消費電力を測定するという。それによって、これまでの固定料金制ではなく、時間軸に沿った変動料金制(ダイナミックプライシング)、つまり、需要逼迫時に料金を引き上げることで需要抑制を目指すのであろうか。ただし、30分刻みの検針で、ピークカットに対応できるつもりなのだろうか。少なくとも変動料金制の究極の方式である「リアルタイムプライシング」には対応不可能である。

 これまでの連載の繰り返しになるが、DRとは、需給逼迫時に、電力会社が直接、あるいは、「DR節電アグリゲーター」と呼ぶ事業者を経由してスマメをコントロールし、消費電力の絞り込みや遮断など節電に協力してくれる需要家を束ね、需要を抑えこむ仕組みである。

 しかも、節電により生じるネガワット発電の買い取りを導入するという、強制を伴わない、経済合理性の高い、新しい電力システムでもある。

 そうした方向性を、東電が調達を計画しているスマメの仕様で、どのように発展させようとしているのだろうか。全く気配すら感じられないというか、不可能である。

 あえて言う。DRなんて高級なことを持ち出す必要もない。東電は、よもや、昨年の計画停電時に、医療機関と遊戯場とを選別して遮断できなかったあの苦渋を、もはや忘れたわけではあるまい!

 「設定・制御機能も持たせてある」というつもりかもしれないが、その設定・制御機能とは、引っ越しや料金未払いの顧客管理用のものにしかすぎない。それを緊急時に流用するというのだろうか?

 それでは、強制を伴わない経済合理性の高い新しい電力システムにはならない。昨夏と同じ、形を変えた統制経済である。

 そして、もう一つ東電スマメのAルートの決定的な欠陥は、

 この東電スマメ仕様のどこにも、複数の発電会社が、より良い電源とより良いサービスで需要家を獲得しあう公正な競争市場、つまり、「論点整理」のいう「競争的で開かれた電力市場」など想定すらされていないことは自明である。

 ということだそうです。

 また、

"スマメのコストも「総括原価主義」とやらで、きっと月々の電気料金の一部として、我々需要家は支払わされることになるのであろう"

"近い将来、“新生第二東電”や“第三東電”(いずれも仮称)と契約する時、彼らは新たに素晴らしいスマメを配ってくれるかもしない。あるいは、私が街の量販店で買ってきたWiFi親局と一体化した複合スマメを使うことになるかもしれない。

 その時、東電がこの「東電スマメ」を、私が料金の一部として支払った分の代金を払い戻して引き取ってくれるとは、思えない"

 ともしていました。


 家庭やオフィスビルとつながる「Bルート」についても次回問題点が指摘されるかもしれませんけど、今あるのはここまでです。 とりあえず、今回はスマートメーター問題の重要性がよくわかった気がします。


★ 2012/6/27 スマートメーター,海外の活用事例と日本での問題点

「日本でもスマートメーターの導入実験が進んでいるが、通信方式の検証がほとんど。収集したデータを業務にどう活用しているかというと、まったく活用できていないのが日本の状況だ。電力自由化が進んでいる海外とは差が開いているのが実態である」

 “電力自由化”先進国は「スマートメーター」をどう活用しているのか?(太田智晴(編集部) 2012.06.19 ビジネスネットワーク)によると、SAPジャパンでスマートイノベーション推進室長を務める松尾康男さんは前述のように言っているそうです。

 では、先を行く海外の事例としては、どのようなものがあるのでしょう?


 まず挙げられていたのは、"British Gasのブランドで""英国最大のガスおよび電力事業者Centrica"です。

同社は、スマートメーターを活用したサービスを業務用顧客向けに提供しているが、そのきっかけはスマートメーターのパイロットユーザー6000件の調査から判明した次の事実だったという。実に、46%の電気が19時~8時の営業時間外に消費されていたのだ。

このなかには冷蔵庫の電力消費など必要なものも当然含まれているが、駐車場の照明やディスプレイ照明といった無駄な電力消費も数多い。一般的な店舗の場合、平均で年間約15万円の節約が可能なことが分かったそうだ。

そこでCentria/British Gasが始めたのが次のサービスである。顧客宅に無料でスマートメーターを設置。自社/自店舗の電力使用量の見える化だけでなく、似た条件の事務所や店舗などと比較できるベンチマーク機能も備える。さらに、British Gasの専門家による節電アドバイスのサービスを提供しているほか、省エネ機器の販売にもつなげているという。

 うーん、記事タイトルに「“電力自由化”先進国」とありますけど、これは電力自由化が進んでいるからこそでしょうね。

 地域独占状態では電力会社が積極的にやるメリットはあまりありません。


 もう1つの事例は、"約600万件のガス及び電力の顧客を持つオーストラリア最大のエネルギー事業者"であるオーストラリアのAGL。こちらはどうでしょう?

AGLは、解約防止にスマートメーターを活かしている。AGLでは年間の解約率が18%にも上るが、その最大の理由が「Bill Shock」(請求書を見て、その高額さに驚くこと)だという。そこでAGLは、スマートメーターのデータをもとに、予め設定した金額を超えそうな場合に通知を行うサービスを提供し、解約の防止に努めているそうだ。

 これも電力自由化が進んでこそです。枠組みを先に作らないと、スマートメーターは全然活かせないという話ですかね?

 AGLはもう一つありました。

また、AGLでは、電力需要の予測と収支ポートフォリオ分析にも、スマートメーターで収集したデータを利用している。スマートメーターからのデータなどをベースに、自社の発電所からどれくらい電力を供給するのか、電力取引所からどれくらい電力を購入すればいいのかなどを割り出し、総コストの最小化に活かしているのである。

なお、従来こうした分析には60時間かかっていたが、SAPのインメモリデータベース「SAP HANA」を採用することで6分に短縮できているという。

 今の支払い方だと電力会社がコスト削減する努力はそれほどしないと思いますけど、まあ、これはまだメリットありますかね。

 何気なく最後SAPの宣伝が出ていますけど、海外でスマートメーターに絡んだ技術のある会社なんでしょうか?で、日本でも是非どうぞという感じなんですかね。


 さて、海外ではこんな感じなのですが、次は日本の話です。

 上で私はネガティブなことを書きましたが、

"国内の電力計各社が次世代電力計「スマートメーター」を量産することを日本経済新聞が6月8日付で伝えました。スマートメーターは国内で7000万台の需要が見込まれており、成長市場をめぐって各社の競争が激しくなりそう"

 ということで、国内の電力計各社は一応スマートメーター導入に動いています。


 しかし、この引用をした記事のタイトルが電力供給を左右する「スマートグリッド」の問題点とは? スマートメーター国内需要7000万台の獲得を各社が競う(2012年6月18日 日経ウーマンオンライン)であることからもわかる通り、課題があります。

 記事では"特に懸念される"として、"電力会社間でスマートメーターの仕様が統一されていないこと"を挙げていました。

 仕様が違えば、メーカーは各電力会社の仕様に合わせてメーターを開発・生産しなければならず、量産効果を出しにくくなります。また現在、家庭向けの電力供給は地域ごとに独占体制になっており、東京に住む人は中部電力や関西電力から電気を買うことはできません。政府はこの体制を見直し、利用者が自由に電力会社を選べる、電力小売りの完全自由化への移行を検討中ですが、スマートメーターの仕様がバラバラでは電力会社の乗り換えが難しくなる可能性もあります。

 東京電力のスマートメーターは時代遅れのガラパゴススマメもそういう話でしたが、日本の電力会社のスマートメーター導入は海外とかなり目的が異なります。

 海外では電力会社を変えられることを前提として、スマートメーターを活かして顧客の囲い込みを狙っています。おそらくこの場合、電力会社が変えても、新たな電力会社がスマートメーターを利用できるということだと思います。

 一方、日本ではスマートメーターの互換性をなくして、新たな会社に乗り換えづらくしようとしています。日本の電力会社の場合はスマートメーターを活かしてどうこうというよりは、スマートメーターを使わせないようにして顧客の囲い込みを狙っているといった感じです。


 完全に自由な市場ならともかく、地域独占かつ公的な役割をしていて、安定して利益を上げることを許されている会社がそんなことして良いのか?と言うと、まあ、感心しないですね。国民の利益にかなうこととは到底思えません。


★ 2012/7/10 東電スマートメーター有力発注先に幹部天下り

 東電は妙な仕様のスマートメーターを指定して、何とか既存の電気メーター会社に割高に作らせようとしていましたが、上記の最初を書いたときにはその意図がイマイチ私にはわかりませんでした。

 ここらへんは後半の方のを読んでだいぶわかった気がしたんですけど、そもそも既存の電気メーター会社は東電幹部が天下りしていたり、それどころか立派にグループ会社の一員だったりという関係だったようです。

 これはわかりやすい。電力会社は価格を一般の顧客に転嫁できますので、割高にしてグループ会社を儲けさせようという腹です。


 最初の東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?で出ていた各電力会社とパイプを持つ電気メーター5社というのは、大崎電気工業、東光東芝メーターシステムズ、三菱電機、GE富士電機メーター、エネゲートでした。

 さらに東電に限れば、長らくズブズブの既存メーター4社として、東光東芝メーターシステムズ、大崎電気工業、三菱電機、GE富士電機が挙げられていました。


 この最初の東光東芝メーターシステムズは、東光電気と東芝との合弁会社です。

 東光電気はオフィシャルページを見ると、右上に「東京電力グループ」と明記しており、東京電力のグループ会社一覧の中にも名前が見えます。(こちらには東光東芝メーターシステムズの名もあります)

 また、ZAKZAK(東電幹部 発注先のバカ高スマートメーター製造企業に天下り 2012.07.06)によると、東光電気は46%を東電が出資しているということです。

 歴史的にも"東京電灯株式会社(現在の東京電力株式会社の前身)から分離独立した東電電球株式会社、芝浦電気工業株式会社及び東電電気商品株式会社の3社を合体"したというものです。

 他社を含めていたので、パイプを持つ、ズブズブという表現だったのだと思いますが、グループ企業というのであれば独自割高スマートメーターにこだわるのは一目瞭然ですね。


 さらにZAKZAKによれば、"6月27日の株主総会をもって退任した高津浩明・前常務"は、翌28日にはこの東光電気の社長に就任。"高津氏のほか、東電の前電力流通本部副本部長も今回の人事で取締役に就任し"ています。

 やはり懸念されていたように、ここは"スマートメーター発注先の最有力候補"とされており、先の東光東芝メーターシステムズは"すでにスマートメーターの生産準備を始めている"そうです。


 ZAKZAKが問題とするのは、"高津氏は、東電でスマートメーターの説明を担ってきた人物"ということもあるようです。

 5月29日の電気料金審査専門委員会に出席し、スマートメーターについて、

「2012年度は1台3万円、本格導入が始まる2013年度以降は量産効果により徐々に単価を落とす」

 と説明した上で、"翌月には発注先の企業に天下りしているのだから、出来レースとみられても仕方ない"と書いています。


 これだけでなく、先に出てきたメーカーの中では、"最大手の大崎電気工業にも東電OBの天下り役員がいる"そうです。

「有価証券報告書を調べると、東電の子会社は168社あり、他に関連会社も97社ある。子会社の役員のうち、東電OBが110人、加えて現役の部長クラスが60人も出向していた(昨年10月時点)。さらに出資していなくても天下りを受け入れている“ゼロ連結会社”のうち、東京電力配電工事協力会のグループ11社だけで売上高が900億円。取引先はほとんどが東電です。要するに、東電本体では金がないと値上げ申請をしておいて、子会社に利益をため込んでいるわけです」(猪瀬直樹・東京都副知事)

 これについて"その一角が、このスマートメーター利権なのだ"とZAKZAKでは書いていました。


 ところで、途中で少し出てきたスマートメーターの価格についても少し。

 東京電力のスマートメーター、国際入札するもメーカーは決定済み?のときには、

「もしスマートメーターも“ガラパゴス化”したら、1台1万円前後まで下がった欧米の2~3倍の価格になり、導入コストが高止まりする」(経済産業省関係者)

 という話がありました。

 ZAKZAKによると、
東電が導入しようとしているスマートメーターは“バカ高”なのだ。東電は、1台あたりの調達単価を、2012年度3万円、2013年度1.6万円、2014年度1.2万円と見込んでいる。欧米のメーター単価は1万円程度だから明らかに高い。

 ということですから、まさに言った通りの金額になってしまっています。以前、私は主に賠償金確保を考えて、東電の事業や子会社を切り売りすべきだと書きましたけど、いろいろな意味で子会社は整理した方が良さそうです。


★ 2012/7/16 東電、スマートメーター問題で敗退 導入延期・国際標準規格採用

 以前引用した記事によれば、スマートメーター問題をめぐっては、東電 VS 政府の原子力損害賠償支援機構 という形になっていたそうです。

 そして、その結果は下記の報道内容を見る限り、ひとまず原子力損害賠償支援機構の勝利、東電の敗退となったようです。
 東京電力と原子力損害賠償支援機構は12日、次世代電力計「スマートメーター」の仕様を全面的に見直す方針を発表した。東電以外の事業者も電力使用データを利用しやすいようにインターネットで標準的な通信規格である「IP」を採用。国内外の電力計メーカーから入札で安価なスマートメーターを調達しやすくし、コスト削減につなげる。

 国際標準の通信規格を積極的に導入する。経済産業省が推奨する新しい通信規格「エコーネット・ライト」を活用することで家庭内エネルギー管理システム(HEMS)などの機器とも連携しやすくする。

東電、スマートメーター仕様見直し 国際通信規格を採用(2012/7/13付 日経産業新聞)

 原子力損害賠償支援機構の求めていたのは、

・東電関連会社しか作れない独自規格をやめて、実績のある国際通信規格を使うこと

・それによってスマートメーターの価格を安価にすること

 ですから、ほぼそれが通ったと考えて良いと思われます。

 ちゃんと使えるスマートメーターなのかってのは心配ですが、たぶんそれは国際通信規格を使う時点で大丈夫なんじゃないかと思います。

 ざっくり書いていますので、ここらへんは後半、別記事からの引用で補足します。


 また、東電 スマートメーター導入延期(2012年7月13日 読売新聞)にはこうあります。
 東電によると、政府に申請している家庭向け電気料金の値上げ幅は、わずかに抑制されるという。導入の遅れにより、原価約5兆7000億円(年平均)に盛り込まれているメーター関連費用が約35億円減るためだ。

 ただ、将来的に盛り込まれるときも今回の削減で少し軽くなるはずです。

 記事にも"今後10年間にかかる約3000億円の導入費用は、数百億円規模で減らせる"とありました。


 さて、補足です。

 今回の変更に関して、一番詳述していたのは、スマートメーターをオープンな仕様に、東京電力が方針転換(2012年07月13日 07時30分 石田雅也,スマートジャパン)でした。

 スマートジャパンはITメディア内で連載しているようですが、この件に限らず電力新技術関連の記事は力が入っていて、たびたび引用しています。


 東京電力のスマートメーターが"各方面から批判の声が上がっていた"理由は以下です。
 最も問題視されたのは、スマートメーターの仕様を電力会社が独自の規格で策定した点である。それによって、従来から取引関係のある少数のメーカーが製造を一手に引き受ける構造を維持しようとした。

 当然ながらメーターの製造コストが高くなることに加えて、スマートメーターをつなぐネットワークが閉鎖的になるため、提供できるサービスも電力会社によってコントロールされることになる。

 そして、スマートメーターのメリットとしては、以下です。
検針員が個々の利用者を訪問してメーターの数値を毎月確認する必要がなくなり、電力会社にとっては大幅なコスト削減を実現する手段になる。

 と同時に、30分単位の電力使用量に応じたサービスを提供できるようになることも大きなメリットだ。特に電力需要がピークに達した時に使用量を抑制する「デマンドレスポンス」のような節電対策を大規模に展開することが可能になる。

 "電力会社にとっては大幅なコスト削減"に関しては以前も書きましたけど、電力会社だけの利益にせず、顧客にも還元しなくちゃいけないんですけどね。


 記事では"今回の方針転換によって、東京電力が導入するスマートメーターの仕様が当初案よりも国際標準などに準拠したオープンなものになることは確実"と書く一方、"現時点では大枠の方針が発表されただけで、詳細な仕様は公表されていない"と不確かな部分も残されているようです。

 さらに"東京電力の説明資料の中には、「東京電力の従来仕様に優位性が認められる場合は、その従来仕様をオープンにする」といった表現も残っており、どこまで標準的な仕様が盛り込まれるかは不透明なまま"ともあり、まだまだ予断を許さない状況みたいです。


★ 2012/7/26 スマートメーターは意味がない?スマートメーター批判と人力での消費電力の計測

 スマートメーターに関してはたくさん書いてきましたが、イマイチどういうことができるのかピンと来ません。で、こう何かはっきりとわからないと、スマートメーターなんて意味があるの?と思う人も出てきます。

 実際、以前、"ユーザーの節電も電力の管理もスマートメーターが無くても、個人宅で不要な電力は分析できます"と言われました。

 ただ、「できる」というだけで、スマートメーターが意味がないと言えません。

 同じ結果を出せるとしても、そこに辿り着くまでの労力を一切考慮していないからです。


 私はもともとケチでこれ以上節電できないのではないか?と思ったのですが、昨年主な電気機器の電力の使用状況を計測してみました。

 うちはクソ狭いワンルームでかつ、玄関先に電力メーターがありますのでかなり恵まれた状態です。

 しかし、そういう恵まれた環境でありながら、めちゃくちゃ面倒でした。

 以下に手順を書きます。
 

 冷蔵庫など止めることができない家電があるため、まず、計測したい電気機器を動かさない状態での電力(kW)を計測します。(家電には消費電力が書かれているものの、使用状況によって異なるかもと思って実測しました)


1.部屋の外に出て、電力メーター(単位はkWh)を読み取り、記録します。

 表示される数字は小数点以下一桁ですが、右に目盛りがあります。これが最小目盛であり、小数点以下二桁目に当たります。

 通常、最小目盛の一桁下まで読み取りますので、ここでもそれに倣い、小数点以下三桁目まで読み取ります。そして、最終的な数値を算出するときに四捨五入します。(ただ、私の場合、1/10までは判別できなかったので、大雑把に0か5で読み取りました)

 なお、うちの電力メーターで表示されている一番小さい数字(小数点以下一桁)と目盛はいっしょに回転してしまうのと、最小目盛の0と5の長い棒が同じくらいの長さのため、何度か読み取り間違いをしました。

 これだけだとなぜ間違うのかわかりづらいと思いますが、たとえば「0.195」と読み取らなくちゃいけないときに見えている数字は「2」だけなので、「0.245」などとやってしまうわけです。

 今こうやって書いていると何で間違うんだろう?と自分でも思いましたが、当時は間違いました。

 なぜ間違ったとわかったかと言うと、前回見たときと比べて明らかに電力量が増えていない、最終的な算出結果が他の計測時から大きく乖離しているなどがあったためです。

 読み取りだけで長くなりましたが、これがデジタルになるだけで格段に楽になるはずです。


2.電力メーターの読み取りとほぼ同時に時刻を確かめ、記録します。

3.この状態では電力メーターの目盛りはほとんど動きませんので、数十分待ちます。

 どちらの計測値も誤差を含んでいると思われるので、それを十分に帳消しできるようにという意味もあります。(1分での1秒の計測ミスと30分での1秒の計測ミスなら、同じ1秒の計測ミスでも後者の方が影響が薄いため)


4.再び部屋の外に出て、電力メーター(単位はkWh)を読み取り、記録します。(読み取り方の注意は1.と同じ)

5.電力メーターの読み取りとほぼ同時に時刻を確かめ、記録します。

6.電力量(kWh)・時間、それぞれの差を求めます。

7.電力量(kWh)を時間(h)で割ると、電力(kW)が算出できます。この際に相対的に比較するだけでしたら、分(min)のままでも構いませんが、「kW」にしたい場合はきちんと時間(h)に直してから割ってください。(普通は「W」表示?「kW」をさらに「W」に換算するべきかも)

(私は当時ちゃんと「kW」に直しませんでした。記載の消費電力と同じくらいになっているかやってみれば良かったです。そのメモは現在行方不明です)


 えらく手間がかかりましたが、これはまだ電気機器の電力ではなく、消せない機器のベースの電力です。

(私はこのベースも冷蔵庫なら周囲の温度で変わるんじゃないか?と気になりますし、待機電力がどれくらいかも気になります。でも、結局誤差範囲くらいに収まって、信頼性の低いこの方法じゃ算出できないんじゃないかと思います)

 次から、やっと計測したい電気機器に入ります。


8.再び部屋の外に出て、電力メーター(単位はkWh)を読み取り、記録します。(読み取り方の注意は1.と同じ)

9.電力メーターの読み取りとほぼ同時に時刻を確かめ、記録します。

10.素早く部屋の中に入って、計測したい電気機器の電源を入れます。

 計測したい電気機器を使用中でも算出できなくはないですが、大抵計測したい電気機器の使用時はベース時では考えられないほど目盛りが動きますので、計測がたいへんだと思います。

 まあ、もともと誤差の大きい方法なんでそんなもので良いかもしれませんが……。


11.計測したい電気機器を使用します。

12.計測したい電気機器の使用を終えて電源を切ったら、素早く部屋の外に出て、電力メーター(単位はkWh)を読み取り、記録します。(読み取り方の注意は1.と同じ)

13.電力メーターの読み取りとほぼ同時に時刻を確かめ、記録します。

14.電力量(kWh)・時間、それぞれの差を求めます。

15.電力量(kWh)を時間(h)で割ると、電力(kW)が算出できます。

16.15で求めた電力(kW)から7でで求めた電力(kW)を引いてやると、おおよその計測したい電気機器の消費電力(kW)が推測できます。


 と、まあ、たいへんなわけですが、同じ推測をするにしてもスマートメーターで簡単にしてくれるよね?というのが、まずスマートメーターの一番基礎的な期待です。

 上記は私がワンルームでやっているだけですから、もっと規模が大きくなれば削減できる労力はさらに大きくなります。

 あとはその労力の削減に割りに合う投資なのかどうかですけど、ここらへんで終わっていたら"スマート"メーターとは言えませんから、それ以上の価値があるでしょう。

 以前書いたものなどはそういう例でしょうし、私がいいなと思うのはデータの読み取りさえちゃんとできれば、ソフト側の質向上でもっともっと上に行ける可能性を秘めていることです。

(投稿してから気づきましたが、上の全部を省力化はできるわけじゃありませんね。まず、スマートメーターは細かくても30分くらいらしいのでだいぶ大雑把な区切りです(追記:これは勘違い、東電が30分で粗すぎると書かれていました。普通はもっと良いみたい)。あと、将来的には連動を想定しているようですが、スマートメーター単体だと使用中の家電の把握は人がやる必要があります。それから、使用時間の計測も人がやらなければいけません。ここらへんは家電チェックリストつきの計算支援ソフトを作るなど工夫できそうですが、特定機器の消費電力まで測ろうとする場合はまだまだ手間かかりそうです)


 あと、上記は人力でやった場合ですけど、消費電力を計測できる機器もあります。

 スマートメーターは現在1万くらいまで落ちているそうなので、あんまり変わりませんが。(追記:各機器の消費電力を正確に知りたい場合はこちらの方がスマートメーターより優秀だと思います)


 こういう機器を買ったり、私みたいな計算までする人はほとんどいないと思われます。

 ということは、簡単に測れるようになれば、それを活かそうという人の数も必然的に増えると考えられます。いわゆる「見える化」の力ですね。

 消費電力の計測が簡単にできるだけでも結構大きい効果でありスマートメーターが意味がないとは思えませんが、繰り返すようにそれ以上のところを実現してもらえないとスマートメーターとしては期待外れです。


(書くところなくなっちゃいましたので、先の計測結果が個人的にはおもしろかったので、ここに感想を書きます。

・メーカーはスタンバイの方が若干消費電力が高いとしていたが、パソコン(XP)のスタンバイと休止状態の消費電力の差がわからいほど僅かだった。

・パソコンをスタンバイするだけでも、相当に電力消費を抑えられる。メーカーでは起ち上げまでの時間ロス(あと、起動時の電力消費が多い?)などであまり短い時間は……みたいなことを書いていたけど、私は実感できなかったのでなるべく使った方が良さそうだと思った。パソコンを使い続けていると中のファンが激しく動き出すことがあるが、電力消費も平常時より大きいのでは?これは比較できていないのでわからないけど、パソコンを冷やすという意味でも休みを入れる効果はありそうな気がする。

・以前は使わないときにデスクトップ型パソコンのディスプレイ(モニタ)を切るということをしていたが、計測してみるとディスプレイ点灯時との違いを確認できなかった。これをなるべくスタンバイで代用するようにした。

・電子レンジと炊飯器の保温(ずっと保温ではなく、最低限食べられる温かさで)を比較した。電子レンジの消費電力は大きいものの、極めて短時間なのでご飯を保温するより良さそうだった。ここらへんは環境や好みによると思うけど、それ以来保温一切なしで食べる前に電子レンジというやり方にした。)


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