全体タイトルにした<医師の年収は本当に高いのか?高く見えているだけという可能性>に絡む、<命を救う職業だから医師の年収は高すぎないという主張のおかしさ>という話の他、<医師が過剰だと心配されていたのに突然医師不足になった理由>などといった話をやっています。
●医師の年収は本当に高いのか?高く見えているだけという可能性
2012/3/22:日経ビジネスオンラインで医療関係の特集があって、以前、一気読みしました。今回はそのときのメモなので、内容はバラバラ。まず、その中から一番関心が高そうな
医師の収入は高過ぎる?(要登録 日経ビジネスオンライン 2009年9月1日 木村憲洋)という記事の話から紹介していこうと思います。
記事では、日本は医療費を国の決めているというところが大きいため、不適切になっている可能性があるとしていました。また、医師が高給とはいっても労働・拘束時間の長さがあるなどが書かれており、これらをもっと考慮されるべきだとも主張されています。これらは理解できるところです。
高給取りと言われる職業の中には、医者以外にも結局長時間労働だから…というものがあり、変に妬まれてしまうことがある点には同情しますね。医師以外の職業でも、確かに収入が高いのは間違いないがその分労働が過酷…といったことがあるんですよ。
●命を救う職業だから医師の年収は高すぎないという主張のおかしさ
ただ、他の職業の例を挙げたように、労働時間が長かろうが短かろうが年収が高いというのは事実。そう言われること自体は仕方ないでしょう。問題は「医師は年収が高すぎる」と不当であるかのように叩かれることであり、私もそれは叩かれるべきではないと思います。しかし、この反論にあたる以下の部分の書き方は気になったんですよね。
<果たして、医師の収入は高過ぎるでしょうか? 医師は、患者の命を預かる医療の専門技術者です。長時間労働を強いられることも多く、また、責任も重大です。優秀な人材が集まるべき職種であり、報酬もある程度、担保されるべきだと思います。
つまり、「医師の収入は高過ぎるとは言えない」というのが、私の見解です>
人命に関わるといった仕事の高尚さを元に、給料が決まっているわけではありません。また、自分がすごいと思っても、他人が評価してくれなければ、お金を支払ってくれるとは限らないでしょう。医師は他の人とは違うんだと強調することで、逆に他の職業を蔑んだ感じもあり、記事には違和感を覚えました。
2022年2月2日に読み直していて思いましたが、「医師は患者の命を預かる」もやや事実と異なりますね。人命に関わらない仕事をする医師も多数いるためです。私はそうした医師も大事だと思いますが、上記の文章は彼らを下に見ていますし、彼らの年収が高いことは正当化できていません。やはり無理のある反論なんだと思います。
ここらへんの主張は医師に対する誇りなのでしょうが、医師の使命感の高さは過酷な仕事内容であっても成り手がいるという要因になっていますので、ある意味良いことかもしれません。人が働くのは必ずしもお金だけじゃないのです。ボランテイア活動もそうですし、ウェブでの活動なんかも無償の行動が多く、ありがたいです。
私は才能のある人、結果を出した人にはどんどんお金を上げるべきという考え方を持っているので、医師の場合にもやはりその対価を正当に評価して給料もそれに見合うものとして良いという考えなので、高年収でいいじゃない?と思います。ただし、医者側に「与えてやってる」感が強すぎると、なかなか感謝されないでしょう。
●医師が過剰だと心配されていたのに突然医師不足になった理由
続いて、別記事の
医師は増員すべき?(要登録 日経ビジネスオンライン 2009年7月7日 木村憲洋)というもの。医師不足に関して言うと、以前は医師不足ではなく、過剰さを心配していたくらいだったようです。ところが、2004年度からスタートした新医師臨床研修制度がきっかけで変化したとと説明されていました。
<以前、臨床研修においては、大学病院に研修医が集中していることで様々な問題が生じていました。人数の多さ故に一人ひとりが十分な研修を受けられず、また、大学側が十分な給与を支給していなかったため、少なからぬ研修医がアルバイト診療を余儀なくされていました。(中略)
以前は、医師国家試験に合格した医学部の卒業生は、そのまま大学の医局に入り、すぐに専門診療科の勉強を始めていました。ところが、卒業生の多くが、より恵まれた研修体制と労働環境を求め、大学病院以外の病院に流れました。(中略)
また、新制度により、新人医師の大学医局への配属は研修修了後となりました。これにより、夜勤や祝祭日の診療を研修医のアルバイトに頼っていた大学病院では、常勤医師の当直の回数が増える結果となり、勤務医が疲弊する事態となっていったのです。さらに、人手不足に陥った大学病院では、関連病院に派遣していた医師の引き揚げを始めました。結果、派遣先の病院でも医師不足が生じた(中略)
医師不足には、「診療科間の偏在」「地域間の偏在」の側面もあります>
「医療過誤のトラブルが生じやすい診療科」と「地方病院」が不足しているそうです。要するに、医師側のデメリットが多いたいへんな仕事が敬遠されているんですね。特に深刻なのは後者のもの。これは医者の数を多少増やしても、解決はしないということを示しています。
ところで、最初の記事では「患者の命を預かる医療の専門技術者」という立派そうな書き方をしていました。ただ、これを読んでわかるように、医師は使命感だけで仕事を選んでいるわけじゃないんですね。でも、それは自然なことですから、私は仕方ないと思います。「命を救う職業だから」的な主張の方が不要ですね。
なお、過剰だったのが急に足りなくなったというのは、やっぱり変だなと思ってWikipediaを見たら、当時過剰だという話がそもそも根拠のないものだったようで、最初から日本は少なかったという説明。Wikipediaの説明の方がすっきりしています。「診療科間の偏在」「地域間の偏在」なんかは以前からあったんじゃないでしょうか。
●医療ツーリズムをやる病院なんてない…と思いきや矛盾する話も
あと、日経ビジネスオンラインではなく、ダイヤモンド・オンラインの
「医療ツーリズム」は本当に日本を救うか? 経済効果を狙う国と危惧を訴える医療現場の“温度差”(2011/3/9 梅村千恵)という記事も。居住国以外の国で医療サービスを受けるために、患者が海外渡航する「医療ツーリズム」"についての話です。
記事では、まず、「外交問題になりかねない」「地域医療が疲弊しているさなかに受け入れは不可能に近い」などという批判的なコメントが多く、積極的に受け入れる姿勢は、ほとんど見られなかったとしていました。すると、結局導入しても誰もやらないのかな?と思いきや、正反対の話が同時に出ていたんですよ。
社団法人日本医師会は、「産業構造ビジョン2010」にて「医療ツーリズムの拡大」がうたわれた当時の記者発表などで、「営利企業が関与する医療ツーリズムには反対である」という声明を発しています。この理由のひとつが、以下のようなものであり、むしろ積極的に受け入れる医療機関が出かねないと心配されていました。
<理由の1つが、「医療格差の拡大」だ。医療ツーリズムで日本を訪れる外国人は、全額自己負担で診療を受けるため、医療機関にとっては保険事務の必要がなく、現金収入にもなる。営利目的の運営の下では、こうした患者(引用者注:外国人患者)が優先的に扱われることになり、医療格差を拡大する恐れがある>
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